勇者(幼馴染)の右腕目指す   作:シーボーギウム

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5話

 あれから二年。歳は14になった頃の話だ。

 

「「冒険者になるぅ!!?」」

「それあくまで過程の話な?」

 

 ようやく結婚した両親(・・)に俺の目標を伝えた。で、そこまでの過程で冒険者になると伝えた瞬間これである。面倒くさい。

 

「なんで!?態々そんな危険な事しなくても!!」

「そうだぞアラン!お前なら充分()()()()()だろ!!?」

 

 俺の目標、それはある学園に入る事だ。

 『王立魔導学園 オリオン』。俺が住む国『オリオン』、その中央都市に設立された学園だ。この学園の目標は、最高峰の騎士を育成すること。ここを出て騎士となった者は、例外なく英雄級の活躍を挙げている。とはいえ実際にはこれも通過点に過ぎないのだが。

 

「身分差考えろっての。何の実績もない神父のガキと、代々功績を上げてきた貴族の跡取りどっちを取るか何て目に見えてるだろ」

「それなら今までみたいにこの村で鍛えれば「無理だ」っ……!」

「俺は独学でしかない。対して中央都市にいる貴族のボンボン共は本物の騎士に教えを受けてる」

「なら姉さんに!」

「これから二年この村にいてもらうなら、それでも良いかもな」

「ッ……!」

 

 経験、実績、実力。その全てが足りていない。今の俺がその全てを一挙に埋めるには、もはや実戦の中に身を置く以外に無い。

 

「何故そこまで………」

「今更聞く必要あるか?」

 

 息を呑む二人。そうだ。この二人は知っている。二年前俺が何故死にかけたのか、何のために命を賭けたのか、何故ここまで鍛えてきたのか。

 

()()()()()()()()()()

 

 それに尽きる。訳が分からないだろう?だがこれが俺だ。

 

「…………意思は硬いんだな?」

 

 頷く。すると親父は目を瞑りながら重々しく「わかった………」と呟いた。シスターが反対するが、こうなればもう梃子でも動かないとゆるゆる首を振る。

 

「ありがとう」

 

 俺の礼に親父は面食らった様な顔をする。それに少し申し訳なさを感じた。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「良かったんですか………?」

「………心配ではあるさ」

 

 スピカの言葉に神父、ユリウスは本心とは少し異なる解答を返した。正確には、心配で仕方がないのだ。だがそれでもアランの願いを認めたのは────

 

「でも、アランなら大丈夫だと思ったのも事実なんだ」

 

 ────ひとえに、己の息子を信じているからだった。

 ユリウスがまだ30より若かった時、この村から遠く、遠くにある街で神父として働いていた時のことだ。齢10にも届かない少年が、一切の光を灯さない瞳でユリウスを見上げていた。

 放ってはおけなかった。淀んだ目をした者は見たことがあったが、少年のそれはその中でも一際危ないものを孕んでいたからだ。抵抗一つしない少年を自分の家に連れ帰り、そして今の今まで必死で育て上げた。

 

「スピカも知ってるだろ。あの子は、アランは愛の深い子だ」

「…………えぇ」

 

 アランは、滅多なことでは怒らない。正確には()()()()()()()()。自分が周囲からなんと言われようと気にしない。ユリウスは「まぁ、最悪殺そうと思えば殺せるし………」などと物騒な事を言っていたことを思い出した。しかしそれすらあくまで冗談に過ぎない。

 一度だけ本気で激怒したアランを思い出す。この村に越して来る前、まだ光を取り戻したとは言えない頃。酒に酔って俺のことを罵った領主の息子を半殺しになるまで殴り付けたのだ。その領主の息子の評判が悪かったことと、対照的に領主は人格者だったことがなければユリウス達は生きていなかったかもしれない。

 独りだったが故に、そこから自分を連れ出してくれる存在(家族)へ、アランは深い愛をかえすのだ。

 

「それに、アランが言った初めての我儘だ。仮にも親を名乗るなら聞いてやらなきゃバチが当たる」

「そういえば、私あの子の素直なお礼初めて聞きました」

「俺もだ」

「え?」

 

 信じられない、というスピカの顔にユリウスは苦笑で返す。

 

「照れ屋なんだよ、アイツは」

 

 そういった彼の表情は、一人の父親の顔だった。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「んじゃ、行ってくる」

「おう、行ってこい」

「気を付けてね………」

 

 それだけ言葉を交わして街の方へ向かって歩く。感傷的なのは似合わないだろうとあっさりと済ませる。まぁまずまずとして普通に帰ってくる予定はあるからな。

 …………最後に爆弾落としてくか。

 

「帰ってきたら弟か妹の顔が見られるよう期待しておくからな」

「おまっ!?」

「ちょっ!?」

 

 真っ赤になる二人に内心爆笑しながら手を振る。

 こうして慌ただしく俺の旅が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、そう簡単に済めば良かったのだが。

 

「やだ」

「おい、まだなんも言っとらんぞ」

 

 なんも伝えてなかった筈なんだがなぁ………

 

「なんでわかった」

「勘」

「お前ほんとに天恵持ってねぇんだよな?」

 

 俺に対することだけ妙に鋭いのはなんなんだ。

 ピクリとも動かず抱き着いてくるエレーナ。その腕を無理矢理に引き剥がしていく。抵抗するが無意味だ。ろくに鍛えたいなかった二年前ならともかく、二年間鍛えて俺とコイツの間に開いた膂力の差はそう簡単に覆せるものではない。

 

「いやだよ、行かないでよぉ!」

「駄々を捏ねるな。もう決めたことだ。これで出戻りしたら情けないにも程がある」

「なら私もっ「率直に言って足でまといだ」っ……!」

 

 迷子の子供みたいな顔をするエレーナ。罪悪感が湧いてくるがあいにくここで甘やかす訳にはいかない。

 

「そんなこと、ない………」

「魔法は使えない、身体能力が高いわけでもない、他に役立つ知識があるわけでも無い、そんなお前を連れて行っても俺は守りきれる自信は無い」

 

 ジワジワと涙が滲んでくるエレーナにため息をつく。やはり俺はとことんコイツに弱いらしい。あのクソ百足殺すよりもコイツを突き放すことの方が遥かに難易度が高い。

 抱き寄せ、頭を撫でる。あの日以来、エレーナは俺に依存している。前世の記憶を得る前の俺よりも深くだ。それは、俺の本意では無い。俺の望みはコイツの幸福だ。だが俺がいなければ笑えないような人生が本当に幸せと言えるだろうか。俺が望む幸福はそんな歪なものじゃない。

 

「エレーナ、俺はオリオンに行く」

「オリオン……?」

「中央都市の学園だ。俺が村を出るのは、そこに入るための武者修行のためだ」

「なんで………」

「お前を守るためだ」

 

 俺はエレーナのためなら、多分なんでもできる。我ながら壊れていると思う。だがそう断言出来てしまうほどに俺はエレーナが好きだ。

 この先エレーナ以外の女を好きになるかは分からない。だが例え他に好きな女が出来ても、俺はエレーナへの想いが消えるとは思えない。恐らく許されるのなら二人共愛そうとするだろう。

 

 ………………この想定はやめよう。思っていたよりもクズい。

 

「信じられないかもしれないが、お前の行く先は無数の苦難が待ち構えてる。だからこのまま村で何もせずにいるんじゃお前を守れなくなる」

 

「だから、少しの間だけお別れだ」

 

 一度強く抱き締めてから離れる。顔を見ることなく歩き出す。

 覚悟は決めた。その運命(悲劇)を覆す、その一歩目は踏み出された。なら後はそれを繰り返すだけでいい。

 

 俺はバットエンドもメリーバッドエンドも大嫌いだ。だから目指すのは完全無欠のハッピーエンド。エレーナが、なんの翳りもなく笑える未来が俺のゴールだ。

 

 願わくば、その隣に俺がいられるように。

 

 二歩目を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 歩き去るアランの背を無言で見つめる少女は、静かに決意する。

 

「私頑張るよ」

 

 もはや聞こえないとわかっていながらも、少年へ語りかける。

 

「貴方の想いに応えられるように」

 

 その手の甲に、輝く紋章が現れた。

 

 




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