好きな子がドスケベVtuberだったんだが。 作:杜甫kuresu
「まあ私の出番が長すぎると作品の本旨が流れかねないのだが。改めて久しぶり、トオル。彼女の手前、喋りにくいことも有っただろうし、そこの話をしよう」
「何もかもが最悪な出だしだな」
簡潔で分かりやすいことが美しいっていうのが、やっぱり今どきなんだろう。俺はたまには、ごちゃごちゃしてていいと思うんだけどなぁ。
はてさて。状況を説明する。俺は自室でユイとスマ○ラをしている。前置くと、Playstati○n派だからユイが持ってきている。
当たり前のようにボコボコで、返事をする余裕があんまりなかった。
「率直に話を進めていくが、どうせトオルはチヒロが君に対してどういう心持ちで接しているのか、またその変化がどういう理由かについて分かってないな?」
「げほっげほっ! 話がはえーよ!」
ゲーム中断。
仕方無く俺は席に付き、ユイはベッドに寝転がる。嫌な意味でリラックスしていて、ついつい体のラインを目で追ってしまう。
幾ら中性的で近寄りがたくとも、慣れたベッドの上でくつろげば女に見えてしまうらしい。
それこそあらぬ視線を持ち込みかねない自分。あんまりいい気分にはなれそうもない。
「トオルが自然体ならもっと私も読みにくかった。君はセミを捕まえようと言えばマジックハンドを持ってくる少年だったからな」
「実はあの時枝切り鋏と迷ったんだよな、親に止められて辞めたけど」
「普通はマジックハンドも止めるべきなのだが…………?」
それは俺の親に聞いてほしいな。まああんまり間違いとか正しいとかで俺を整えようという親ではなかった、一般常識が足りてない気もするがそれはそれ。
「ワンパターンになるのはつまり、不慣れなこと。君達は仲は良さそうだが、手探りな様子が筒抜けだ。それで、どうなんだ? 彼女の考えや意図というものに振り回されているんだろう?」
「だからはえーよ。いや、だがしかし…………違うともいいにくい」
「大方あけっぴろげな君のことだ、あのコミュニケーション方式に慣れてないんだろう。あんな事を言いながら、アプローチはまるで女子中学生だからな」
「もう突っ込まないけど何もかもが早くないか」
アプローチはまるで中学生。
ふと思い出す。俺は生まれてこの方、マトモな恋愛というのはしたことがない。
手を繋ぐ。キスをする。抱く。デートをする。ワードがぽんぽんと浮かんで、浮かんだまま何も起きない感触。そういった手合について、不慣れと言うよりは無関心だった。
「未知に目を輝かせるのはどんな時代も無謀で、そして果敢なことだ。君はそういう子供だったと思っているが、随分ルールや常識に囚われるようになったな」
「分からない人については、傷つけたりってのも絡むだろ。そりゃそうなる」
何故かユイに笑われた。額に手を当て、いつもよりどこか弾みのある調子で。
何となくいい気分ではない。
「トオル。いいことを教えよう」
「何だよ」
「分からないものは分からないまま付き合うことだ。どのみち、Vtuberなどという使い分けの塊を平然とこなす女性を君が分かるわけ無いだろう?」
「全くその通りなんだけどかなりムカつくな!?」
何も反論できないのがとてつもなく悔しいのだが!?
「君は人がどうこうより自分を整理しないとな…………吾妻千尋は君の思うほどオープンな性格ではないし、本意でなくとも君を惑わすような性分だ。理解できないもの、分からないものに相対するなら、それを知るより己を知ることが速い。自分が確かなら、相手がどう出て、どんな結果になっても対処できるからだ」
「は、はぁ」
「実感が湧いていないな?」
そう言ってするりと立ち上がる。
本当に圧倒的な格の差がある相手との行為というのは、大概が一方的に完結する。知らぬ間に、というのが近いか。
今回がそうだった。
ユイはさっきまでベッドに寝転がっていた。
気づけば俺が、転がされている。何が起きたかははっきりとしないが、柔術やそれに通じるような流しを混ぜられていたような気はした。
「例えばこうしてみよう。トオルはどうする?」
「どうする? え、は?」
「君が身構えた時にだけ、都合よく選択が突きつけられるわけではない」
そう言ってベッドに投げ出された俺の両足の間に、ユイの右膝が滑り込んでくる。
背筋がぞわりとして、心拍数が跳ね上がる。
整って美しいという印象だと思ったユイの顔が、どうしようもなく違うものに見えた。何も態度は変えていないのに、言葉が変わっていないのにそう思う。
幼馴染同士だったのに、違うものにすり替えられた。
「お、おい。冗談だろこれ。早くないか?」
「さあ? 私がトオルと離れて幾年、これは燻って破裂するには十分な期間だと思えないか?」
「話が速すぎるんだよ、俺は訳が分からんぞ!」
近づく顔に、何故か緊張した。数十秒前なら笑って返せたユイの顔、今見ていると全然笑えない。
「分からないんじゃない。分かりたくないんだ、トオルはいつも知っているよ。知っているからこそ、現状維持が好きなのも分かる。私はそれでも構わないけれど」
「全然話が読めない、何いってんだよ…………」
シャツに下から指が滑り込む。細い、それでいてきめ細かい。滑り込むごとにぞわぞわとして、考えていることが弾けたゴム風船みたいに逃げていく。
同時にポケットでスマホが鳴り出した。聞き慣れた着信音も、この状況じゃ浮いてしまってどうしようもない。
「出ないのか? トオル」
「え、ああ…………」
「もしかして出れないのかい? どうして?」
どうしてって、そりゃあムードが。
いや、でもムードがってなんだ。別に俺はユイを突き飛ばせば話が終わるんじゃないか? というか、それについてもっと前から察していたような気がする。
何で俺はこの状況に付き合ってるんだ?
見透かされたように嗤われる。引きずり込まれそうだ。
「仕方ないな、私が取ってあげよう」
そう言って俺のポケットから平然とスマホを取り、そのまま画面を見る。
「いいタイミングだ、出ればいいんじゃないか?」
そう言ってスマホを見せられる。
思い切り、いやこれ見よがしというのが感覚的には近い。千尋の二文字が見えた、電話とは何か急用なのだろう。
何故か指が動かない。
「…………君は世話が焼ける、仕方ないやつだ」
そう言って勝手にオンにして、俺の右耳に突き当てる。
どうにかなりそうなくらい悪いことをしている気分だった。ユイの笑顔がいつもどおりの穏やかなものであることが、余計にトチ狂ってきてる頭をごちゃごちゃとさせてきてどうにもならない。
『あー透? 珍しく出るの遅かったじゃん』
答えるしかない。ユイの視線に目をチカチカさせながら会話を始める。
「ちょっと寝ぼけててな。それで、どうした。今どき電話ってのは、珍しいだろ……」
『んー。いや、ちょっとね。こういうのは口頭のほうが良さげだったから』
「そうか。どんな話だ?」
『あー。えっとー…………週末開いてる?』
千尋の一言で嫌な汗がダラダラ出てくる。何でだ?
「だから。分かっているんだ、君は別に鈍感でもなんでもないってことさ」
左耳からささやき声がして、もう神経がピタリと動きを止めてしまったような心地がする。
『で、どう』
「あー…………多分。空いてるぞ」
『じゃあ大学近くの駅で集合ね。あっ、土日のどっちがいい? 朝の10時ぐらいからの予定だけど』
「おお? じゃあ、まあ、土曜で」
『おっけー。じゃあまた今度』
一方的に切られた。
「さて。デートのお誘いが来てしまったな、トオル」
「デート? デート、なのか…………?」
「まだ白を切るのか。それだけ顔に出ているのに」
顔に出ている。
出ているんだろうか。人は鏡がないと、自分の顔なんて見えやしない。今日はすごく不便に感じるタイミングだった。
ユイは俺を見たまま何か考え込んでいるような様子を見せたが、少し経つと
「…………そうだな。やり過ぎた、ごめんよ」
そんな事を言うと、当たり前みたいに額にキスをしてベッドから離れた。
「今感じたことや思ったことは、大切にするといい。別に私が嫌いになるとか、そうじゃないとかは何でもいいから」
「何がしたいんだよお前。これからどんな顔すればいいかわからないぞ…………」
「そうかもしれない。まあ、9割が演技だ。そう難しく考えなくていい、いつもどおりで私は気にしない。君が気にしないと言ってくれるなら」
まさしく台風のようにうちを後にされたが、後の一割について考えると頭が痛くなってきて、そのまま俺は夕方過ぎに寝てしまった。
このユイって女、自分で出しといてなんだけど最初から全部分かってるから凄い怖い。挙動が書いてて掴めないときが多いと言うか。
まあ間違いないのは宝塚枠だということ。後どっちかと言えば結末ありきで動いてる。
ドスケベのベクトルがおかしくないか!?!?!?!? Vtuberも何処だよ、出そうとはしてるけど中々出てこないなV要素。
千尋がいない! 千尋厄介オタクなのに千尋が居ないんだけど!? 書けよ。次書きます…………。