勇者(幼馴染)の右腕目指す   作:シーボーギウム

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今回短めand説明回。


4話

 目覚めた日の二日後。

 

「暑苦しいんだが…………」

「そっか」

「暗に離れろって言ってるんだが?」

「やだ」

「俺まだ身体の感覚戻ってないんだが」

「やだ」

 

 受け答えすらまともに出来なくなっちまったか…………

 と、まぁこんな感じでエレーナが俺から離れなくなった。エレーナは俺にとって大切な存在だ。が、だからと言って24時間(比喩にあらず)くっつかれて喜ぶ程奇特な思考回路はしていない。

 

「いい加減マジで離れろ」

「やだ!」

「はぁ…………」

 

 恐らく、何かしらキツめの一言をぶち込めば離れるだろうがそれは出来ない。それは俺の方の精神が先に死ぬ。という訳でどうにか言い聞かせて離したいのだが、この始末☆(界王)。

 

「ヘルプミー」

「………エレー、何でもないわ…………」

「おい、諦めんな」

 

 てかお前もなんか言われた途端に涙目でプルプル震え始めるのやめろ。何だかんだこの空間にいる人間(俺、シスター、エレーナ母)全員お前に甘いんだよ。勝てないだろうが。

 …………エレーナは素直だ。それはもう精神年齢が幼いとしか言えないレベルで。そしてそれ故に、俺のことへ深い罪悪感を抱いているのだろう。

 

「というか一昨日目覚めたばかりの時はもう少し余裕あっただろ………」

「………あの時は、多分貴方が起きた事への安堵の方が強かったんでしょうね。それで後々、冷静になってからこうなったのよ」

「あらやだ、とっても厄介」

 

 無駄に罪悪感抱えんのやめてくんねぇかな。やめてくんねぇだろうなぁ(遠い目)。

 

「エレーナが元に戻るまで何日かかるか賭けませんか?」

「あまりにもクズ」

「貴方って神父様の性欲を金銭欲に変えただけよね」

「俺はあんなにヘタレじゃない」

 

 あんなのと一緒にしないでくれ。非常に不名誉だ。

「なら正直な好意を伝えてみたら?」

「なるほど、おいエレーナ」

「なぁに?」

「好きだ」

「…………………………ふぇ?」

 

 お、固まった。今なら抜け出せそうだ。するりと腕を引き抜く。その瞬間エレーナは再起動して再び俺の腕にしがみついてきた。

 

「う、嘘だ!騙されないから!」

「嘘じゃない」

「どうせ私がパニックになってる間に『友人として〜』とか言うんでしょ!?」

「お前俺が嘘つく時の癖知ってるだろ」

 

 再びエレーナが硬直する。俺自身はどんなものなのか知らないが、俺には嘘をつく時の癖があるらしい。それを知っているエレーナに嘘は意味が無い。

 

「…………きゅう」

「キャパオーバーしたか」

 

 顔を真っ赤に染めて気絶したエレーナをシスターが咄嗟に支える。その後なんとも言えない表情を向けてきた。

 

「こう、もう少し何かないの………?」

「躊躇えと?それで数年間進展が無かったのはどこの誰かな?」

「…………」

 

 黙るシスター。言葉を継いだのはエレーナの母だった。

 

「恥ずかしくないの?」

「好意を伝えることがなんで恥ずかしいんだよ」

 

 正論バーストにエレーナ母が黙る。というかそもそもアンタら夫婦も普段やってる事じゃないのか。

 

「あとこの世界は無慈悲だ。善人とか悪人とか、人だとか魔物だとか関係無く死は突然襲いかかってくる。伝えたいことは伝えられる時に伝えとかないと、後悔する羽目になりかねない」

 

 実際に、ステラさんが来るのが少しでも遅れていれば俺はそうなりかけていた。後悔する頃にはもう遅いのだ。なら伝えられることはさっさと伝えておくに限る。

 

「本当に子供らしくないわね」

「でも事実だ」

 

 その言葉に、シスターは沈黙で返すのだった。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「はっ……!はっ……!」

 

 目覚めた日から1ヶ月ほど経った。前世のスポーツ漫画でよく滝のように汗をかいているキャラがいるが、正直あんなんフィクションだろ、としか思わなかった。脱水症状で死にそう、とか考えていたのだが、案外人間そういう状況になっても死にはしないらしい。現在の俺が証人だ。

 バタッと倒れ込む。立ち上がるのも億劫と感じる程走り込むようになったのはここ数日からのことだ。

 

「疲れた…………」

 

 これは別にリハビリという訳では無い。それは一週間もしないうちに終わっている。この世界、回復魔法が大概チートなのだ。極まった回復魔法の使い手は部位欠損所か脳の損傷すら完璧に治すらしい。そして種類も色々ある。主なもので3種類、細胞を活性化させるもの、傷という概念そのものへ干渉するもの、限定的な時間操作に該当するものの3種だ。3つ目に関しては使える方がおかしいらしいが。

 2つ目3つ目のものの場合重傷を治すのに最適。これらは傷を治そうとした時、鍛錬などで発生した筋肉の損傷すら無かったことにしてしまうのだ。対して1つ目。部位欠損レベルの負傷の場合そのまま傷口を塞いでしまう為、重傷の治療には向かないが、代わりに鍛錬後に使えば、本来数日かけて筋繊維の修復を待たないといけない所を数秒で修復が終わる。

 

(まぁ、今日はもう魔力も空っ穴だが)

 

 治療魔法(一般に1つ目をそう呼び、2つ目を回復魔法、3つ目を修復魔法と呼ぶ)をフル活用でのトレーニング。これは俺が神父の息子だからできることだ。教会所属の神父、シスター達は皆回復魔法のプロフェッショナルだ。やはり修復魔法を使えるのはめちゃくちゃ稀だが、治療魔法と回復魔法を使い分けられるのは必須項目らしい。

 治療魔法と回復魔法の使い分け、これが実はかなり難しい。何せ発動しても、治すのが部位欠損レベルのヤバい傷でもなければ見分けが付かないのだ。回復魔法を使っているつもりが治療魔法を使っていた、というのは初心者には良くあることらしい。俺自身、初めは全く出来なかった。

 

 閑話休題。

 

 そう、実は最近エレーナが寄ってこない。具体的に言うと好意を真正面から投げ付けた日の翌日からだ。俺を見ても顔を赤らめて逃げていくのだ。あんだけわかりやすい反応していて、アイツは自分の好意がバレていないと思っている。やっぱ馬鹿だわ。

 

(鍛錬はしやすくて助かるが)

 

 この鍛錬は、将来的にエレーナを支えるためのものだ。本来の流れなら村の壊滅と同時にエレーナは勇者の力に、天恵(ギフト)【勇者】に目覚める。どんな力だったかは忘れたが、少なくとも今のアイツにそういう力があるようには見えない。一概には言えないが、勇者の力に目覚めるのが遅れた以上エレーナの成長もやはり遅れると見ていいだろう。だから俺がその遅れの部分を埋める。

 

「俺が勇者の天恵手に入れられるならそれが1番なんだがな」

 

 それはまず無理だ。ならせめて、勇者として成長したアイツが迷いなく頼れる存在になりたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再び、立ち上がった。

 




拙者、一切の恥ずかしげなくド直球の好意を迷い無く叩き付けるクール系キャラ大好き侍。義によって助太刀致す。

この主人公がクール系と言えるのかは私自身としては甚だ疑問ですが。

感想評価プリーズミー。
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