勇者(幼馴染)の右腕目指す   作:シーボーギウム

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10話 契約成立

 ゴホゴホと咳き込む音が聞こえる。どうやらしっかりダメージが入ったらしい。俺が相対した魔物ならとっくに絶命していることからすればそれでもダメージが小さい気がするが。

 

「やってくれたな」

「先に舐めたこと言ったのはアンタだろ」

「それは済まなかった」

 

 土煙から出てきたレオ。ダメージこそ受けたようだが鎧は少しも傷付いて居なかった。どんだけ硬いんだそれ。

 

「続きはどうする?」

「もちろん続け「ダメですよ?」ギルドマスター…………」

 

 その場に響いた3人目の声に硬直する。見るからに黒いオーラを放っているギルドマスターに冷や汗が流れるのを感じながら気配を消した。そこにレオから非難の視線が届く。やめろ、バレるだろうが。

 

 

 

 

 

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 結局見つかりこってり絞られた後、俺は宿に戻った。そこそこ上等な所で、ある程度稼いでいる冒険者達にも人気の宿だ。当然、防犯やらもしっかりしている。筈なんだがなぁ…………

 

「なんでいるんだよ」

「気にするな。お前の事を調べていただけだ」

「馬鹿かな?」

 

 我が物顔で平然と居座り、俺の非難の声もガン無視して俺の持ち物の物色を続けるハンナにため息を零す。強制的に止めようとしても無駄だろう。俺はコイツより弱い。

 

「というかどうやって忍び込んだんだお前?ノワールならともかく」

「そりゃ私が手伝ったからねー」

「おい」

 

 プライバシーがクソほどもない。

 

「俺の天恵については既に話した筈なんだが」

「あぁ、だがお前の魔法については詳しく見ていない」

「攻撃魔法以外は使えるって言ったんだが」

「ただ聞くだけなのと実際に見るのでは大きく違う。良いから見せろ」

「今ぁ?」

 

 俺今日もう眠いんだが。

 しかしハンナの様子を見るに引く気は無いらしい。諦めて身体強化を発動する。

 

「ふむ、それだけしか使わんのか?」

「たまに硬化魔法を使うな」

「それと回復魔法か」

 

 そう言いながらハンナは杖に座って空中に浮きながら俺の周りグルグルと回る。そして時折俺の体にペタペタ触れながら思案顔をする。絵面がヤバい。

 

「この光景騎士団に通報したらアラン君捕まりそうだね」

「やめろ。マジやめろ」

「おい、遠回しに私を幼児と言ったな?」

 

 キレ気味のハンナに焦り出すノワール。笑える。

 数分後、一頻りノワールをしばき終わったハンナは真面目な表情で俺の方を見た。

 

「アラン、明日我々の拠点に来い」

「どうした唐突に」

「詳細は明日話す。とりあえず、()()()()()()()()()()()

「わかった」

 

 間違いなく俺の強さへの渇望を利用された形だ。しかしなりふり構っていられる立場でも無い。

 

「時間は?」

「好きな時間でいい。明日は1日拠点にこもるつもりだ」

「ヒキニーグボァ!?」

「知らん単語だが間違いなく不名誉なことはわかった」

 

 せめて言い切らせろや…………ッ!!

 

 

 

 

 

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 翌日。言われた通りレオ達の拠点へ来た俺は、メイドだという女性に庭まで案内された。メイドいるのかとか庭があるのかとか色々突っ込みたい所はあるが置いておいて、目の前の女に目を向ける。

 

「どうしました?」

「いや何も」

 

 ワインボトル片手に赤くなった顔でそう聞いてくる女は修道服を着ている。名を、オーロラ・グリーンチャペル。『真紅の瞳』においてヒーラーを担っている。因みに二つ名は『破戒僧』。どうなんだそれ。

 

「ハンナちゃん来ませんね。んくっ」

「呼び出しておいて一番遅いのはどうなんだ………」

「まぁ、彼女はいつも忙しくしてますからね。んくっんくっふぅ………気長に待ちましょう」

「………アンタは集められた理由知ってんのか?」

「んくっんくっんくっんくっんくっんくっぷはぁ!すいませんなんでしたっけ?」

「会話の合間に酒飲むのやめろや」

 

 というかまずワインはそんなぐびぐび呑むもんじゃねぇ。

 一概に天恵と言われているが、全てが全て強力なものな訳では無い。ある一定以下、少なくとも戦闘では役立たないような弱い天恵、恩恵(ローギフト)と言われるものがある。大半の天恵持ち(ギフテッド)が持っているのはこの恩恵の方だ。

 そしてオーロラも恩恵の持ち主だ。【酒豪】という名前そのままの力。効果はどれだけ酒を呑もうと理性を保っていられるというもの。修道服から分かるように俺の両親と同じく教会のシスターなのだが、戒律を真正面からぶち破って当たり前のように四六時中飲酒していやがる酒カスである。恩恵の力は理性を失わないだけでアルコールの影響はバッチリ受ける(とはいえめちゃくちゃ強い)。しかしコイツ酒を呑みたいが為に自分の肝臓に回復魔法を掛けながら一日にワインボトル10本のペースで呑みまくっているらしい。馬鹿だろ。

 

「そんなに見られても上げませんよ」

「要らねぇよ」

「………ふーん?なるほど?即拒絶ってことは呑んだことないから美味しさが分かってない感じですね?いいでしょう、一口だけ上げます」

「要らん」

「は?私の酒が呑めないんですか?」

「情緒不安定すぎない?」

「呑め!」

「おまっ、やめろォ!!無理矢理呑ませようとすんじゃねぇ!!」

 

 俺を掴んでワインを呑ませようとするオーロラに全力で抵抗する。コイツほんとに理性失ってないんだろうな!?

 

「おいハンナァァァアアア!!!はよしろぉぉぉおおお!!!」

「朝からやかまsオーロラお前何してる」

「お酒のっ!美味しさをっ!!知れぇ!!!」

「ガボボボボボ!?!?」

 

 強敵倒す時の主人公みたいなテンションで酒を口に流される。否応無く少なくない量の酒を呑まされた。

 

「ゲホォ!!ゴホッ!!ガハッ!!」

「オーロラァ!」

「どうです?美味しいでしょう?美味しいって言え!!」

 

 勢いのせいで味なんざ分かっちゃいねぇよ………ッ!!

 

 

 

 

 

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 ハンナが禁酒魔法とかいう使い所さんが皆無の魔法をオーロラにかけ、解毒魔法でベロベロに酔っ払った俺を治し、号泣しながらハンナに縋り付くオーロラを半ギレのレオが連行していくという凄まじいカオスの後、ようやく落ち着いた場でハンナはため息をつきながら今日俺を呼び出した理由を話し始めた。

 

「お前、今まで周りにマトモに攻撃魔法使える人間がいなかっただろう?」

「そりゃまぁそうだろ。俺元々は普通の村人だぞ」

「回復と補助はどうやって学んだ?」

「親父が神父だからな」

 

 魔法は教わらなければ使えない。実際には独学で使いこなすような天才もいるがそれは例外中の例外だ。俺の周りに攻撃魔法を使える人間はいなかった。教えられる人間はおらず、指南書のようなものも存在しない。到底使えるような環境では無い。

 

「とりあえず先に言っておくが、お前に攻撃魔法の才能は無い。その点は諦めろ」

「そっか、帰るわ」

「待てコラ」

 

 謎の斥力でその場から動けなくなった俺にハンナは続ける。無詠唱なのにバフ全盛りしても動けない。苦しい………苦しい…………

 

「代わりと言っていいかは私も判断しかねるが、お前の持つ魔力はかなり質が良い。量もそこそこあるしな」

「魔力の質?」

「そうだ。そこも少し話すとしよう」

 

 そう言ってハンナはハンドスナップをする。すると俺にかけていた魔法が解け、石で出来た椅子が現れた。それに腰掛けると同時にハンナは虚空からメガネを取り出し身に着けた。

 

「それいる?」

「形から入る質でな。始めるぞ」

「へーい」

「まず、先程言った通り魔力には質と量がある。量は肉体の成長や魔法を使い続ければ増やせる。が、対して質の方は生まれつき決まっていて変わることがない」

 

 ハンナが言うには、質の良い魔力である程魔法の効果が高くなるらしい。攻撃魔法の場合は純粋に火力が上がるだけだが、補助魔法の場合様々な副次効果が生まれるという。

 

「身体強化魔法のみで五感が強化されたり、硬化魔法で対象の魔法耐性も同時に上げたりと、魔力の質は補助魔法を使う際非常に重要な要素になる」

「なら特に変えることも無く今まで通りで良いだろ」

「馬鹿め。貴様今私が言った副次効果を感じた事があるか?」

 

 言われてみて、魔法を発動する。いつも通りに身体能力が上昇した感覚を得るが────

 

「………無い、な」

「結論を言う。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 不完全な魔法。それは本来、マトモに効果も無い筈の状態だ。しかし俺は明確に戦闘に利用していた。出来ていたのだ。

 

「何をすれば良い?」

「簡単だ。私の研究に協力しろ」

「わかった」

「それなら契約成立だ」

 

 差し出された手を握った。

 





次回までうまぴょいしといて下さい。
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