好きな子がドスケベVtuberだったんだが。 作:杜甫kuresu
今回は新キャラが登場します。後書きにそこそこ大きめのお知らせもあります。
「トオル、随分じゃないか。背も伸びたな」
「え、どちら様…………」
講義終わり。肩を叩き、気さくに声をかけてきた女だが、俺は全く身に覚えがない。横の千尋の視線が痛かった。
さっぱりとしたパンツスタイルにデニムのジャケット、今どきではないし俺の知り合いでも本当に見かけたことのないスタイルだ。女性的と言うよりはさっぱりとしていて、良くも悪くも立ち姿が真っ直ぐとしていて女には似合っていた。
染めてもいなかろうに眩いほどに黒く、腰まで伸びる髪。陽の射した海中のような青い瞳。
顔立ちも千尋と遜色なく整っていて、マジで知らない。誰だ?
「おや、忘れたのか? 私を? 君も中々薄情な男なんだな」
「待ってくれ、いきなり訳アリな風で喋られても困る。お前は誰だ」
「酷い言い草だな、結婚を約束した仲だろう」
千尋。待ってくれ。
その視線は俺に効く。
「灰崎唯だ、本当に忘れたのか? 昔はよく遊んだじゃないか」
「あぁ…………あ~! ユイか、おうおう! いや滅茶苦茶別嬪になって、どうした!?」
平然とスタ○に連れ込まれて、其処から話を始めて。ようやく思い出した。
おったわそんなやつ。と言っても本当に小学生までとかだったが、家族ぐるみの付き合いがあった。
背が高くなってるしおまけに顔立ちも目立って凛々しくなってるんじゃそりゃ分からないだろう。
――まあそれはそれとして、横の千尋がずっとご機嫌斜めだ。何なんだこれ、まずどうして付いてきたんだ?
「そう身なりを褒められると面映いな…………ところでトオル、横の吾妻はどうした? もしやガールフレンドにでもなっていただろうか……?」
「ち、違うけど」
口元を隠してはにかんだかと思えば一転、千尋に不思議そうな顔をする。ユイというやつは昔からどことなく掴めないやつで、それでいて自由に振る舞っている完璧超人と言った様子だった。今も変わりはないらしい。
千尋の何故かバツの悪そうな返事にユイは手を合わせる。
「そうか! それは良かった」
良かった? 何が?
「しかしお前、一年ぐらい俺は見かけもしなかったぞ。何してたんだ?」
「少しアメリカに留学をしていた。何、ネイティブに近づいたとかではないから、そう警戒しないでくれ。結局英語は苦手だ」
とか言ってるがコイツはしれっとTOEICで気持ち悪い点数を叩き出せるタイプだ。昔から出来ないことって言う方が少なかった。
俺と千尋を交互にみやりつつ、何だか気持ち悪い澄ました笑顔で顎に指を当てる。
「ふむ、そういう状態か。トオル、相変わらず不器用という感じのようだな?」
「まあそうかもしれんが…………何で千尋の方を見てるんだ」
「当たり前だろう。何せあのLackLuckのベースボーカル、君のハスキーボイスは何度聞いても飽きないんだ。こうやって話す機会があるのは光栄だよ」
率直な褒め言葉。邪気の感じ取れない爽やかな笑顔。
謎に警戒心を丸出しにしていた千尋も、これだけ揃ったコイツの純粋なオーラを無下には扱えない。俺も実際出来ないし、俗に言う人たらしというやつなんだろうとは思う。
「まあ、もうボーカルはしてないけどね」
「そうか…………いつかまた聞かせて欲しいところでもあるが。改めて吾妻の声を聞かせてもらうと…………やはり似ているな」
「誰に?」
最後に聞いたのは俺だった。
「いや、ネット上の知り合いによく似ているというか。いやはや、しかし彼女は言ってしまうと少し変わっているからな。吾妻の性格によっては、失礼だったかもしれない。すまない」
「ユイ…………その知り合いの名前って何ていうんだ」
「あー…………遠野あけみ、というんだが」
俺と千尋が同時にコーヒーで噎せた。
「何でそれ知ってるの!? えっと、灰崎さんだっけ!? 何者!?」
「やはり君が遠野あけみで間違いなかったか。ボーカルとして聞かせてもらった時からもしやとは思っていたのだ…………私のそちらでの名前は”Ash”、まあ君が本当に彼女だと言うなら知らない仲でもないことになるな」
話についていけなくなってきた。Ashって誰だ。
千尋が手をわきわきとさせている辺り、まあ結構訳知りな関係性になってしまうのは否めないんだろうが。しかし一応配信は全部見てるのに何で俺はピンとこないんだろうな。
それに何でユイの声で分からなかったんだろうか、何だか色々ちぐはぐだ。
「Ash!? えー、リアルでもこんな感じの人だったの!? いやヤバ…………ますます距離感じるわ……」
「そう言わないでくれ、吾妻。私もてっきりもっと破天荒な人だと思っていたから、正直驚いてしまったんだ。謝罪するよ」
穏やかに頭を下げるユイにいやいやいやと肩を持って断りを入れる千尋。
なんか絵面がカオスになってきたな。
「千尋、俺Ashってピンとこないんだけど。お前どこで絡んでたの?」
「あーうんうん、そうだろうね。Ash……じゃなくて灰崎さん」
「ユイで構わないよ。私もチヒロ、と呼ばせて欲しい」
「やだ…………眩しいから……」
「そう言わないでくれ。頼むよ」
何か千尋があからさまに限界オタクとかしている。まあコイツ、今喋った感じでも女オタク受けはかなり良さそうだもんな。
しばらくオタクvsアイドルの何とも壁の感じる会話が続いていたが、俺の質問をハッと思い出したらしい。
咳払いを契機に話が進みだした。
「Ashっていうのはまあ、同業者のVtuber。といってもこっちは企業系ね」
「ほうほう」
「で、編集が凄い神がかってるしセッティングとかも速いから…………いつもお邪魔するだけさせてもらっててこっちのアーカイブにありません……」
「千尋、流石に情けないというか。まあ、申し訳無くないのかそれ」
「うっ」
それは要するにユイに大体のことを丸投げしてただけってことじゃないか。Vtuberとかそれ以前に、一緒に遊ぶ相手に対してどうなのよ。
「まあ彼女は個人の中でもとりわけ色が強い。性質上、他とも絡む私のイメージに配慮をしてくれているのもあるんだ」
「いや違います。普通に違います…………」
「切り抜きに私が使おうとした時もイメージを随分気にしていたじゃないか、私は気にしないよ」
ノリが何となく掴めてきた。
俗に言ううだつの上がらない相手というタイプなのだろう。それが俺の幼馴染というのはびっくりしたし、そもそも遠野が企業系とも絡むことがあるなんてのも知らなかった。
一応細かくチェックはしていたつもりなんだが、意外な見落としもあるものだ。そう言えば”あしゅあけまだ?”ってクソリプあったな。お前受けなんだ……。
「っていうかユイがゲームか。想像付かないな」
「灰崎さ「ユイで頼む」…………ユイはアレだよ、F○aFを笑顔のままプレイしてTASみたいな動きしてる。後で切り抜きのURLあげる」
「ガッチ○ンじゃん」
それはマジでヤバいタイプのゲーム上手いやつじゃねえか。アレだ、FPSで雑談しながらスコア一位かっさらうスーパー実況者の系譜、Vtuberにもやっぱあの手の化け物が隠れてるんだな。
悍ましいものを見る目つきに気がついたのか、ユイがどことなく恥ずかしそうに手を振ってまくしたてる。
「い、いや面白いだろうあのゲーム? 何だかホラーゲームと言うにはアニマトロニクスのデザインがこう、おとぼけてて…………び、びっくりはしてるぞ!? なあチヒロ!?」
「でもユイの反応って「…………おぉ。びっくりしたな、今のは」って抑揚のない声で言って終わりじゃん。偶に笑い混じりだけどどちらにせよ何か、ねえ?」
まあ、何か、あれだな。
『まあそういう訳で、私は女が快楽に押し負けてアレヤコレヤなる同人誌結構好きなんだよね』
『そういうのも嗜めない訳ではないな。そちらの路線に合わせていくなら、私は割と薬物系も嫌いじゃないぞ、後はそうだな…………催眠系も行けるか』
「すげえな、このアーカイブ人生で一番もにょっとした気持ちで視聴してる気がする」
幼馴染と好きな女がエロ同人の好みのトークしながらTitan○all2してるって絵面、まあ中々見ることが出来ないと思う。
せっかくなので家に帰ってからAshのアーカイブから遠野あけみとのコラボ回を漁ってみることにした。なまじっかリアルで知り合いだからこう、出歯亀チックな罪悪感はあるが、気になるのも人情だろう。
というか昔のイメージでも、今日の昼に喋ったイメージでもユイが催眠系の同人誌を読んでる姿が全く想像できない、実際リスナーも”Ashに性欲があるのが微妙にイメージできない”とか”Ashも読むんだ………興奮してきたな”とか反応が鈍い感じがする。
『あけみ、右だ。気が緩んでいたな?』
『相変わらず速いなぁ…………さんきゅー』
というか本当にAshのプレイは別格に上手い、喋りながらやってるとは全く思えない機械のような動作だ。偶に一度も視界に入ってない真後ろの敵を振り向きざまにキルしてるし、お前はア○ロ・レイか?
『というか実際に快楽に押し負けちゃうことってあるよねー。テンション上がっちゃうとついついやりすぎて腰痛めちゃうし』
『私は…………経験がないものだから分からないが。しかし、そうだな…………興味がないとも言えないか』
「企業Vがそんな際どい話して良いのか? 良くないよなこれ多分な?」
リスナーもめっちゃざわついている。いやそりゃそうだろうな、まあユイもラインというか契約の範囲内で喋ってると信じたいものだが。
しかしマジでプレイが上手い。遠野も大概上手いはずなんだが別格というのは誇張じゃない。
喋りながらゲームをするというのは、やってみれば分かるが存外に難しい。パフォーマンスが一段ぐらい落ちると俺は思う、それでこの腕なら元はセミプロと言って差し支えないんじゃないだろうか。
『あぁ、だがどうせならそういった所も含めて恋愛は楽しみたいと思うよ。日本で育つとどうにも、壁を作ってしまうというか…………だが肉体関係も人の営みだ。愛情確認にもなる』
『いかにも童貞がカッコつけて早口で言いそうな文面なのに、AshがR-201をぶっ放しながら言うと説得力あるなぁ』
「ほんとにな」
何だろうな、Ashの鈴のような声で淡々と言われてしまうと、まあそうかもしれないと納得してしまう。
アイツは昔から妙に信頼の出来るやつだった。出来ると言えば出来るし、やってみようと言えば必ずやらせてくる。
何でも出来るから遠いが、遠くてもちゃんとこっちを待っている。
母でもなく、姉でもなく、先輩でもなく。灰崎唯という人物が、いつも少し先で待っていてくれている。それは形容が難しいが、等身大で安心するような温かい感触。
『にしてもAshも物好きだよねぇ、私がリスナーと何喋ってるか知ってる? 咥える時に奥に突っ込みすぎて顎が外れかけた話だよ?』
『ははは! まあ、していたな』
『いや見てたんかい』
「見てたんだな…………相も変わらず表裏が無さそうだ」
つい笑顔がこぼれてしまう。
『ただ、あけみは…………そうだな、言葉が月並になるが優しい人柄だ。誰に迷惑をかけたわけでもないし、ある意味とてもらしく振る舞っている。好ましいと思うし、是非関わりたいと思えるよ、同業者の中でも――――な』
『…………ふ、ふーん。まあ、別に私も全然楽しいから良いけど』
しかしAsh、というかユイはまだ天然ジゴロの癖が残ってるのか。
そりゃあCPされるわけだ。
ふと流れてきた”このままだとまたAsh夢勢が増えるぞ! あけみで横を埋めて誤魔化せ!”というあまりにトチ狂ったコメント。
馬鹿みたいに笑ってしまって、とりあえずコーヒーでも入れて落ち着くことにした。
ドスケベJDVtuberの対義語は私の中では爽やかガッ○マン系Vtuberだったんですよ。これ言って良かったのかな、怒られそうなら教えて下さい。
幼馴染!イケメン!鼻につかない!顔がいい!
何だこの強キャラヒロインは!? でもきっちり猥談するのが当小説のいい所です。
本作品は女性のエロトークの多様性と一般化に配慮しており、今後もあの手この手で猥談をさせる予定です。
ドスケベ要素が足りないっていうのは分かる…………でも露骨すぎるとR-18に島流しされる(失礼)から怖い…………対策を教えてエロい人。
Vtuber要素を待ってる人が居るらしいので、感想で面白いのとかあったらリスナーからのレスポンスの一環として使ってみたりします。いやぁ、正直私Vtuber疎いから……。
何で執筆してるのか自分でも分かんなくなってきました。