もう一人のサイヤ人が桃白白の弟子になる話   作:麻寿津士

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合わせて内容を大幅に調整しました。


其之十四 超聖水、そして保護者

二人はボラとウパに見送られ、カリン塔へと登り始める。

何とか上りきった頂上には仙人様ならぬ、仙猫様のカリン様がいた。

力が何倍にもなる水、超聖水もたしかにあった。

 

「あれ飲んだら力が何倍にもなるんでしょ?飲んでいいよね、上ってきたんだし」

「ああ、やろう。ただし、ほい!」

 

今にも栓を抜き、水を飲もうとするフーイを、どんっと杖でカリンが突き飛ばした。

バランスを崩した彼女の手から、水差しが放り出される。

持ちてのわっかに上手く杖の先をひっかけ、カリンは水差しを奪い取った。

 

「わしの邪魔を逃れ、このツボを手にすることができたら、いくらでも飲んでよいぞ」

「え――っ!なにそれ!」

「よ〜〜し!」

 

反対側から飛びついた悟空も、杖で素早くはたき落とされる。

 

「……超聖水を飲めるのは一人づつじゃ。フーイが先に飲むなら、お前は下に降りて待っていた方がいいかもしれん」

「どういうこと?」

「前にこの塔に上ったのは三百年前にたった一人、それは悟空、お前の師匠の武天老師じゃ」

「ええっ!?じゃあ亀仙人のじいちゃんも昔ここに来たのかっ!?」

「そうじゃ」

 

思わず悟空は驚きで言葉を失う。

その間にもフーイは挑みかかっていたが、軽くいなされて床に転がっていた。

 

「……ひょっとしてお前、凄く偉い奴なのか?」

「やっとわかったか、これからはカリン様と呼べ!」

「そうじゃなくてさ」

 

すぐにむくっと起き上がり、フーイは興味なさげに胡坐をかく。

 

「私が飲むなら悟空が下りた方がいいって言うのはなんで?」

「武天老師がわしから水を奪うのには、三年かかった」

「い〜〜っ!?亀仙人のじっちゃんでもそんなにかかったんか!?オラそんなに待てねぇよ!」

 

「大丈夫、そんなに待たせないから」

 

彼女はびしっと3本の指を見せつけた。

 

「私なら3日で取れる」

「ほう」

 

大見えを切った彼女の言葉を、否定するでもなく、馬鹿にするでもなく、カリンは細い目を細めて顎を掻いた。

 

「やってみるといい」

 

 

それから1日経ち、2日経ち。

とうとう3日目もそろそろ終わろうとしている。

かなり惜しい瞬間はあったものの、フーイは未だ超聖水を飲めていなかった。

 

杖ごと奪おうと伸ばした手を胴体ごと払われ、ごろんと床に転がる。

すぐさま起き上がり、殴り掛かって距離を詰めようとするものの、足払いを避けようとジャンプしたところを軽くはたかれた。

そのまま前転をするとまた飛び起きる。

 

「おぬしは本当に打たれ強いのう……」

「師匠が容赦ないからさ」

「なるほどな。だが、それだけでは三年経ってもわしからツボは奪えんぞ」

「わかってるよっ」

 

再び床を蹴って、今度はいつになく直線的な動きで突っ込んでくる。

頂上の空気の薄さにもなれ、動きの無駄もかなり減った。

フェイントなどがない分、かなり速い。

 

が、どれほど素早くとも読まれてしまえば意味がない。

さらりと横へ避け、また杖をくらわそうとした、その瞬間。

避けた先のカリンの位置を、小さな指先がピタリと指さした。

 

「どどん波っ――!」

「なにっ!?」

 

そこまでやるか、と流石に驚いたカリンだったが、しかし咄嗟に別方向へ避ける。

ツボに向かって飛び込んでくる体の軌道を読み、それと重ならないよう器用にツボを空中へ放り投げた。

あとは彼女を蹴倒してツボをキャッチするだけ、だったのだが――

――ふわり、とフーイの体が空中では普通、考えられないような方向転換を見せる。

 

「な、しまった!」

 

舞空術か、と思った時にはもう遅い。

超聖水の入った水差しを手に持ち、ニヤリと少女は得意げに、憎たらしく笑った。

 

「この3日間、一度も気弾も舞空術も使わんかったのはこのためじゃったか」

「ふふん、そのとお~り! 不意打ちの方法は年がら年中考えてるからさ」

 

勝ち誇った様子でごくごくと水を飲み干す姿を眺めながら、カリンは内心舌を巻く。

 

「すげぇなフーイ!なあ、どんな感じだ?力が湧いてくる感じするか?」

 

ワクワクを顔中に張り付けて、悟空は興奮した様子でフーイに尋ねる。

 

「……う~ん、あんまり?」

「え?そうなんか?」

「これ本当に効いてるの?」

「効いておるとも、お主の力は既に何倍にもなっておる

 さて、明日からはお主の番じゃぞ、孫悟空」

「よ~~し!」

 

怪訝そうな顔をするフーイは放っておいて、カリンは今度は悟空と向き合う。

彼にとっては、この少年の方もなかなか予想がつかなかった。

 

フーイの挑戦の間にも、下の階や手すりの周りをグルグル走ったり、腕立て伏せをしたり。

かなり動いていたので既に体は酸素の薄さになれているだろう。

しかも、それをしていない間はじっと真剣な表情で二人を見ていた。

ただ暇つぶしで眺めているというには、随分と集中していたように思う。

 

(気を引き締めねばな……)

 

という決意もむなしく、悟空が超聖水を手に入れたのは僅か2日後のことだった。

 

「やった――っ!!ツボとったぞ――!!」

「悔しい~~!!私より早いじゃん!」

「へへ、フーイとカリン様をよく見てたらさ、カリン様が次にどうするかちょっとわかるようになったんだ」

 

いうのは簡単だが、ただ見ているだけで動きは読めるようになったりしない。

しっかりとした実力に加え、かなりの観察眼も必要とされる。

 

(な……なんてやつらじゃ……フーイもすごいが、悟空はそれ以上かもしれん……)

「飲んでいいんだろ!?」

「もちろんじゃ、飲むが良い」

「へへへ――」

 

ぽんっと栓を抜き、ごくごくごくと勢いよく飲み干す。

すっかり空になった水差しを床に転がし、悟空は怪訝そうな顔で自分の体を眺めた。

しばらく手を開いたり握ったりしていたが、納得のいかなそうに首をかしげる。

 

「あり?……なあ、別にどうってことねぇような気がするぞ……」

「だよねぇ。あんまりパッとしないというか……」

「そりゃそうじゃろ、超聖水はなんてことないただの水じゃ」

「「ええ――――っ!?」」

 

少年少女は顔を見合わせて大声をあげた。

 

「オラたちのこと騙したのか!?」

「ひっどい!」

「にゃっはっはっは!」

 

高らかな笑いがカリン塔の頂上に響く。

けれど、そこに嫌みなニュアンスはなく、寧ろ朗らかに聞こえた。

 

「別に騙してはおらん!お主の力はもうすでに何倍にもなっておる!」

「どういうこと?」

「え……あっ……!」

「悟空は気が付いたようじゃな。カリン塔を上ること、このわしからツボを奪うこと……

 全てが力を倍増するための修行だったのじゃよ」

 

そういうと、つい、と杖で柱の下を指さす。

 

「下界に降りて修行の成果を試してくるがいい」

 

塔のはるか下、もう見えなくなってしまった地上の方で、何かがどんっと鈍く大きな音を立てた。

 

 

 

 ~・~・~・~・~

 

 

悟空が超聖水を手に入れる少し前、桃白白は柱に乗って聖地カリンを目指していた。

理由は単純、フーイに『聖地カリンでの用事が終わったら一報入れるように』と言いつけていたにもかかわらず、肝心の連絡先を教え忘れていたからである。

飛行機で向かっても良かったのだが、あたりに着陸できそうな場所がなかったのもあり、近隣において来ていた。

第一、こっちの方がずっと早い。

 

どんっと鈍い音を立て、柱はカリン塔の近くに突き刺さる。

直ぐ近くにいた親子に危うく当たりそうだったものの、桃白白は勿論そんなことは全く気にしていなかった。

ので、子供を抱きかかえ、警戒心丸出しのボラにも、ごく普通の調子で挨拶をした。

 

「グ~~テンタ~~~ク」

「な、何者だお前は!」

「世界一の殺し屋、桃白白!」

 

物騒極まりない格好にお似合いの、物騒極まりない自己紹介である。

その上、口角の片方をくいっと上げたニヒルであくどい笑顔のおまけつき。

これで警戒するなというのは無理だった。実際、ウパの方はやや怯えている。

 

「殺し屋だと……?殺し屋がこの聖地カリンに一体何の用だ」

「ここに二人の子供がきただろう。数日ほど前のはずだ」

「彼らに何をするつもりだ」

「貴様には関係あるまい」

 

桃白白からすれば子供と子供の友人の居場所を尋ねたようなものである。

なのに、どうして見ず知らずの男にその理由を言わなければならないのか?

そういう意味では本当に、ボラには関係の無い話だった。少なくとも桃白白の方ではそう思っている。

 

が、一方でボラにとって桃白白は殺し屋でしかない。

何故ならそう名乗っていたし、そうとしか名乗っていないからだ。

そして、通常、殺し屋が特定の人物に用がある、とすれば考えられるのは一つきりである。

 

「関係ならある。彼らは私の息子の命を救ってくれた。

 このまま黙って立ち去らぬなら、私が相手になるぞ」

 

そういうとボラはウパを離れさせ、槍を構え、桃白白の前に立ちふさがった。

恩人が命を狙われていると分かった以上、義理堅い彼としては当然とるべき行動だった。

しかし、立ちふさがられた方は『なんで?』と思っていた。

 

息子の命を救われたのだから、二人の関係者だという言い分は桃白白にもわからないでもない。

けれど、どうしてもそのことと自分が立ち去らなければ相手になる、ということが一致しなかった。

だがしかし、邪魔建てをするというなら容赦をするいわれも無い。

なので。

 

「ふっふっふ、馬鹿なやつだ。わざわざ死を選ぶとは……」

 

単にボラの啖呵への返答としてこういう風に告げた。

悲しいほど洒落にしかならないのに、洒落にならない殺し合いが始まってしまうその直前。

 

「桃白白~~~!!」

 

少女が天から降ってきた。

 

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