勇者(幼馴染)の右腕目指す   作:シーボーギウム

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ようやくプロローグが終わるッピ


3話

 夢を見た。いや、正確には思い出したと言った方が良いかもしれない。いや、うん?なんだこれ、どう表現するのが正解だ?

 まぁいい、そんなことは瑣末事だ。重要なのは思い出したことの内容。こことは別の世界、魔法が存在せず、代わりにこの世界よりも圧倒的に発展した技術によって秩序が保たれている世界。どうやら俺はその世界で日本という国の大学生だったらしい。

 平々凡々、どこにでもいる量産型な大学生だった俺は、ゲームが好きだった。

 

 無数のゲームの中に、一つだけ不自然にタイトルが見えないものがあった。

 

 そこにいる、俺の幼馴染の数年後のような姿の少女。今のアイツからは想像もつかない仏頂面を浮かべるその姿。それがどうにも気に入らなかった。

 

「ああ、そうか」

 

 そうだ。もはや忘れてしまったことだが、前世の俺はその少女の辿る結末が酷く気に入らなかった。だから俺は願ったんだ。あの極光に、()()

 

あの娘(エレーナ)を救いたい」

 

 

 

 

 

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 目を開ける。全身に鈍痛がする。だるくて仕方がない。

 

「はぁ…………」

 

 ため息をついて窓の外を見れば、空は真っ黒に染まっていた。さて一体俺は何日眠っていたのだろうか。

 

「ア、ラン…………」

「…………」

 

 傍から聞こえるエレーナの声。星明かりに慣れた目が見せる窓の外の、いつもと変わらない村の景色。なるほど、どうやら神は相当に()()()()をしているらしい。

 本来ならば、あの百足はエレーナ以外の村人を皆殺しにしていた筈なのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。しかし実際には、俺というイレギュラーのために村はそのまま、エレーナも心が死ぬことは無かったらしい。

 

(前世の俺がそのままこの世界に来てもエレーナは救えなかっただろうな)

 

 精神的に死んでいた俺は親父に拾われ、エレーナによって心を取り戻した。目覚める前の俺は依存と言っていい位には、根本の部分でエレーナを拠り所にしていた。()()()()()()()()()。前世の記憶を得て多少は病的な部分は消えただろうがそれは今も変わらない。

 

(命に替えても守るようになるまで、俺の記憶を剥奪した)

 

 前世の俺の願いを間違いなく叶える為に。

 

「まぁ、一応感謝しても良い……のか…………?」

 

 とりあえず、今はまだ寝ておこう。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

 翌朝、いつもと同じように目を覚まししたところ、丁度目覚めたエレーナに号泣された。うん、気持ちは分かるが俺は病み上がりだぞ?頼むから12の子供と思えない膂力を発揮するのはやめろ。やめろ………ッ!

 

「アラン……ッ!アラン…………ッ!!」

「あがががが…………」

 

 心配してんなら気付けや!オォン!?アバラが軋んだ音を出し始めてんだよ馬鹿!!

 

「エレーナ嬢、そこまでにしておけ」

「へ?あ、ごめん」

「病み上がりの俺のアバラをへし折ろうとした割には軽いじゃねぇかコラ………………」

 

 コイツは後に勇者として覚醒する。だがそれはあくまで()()、であって今はまだ平凡な村娘に過ぎない。なのにこの膂力。よろしい、ゴリラの称号を与えてやる。

 

「………今すごく失礼なこと考えなかった?」

「別になんにも考えてないぞゴリーナ」

「ゴリーナって何!?」

「すまん間違えた。ゴリーラ」

「より遠ざかってるよ!?」

「ははははは!仲が良いな!」

 

 なんか知らん女の人が笑っている。鎧に剣を携えた姿からして、恐らく騎士なのだろう。くっ……!殺せ…………ッ!って言ってそう。

 

「誰ですか?」

「ステラ・レッドグラスだ」

「レッドグラス………シスターの御家族?」

「その通り。私はあの子の姉だ」

 

 なるほど、確かによくよく見ると面影がある。シスターの優しげなところに強さ(腹パン)が潜んでいる感じをまるっきり逆にしたイメージだ。

 

「腹パン得意だったりします?」

「は?いや、何故?」

「シスターは日常的に腹パンしてますから」

「何故!?」

 

 大体セクハラ親父が悪い。

 

「で、何故ここに?」

「私達は君が殺したあの竜喰百足を追っていた。あれは本来なら我々が始末するべきだった。だが実際には君が撃ち倒し、あまつさえ君が重傷を負うまで何も出来なかった」

「だから謝りたいと?」

「そうだ…………」

「なるほど」

 

 …………多分それだけでは無い。恐らくは、あの百足を殺した力が俺のものであるという確証が欲しいのだろう。朧気ながら凄まじい威力を発揮したことは覚えている。あれがどういうものかによって、相応の処遇というものを決めないといけないのだろう。

 

「何か、お礼は出来ないか?君がいなければ、私の妹も、スピカも只では済まなかった筈だ」

「シスターは俺にとっては母親代わりみたいな人ですし気にしませんよ」

「だとしてもだ。私の妹の命の恩人であることに変わりは無い」

「ふむ………」

 

 意思は固いようだ。これは何かしら礼を受けなければ満足しないだろう。

 …………よし、それならあれが良い。

 

「エレーナ、ハウス」

「やだ」

「犬扱い………」

「ハウス」

「やだ!」

「今から大人の話をするから」

「私だってアランと同い歳だもん!!」

「良いか?お前の精神年齢は6歳だ」

 

 その言葉でキレたエレーナが騒ぎ出す。予想通りの展開。ステラさんが困惑した表情で俺とエレーナを交互に見ているが無視だ。もうそろそろだと思うが…………

 バーンッ!と扉が開かれた。そこには暗い笑みを称えるエレーナの母がいた。

 

「エレーナ………?騒がないって約束は………?」

「あ………ち、違っ!」

 

 エレーナがログアウトしました。

 

「ア──ラ──ン──!!!」

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「なんというか………君は子供らしくないな……………」

「よく言われます」

 

 エレーナが連行された後、微妙な表情をするステラさん。言うつもりは無いが、まぁ前世の記憶があれば子供らしくないのも当然だろう。それ含めてもエレーナは精神年齢が幼いが。

 

「それで?大人の話とはなんだ?」

「俺の親父とシスターをくっつけるの手伝ってください」

「ぶっ!!?」

 

 噴き出した。汚いな。生憎、俺は美女相手でも唾をくらってご褒美とか思える変態では無いぞ。

 

「ど、どういうことだ!?」

「いい加減、毎日毎日目の前で中学生女子の書いた黒歴史みたいなチープなラブコメ見せられるの嫌なんですよ」

「チ、チュウガクセイ?」

「いや何でも」

 

 ガキかと。中年の赤面見ても誰も得しねぇんだわ。

 

「しかし、なぜ私に…………」

「シスターの後押ししてください。親父(ウチの馬鹿)からってのはヘタレなんで無理です」

 

 ほんと、なんでセクハラは出来るんですかねぇ…………

 

「あの男と、か…………う、うぅん…………」

 

 まぁそりゃ渋るよね。という訳で早々に切り札を使う。

 

「協力してくれるなら俺の天恵(ギフト)について教えます」

「………君、良く性格悪いと言われないか?」

「良く馬鹿って言われますね」

「…………」

 

 おい、微妙な顔をするんじゃねぇ。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

 あの後、ため息をつきながら俺の提案を了承したステラさんに【追撃】の仕様を説明した後、俺はエレーナの家へ向かっていた。一週間もの間眠り続けていたらしく、凄まじく身体がだるいが、傷は完治している。魔法って凄いね、左手が後遺症も無く元通りになりやがった。

 

(傷痕は、まぁいいだろ)

 

 これでTS転生だった場合結構なショックなりなんなりを受けていたかもしれないが、男として生まれた俺はそんなことを気にする程神経は細くない。エレーナあたりは気にしそうだが。

 などと考えていたところだ。

 

「「アラン!?」」

「シスター、とその他1名」

「巫山戯てる場合か!大丈夫なのか!?」

「多少ふらつく程度」

「寝ておけ馬鹿!!」

 

 騒がしい。まぁ心配してくれるのは嬉しいが。あ、そういえば。

 

「金くれ」

「何故今!?」

「クソ百足とやり合った時に無くなった」

「アラン、真面目にして。本当に心配したんだから………」

 

 巫山戯まくっていた所でシスターが涙目でそう言う。これは………うん、流石に茶化せない。

 

「ごめんなさい」

「もう、二度とあんな無茶はしないで…………」

「…………うん」

 

 ………悪いなシスター、それは多分無理だ。これから先、なんども無茶をせざるを得なくなる。無茶せずにどうにか出来るほど俺の願いは簡単じゃない。

 ふと親父の方を見ると、深刻そうな表情をしていた。流石に親父には気付かれたか。とはいえ、俺が如何に覚悟しているかも見透かしている筈だ。ここで態々言う、ということはないだろう。

 

「それで、なんでまだ全快って訳でもないのに外に出たんだ」

「エレーナに会おうと」

「起きた時いなかったのか?」

「煽って騒がして連行させた」

「お前なぁ…………」

 

 おまいらがさっさとくっ付いてれば余計なことしなくて良かったんやで?

 

「姉さんはどうしたの?」

「付いて来てもらうのは断った」

「なんでまた……」

「病み上がりで初対面の人と長時間いるのは疲れる」

「「…………」」

 

 おい、その「お前が………?」とでも言いたそうな顔やめろ。

 

「なんで、あの日村の外にいたんだ………?」

「出来るだけ早く買いたいものがあったから」

「何を買おうとしたの?」

「媚薬香」

「「何で!?」」

 

 …………コイツらは、恐らくこの村で一番俺の事を理解している。だからこそ、俺がニッコリと笑ったのを見てビクッと肩を震わせた。

 知ってるか?笑顔は元々威嚇の意味を持ってたんだぜ?

 

「なぁ、今の俺の顔、日常生活でどれだけ見たことがある?」

「い、一年に1回位………」

「わ、私も同じ………」

 

 なるほど、マジで気付いていなかったらしい。

 俺の笑顔は、基本イラついた時に出る癖だ。孤児の頃、辛くても表情だけ誤魔化してれば多少は楽になれると気付いた時からの癖が残っているのだ。俺は最近、というかここ数年ほぼ毎日、少なくとも週5でこの笑顔になっている。目の前の恋愛で脳がやられてる馬鹿二人のせいで。

 

()()()()が毎日毎日クソしょうも無ぇ上に死ぬ程チープで下らないラブロマンスを見せ付けて来てる時にこの顔になってんだよ。あぁ?」

「ア、アr「黙ってろ」うっす………」

「テメェ歳考えろや。三十路のオッサンが12のガキに恋愛相談してんじゃねぇよボケ」

 

 何が「どうやったらスピカに好かれるだろう………?」だ。馬鹿かよ。自分で考えろや。

 

「神父様そんなことしてたんですか…………?」

「人のこと言えねぇなぁシスター?」

「へ?」

「知ってる?ウチの壁って薄いんだぜ?」

「…………へぁ!?」

 

 そう、つまりそういうことである。真夜中目が覚めたら「神父様ぁ……」って聞こえた俺の気持ち考えたことある?

 

「とっても教育に悪いよね!」

「ごめんなさい………」

「お前ら一体何の話しを………」

「シスターg「待って!ごめんなさい!私が悪かったからぁ!!」」

 

 半泣きである。さっきよりも泣いてんの若干ムカつくな。

 

「とりあえず一回そこで正座しろ」

「いや流石にs「やれ」はい………」

 

 とりあえず今までのストレスは全てぶつけることにしよう。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「一体何をしたんだ…………?」

 

 顔を真っ赤に染め上げながらプルプル震えているシスターを目の前にステラさんは困惑している。因みに馬鹿親父は叫びながら走ってどっかに行った。

 

「客観的に自分達がどれだけ恥ずかしい光景を繰り広げてきたかを公衆の面前でぶちまけただけです」

「………やっぱり君性格悪いな…………」

「自覚はあります」

 

 でも今回は俺悪くないやろ。

 





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