もう一人のサイヤ人が桃白白の弟子になる話   作:麻寿津士

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其之二 いどめ!マッスルタワー

「あれれ? どうなってんだ?」

 

悟空がマッスルタワーについた時には、既に大勢の人が辺りに倒れていた。

壊された砲台からは黒い煙がもくもく上り、正門らしき扉も開きっぱなしになっている。

建物の上の方からは重たい打撃音が聞こえてくる。

と、突然爆発音が辺りに轟き、壁に大きな穴が開いた。

 

「だれか、オラより先に戦ってんだな、よ〜し!」

 

如意棒を伸ばして高跳び棒のようにつかい、穴から建物の中へ滑り込む。

目の前に立ちはだかる大男に怯む様子もなく、悟空は正面から怒鳴りつけた。

 

「やいレッドリボン軍!村長さんを返せ!」

 

最上階ではホワイト将軍と、もう一人忍者のような格好をした男が監視カメラを眺めている。

予想もしなかった乱入者に二人は首を傾げた。

 

「うん?なんだ、あの小僧」

「さっきのガキの仲間でござろう。村長がどうとか言っておりますが」

「村の誰かにでも頼まれたんだな。がははは、仲間が死んだとも知らずにのこのこやってきたのか」

 

ぐいっとマイクを握りホワイト将軍は勝ち誇った声で笑う。

 

「おい小僧!村長ならいちばん上の階にいるぞ!

 お前はここまであがってこれるかな!?がっはっはっは!」

「よおし!いってやら!」

「メタリック軍曹!そいつも殺ってしまえ!さっきのガキと同じようにな!」

 

そう言われると大男は片足を一歩後ろへ引き、ぎゅっと拳を握り締める。

応じる形で悟空も素早く構えをとった。

戦いが始まる直前の一呼吸分にも満たない静寂が張り詰める。

 

「死ね!」

 

子供など簡単に握りつぶせそうな手が、車のような猛スピードで振り下ろされた。

瞬間。

 

「死ぬのはお前だ!どどん波――!」

 

部屋の端、太いパイプの影から鋭い閃光が正確に男のこめかみを射抜く。

そして、()()()()()()()()()

 

「えっ!?」

「へっ!?」

 

どこをどう確認しても、首の根元から先はきれいさっぱり無くなっていた。

攻撃の途中の、不自然な恰好のまま動きを止め、ピクリともしない。

光線が飛んできた方を見ると、悟空と同じぐらいの歳の子供が突っ立っていた。

真緑色の胴着に鶴の文字が特徴的な彼女は、ぽかんと口を開けている。

 

「い、今のお前がやったんか?えげつないことするなぁ……」

「ちがっ!爆発なんて、どどん波はそんな技じゃない!」

 

必死に首をぶんぶん横に振っていたが、はっとして悟空の方を指さす。

 

「後ろ!」

「え……わたっ!!」

 

咄嗟に横に飛びのくと、先ほどまで悟空がいたあたりを拳がかすめた。

それは腕の長さをこえて、地面にごとりと落下する。

と、今度は反対側の手が大きく開かれ、彼を叩き潰そうと勢いよく降ってきた。

なんとか避けると後ろに引いて、距離をとる。

大男の首なし死体が――今は片手もないが――こちらへ向かって襲い掛かってくる。

 

「手がとれた!?」

「どど……どうなってんの!?これ……!」

 

「がっはっは!メタリック軍曹はロボットだったのだ!」

 

頭上のスピーカーから再び、ホワイト将軍の高らかな声する。

 

「さあ殺れっ!ぶっ殺せいっ!!」

「よおーし!」

 

応えるように悟空が張り切って構えをとる。

が。

 

「あ……あれ?……」

 

切なげな機械音をか細く鳴らし、勇ましく足を踏み込んだ体勢のまま、メタリック軍曹は再び停止した。

 

「また動かなくなっちゃった……」

「……電池切れかな」

「電池ってなんだ?」

「知らないの?」

 

子供たちはお互いに顔を見合わせる。

しげしげと眺め合って、先に口を開いたのは少女の方だった。

 

「そういや、お前だれ?」

「オラか?オラは孫悟空!お前は?」

「私はフーイ」

「フーイも村長さんを助けに来たんか?」

「違う違う!ここの連中に襲われたから、修行ついでに潰してるんだ」

「じゃあ下で倒れてたやつらも、みんなフーイが倒したんか」

「まあな。けど悟空も結構強そうじゃん?」

「オラ、亀仙人のじっちゃんのところで修業したからな!」

「亀仙人?私の師匠の一人は鶴仙人っていうんだけど、なんか似てね?」

「もしかしたらじっちゃんの弟とかか?」

「えー、多分違うと思うけど、だって鶴仙人のじっちゃんの弟はさ……」

 

「お前ら!いつまで仲良くしゃべってるんだ!!」

 

スピーカーからしびれを切らしたのか怒声が飛ぶ。

はっと慌てて階段を上り始めた二人を見送り、指令室のイスに深く腰掛け、緊張感のない奴らめとブツブツ呟いた。

その隣でムラサキ曹長が深く頷いてみせる。

 

「全くでござる」

「お前もだ!さっさといって4階をまもれいっ!!」

 

ケツを叩かれ急いで階段を駆け降りる忍者の背中に、ホワイト将軍は深い深いため息をついた。

 

「ねぇ、悟空。ここはキョードーセンセンと行こうじゃん」

「なんだ?そのキョードーセンセンって」

 

背の高い木々に、土と草のかおり。

和風の小屋は風情のある佇まいで、その奥には池まで設けられていた。

頭上に青い空ではなく、白い、照明の取り付けられた天井があることだけが、ここが室内だと語る。

4階につくと、そこには外と見間違うほど立派な室内庭園が広がっていた。

 

「協力して戦うってこと」

「わかった」

 

ふっと左右に分かれて飛ぶ。

先ほどまで悟空とフーイがいたあたりには何本かの苦無が刺さっていた。

反応速度も、避ける動作も、二人はほとんど同時であまり差がない。

フーイはそのことに満足そうに微笑む。

 

「じゃ、決まり」

 

試合開始の合図の代わり、ムラサキ曹長の通りの良い笑い声が響き渡った。

 

 

 

 

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