25歳、アラサーまでカウントダウン寸前だった俺がウマ娘になって三冠を目指す件   作:鳴神ハルキ

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お待たせしました!!
いやーほんとね遅くなっちゃってすみませんでした。大雨三連休の間に引きこもってなんとか仕上げました。

いやほんと、色々無理して仕上げたのでガバいところも多いと思いますが楽しんでくれると嬉しいです。あ、怪獣8号の単行本やっと買えました。身長とかのデータ助かる。


6話

 

「俺はお前たち全員を倒すため、もう一度この家を出る!!」

 

 

 

見事なまでの宣戦布告。手放しで拍手の一つも起こらないことが不思議なくらいそれは堂々とした声明であった。

観る者は目を見開き、口を開いていた者は沈黙を強制された。

 

この一言は礼乃のこれまでの人生全てを天秤にかけ放たれた、まさしく一生に一度の咆哮であった。

 

とはいえ「はいそうですか」と物事が進むほどこの世の中も簡単ではない。

まずは最初の関門にして最大の難関である彼女(いもうと)達による猛反対が波のように襲い掛かる。放たれた四頭の獣は即座に礼乃の周りを取り囲むと両手両足を拘束しあっという間に捕縛してしまった。

 

「お、お前達なにを!? むーっ!むーっ!?」

「主治医!!」

「はい、主治医です」

「今すぐお兄様を緊急治療室に!重度の意識障害を患っておりますの!!」

「わたしはウマ娘の専門医なのですが…」

「緊急時にウマもヒトもひったくれねえですの!!」

「とりあえずお兄さんを診てください!一刻を争う事態なんです!」

「兄さんはきっと家出の間に変なものを食べたか怪しい宗教団体に洗脳されてしまったんです!!」

「おにいを…兄を元の優しかった兄に戻してあげてくださいっ…」

 

メジロパーマーの頬に流れる一筋の雫が主治医と呼ばれた中年男性の心を打つ。

 

「お嬢様方のお頼みとあればこの主治医、最善を尽くさせていただきます」

 

礼乃はそのまま従姉妹に抱えられ医務室へと攫われていった。

 

ええっと………

 

「お客人」

「うっす」

理由(わけ)を聞いてもいいかな?」

 

苦笑いと気恥ずかしさの入り混じった表情の雄一さん。そんなわけで本人不在のまま舞台は進んでしまった。コントか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――とまあ、大体そんな感じです」

 

4人のウマ娘と一人の兄が部屋を去ってから食堂は大分静かになってしまった。

俺が理由を説明する間、外から鳥のさえずる音が聞こえるほど部屋の中はシンとしていた。こんな静かな部屋の中で話をしている自分の方がおかしくなってしまったのではないかと錯覚するくらい重苦しい雰囲気に包まれていた。

 

そんな静寂も事情説明が一区切りついた段階で終わりを迎える。

随分と長く感じた静寂は雄一さんが使用人に片づけを命じたことで慌ただしさを取り戻す。カチャカチャと食器が片付けられティーカップに新たな茶が注がれていく、そんな生活音ですら今の俺にとってはありがたく感じるほどであった。

 

そうしてようやくメジロ家の重鎮たちが口を開く。

 

「そうか、礼乃がそんなことを…」

「礼乃さんには酷な選択を押し付けてしまっていたようですね」

「ふふ、礼乃君があんなに声を荒げたの私初めて見ました」

 

その言葉に俺はあっけらかんとしてしまった。想像していた反応とはまるで反対の喜色の混じる言葉の数々におもわず聞き返してしまうほどだった。

 

「あ、あの。怒らないんですか…?」

 

俺はてっきり猛反対されるものだとばかり思っていた。正直名家なんてものは面子とプライドが大事で、もっと頭ごなしに否定されるものだと考えていた。

いや、この家の人たちと少なからず交流してそういう人柄でないとは分かっていたのだが彼らのあまりに理性的な態度には些かばかり拍子抜けしてしまった。

 

「確かに突然なことで驚きましたがトレーナーとしての誇りと心情を優先したい、という気持ちはわかるつもりです。私も担当のトレーナーさんには何度も救ってもらった口ですから」

 

そう言ってメジロアルダンは自身の脚をそっと撫でる。

そういえばメジロアルダンは素晴らしい才能を持つウマ娘であると同時にその脚は『硝子の脚』とまで呼ばれる酷く脆いものであったと聞いたことがある。幾度の怪我を乗り越えた経歴の裏にはそうしたトレーナーとウマ娘の秘められたドラマがあったのかもしれない。

 

「トレーナーにはトレーナーのウマ娘にはウマ娘の矜持というものがあります。それらを互いが完全に理解することは困難でしょう。私も現役時代トレーナーの考えを全部理解できていたとは思っていませんもの」

 

ファルコンさんの視線が雄一さんの方を向く。

 

「だからといって理解が無いわけでもありません。そうですねあなた?」

「えっ?」

「ああ、実はわたしは入り婿でね。当時はファルコンの専属の担当トレーナーを任されていたんだ。だからまあ、礼乃の言い分には理解がある方だと思ってくれていいよ」

 

この二人そういう関係だったの!?

だが言われてみれば確かに歳はそう離れていなさそうだ。若手の頃に担当しそのままゴールイン、というのもあながち珍しい話ではないしな。

 

それにしてもトレーナーとして一流、当主としても一流、ダンディな顔立ちと滲みでる仕事のできる大人の男感。礼乃の顔面偏差値を見るに若い頃も相当な美形だったのだろう。

なんだこの完璧超人。

俺なんて胸張れるところがガタイよかったこととルドルフと知り合いってくらいしかねえぞこの野郎。

 

「わたしも当時は若かったものだ。ファルコンを勝たせるためとはいえ夜通しトレーニングメニューを考えたりしていてね」

「そのままトレーナー室で居眠りして、結局トレーニングの時間になっても顔を出さなかったこと。今でも覚えていますからね?」

「その後毛布を掛けてくれたのも君だろう? わたしも覚えているとも」

「はぁ…まったくあなたはそういう事をさらりと言う…」

 

過去のことを笑いながら語る二人の姿は、なんというか凄くお似合いに見えた。アルダンもニコニコしながら無糖の紅茶を流し込んでいる。

同時にお似合いという言葉以上に二人の間には強い絆が垣間見える。トレーナーとウマ娘、よほど多くの苦難を共に乗り越えてきたのだろう。

 

…俺もプロトレーナーになれていたら同じようにルドルフと絆を育めていただろうか?

 

よぎった考えを頭をふって振り払う。

もしもを考えている暇があるなら今はこの状況に集中しなければと気を貼り直す。

 

「理解があるなら猶のことお願いします。どうかアイツに…礼乃に夢を追わせてやってください」

 

シルクのクロスを握りしめ、限界まで頭を下げる。

俺なんかの頭を下げたところでどうにかなる問題ではないとわかってはいるが、それでもあいつのために何かをしてやりたいとそんな思いで下げた頭だった。

 

「…ふむ」

「あらあら」

「まあまあ」

 

…なんだ?

雄一さんからはなにかを見定めるような視線を、女性陣からは生暖かい視線を感じる。この背筋がぞわっとする感じ。なにかとんでもない思い違いをされているのではないだろうか。

 

「あ、あのっ。なんか誤解が」

「しかし困ったものだ。彼女たちには物心がついた時から『担当トレーナーは礼乃だ』と伝えてきていたからね。今さらそれを変えろというのも酷な話だろう」

「…え、あ、まあそうですね」

「礼乃は四人のウマ娘を担当しても大事ないと判断した優秀なトレーナーの卵だ。今はまだ未熟とはいえ実際に現場で働けば我々が思う以上の成果を上げてくれると確信している。そんな人材を簡単に手放すのはメジロ家の、ひいてはウマ娘業界全体の損失になるとは思わないかい?」

「そ、それは…」

 

礼乃は既に四人のウマ娘のトレーニングメニューまで作り上げている恐ろしい逸材だ。

 

彼はメジロの全てを学んだから家を出てきた、と言っていた。

そんな彼の才能をみすみす野に放つというのはいちトレーナーを目指す者として確かに『惜しい』と思う部分が無いわけじゃない。

もし彼が本当にメジロのウマ娘四人を率いてチームでも結成していればどれほどの影響を及ぼしたのか。気になってしまうのも仕方が無いだろう。

 

「確かにそうですわね。礼乃君はまだアマチュアとはいえ、既にその腕はプロと比較しても遜色ありません。メジロ家始まって以来の鬼才と言えるでしょうね」

「礼乃さん自身、それを理解していました。ただそれでも自分は彼女達と釣り合わないと思っていたようですが」

「私たちは日本のウマ娘業界全体を見ている。メジロ家だけが栄華を極めても仕方がないということを身をもって知っているからね」

 

それは現メジロ家を引っ張っている者達からの言葉。

 

「特にいずれメジロを継ぐ者には大局的な視点が必要だ。それは理解していただけるだろうか」

 

それらが重くのしかかる。

 

日本のウマ娘業界。

そんなこと今の今まで考えたこともなかった。

 

俺はただ礼乃の手伝いをしたいというだけの考えでここまでやってきた。

しかし、目の前の彼らはあまりに広くを見ている。

彼らに比べればあまりにちっぽけで、あまりに無責任。

俺自身、自分はいまだ現実の見えていない子供のままだったのだと突きつけられるようだ。

 

「礼乃と彼女達四人が力を合わせればその影響力はかのオグリキャップやシンボリルドルフにも負けないものになると私は考えているよ」

「ッ!!」

 

ルドルフの名前に下唇を噛みしめた。

 

あの輝きを前に心を砕かれた俺にとってそれは超新星爆発にも匹敵しうる光景の再来に他ならない。それほど深くあの輝きは心に刻み込まれている。

どうしたって認めてしまうしかない程に。

 

「そのためにも礼乃の力は必要不可欠だ。それがメジロ家当主としての結論だ」

 

俺はもう、諦める(認める)ことしかできないのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――も、でも、それでもアイツに夢を諦めてほしくないんです…」

 

絞り出した言葉はやはり小さなものであった。

だがそれが琴線に触れたのか雄一さんは聞き返してくる。

 

「それは、何故? 君からすればたった数日の付き合い、どうしてそれほど礼乃に肩入れしたがる?」

「それは俺が礼乃に沢山助けられてるからで…」

「違う。君は自らの意志でそれを選択している。例え礼乃が恩人ではなかったとしても君はそうしてあの子の味方をしただろう、違うかい?」

 

そう、かもしれない。

 

「君が礼乃に肩入れしたい理由が恩義以外になにかあるはずだ。わたしはそれが知りたい」

 

全てを見透かすような雄一さんの瞳。

一流トレーナーはウマ娘の心まで見通すともいわれる。それがいま俺に向かってむけられている。

 

見透かされるような瞳に同調するように自分の心の中を初めて覗き見る。

俺が礼乃の味方を『する』理由。

いいや『したい』理由…か。

 

「……………………夢」

「…夢?」

「そう。それだけが俺が俺である理由だから」

 

ウマ娘となった俺と元の俺を繋ぐ三つの篝火。

 

一つは幼き頃ルドルフと交わした約束。一度は諦めてしまったが、もう一度彼女の隣に並び立ちたいと誓った最も強い願い。

 

もう一つはプロトレーナーへの憧れ。物心ついた頃よりあったプロトレーナーへの憧れは今でも失ってはいない。憧れ続けた夢への最も長き想い。

 

それら二つと同じくらい大きな最後の一つ。それが礼乃への感謝だ。

腐っていた俺に檄を飛ばし、燻っていた俺の心に今一度火を灯してくれた。俺を立ちなおさせてくれた彼への最も純粋な感謝の気持ち。

 

それもこれも彼の夢があまりに眩しかったからだ。彼の語る夢を夢想すると体の奥からワクワクが止まらなくなり、その高揚感はガキだった頃を彷彿とさせる。ああ…そうか、要するに俺は。

 

「俺はあいつの夢のファンなんです」

 

期待も高揚も勝手な思い込み。

だけど、だからこそ俺はあいつの太陽のような夢を肯定し続けたい、それだけの簡単なことだった。

 

「礼乃の夢は何もかもをなくした俺に道を指し示してくれた。それくらいあいつの夢は俺にとって価値あるものなんです」

 

「だから応援したいし、力になりたい」

 

「これが俺の理由です」

 

それがきっと俺の夢にも繋がる道だと信じて。

あの気高き皇帝様の隣に立つなら俺はまず自分自身に胸を張れる男にならなきゃいけない、そんな気がするんだ。

 

俺の言葉を機に今一度食堂がシンと静まり返る。

もはや和気あいあいと昼食を囲んでいたのが遠い昔のようだ。

食事は片され、あの光景の痕跡は漂う紅茶の香りにしか残っていない。

 

 

 

コトンとカップとカップ置きのぶつかる音がした。

 

 

「ふぅ…」

 

「先ほども言ったようにウマ娘業界の中で私たちメジロ家だけが輝いたところでは意味がない」

 

「夜空の輝きは一等星だけで完成するものではない。すべてのウマ娘たちの努力と、汗と、涙の結晶。それらが集まることではじめて、あの満天の輝きが生まれるのだ」

 

「レースも、ステージも一人でできるものではないからね」

 

「"すべてのウマ娘達に光を"」

 

「星々に負けない輝きを作り出すにはメジロ家だけでは力不足。どんな人材であっても遊ばせておくわけにはいかない、そこだけは変わらない」

 

 

 

 

「だから、そうだね」

 

「礼乃にはメジロの外で(スター)を生み出してもらうことにするよ」

 

 

 

 

 

 

…………………

 

 

 

 

 

 

「ええっと……」

「つまり、礼乃は自分の手で育てたウマ娘でメジロのウマ娘に勝ちたいというのだろう?」 

 

「なら育ててみればいい。その結果メジロが敗北を喫しようとそれ以上のスターの誕生はむしろ望むところだ」

 

「まあ無論、負けるつもりなど毛頭ないがね」

 

さらりと、しかし今までのどんな言葉よりも重く言い切った雄一さんの御姿は不覚にもどきりとしてしまった。

 

これがメジロ家当主。

ウマ娘への惜しみない愛とまっすぐな誠実さ。その芯の強さはたしかに礼乃へと受け継がれていることを垣間見えた。

 

「ふふ、叔父さんも粋なことを思いつきますね」

「そうだろう?トレーナー足るものあらゆる事象からヒントを得てウマ娘のためのトレーニングメニューをひねり出さなければいけないんだ。頭の柔らかさはお墨付きさ」

「…現役時代、たまに頓珍漢なトレーニングがあったのはそういうことだったのね。流れるそうめんと並走しながら食べるトレーニングに意味があったことを今知ったわ…」

「あれは流れるそうめんを他のウマ娘に見立てて観察力を強化すると同時に走力練習と食事を一度にこなせる最高効率を誇るトレーニングだったんだが…知らないで練習してたのか?」

「わかりません!」

 

わいわいがやがや。

 

つ、つまり!?

 

「礼乃の夢のこと認めてくれるんですね!」

「いいんじゃないかしら。応援しますよ」

「えぇ。もとより私達には反対するつもりもありませんし」

 

ええっ!?じゃあさっきまでのあの厳かな反対ムードはなんだったの!?

 

「礼乃の目指すものがウマ娘にとって不利益とならないと判断しただけさ。となれば、愛する息子の夢くらい応援してやるのが親心というものだよ」

「で、でもさっき『遊ばせておくつもりはない』とか言ってたのは?」

「礼乃にはぜひ有力なメジロ家の対抗バを育て上げてほしいからね、その意味で遊ばせておくつもりはないということさ」

 

その顔は先ほどまでの当主としての威厳が鳴りを潜めた一人の茶目っ気溢れる父親としての顔だった。

 

これはつまりそういう事でいいんだよな!?

 

「ぃい、よっしゃぁぁぁぁぁああ!!!」

 

思わず飛び跳ねてしまうほどの喜気に身を任せ、3メートルほど跳躍した俺だった。あ、天井届いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…礼乃も良いパートナーを見つけたみたいだな」

「えぇ。あの子のためにあんなに真剣になってくれる娘が隣にいてくれるならきっと大丈夫よ」

「あの子は強くなるぞ。なにかはわからんが途方もない凄みを感じる」

「…それは当主としての勘?」

「いいや、君と駆け抜けた一人のトレーナーとしての勘さ」

「……もうっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「納得できませんっ!!」

 

俺達は帰ってきたウマ娘に猛反対を受けていた。

大人同士がどれだけ弁舌を交わし合おうと当事者である彼女たちに反対されればそれは意味のない井戸端会議みたいなもんだった。

 

まあ、うん。そんな気はしてた。

 

「あたし達はずっと兄さんとトレーニングを積んできました。今さら別のトレーナーをつけるなんて考えられません!」

「う、う~ん。そうはいってもだねドーベル君」

「もういいです、叔父様は黙っていてください!」

「しゅん……」

 

格好良く「わたしに任せてくれたまえ(キラッ)」と格好つけていた雄一さんは開始早々メジロドーベルに一蹴されてしまった。どうやらこの御方ウマ娘という存在に色んな意味で弱いらしい。

 

「ま、まあ落ち込まないでくださいよ。格好良かったですから」

「やっぱり君うちの子にならない?お小遣い弾むよ?」

「いやです」

 

社交辞令で一声かけたら怪しい勧誘をされた。やっぱりこのおっさんただのウマ娘駄々甘野郎だ。

 

「そうはいってもねぇ、私達はもう賛成派だし」

「私もこの人が決めたことに異存はありません」

 

とはいえこちらには心強い大人勢がまだ二人もいる。

ファルコンさんにアルダン。経験も発言力も格上に位置する二人によって四人のウマ娘は言葉の殴り合いで打ちのめされていく。

 

なんだか少しかわいそうにも見えてくる光景を俺は礼乃と紅茶を啜りながら遠目に見ている。

 

「ずずっ、お前の母ちゃんこええな」

「母さんはあれで父さんと結婚するために当時のメジロ家に喧嘩吹っ掛けたらしいですからね。今はウマ娘用の化粧品会社経営してるんですけど、会議では相当厳しいらしいです」

「つくづくお前の両親はバケモンだらけだな…」

「俺はあの二人の血が流れているのか偶に心配になりますけどね」

 

そういう礼乃の顔は少し暗くなっているように見えた。

 

片や元プロトレーナーで色々な意味で大きい器を持っている雄一さんに、一流のウマ娘で弁舌にも長けているファルコンさん。

感情を表に出すのが苦手らしい礼乃とは裏腹に社交的な性質を持つ二人と比べて落ち込んでしまうことも多々あったのだろう。

 

「大きすぎる背中か…わかるよその気持ち」

「そっか。先輩もあのシンボリルドルフを追ってますもんね」

「おう。小さい頃からすげえ奴だとは思ってたけどまさかあんなに大きくなるとは思ってもなかったぜ。それに俺より七つも歳下ときたもんだ、プライドなんて当の昔にぶっ壊されちまったよ」

 

腰掛に背中を当てて大きく背伸びの姿勢を取る。見上げた視線の先には窓の向こうの太陽よりも遠そうなルドルフの背中が見える。

 

「なにをすればあいつの隣に立てるかなんてまだ皆目見当もつかねえ。プロトレーナーになれたとしてもはたして隣に立てるかどうか」

「あの稀代の【皇帝】ですからね、取り巻く環境も一筋縄ではいかないと思います」

「まあな。でもまあ」

 

背伸びしたこぶしを突き上げる。

 

「決めたからには絶対たどり着く。あいつの隣は俺が予約済みだからな」

「先輩…」

 

羨望の眼差しが向けられる。

かと思いきや礼乃の視線がみるみる細くなっていく。

 

「…なんか昔フラれた女のこと今でも引きずっているようにも聴こえますね。ちょっと気持ち悪いっス」

「お前ェ!!年上に対する礼儀の取り方ってもんを教えてやらぁ!」

「上等ですよかかってこいやぁ!」

 

ガチャガチャガチャ。

 

ドッタンバッタン。

 

「もがが、ほいつ~!」

「ぐぎぎ、へんはいこそ~!」

 

とっつかみ合いの喧嘩をする俺達の姿はさぞや滑稽に映ったであろう。いい年した大人の癖に何をしているのかと言われればそれまでだが、それでもこうしてコイツとふざけ合えるのはなんだか楽しい。思えば友達は沢山いたが俺と一緒になってウマ娘のケツ追いかけてるやつとか殆どいなかったからな、そういう意味では同じ趣味の友人経験という意味では俺も礼乃も大した違いはないのかもしれない。

 

「ジトーーーー」

「ジ~~~~~」

「あうあうぅ……」

「むーーーーー」

 

…?

なんだ、視線を感じる。先ほどファルコンさんとアルダンから受けた視線とは違う、どちらかと言えば嫉妬とかそっち方面のチクチクした感触を覚える視線だ。

 

「あらあらまあまあ」

「礼乃さんたら子供のようにはしゃいで、なかなか見られる光景ではありませんね」

「さっきも言っただろう。彼女はきっといいパートナーになる。うん、わたしの勘もそう言っている」

 

それらに加えてまた生暖かい視線がやって来る。

なんだよパートナーって。

 

「ッ、認めない」

 

パートナーという言葉にいの一番に反応したのはやはりというべきかメジロドーベルであった。

ドーベルは俺と礼乃をウマ娘パワーで引き離すと礼乃の体を抱きかかえこう宣言した。

 

「アタシと…レースで勝負!勝ったら兄さんは渡さないから…!」

 

兄妹揃ってなんといい啖呵を切ることだろう。

血のつながりを感じたそんな一声だった。

 

 




俺の財宝か?
欲しけりゃくれてやる。
探せ!!
この世の全てをそこに置いてきた。

ワンピース一気読みしてたら加速度的に時間が過ぎていく。ついでに恋ピは頭おかしい。
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