もう一人のサイヤ人が桃白白の弟子になる話   作:麻寿津士

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前半部分を大幅に書き直しました。


其之六 フーイと鶴仙人

鶴仙人はよくフーイの名前を呼ぶ。

 

「フーイ!どこに行くつもりじゃ!」

「フーイ!何度も言っとるだろうが!わしのことはキチンと、鶴仙人様と呼ばんか!」

「フーイ!腕が下がっとるぞ!なんのための修行か考えい!」

「フーイ!ここの部屋のものには勝手に触るなと言っとるだろうが!」

「おいこら!フーイ!!」

 

それは大抵怒っている声だが、時に焦りのようなものも感じられる。

が、そういうことに限って、フーイには自分が怒られている理由がピンとこない。

 

だから、キョトンと首を傾げて、サングラスの奥の瞳を真っ直ぐに見つめる。

すると鶴仙人の意地の悪そうな唇がますますひしゃげ、次の瞬間には怒涛のようなお説教が始まる。

その一番長いお説教には、大抵『危ないから』という言葉が嫌というほど含まれていた。

 

危ないから裏の山の奥まで行くな。

危ないから桃白白の武器庫には入るな。

危ないからやたらと高いところに登るな。

危ないから一人で山を降りるな。

危ないから、危ないから、危ないから。

 

けれどいつも、フーイには肝心の『危ないから』というのがよくわからない。

 

おそらく戦闘民族としての本能によるものなのだろうが、彼女には危険を避けるという考え方がそもそもなかった。

大体、この星にフーイの脅威となりうるものなどあまりない。

 

「裏の山だって、そこにじいちゃんの言ってたピッコロ大魔王ってのが出てくるなら話は別だけどさ」

 

と、いつも心の中でつぶやく。

 

「精々動物ぐらいのもんじゃんか」

 

明け方、まだか細く薄暗い光の中で、3m程はありそうな真っ黒い熊が2本の足で立ち上がる。

縄張りを侵されて気が立っているのだろうか。荒々しく鼻を鳴らし、四つん這いに戻ると勢いよく右の手を振り上げる。

と、フーイはその手を掴んで思いっきり空の彼方へぶん投げた。

吹っ飛んでいく姿はさながらホームランといったところか。

 

「こんなの全然、危なくないよ」

 

ふうっと息を吐いて、また大声で自分を呼ぶのが聞こえ、仕方なく山を下りる。

けれど、フーイとしても別に鶴仙人の事が嫌いなわけではないし、うざったく思う気持ちも、それほどはない。

そもそもの前提として、フーイは親代わりでもある鶴仙人のことが、大好きだったし、心配されることは嬉しくもあった。

どれほど強かろうが関係なく大事に扱われることは、こそばゆい気恥ずかしさと、愛されている実感に近い感情を抱かせる。

 

ただ、大丈夫だよと言ってやりたい気持ちもあった。

そんなに一生懸命心配しなくても、フーイとしてはどんな怪我も負うつもりはなかったし、彼の目の前からいなくなるつもりも毛頭ない。

酷い矛盾にはなるが、自覚がなくとも、この武者修行の旅でフーイは鶴仙人を安心させたかった。

 

大丈夫だといえるだけの根拠が欲しかった。

そうすればきっと、もうあんな、自分がまるで死んでしまうかのような顔はさせずに済むと思ったのだ。

 

 

フーイの話を聞いて、悟空は何処かうらやましそうに感心し、ブルマは話半分に聞き流し、亀仙人はとっても微妙な顔をした。

 

そもそも亀仙人がフーイに話をねだったのは、何かしら鶴仙人の弱みが聞き出せないか、という目論見があったからだ。

しかし、話に出てくるかつてのライバルは、悪の道にありながら、どこかまともに生活を送っている。

厭味ったらしく口うるさいが、根は真面目で心配性なその姿は、記憶にある若い頃と全く変わっていない。

ムカつくような安心するような、なんとなく座りの悪い感情に包まれる。

 

「鶴仙人のじっちゃんはカホゴなんだなぁ」

「カホゴなんだよ」

「過保護なのねぇ~」

 

余り過保護過保護言わないでほしい、と亀仙人は口ひげを引くつかせる。

恥ずかしいのは鶴仙人だけであるはずなのに、どうして自分までいたたまれない気持ちにならなければいけないのか。

大きく咳払いをすると、三人の若者が一斉にこちらを向く。

何を言おうか迷っているうちに、タイミングよく外からまたウミガメが玄関を叩いた。

 

「クリリンさんたちがかえってきましたよ!」

「おーい、悟空~!」

「クリリン!」

 

はしゃいで飛び出す小さな背中に続いて、三人もどやどやと外に出る。

亀仙人はちらりと盗み見て、フーイの胴着に書かれた『鶴』の一文字を確認した。

どうしてそうしたのか、本人にもわからない。

その拍子に背中に書かれた『KILL YOU!(お前を殺す)』の文言が目に入り、ほんの少しだけ心臓が飛び跳ね、隙間風のような息を漏らした。

 

悟空との再会を喜ぶクリリンとランチは、けれど突然の彼の来訪と見知らぬ少女に驚いてもいた。

これこれこういうわけでとブルマが説明すると、ランチはあらまあと声をあげ、クリリンは納得した様子で頷き、そういえばと言葉をつづけた。

 

「そのあたりの海だったらついでに海賊のお宝も見つかったりして」

「かいぞく?」

「の」

「お宝!?」

 

クリリンの言葉に悟空たちは言葉を分け合って驚く。

 

「宝があるらしいのってそのあたりの海でしたよね」

「そういえばそうじゃな」

 

なんでも亀仙人の話によれば、昔、一帯の海を荒らしまわった海賊がいて、その宝がどこかに隠されているらしい。

その一帯の海、というのがどうやらドラゴンボールが沈んでいるあたりのことなのだという。

 

「う~~ん、ロマンね!素敵!宝物を探すのもいいわね!」

「面白そうだな~~、オレもついていこうかな」

「ほんとか!?危なくても知らねえぞ」

 

一応心配する言葉を口にしてはいるものの、クリリンがついてくると聞いて悟空は心底嬉しそうにする。

 

「武天老師様、行ってもよろしいですか?」

「うむ、よかろう。悟空を手伝ってやれ」

 

こうしてクリリンを仲間に加え、潜水艇は出発する。

手を振り見送る亀仙人、ウミガメ、ランチ。

しかし、三人には黒い――いや、赤い影が確かに忍び寄っていた。

 

 

 

 

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