白き流星のレコンギスタ   作:紅乃 晴@小説アカ

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第七話 エルフ・ブルックの脅威(3)

 

 

 

 

「正体不明機が接近してる?」

 

 

艦橋に上がってから、副長が捉えた信号がメガファウナに向かって飛来するアンノウンだと判断したドニエル艦長は淡々と答えた。

 

 

「ええ、ですから本艦は囮として予定を繰り上げ、近づきつつあるアンノウンに向かって航行しています」

 

「不明機の数は」

 

「2個編隊ほどです。どう見ます?」

 

 

モニターの前にいるカーヒルが問いかけてくる。ミノフスキー粒子が散布される前に捉えることができた機影。なんでも輸送艦を護衛していたミック・ジャックのヘカテーが哨戒していたタイミングで偶然発見できたらしい。

 

隊列の後部はサブフライトシステムの飛行部隊だろうが、先行する大型飛行物体の正体が判断できない。機体の大きさから見ても、アメリアの機体照合システムに当てはまらないところを見て、相手は新型のMSかMA…または戦闘機と判断するのが妥当だろう。

 

 

「相手の取っているコース。これは昨日敵が撤退したコースだな。となると、キャピタル・アーミィか」

 

「昨日の今日で攻めてくるなんて…アーミィの戦力はそんなにあるんです?」

 

 

ベルリの疑問に、それはこちらが聞きたいくらいだとクリムが苛立った様子で言った。先行する機影は、どうやらベルリも知らない機体らしい。

 

アメリアやゴンドワンも、軍部が力を持ったとはいえこんな短期間に新型機を投入してくる軍事力は有していなかった。宇宙をよく知るキャピタル・ガードから派生したアーミィなのだから、当然と言えば当然なのかもしれないが、それでも異様な戦力増強には変わりはない。

 

 

「本艦が近づいてくるアンノウンと戦闘し、囮となることでカーヒル大尉が提案したように宇宙艦隊がキャピタル・タワーを占領することができれば…」

 

「キャピタル・タワーを占領する!?本気なんですか!?」

 

 

ドニエル艦長の言葉を遮るように、ベルリが驚愕の声を上げて詰め寄ろうとしたが、咄嗟にカーヒルとクリムがベルリの行手を遮る。

 

キャピタル・ガードとして、神聖なるタワーを制圧すると聞かされて黙っているわけにはいかないのだろうが、ここは個人の意見を散発する場面ではないとベルリに態度で示した。

 

 

「まぁ、こうやって宇宙に上がれる船をアメリアが作ればそういう発想にもなるだろう」

 

「キャピタル・タワーは宇宙と地球を結ぶへその緒で神聖なものなんですよ!?そんな場所を占領すればバチが当たって祟られますよ!」

 

 

はぁ、祟りかぁっとドニエル艦長はうんざりしたように帽子を深く被った。スコード教という宗教の信者なのだから、当たり前の感覚なのかもしれないが、こちらとしては信じる神は居ないのだ。

 

それに、スコード教の教えに準じていては見えないものもある。

 

 

「宇宙の脅威ってものを君は知っただろう。ベルリ・ゼナム。Gセルフのあの性能は地球にある科学技術では実現できない。装甲からシールドを展開して、そのシールドはカットシーのビームサーベルの出力を何倍も上回っていたんだ」

 

 

現に、Gセルフは規格はヘルメスの薔薇の設計書に載っているようなユニバーサル・スタンダードの規格で製造はされているが、機体装甲や、ベルリが行った不可視のフォトンシールドの原理など不明な点が多すぎる。

 

技術解析ができないほどの機体は、宇宙からラライヤと一緒に落ちてきた上に、ベルリとアイーダしか現在は操縦できないのだ。

 

 

「トワサンガという宇宙の脅威ってやつが本気を出せば、キャピタル・タワーも、クラウンも無事では済まない。そうなれば運搬しているフォトン・バッテリーは失われ、エネルギーの供給源を奪われた人類は滅ぶしかない」

 

「だからと言って、タワーを占領する理由にはなりませんよ!」

 

 

それでも抗議するベルリに、カーヒルやドニエル艦長は言い聞かせるような声ではっきりと言った。

 

 

「占領ではない。今後はキャピタルに変わってアメリア政府がタワーを管理、運営するのだ」

 

「そんな理屈を!」

 

「納得ができないなら君は人質でいてもらう。拘束していると俺は言ってるよな?」

 

 

釘を刺すような声に歯を食いしばるベルリ。残念だが、もう個人的な感覚でどうにかなる状況ではなくなっている。アメリアの宇宙艦隊が周回軌道上へ上がると言う現実と、宇宙からの脅威が確認された段階で、キャピタル・タワーとスコード教の神話は崩れ去ったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

エルフ・ブルックに乗るマスク大尉率いるキャピタル・アーミィの編隊はすでに海面を離れたメガファウナを捉えていた。

 

メガファウナはミノフスキー・クラフトである翼端を展開しグングンと周回軌道へ上がるために上昇を始めている。

 

 

『海賊船め。宇宙へあがろうという言う魂胆か!』

 

『マスク大尉、私が先行して注意を引きつけます』

 

 

先行するエルフ・ブルック1号機を庇うように出たのは、2号機に乗るパイロットだ。

 

レイカ・マツオカ少尉。マスク大尉と同じく、クンパ大佐に推薦される形でエルフ・ブルック2号機を与えられた彼女は、マスクの副官としての役目を担っていた。

 

 

『マツオカ少尉は私に随伴しろ!貴重なエルフ・ブルックを粗末に扱うなよ!』

 

 

前に出ようとするレイカの機体を押しのけて、マスクはさらにメガファウナに接近する。調査部が与えてくれたマスクはいい性能をしている。初めて触る機体が教習で慣れ親しんだレクテンの如く手足に馴染む。

 

 

『海賊め!宇宙になど上らせるものかよ!』

 

 

対するメガファウナも、追従してくるマスク部隊への迎撃作戦を始めようとしていた。アメリアから補給されたフライスコップが先行し、グリモアも後に続く。

 

尖兵隊が出た後、アイーダの乗るGアルケインも空中戦準備をしようとしていたが、即座にアダム・スミスに叱責された。

 

 

「アイーダ姫は甲板で船の護衛です!」

 

「何故ですか!?アルケインも飛べます!」

 

「冗談言わんでください!」

 

 

Gアルケインのスラスターはまだテスト出来てないのです!後ろにいるメカニックのスタッフも叫んで、無理矢理でも空中戦に出ようとするアイーダを引き止めていた。

 

 

「ですが!」

 

 

扱いに不満を臆面なく出すアイーダのアルケインへカーヒルが手を置き接触回線で落ち着くよう促した。

 

 

「言い訳は聞きません!第一、テストもしていない機体で空中戦なんて無謀です!それともまた走らされたいですか?!」

 

 

ここで無理やり出れば、またあの地獄のようなパイロットスーツマラソンをする羽目になる。そう言われて思わず口つぐんだアイーダを横目に、カーヒル率いるグリモア部隊も出撃準備に入った。

 

 

「ルワン機、オリーバー機出ました!カーヒル機は船の護衛につきます!」

 

「本隊は下から来るぞ!」

 

 

メガファウナから反転して迎撃に出た先発隊は、メガファウナから見て下から敵部隊が上がってきていることを捉えていた。

 

その部隊を率いるクリムが先陣を切って飛んでくるカットシー部隊へ攻撃を仕掛ける。

 

 

「展開が遅いから迎撃をするんだ!!」

 

『我々の展開が遅いように見えるだろうが、こちらのカットシーの編隊は伊達ではない!!』

 

 

放たれたビームの先行を前に、バラバラに飛んでいたカットシーの編隊は身を隠すように縦一列に飛んでゆく形へと切り替えた。先頭の一機がビームをシールドで防ぐと同時に、後方にいる別のカットシーが反撃を繰り出す。

 

一矢乱れぬ反撃はグリモアが乗るフライスコップを貫いた。

 

 

「やられた!?なにぃ!?」

 

 

爆発に気を取られたクリムのモンテーロの前に、マスクのエルフ・ブルックが立ち塞がった。

 

 

『変形をするのだよ!!この機体は!』

 

 

音を立てて飛行形態から人型へと変形してゆくエルフ・ブルック。だが、その手にはビールライフルやシールドは備わっていない。

 

武装がない機体で目の前にやってきてる相手に、クリムはニヤリと笑みを浮かべ、ジャベリンを構えた。

 

 

「変形して武器なしでやってくるとはなぁ!!」

 

 

武器がないと判断して真っ直ぐに懐へ突っ込んでくるモンテーロを前にマスクの怒りは一気に吹き上がった。それは油断というものだぞ、アメリアのモビルスーツ!

 

 

『ふざけているのかぁ!!!』

 

 

怒号のような叫びと共にエルフ・ブルックの両肩、両腕部に備わるレーザー砲が火を吹いた。おびただしい数のビームの嵐が迂闊に近づいたクリムのモンテーロへ浴びせられ、その一撃は構えていたジャベリンとビームライフルを完全に破壊したのだ。

 

 

「ビームだとぉ!?ちぃ!ライフルを直撃!?」

 

 

ビームの網の中にいる虫のようだなぁ!マスクは高揚した感覚のまま、トドメとエルフ・ブルックの両手をバンッと合わせてビームの狙いを定めた。

 

 

『はーっはっはっ!!これで死ねや!宇宙海賊!!』

 

「ジャベリンはまだある!!」

 

 

収束されたビームの一閃を何とか避けたクリムはエルフ・ブルックの頭上を取って予備のジャベリンを装備する。だが、猛追するマスクの猛攻に耐えれるほどクリムの防御は堅牢ではない。

 

あわやと言う場面であったが、追撃しようとするエルフ・ブルックの横合いからビームの光が差し込まれた。

 

邪魔が来ただと!?マスクが振り向いた先には3機のグリモアとフライスコップが迫ってきていることを捉えた。

 

 

「クリム!!天才が前に出過ぎですよ!」

 

「カーヒル!援護するぞ!」

 

 

グリモアはアメリアの標準的な機体ではあるが、その分信頼性は高い。

 

構えたショートバレルのビームマシンガンは、クリムを捉えようと迫るマスクを牽制するには充分な威力を発揮した。

 

 

「カーヒル大尉の機体が助けに来てくれたのかぁー!?」

 

 

衝撃で機体バランスを崩したモンテーロ。3機のグリモアに対応しようとするマスクのエルフ・ブルック。

 

その間に滑り込むように、もう一機のエルフ・ブルックが参戦した。

 

 

『マスク大尉!迂闊です!』

 

『マツオカ少尉か…!?あの動き!』

 

 

近づいてくるルワンのグリモアを、レイカが操るエルフ・ブルックがレーザービームで牽制する。ビームの槍を掻い潜ったルワンであるが完全にコンビネーションが崩された。

 

 

「ちぃ!変形する機体は二機もいるのか!!」

 

「ルワン!こういう時はぁー!?」

 

 

カーヒルの声に呼応するように、ルワンとオリバーのグリモアがマスクとレイカのエルフ・ブルックを取り囲んだ。

 

 

「囲い込んで数で対処する、です!!」

 

 

数が多いなら、それで取り囲んで的を絞らせずに撹乱させ、相手の油断とミス、迷いを誘う。その瞬間に仕留める戦術は、大陸間戦争で何度もこなしてきたコンビネーションなのだ。

 

 

『囲まれた!?回り込んで…私を拾ってくれた大佐に恩返しをするんだ!邪魔をしないで!!』

 

 

クンパ大佐に拾ってもらった恩義を返せないままでは死ねない!レイカはスロットル引いて機体を横へ回転させながら、両腕と両肩のレーザービームを放った。それはまるでビームを撒き散らすコマだ。

 

 

「全方位にビームの嵐かよっ!!」

 

 

囲い込んで展開していたカーヒルたちを蹴散らすように放たれていたビーム。

 

その回転するレイカのエルフ・ブルックを横から突き刺すようなビームが飛来した。

 

 

『横合いから邪魔がくる!?』

 

 

ビームを撒き散らしていたエルフ・ブルックを止めたのは遅れてメガファウナから出撃したラリーの白い機体、ローンズーだった。

 

 

「無事か、カーヒル!ルワン!クリム中尉はなんのためのスラスターですか!動き回れば当たりはしない!!」

 

「隊長!」

 

「レイレナード大尉か!!」

 

 

その機体を目撃したレイカの感覚に、何かが触れた。言葉にし難い、ざわざわと心を逆撫でしてくるような嫌な感覚だ。それをレイカは知っている。どこかで体感した感覚だった。

 

 

『この…感覚…!?』

 

 

動きが鈍った隙にラリーの元へと離脱するカーヒルたち。ラリーはそのままグリモア編隊を通り過ぎて動きが止まったエルフ・ブルックへとライフルを構えたまま距離を詰めてゆく。

 

 

「二機の新型機!?アーミィの奴ら、ベルリを助けることを口実に新型機のテストを…」

 

『そうか、貴方が感じさせてくれたのね!強い感覚を!!』

 

 

突如として、レイカ・マツナガが駆るエルフ・ブルックが猛威を振るう。

 

全身のビームレーザー砲から光を垂れ流して、ラリーのローンズーの前へと立ち塞がったその姿は、まさに脅威と呼ぶにふさわしいオーラを纏っていたのだった。

 

 

 

 

 

デレンセン教官の今後について

  • 原作通りベルリの手によって戦死
  • 生き残るがアーミィとして敵に
  • 生き残ってメガファウナにくる
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