勇者(幼馴染)の右腕目指す   作:シーボーギウム

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8話 昇格

「この状況は君が………?」

「だったら………?」

 

 最早議論の余地も無く勝ち目の無い存在が俺の目の前にいる。回復魔法で両腕を治療する。後遺症が残らない程度の治療だ。傷痕が残るが仕方がない。傷痕も消そうとするとそれこそ魔力が完全に枯渇する。そうなれば魔力欠乏症でぶっ倒れてアウトだ。

 

「警戒しないでくれ、私も冒険者だ」

 

 そう言ってプレートを見せてきた。その材質は、見た所おそらくミスリル。この世界で最も硬く、この世界で2番目に希少な金属だ。それを持っているということは、つまり────

 

「Aランク!?」

「そうだ。竜喰百足(ワイバーン・イーター)の群れがいるにも関わらず依頼に出てしまったという新入りの話を聞いて来たんだが…………必要無かったようだ」

 

 目の前の男は周囲を見回してからそう呟いた。助けだったのか………

 

「アンタ見てると安堵より恐怖が勝るんだが」

「ひどいな。何故だ」

「まず自分の姿を見ましょうね」

 

 血塗れのフルプレートメイル(2m)とか怖すぎるわ。緊張切れてアドレナリンが止まったせいか?とはいえ助かったのは事実だ。

 

「とりあえず、ありがとう。助かった」

「礼には及ばない。代わりに後日色々と聞かせてくれ」

「わかった」

 

 それだけ言葉を交わして足を踏み出そうとした瞬間、一切の力が入らず倒れ込んだ。寸前で彼が支えてくれたおかげで血塗れの地面に顔面から突っ込むとかいうSANチェック必須のクソみたいな状況にはならずに済んだ。そして同時に襲い来る凄まじい眠気。どうやら割とガチで限界だったらしい。

 

「眠るといい。君の安全は私が保証しよう」

 

 最後に聞こえたのはそんな言葉だった。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「……………」

「何を呆けている嘘吐き(ライアー)

「その呼び名はやめてくれハンナ」

 

 レオは己の腕の中で眠る少年に向けていた目を背後へ移した。そこに居たのは、子供だった。真っ白なワンピースを身にまとった、少年と同じく黒い髪と紅い瞳を持つ少女だ。彼女は自身の身の丈よりも長く、空中に浮かんだ杖に腰掛けている。

 

「それが新入りか?死んでいるようには見えんが」

「事実、生きている。この状況は彼が作り出したものだ」

「ほう……?」

 

 レオの言葉に興味を示したハンナは少年、アランの顔を覗き込んだ。

 

「驚いた。()()()()()?」

「恐らくはな」

 

 途端にハンナは瞳をキラキラとさせ始めた。明らかに危ない光を灯すその様子にため息をついたレオはアランを彼女から離した。

 

「なんほど?つまりこの光景はこの少年の天恵(ギフト)によるものというわけか!」

「私がやった、という可能性を考慮することすらしないのか」

「貴様の戦い方などとうの昔に熟知している。百足共の死に方を見ればこれがお前によるものでないことはわかる」

「やろうと思えばできるが?」

「…………」

 

 一瞬遠い目をしたハンナはため息を洩らしつつ地面に飛び降り、杖の先でトントンと地面をこずいた。瞬間、接地点を中心に大規模な魔法陣が現れた。

 

「待て、死体はどうする」

「ギルドに任せる。どの道この規模を燃やせば大火事だ。安心しろ、既に認識阻害魔法をここら一帯にかけておいた」

 

 これで一日は死体を喰らいにくる魔物はいないだろうとだけ伝え、ハンナは詠唱を始めた。

 

何度でも私は宣言しよう(リ・コール)、私は(から)を越える」

 

 魔法陣が眩い光を放ちながら超速で蠢く。そしてそれがピタリと止まった瞬間にハンナは言葉を紡いだ。

 

時空の超越(クロノ・ウォーク)

 

 閃光と共に、三人はその場から消えた。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「知らない天井だ………」

「既知のセリフだ」

「は?」

 

 目覚めた時のテンプレを実施したところでそんな横槍を入れられた。声の方を向けば、そこにいたのは幼女だった。

 

「ふむ、やはり瞳の色も私と同じか」

「尊大なロリっ娘だな」

「おい、私をロリと呼ぶのはやめろ。これでも私は32だ」

「ならロリババアっぶねぇ!?」

 

 飛んできた氷の杭を咄嗟に避けた。魔法か?だいぶ速度があったのに詠唱しなかったんだがコイツ。

 

「次、その不名誉と不名誉が悪魔合体した呼称で呼んでみろ。殺す」

「ふざけんな!!?ロリババアは褒め言葉だろうが!!?」

「頭沸いてるのか貴様!?」

 

 失礼な。俺は至って正常だ。ちょいと守銭奴で常にふざけているだけだ。

 ロリババア(合法ロリ)は褒め言葉だ。一部の特殊性癖(犯罪者予備軍)を救済するキリストの如き存在なのだ。これキリスト教徒に聞かれたら殺されそうだな。

 

「はぁ………まぁ、いい。お前に聞きたいことがある」

「こっちもこっちで色々聞きたいんだが」

 

 まずまず目覚めたこの場所がどこかすら知らないのだ。コイツの正体も知らない。おそらくはあの戦士の知り合いなのだろうが。

 

「まずアンタ誰だよ」

「ハンナ・カラレス。お前を助けたフルプレートメイルの仲間だ」

「この場所は?」

「我々、『真紅の瞳』の拠点だ」

 

 なるほど、と頷いた。まぁ俺宿とか取ってなかったしな。あの戦士がそのまま連れ帰ったといったところか。

 そこまで考えた所で、ロリがズイっと顔を寄せてきた。やめろ、俺はロリコンじゃない。

 

「次は私の方から質問させて貰うがいいかな?」

「近い」

「まず君の天恵について詳しく」

「近ぇって」

「見た所魔法は生存能力優先のようだが」

「離れろぉ!!」

 

 おかしな疑惑つけられるのはごめんなんだよボケが。

 

「済まない、興奮しすぎた」

「ロリコン疑惑掛けられるから落ち着け」

「はっ倒すぞ」

 

 うるせぇ、万が一見られたら俺の人権及び社会的評判がシュレッダーにかけられるんだよ。てめぇ実年齢はともかく見た目は幼女なんだからそれを自覚して行動しろや。親のいない迷子扱いで孤児院に強制連行してやろうか。

 とりあえず、先程された質問に答えを返していく。興味深そうにメモを取りながら次々と質問を飛ばしてきた。少しは遠慮しろ。

 

「これで最後だ」

「はぁ……………」

「君、()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「………」

 

 言葉の中に確信がある。見る限りこっちを貶めようとする気は無いようだが、ムカつく。幸運なことに親父のおかげで幸福な人生を送ってきたとはいえ、真正面からそんなことを聞かれたら流石の俺でも腹が立つ。

 

「失礼だな………」

「不快にさせたなら済まない。しかしやはりいないようだな」

「いなかったらなんだよ」

「私も血縁が居ないんだ」

「同じ黒髪紅眼だから境遇も似てるって?偶然だろ」

「そうかもしれない、だがそれが10人以上続けばどうだ?」

 

 自信満々の言葉に眉をひそめる。曰く、今までも俺以外に何人もの黒髪紅眼の人間と会ってきたらしい。そしてその全員が例外なく血縁の無い孤児であり────

 

「強弱の差はあれど、ただ一人の例外も無く()()()()()()()()

「お前も持ってると?」

「この姿は【不老】の天恵のせいだからな」

「やーいロリb」

「うん?」

「何でも無いっす………」

 

 コイツ苛立つと笑顔になるらしい。俺とおんなじじゃねぇか。姉弟かな?

 表情を戻したハンナは言葉を続ける。

 

「私含め、素性をどれだけ調べても血縁はひとりとして見つからない。正体不明、まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。故に私は私達をこう名付けた」

 

 

 

 

 

不明の一族(カラーレス)とね」

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「Bランクかぁ………」

「実力としてはかなり高い方と言えるぞ?」

 

 あの後部屋に入ってきたレオに連れられギルドに向かう道すがら、俺は相対した特殊個体百足の推定ランクを聞いた。あれだけ強くてBランクらしい。連戦だったのもあるだろうが、仮に万全でも、相性差を除いても苦戦は必至だった筈なのにだ。フォローが沁みるぜ…………

 

「あれでBか………」

「Aランクを目指しているのか?」

「目標としてる強さはそれくらいだな」

 

 目の当たりにしたからこそ分かるが、Aランクはかなりデタラメだ。先程見せてもらったのだが、レオの持っている剣は何の変哲もない普通の剣なのだ。素人目に見てもかなりの業物なことは確定だが、それだけなのである。要するにあのイカれた斬れ味はレオ自身の膂力と技量によって生み出されていたという訳だ。

 

「もしかしてあの特殊個体素手で殴り殺せたりする?」

「魔法を使えばまぁ可能だ」

「Oh......」

 

 レベルが違い過ぎるぅ………

 

「力に関しては気にするな。私のこれは天恵由来のものだからな」

「あ、そうなの」

「【剛体】、人間としての身体機能の上昇幅が跳ね上がる天恵だ。私の膂力を超えるのはそれこそ鬼人族(オーガ)くらいのものだ」

「その身長も天恵のおかげってことか」

「いや、これは自前だ」

「そっかぁ…………」

 

 羨ましい限りだ。俺もまだ伸びるとは思うが、流石にここまでは無理だろうし。

 と、そんなところでギルドに到着した。例の扉を開いて中に入ると視線が集まる。昨日の舐め腐ったものではなく、値踏みする様なそんな視線だ。鬱陶しいことに変わりはないな。

 

「どうした?」

「いや、何も」

 

 ナ○パを見つけたので気分転換がてら中指立てて煽りつつ、レオについてギルドの奥の部屋へ向かう。いわゆる応接間に案内され中に入ると、そこには筋骨隆々のおっさんがいた。

 

「初めましてアラン殿」

「誰だよ」

「失礼だぞ。ギルドマスターだ」

「気にするな」

「お前が言うことじゃないだろう………」

 

 呆れた雰囲気を出すレオに満足しつつ、ギルドマスターだという男に目を移す。なるほど、かなり強いのだろう。さしずめ元冒険者といったところか?

 

「で、何で呼び出されたんだ?」

「まずは謝罪を。我々の不手際で貴方に多大な不利益を与えてしまったこと、深くお詫びします」

「それはまぁ、気にしなくていい。俺もいい経験になった」

「ありがたい、では本題に入りましょう」

 

 ギルドマスターの話の内容は、要するに俺のランクをどうするか、というものだった。俺自身の実力としては、報告通りならBランク相当になる。しかし俺はソロで活動している。そこを考慮してCランクに抑えておく事も可能らしい。

 

「いまいちBとCで何が違うか分からんのだが」

「一番の違いは指名依頼の有無だな」

「指名依頼?」

「ギルド、ないしは依頼者からの直接指名での依頼だ。相応に危険度や難易度が高い分報酬も高い」

 

 そして、その指名依頼とやらはルール上は断っても良いらしいが、受けるのが暗黙の了解らしい。要するにBランクになると否応無く難しいクエストに行かざるを得ないことがでてくる、ということだ。

 

「私個人としてはBをおすすめする。お前の実力なら問題無いだろう。最悪難易度が高いと判断したら他のBランクなり私達を頼れば良い」

「………そう、だな。うん、じゃあBランクで」

「かしこまりました。こちらで手続きしておきます」

 

 その場で白金(プラチナ)製のプレートを受け取りその場を後にした。

 

「思った以上のスピード昇格になったな………」

「だが、ここからが一番長いぞ。万年Bランクという冒険者も珍しくない」

「肝に銘じておく」

 

 後はもう気合を入れるしかない。とはいえ、かなり速い段階で自分の実力相応のランクになれたのは運が良い。それでこそ武者修行の意味があるというものだ。

 

「これから色々教えを乞うかも知らんが良いか?」

「無論だ。付いてこれるかは知らんがな」

「安心しろ、俺は無駄に諦めが悪い」

 

 挑発的な言葉にそう返す。とりあえず何かしらクエストを受けようとクエストボードの方へ向かおうとして、

 

「やめておけ」

「ぬぐぉ!?」

 

 レオに止められた。おい、はたくって威力じゃなかったぞ。

 





まだ逸般正統派ゴリラなレオ。地味に私のお気に入りのキャラだったり。
ちなみにレオの嘘は既に作中に登場してます。

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