もう一人のサイヤ人が桃白白の弟子になる話   作:麻寿津士

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其之十二 とある二人組

「たァ――!」

 

構えた銃を撃つよりも早く、悟空の蹴りが兵士の顎を襲う。

飛びかかった動作のまま相手を踏み台にして、奥の敵に向かっていく。

そのまま足が弧を描くと、軌道上にあった二つの顔を正確に仕留める。

通り抜けたあとには気を失った男たちが大勢のびている。

 

「あっちだ!」

 

ドラゴンレーダーを使い、司令官がいるであろう場所を見抜く。

いくらでも兵はあらゆるドアから湧いてくるが、それらを長く伸ばした如意棒でひと固まりになぎ倒した。

肉体の壁となり、行く手を阻もうとする連中は体当たりで吹っ飛ばす。

決して足を止めることなく走り続ける。

ベランダの柵を越え、当たり前のように向かいの建物の屋根へ乗る。

 

その後ろをついて行き、内心フーイは舌を巻いた。

悟空は強い。少なくとも、突破力という点では自分は敵わないかもしれない。

弾丸のように弱点を撃ち抜くというより、ハンマーや大砲のように真正面からぶつかる。

あるいは、それこそが鶴仙流と、亀仙流の違いなのかもしれなかった。

 

しかし、

 

「いたぞ!あそこだっ!」

「ほっ」

 

こちらを狙う狙撃手を見つけると、悟空が壊したがれきの欠片を拾う。

思いっきり敵の足場向け投げつければ、銃を構えたままの格好でなすすべなく地面へ落ちていった。

更に、出撃しだした飛行機の隊列の、丁度真ん中あたりの機体をピッと指さす。

 

「どどん波ッ!」

 

燃料タンクと動力を貫かれ、最新鋭の戦闘機があっというまに花火に変わる。

火の玉は周囲を巻き込み、連鎖して近くにいた何機かももつれるように墜落した。

こういう面に関しては、いくらかフーイに軍配が上がる、と本人は思っている。

 

と、満足げに成果を少し眺めている間に悟空はあっというまに上っていた塔を飛び降りてしまう。

慌てて彼女もそれに続いた。

 

「どっちに向かってんの」

「この建物のはずだ」

「もっと上かな」

「でも階段がねぇぞ」

「エレベーターがあるけど電気通ってるかな」

「えれべぇたぁ?」

「前見て!こっちでやっとくから」

 

如意棒が鳩尾をつく。

死角から殴りかかろうとした大男は、逆にフーイが背後から襲い締め落した。

ナイフを手に襲い掛かってきた男、両手を広げ捕まえようとするは、悟空が片方を踏み倒しながら片方へ肘うちをかます。

天井を足場にして加速すると、小さな体がバリケード代わりのテーブルで逆に相手を押しつぶす。

その間にフーイが天井に二人が通れるぐらいの穴をあけた。

 

「こっち!」

「うん!」

 

上の階にはライフルやランチャーを構えた兵が待っていた。

が、フーイに手りゅう弾を投げられ慌てて逃げ出す。

 

「なんだ?あれ」

「爆弾みたいなやつ。落ちてたから拾った」

 

物陰では、怯えて縮こまった男が一人、必死にトランシーバーに縋りついている。

けれどどんなに喚いても、意味のある返答はない。

襲われていないはずの建物から、爆炎が上がる。

もともとならず者の集まりだ。余りの混乱に同士討ちが始まったのかもしれない。

 

「司令部、応答してください!指示を!

 総帥!レッド総帥!指示を出してください!

 ちくしょう、あんなガキどもに、天下のレッドリボン軍が!」

 

応答は、ない。

 

 

勢いよくドアが破壊され、一枚の板となって鋭く部屋の中央へ向かって吹っ飛ぶ。

室内でたった一人息のあった男は、慌てず騒がず首を振った。

編まれた三つ編みではたかれた板は、当たった部分から二つに裂けてその場に落下する。

 

「来たか。30分と聞いていたが、10分もたっていないんじゃないか?」

「おまえ……」

「桃白白!!」

 

すぐ隣に立っていた少女が大声をあげ、思わず悟空はぎょっとする。

何事かと横を向いた時には、既に彼女の姿はない。

扉だった残骸を勢い良く投げ、視界を塞ぐ。

相手が自分の姿を見失った隙をついて、背後から襲い掛かる――

 

――が、あっさりとハイキックで木片ごと床へ叩きつけられた。

 

「あぐっ!」

「フーイ、大丈夫か!?」

「あう……ごくう……」

「このやろう、よくもフーイを!」

 

射出されるように、小さな体が飛び出した。

が、真っすぐに鋭くくり出した拳は、包むようにあっさりと捕まる。

そのままボールのように、悟空も床へ叩きつけられた。

 

「ぐぎっ!?」

 

思わず呻き声を出し、とっさに起き上がる。

そのまま次の攻撃へ移ろうとして、

 

「あり?」

 

悟空は何かに気づいて動きを止めた。

感触を確かめるように体を擦る。

 

どこも痛くない。

いや、まったく痛みがないわけではないのだが、想像したものに比べたら無に等しかった。

明らかに目の前の男と自分には力の差がある。

もしも本気で投げられたなら、こんなものでは済まないはずだ。

 

見てみると、フーイの方もあっさりと立ち上がっている。

どころか、何事もなかったかのように、寧ろ酷く親し気に男へ飛びついた。

飛びつかれた方も、いつものことといった雰囲気で、くしゃくしゃと頭を撫でている。

 

「ど、どういうこと……?」

「あ!ごめんごめん、悟空、攻撃しないでって言おうとしたんだよ。

 だって敵じゃないし」

「うん……」

 

それは、流石に見ればわかった。

 

「話してなかったっけ?これが私のもう一人の師匠、桃白白」

「ボンジュ~~~~ル~~~」

 

やたらと間延びした無駄に国際的なあいさつに、悟空は混乱して首を傾げた。

桃白白はお茶目が滑っても気にしないタイプなので、特にフォローをするわけでもなく、真顔で黙っている。

 

「おっちゃんがフーイの師匠ってことはわかったけど、じゃあレッドリボンの親玉はどこに行ったんだ?」

「そういえば……あ」

 

きょろきょろと周囲を見回し、そこでようやく二人は部屋に死体が三つもあることに気がつく。

二つはドアの残骸の下敷きになっており、もう一つは机の影になっていたので、少しは仕方がなかったかもしれない。

悟空は顔をしかめたが、フーイの方は気にすることなく桃白白がやったの?と仏頂面を見上げた。

 

「わかった、そういう依頼があったんでしょ。こいつら恨み買ってそうだし」

「……ま、そんなところだ」

「じゃあさっさとドラゴンボールもってっちゃおうよ、悟空」

「あ、うん」

 

カチカチとレーダーを弄ると、悟空は部屋の奥側にある絵画に手をかける。

額縁を外すと頑丈そうな箱があつらえてあった。

以外にも鍵はかかっておらず、簡単に蓋があく。

その中にはドラゴンボールが1つ、収まっていた。

丁寧に取り出して、悟空は中の星の数を数えてみる。

 

「星が5つだ。じいちゃんの四星球じゃないや」

「そっか、残念だね」

「また次のやつを見つけないと」

 

カチカチ、とレーダーを操って表示を出す。

が、よく見るとレーダーには残り2つしか表示されていない。

ドラゴンボールはあと3つあるはずだが……。

 

「あれ…?」

「悟空、いくよ!途中まで桃白白が飛行機で送ってくれるって」

「わかった!」

 

さっさと歩きだしてしまった二人の後を追って、悟空も歩き出す。

ふと、二人の背中に同じ文字が書かれているのに気付いた。

KILL YOU!(お前を殺す)』という物騒極まりない文言の意味を、だが少年は知らない。

その時は、ただ、目の前の二人が本当に師弟なのだなと、実感で理解しただけだった。

 

 

 

 

 




「おっちゃんは筋斗雲乗れねぇのか?」
「無理。絶対無理。100%無理。神様が死んじゃうのと同じぐらいありえない」
「…………」
「ほら殴った!意味わかってないのにとりあえず貶されてるのだけはわかったから殴ったよ!こういうところが無理なんだって!」
「…………」
「2発目構えないでよ私が悪かったから!」
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