もう一人のサイヤ人が桃白白の弟子になる話   作:麻寿津士

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レッドリボン軍編
其之一 ジングル村のフーイ


さて、意気揚々と武者修行のたびに出たフーイだったが。

 

「さ、さむ〜〜い!」

 

あっという間に迷子になっていた。

 

「せっかくだから聖地カリンってところに行こうと思ってたのになぁ。桃白白のアレを真似したのがいけなかったかなぁ」

 

そうつぶやく彼女のすぐそばには、丸太が一本、地面に突き刺さっている。

あたりをいくら見回しても白、白、白。

一歩踏みしめるたび、くるぶしのあたりまでずっぷりと雪に埋もれる。

遠くに見える山々はノコギリの歯にも似た銀色で鋭く尖っていた。

晴れ渡る空の青色が目に突き刺さる。

冷たい空気の澄んだ匂いが、つんっと鼻の奥を刺激した。

 

「このままだと凍えちゃうよ、どっか建物でも洞窟でも見つけないと……あっ!」

 

こんもり積もった冷たい丘の向こうから、黒い人影がいくつかどすどすと走ってくる。

大声で呼びかけようとしかけて、フーイはキュッと口を結んだ。

近づいた分、段々と姿がはっきりと見え始める。

軍隊らしい格好をした男たち3人は手に手を銃を持ち、殺気立った表情で目をギラつかせていた。

 

「おい!動くなよ!」

 

まだそれなりに距離はあるが、すでにこちらへ銃口を向けている。

 

「こいつが例のガキか」

「大人しくドラゴンボールとレーダーをこっちによこせ!」

「えーっと、おじさん達誰かと勘違いしてない?」

「なんだと?しらばっくれるつもりか?」

「しらばっくれるもなにも、ドラゴンボールって何さ」

 

 ――タァン――

言い切るよりも先に、思いの外軽い音が当たりに響いた。

小さな足先から数センチズレた場所にくっきりと穴が開く。

男は苛ついた様子で、細く白い煙をたなびかせる銃口で少女の額に向けた。

 

「あまり大人を舐めるなよ、次は当てるぞ」

 

その言葉を聞き、彼女はニィっと笑う。

 

「おじさん、今、私を攻撃したの?」

「ああ、そうだ。なんだ、怖くておかしくなったのか?もっと恐ろしい目に会いたくなかったらさっさとドラゴンボールをよこせ!」

「そっか、じゃあ手加減しないよ」

 

「そういうふうに教わったから」

 

ヒュッと空気を裂く独特の音がした、次の瞬間には数メートル先のもみの木がボキボキと嫌な音を立てて根本のあたりから折れる。

二人の男が自分の仲間の姿が消えたのに気付くのは、ひと呼吸おいてからだった。

少女に蹴られた彼が吹っ飛び、木に当たって幹をへし折ったのだと分かるのは、更に数秒経ってから。

 

その数秒の間に一人は踵落としをくらい雪の中に深く沈み、もう一人は銃を奪われ銃床で横っ面を殴られ、銃口を突きつけられる。

 

「変なことするなよ、おじさん。私、こういうの持つの初めてだから、つい撃っちゃうかも」

「わ、わかった……」

「よーし、じゃあまずはコートを脱いでこっちにちょうだい。

それから、おじさんたちのアジトを教えてよ。これだけいいものを持ってるんだから、まだまだ仲間がいるんだよね?」

「わかったから銃口で背中をつつかないでくれ!言うとおりにするから!」

「あと、ドラゴンボールってやつについて教えてよ」

「……本当に知らないのか?」

「知らなーい」

 

奪い取ったコートを体に巻きつけ、ふるふるとフーイは首を横にふる。

 

「人違いだったのか…」

「いいから早く教えろよー」

「わかったからグリグリ押し当てるな!」

 

道々聞いた話によれば、ドラゴンボールとは伝説の存在らしい。

七つ集めるとどんな願いでも叶うといわれている。

自分達レッドリボン軍が何故それを集めているかはわからないが、恐らく世界征服を願うためではないか、と。

 

「ふーん、悪い奴らなんだね、おじさんたち」

 

そうこうしているうち、周囲の景色に似合わない立派な建物が見えてくる。

巨大なレンガ造りの塔で下半分が出っ張っており、その上に現代的な砲台が備え付けられていた。

一番上は指令室らしき部屋と数メートルはありそうなパラボラアンテナが乗っかっている。

 

「ふっふっふっふっふ、そうだ、おじさんたちは悪い奴らなのさ」

 

急に男は余裕ぶった笑みを浮かべ、フーイの方を振り返った。

 

「どうかした?」

「馬鹿め! ここまでくればマッスルタワーは目と鼻の先!お前みたいなクソガキの弾なんぞあたらんわ!」

 

言うが早いか猛ダッシュで走り出し、塔へ向かって大声をあげる。

しかも、狙いが定まりにくいようにわざわざジグザグに走る念の入れよう。

 

「おーい! 助けてくれ~!」

「ちょっと! あ~、もうしょうがないなぁ」

 

早々に銃を撃つことを諦め、槍のように持つと思いっきり男に向かって投げつける。

ゴギっと嫌な音がして雪の中に姿が消えた。

建物の中からはわらわらと兵隊たちがあふれるように出てくる。

 

「ホワイト将軍! 兵がガキに襲われました!例のこどもでしょうか!?」

「にゃにお――!?」

 

一番上の階、大きく開けられたはめごろしの窓から、セーター姿の男が下を覗く。

 

「バカめ! わざわざ死にに来たか! やれっ!! ぶち殺せいっ!!」

 

パパパパパと軽快な音を立てて数えきれないほどの弾丸が飛んでくる。

フーイは雪を巻き上げ姿を隠し、コートを脱ぎ捨ておとりにした。

その間に背を低くし、塔のすぐそばまで一気に距離を縮める。

リスのように壁を駆けあがると、砲台に手をかけた。

 

「仕留めたぞ!」

「違う!おとりだ!」

「どこにいった!?」

「あそこだ!」

「ニヒッ」

「あ、あわわわ……」

 

見よう見まねで撃たれた砲弾は直撃こそしないものの、無差別に発射されるだけで階下の人間をあっという間に無力化する。

 

「さてと」

 

力任せに土台を捻じ曲げ、頂上の部屋を狙う。

しかし、至近距離から撃たれたにもかかわらず、レンガはおろか窓ガラスすらびくともしない。

 

「ちぇっ」

 

つまらなそうに舌打ちをすると、じっと見上げる。

ホワイト将軍はにやりと余裕たっぷりに笑い、マイクを手に取った。

 

「聞こえるか小僧!! わがマッスルタワーにようこそ!!がはは!

 ところで小僧!! 何故 この塔に乗り込んできたのだ!?」

 

「武者修行」

 

にやりと笑い返し、フーイはカメラごしにホワイト将軍を指さす。

その仕草はどどん波によく似ていた。

 

 

 

丁度その頃、一人の少年が村長を助け出そうと一軒の家を飛び出した。

彼の名は孫悟空。亀仙人の弟子、孫悟飯の養子(こども)であり、自身も亀仙人に教えを受けている。

そして、フーイと同じ星からきた同じ種族であることを、今はまだ、誰も知らない。

 

 

 




今後は、原作の流れとしては、フーイと悟空のダブル主人公っぽい感じになる予定です。
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