勇者(幼馴染)の右腕目指す   作:シーボーギウム

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感想評価ありがとうございます。

この話を見てあれ?と思った方がいるでしょう。その違和感は正しいです。
前の9話は消しました。
理由はいくつかありますが、展開的に時間を飛ばし過ぎたと判断したことと、先の展開を書いていて、自分自身書きにくい、楽しくないと思ったからです。
ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。
一応大きな展開は変わらず、設定面も変更はありません。が、伯爵令嬢のエピソードは今後出てくることは無いです。

それでもいい、という方がもしいらっしゃったら幸いです。

これからもこの作品をよろしくお願いします。



9話 新武器

 突然だが、個人の実力を構成するのはなんだろうか。

 この世界で言えば、魔力、身体能力、天恵辺りが該当するだろう。ではこれらがもう上げようがない場合はどうすればいい?

 

 答えは簡単、《装備》だ。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「いかがでしょう?」

「………少し試せる場所はありますか?」

「わかりました。演習場へ参りましょう」

 

 あのクソ百足共を殺した日から1週間。それなりにクエストをこなしながら過ごしていた俺にギルドの方から連絡が入った。曰く、()()()()()()()と。

 到着と同時に連れられたのは応接間。そこにあったのは銀色のガントレットとブーツだった。これは俺の知らなかったことなのだが、特殊個体と言われる魔物には魔力核と言われるものが体の中にあるらしく、それは何かしら非常に優れた道具や武器として利用されるらしい。そしてそれらは討伐者のものとして与えられるのだとか。数日前に武器が何か聞かれたのはそれが理由か。

 

「倒したのレオだろ」

「そのレオ様が、それでは横取りになってしまうと」

 

 という流れであの特殊個体クソ百足の魔力核を材料に俺の武器が作り出されたらしい。

 で、その性能を確かめるべく演習場まできた訳なのだが、何やらヤバい。明らかにこのガントレットとブーツに秘められている魔力量がエグい。目の前のカカシに目を向ける。

 

(とりあえず軽く殴ってみるか………)

 

 その場で軽くステップを踏み、カカシに接近し右拳を叩き付ける。瞬間、カカシが爆ぜた。

 

「は?」

 

 ちょっと待て。俺はそこまでになるほど力を込めていない。

 

「どういうことだこれ?」

「衝撃に反応して魔力を放つ機構を付けました」

「こんな軽い打撃でこの威力かよ………」

 

 というか衝撃に反応するなら防御に使ってもその機構発動するのか。安い武器なら勢いによっては軽く粉砕しそうだ。

 

「これ結構硬いよな?」

「えぇ、レオ様の一撃でも真正面から受けなければ問題無いでしょう」

「おぉう………」

 

 聞けば、その機構が発動するのは金属のような装飾の取り付けられた部分のみらしい。ちなみにレオの鎧は全身がAランクの特殊個体の魔力核を使っているのだとか。硬すぎる。

 

「なんというか、思わぬ収穫だな………」

「それとこちらを」

「まだあんのぉ?」

 

 正直お腹いっばいだ。これだけあれば俺が戦う分には一切問題無い。

 と、そこで見せられたのは刃渡り20cmほどの短剣だった。見る限り、輝きがガントレットと似ている。

 

「量が足りず、全てとは言えませんが7:3の割合で魔力核とあの特殊個体の竜喰百足(ワイバーン・イーター)外骨格を利用したナイフです。こちらも特殊な機構を取り付けております。魔力を込めて振ってみてください」

 

 言う通りに魔力をナイフに込め、カカシに向けて振るう。すると斬撃が()()()。カカシの残りカスが粉々になるのを見届けてからもう一度同じ様に振るう。今度は何にも当たらないよう上に向けてだ。すると目測で大体7mほど進んでから消滅した。

 

「カカシじゃ威力が分からんな」

「込めた魔力によって威力、飛距離が変わりますので」

「何それ便利」

 

 いやこれほんとに便利じゃないか?近接攻撃オンリーの俺に中〜遠距離攻撃ができるってだけで立ち回りやすさは段違いに変わる。少し練習がしたいな。

 

「しばらく試しても良いか?」

「ええ、もちろんです」

 

 仮想敵は決まっている。今の俺が知る限り最も強い存在だ。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「こんな所にいたのか」

「うおっ!?ってレオか………」

 

 不意に真後ろから声を掛けられ、咄嗟に拳を振るいそうになったのを既のところで止める。まぁレオなら軽く防ぎそうだが。

 どうやら随分長い時間が経ってしまったらしい。日が大分傾いていた。

 

「完成していたのか」

「ん?あぁ、この武器の事か」

 

 ガントレットに刺さる視線にレオの言わんとすることを理解する。

 

「武器……か?どちらかと言えば防具だと思うが」

「性能としてはどっちとも言えるからな」

「そうか。とはいえ良い武器だな」

「そいつはどうも。試してみるか?」

 

 挑発気味にそう問いかける。すると「そうだな」と言って木剣を取りに行った。あるぇ?おかしいな。そんなガチなトーンだったっけぇ?

 

「私を想定した動きだっただろう?」

「バレてるぅ────!」

 どうやら声を掛ける前に少し見られていたらしい。若干恥ずいが、実際試させてくれるのは有難い。

 

「怪我はさせないでくれ」

「セリフが随分情けないな」

「俺が万が一にもお前に勝てるわけねぇだろぉがオォン!?」

「えぇ………」

 

 引いてるところ悪いがこれは事実だ。少なくとも()()俺がレオに勝つのは不可能だ。実力に開きがありすぎる。

 

「先行は俺がもらっても良いか?」

「ああ」

 

 返答と同時にその場でステップを踏む。左手で短剣を逆手に持ち、左拳を前に、右拳を顔の横辺りに置く。そしてその場で少し跳躍、着地と同時にレオに向かって駆け出した。短剣を振り、斬撃を飛ばす。ここでひたすら試したからどれだけ飛ぶかは何となく分かるようになった。これは届かない。完全に牽制の一撃だ。

 しかし、レオは斬撃を前にしても微動だにせず俺を待ち構えていた。終ぞ斬撃が消えるまで構えは一切崩さなかった。見破られていたらしい。

 

「初見くらい引っかかれや!!」

 

 半ギレで再び短剣を振る。今度は間違いなく届く。が、軽く防がれた。木剣だと壊れるからか腕で。隙を作ることすら出来んのか………

 

「シッ!!」

 

 短く息を吐き左拳を放つ。バックステップでかわされた。しかしそれは想定内。元から腰を入れていない一撃だ。再度踏み込み、右拳。明確に防御行動を取った。左手に拳が激突する。結構力を込めたから相応にガントレットの機構で威力があったはずだが左手はビクともしなかった。

 反撃が来た。横薙ぎに振るわれた木剣を屈んで避け、その体勢から蹴りを放つ。左脇腹にヒット。しかしノーダメージ。想定していたことではあるが実際に効かないと精神的にくるものがあるな。だが────

 

「俺の攻撃を受けるのは悪手だぞ?」

 

 2秒に設定していた追撃が発生する。因みにガントレットの機構の分は含まれない。だがそれでも相当な破壊力を生むのが俺の天恵だ。よろけ、右側に倒れ込むレオにこれ幸いと拳を構える。

 しかしそれはレオの放った左拳によって阻まれた。俺に直撃した訳では無い。レオが殴ったのはあくまで地面。しかしそれによって凄まじい振動が起こり、俺は完全に体勢を崩された。腕力がデタラメ過ぎるだろ。

 

「流石に凄まじいな【追撃】」

「嫌味かこら。ふざけた腕力見せつけやがって」

「そういう訳では無い。次はこちらからいくぞ」

 

 そう言ってレオは木剣を構えた。サイズは普段使っているものに比べれば小さいが、それでも刀身が1mはある。それを平然と片手で振り回すのだから最早笑えてくる。

 ドンッ!という踏み込みとは思えないような轟音と共にレオがこちらに迫る。縦の一撃をバックステップ、切り上げを身を横に傾けて避ける。そのまま更に下がった俺に向けて鋒を構え、再びドンッ!という音と共にレオが突っ込んできた。既のところでそれを躱し、カウンターの左拳を放つ。腹部に命中。1秒経たずに追撃が発生した。それによって若干硬直したレオに右拳でボディブロー。設定時間は5秒だ。

 俺を引き離す為に振るわれた拳を避け、距離を取りつつ短剣を振るって追い討ちを防ぐ。追撃が発動した。5秒設定でも吹き飛びはせずその場で耐えられる。タフにも程があるだろ。

 別に俺は加減をしている訳では無い。俺自身の感覚を信じるなら、5秒設定の時点で普通なら内蔵が破裂する。いくらトンデモ鎧に守られているからと言って普通は人間にパなしていい火力じゃない。

 

「………なるほど」

「は?何がッ!?」

 

 完全に視認出来ない速度で迫られた。気付いたのは腹部に一撃喰らった瞬間。とてもじゃないが反応できるものではなかった。

 

「ゴブッ!ガバッ!!」

「アラン。お前は恐らく人間を殺そうとしたことは無いな?」

 

 今話しかけてくるんじゃねぇ……!大量に吐血してんのが見えてねぇのかコラ……ッ!!

 

「人を殺すまいとするのが悪いとは言わない。だが、いざと言う時に殺す覚悟が無ければ足元を掬われるぞ」

 

 回復魔法を掛け終わり、目の前のレオを睨み付ける。要するにコイツは、俺が人殺しを恐れて無意識に加減していると思ってんのか。

 

 舐めんな。

 

 確かに殺しへの忌避はある。だがそんなものはとうの昔に超えたものだ。命は平等だ。俺も、お前も、魔物も、植物も。その全てが等しく────

 

 ────()()()()()()()()()()()()()

 

 肉薄。前世の知識。確か縮地と言われた技術を用いて接近する。右腕を引き絞る。設定時間は0.1秒、()()()()()()()()2()()。一秒以下で威力は変わらない。とはいえこれだけではレオにまともダメージは与えられる訳が無い。だが舐めているのでは無い。今の俺が放ちうる()()()()()()()、それを放つ為の設定が0.1秒なのだ。

 硬化魔法を施した右手を貫手の形に。その指先が鎧に触れる。0.1秒後、第一関節が鎧に激突。0.1秒後、第二関節激突。0.1秒後、第三関節激突。次は手首、その次は肘。そして最後に、肩が衝突した。7度の衝突。その火力は2の7乗。1()2()8()()

 

「『七頭獣の追撃(セリオン・オーダー)』」

「なっ!?グゥ!!?」

 

 ドンッ!!と、トラックに跳ねられたかの如くレオが吹き飛んでいく。俺が今日初めてマトモに与えたダメージだった。

 





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