白き流星のレコンギスタ   作:紅乃 晴@小説アカ

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第十三話 強襲、マスク部隊(2)

 

 

 

キャピタル・アーミィの襲撃を察知したメガファウナは、カリブ海洋研究のドックから出港すると同時に、巨大なメガファウナ型のバルーンをフライスコップに乗ったグリモアに引っ張らせていた。

 

 

「ダミーの風船を出せ!時間稼ぎにはなる!」

 

「MS隊は直ちに発進させるんだ!」

 

 

緊急発進と迎撃体制の準備のため、ハンガーは一気に騒がしくなる。そんな中でパイロットスーツに着替えたベルリは、乗るように指示されたMS「ジャハナム」を前に素っ頓狂な声をあげていた。

 

 

「えぇ、これに乗るんですか!?」

 

「天才がラライアちゃんをGセルフに乗せて行ってしまったんだから仕方がないだろ!」

 

「けど、これ操縦できるんですか!?」

 

「ユニバーサル・スタンダードだ!貴様にならできる!」

 

 

ハッパやアダム・スミスたちに言われるままクレーンでコクピットに押しやられるベルリ。

 

それを傍で見ていたラリーは、手持ち無沙汰になったデレンセンを置くために休憩室を目指していたが、そこで驚愕の通信が入った。

 

 

「ラリー!お前さんにはベルリの教官殿の面倒を任せるぞ」

 

「はぁ!?俺がですか!?」

 

「こんな状況で捕虜を監視している余裕はないんだ!コクピットで監視さえしてくれればいい!」

 

 

そんな無茶な!と言う前に通信を切られてしまう。入れ替わるように出てきたルワンたちは、仏頂面のデレンセンを一眼見てから、面白がってラリーの肩を叩いた。

 

 

「隊長が拾ってきたんですから、責任を持って面倒を見てくださいよね」

 

 

離れ様にそんなことを言われて、ラリーはうんざりしたように肩を落とし、そんな扱いをされたデレンセンは憤慨していた。

 

 

「俺は捨てられたペットではないぞ!まったく!」

 

「ラリー大尉は予備のグリモアへ!ローンズーはまだメンテナンス終わってないんだから!」

 

 

ハンガーの奥で装甲もつけられていない剥き出しのローンズーを見れば一目瞭然で、ラリーは案内されるまま予備のグリモアへと向かう。

 

どうやら今回はアイーダ姫もアルケインで出撃するようだな、とデレンセンをグリモアのコクピットシートの後ろへと押し入りながら機体を起動させてゆく。

 

機体が動かせるようになった頃に、接触回線でアダム・スミスの声が聞こえた。

 

 

《さっさと猫撫で声の天才からGセルフを取り戻してこい!》

 

「は、はい!ベルリ・ゼナム、出ます!」

 

 

ルワンの操縦するフライスコップに乗ったベルリのジャハナムは姿勢を少し崩しながらもなんとか踏みとどまってカリブの海の空へと飛び立ってゆく。

 

アメリアの人型機。ジャハナムという新型の様子を見てデレンセンは心の内で呟く。

 

 

(アメリアの軍用MSも、こんなものを作り上げているのだな)

 

「俺の目的は対空迎撃だ。あまり騒いでコクピットから落っこちるなよ」

 

「ああ、頼む」

 

 

簡易的なシートベルトを腰に巻いたデレンセンを見て、ラリーのグリモアもフライスコップへと乗り込んでゆく。

 

 

「フライスコップ、コンタクト。いつでもいいぞ!」

 

「了解、発進します」

 

 

応答からすぐに機体はふわりと浮き上がる。すでに先鋒部隊は迫り来るキャピタル・アーミィの脅威と対峙するために前進を開始しているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『いいか、我々の目的はGセルフとラライア・マンディの奪還である!エルフ・ブルックの力を存分に見せつけるのだ!』

 

 

エルフ・ブルック編隊を率いるマスクはそう言って部隊の面々を鼓舞する。エルフ編隊のすぐ後ろ。数機のカットシーの後ろについてるダベーに乗るレイカは、試作機であるゾルトレイのモニターを操作していた。

 

 

(クンパ大佐は私を拾ってくださったのだから、その恩に報いるためにも…)

 

『全機、ビームを最大出力!目にものを見せてくれる!』

 

 

マスクが先行して足から巨大なビームサーベルと化すエネルギーを放出させた。

 

 

「島の向こう側から来る!?」

 

 

その光に気がついたアメリアの先鋒隊が、エルフ・ブルック部隊との戦闘を開始した。ビームが飛び交い、サーベルによって切り裂かれたフライスコップの残骸が空から落ちてゆく。

 

そんな戦いの光を見たラライアは、感覚の導くままGセルフを光の根元へと進めていった。

 

 

「ラライア、そっちに行っては…ちぃ!!」

 

 

ラライアの動きを監視していたクリムは、突如として動き始めた彼女の様子に戸惑ったまま後を追う。

 

しかし、頭上にはキャピタル・アーミィのカットシーが迫っていた。

 

 

『来たかよ!Gセルフ!』

 

「て、敵…!!」

 

 

レーザーとエネルギーをたぎらせるマスクのエルフ・ブルックが無邪気なラライアへ容赦なく殺意と敵意を叩きつけながら迫った。

 

 

『デレンセン大尉が捕まえ損なったその機体は、こちらではまだ調べきれていないのだ!』

 

 

何もできないまま、コクピット乗る中で縮こまるラライアは出力制御ができないまま、Gセルフを海中へと水没させてしまった。

 

 

「ラライアの乗っているGセルフなんだぞ!!」

 

 

カットシーの妨害をくぐり抜けたクリムが、水没するGセルフを庇うようにエルフ・ブルックと対峙する。モンテーロのジャベリンを持つ手と、ビームライフルを叩き落としたマスクだが、眼下のGセルフを追いかける隙がない。

 

気がつけば他の機体が沈んでゆくGセルフの救助へと入っていた。

 

 

『ちぃ、敵は邪魔を!!』

 

 

執着に囚われるマスク。初陣で足並みが揃っていないエルフ・ブルック部隊。その様子を頭上で観察していたレイカのゾルトレイは、新たにメガファウナ方向から上がってくる敵の姿を睨みつけていた。

 

 

『マスク大尉の動きは感情に振り回されている。これじゃあ全体的な戦い方は見えない…なら!』

 

 

先行していた部隊の被害を抑えるためと、ラライアのGセルフを回収するために動いているベルリを援護すべく、ラリーは敵の注意を引きつけるために行動を開始する。

 

 

「ベルリたちはGセルフを回収したようだな!そして天才はいつも余計な真似をする!」

 

 

その言葉の矛先には、予備のジャベリンを引き出す間も無くマスクに追い回されているクリムの姿があった。

 

 

『手負いは逃さない!!』

 

「振り切れない!?」

 

 

機体の加速性能はエルフ・ブルックのほうが圧倒的に上だ。敵から放たれたミサイルをクリムは卓越した操縦技術で掻い潜るが、ビームが搭載された腕がモンテーロを引き裂こうと伸びてゆく。

 

その瞬間、エルフ・ブルックの背部スラスターにビームライフルの一撃が直撃した。

 

 

『ビーム!?ええい、新型の助っ人か!!』

 

 

くそっ!直撃はしたはずなのに軽傷かよ!ラリーはグリモアに備わる短身のビームマシンガンを当てたがエルフ・ブルックは元気に動き回っていた。

 

短身のビームでは距離が離れるごとに威力がガクッと落ちてゆく欠点がある。相手を確実に撃つなら中距離か、近距離まで間合いを持ち込むしかない。

 

その流れるような動きをラリーのコクピットシートの背後にいるデレンセンは目を向いて目撃してきた。

 

あらゆる動きに無駄がない、洗練された攻撃だった。しかも短身のビームマシンガンという長距離狙撃に全く向かない武器で、はるか前方で高速機動を行うエルフ・ブルックの背面を見事に捉えている。

 

軌道上の戦い。目の前で機体を操るパイロットは流星の如き高速機動の最中でもデレンセンが操るエルフ・ブルの四肢を容赦なく削り取っていったのだ。それもビームライフルではなく投擲武器で。

 

 

「クリム中尉の機体を落とさせるわけには!」

 

 

さらに距離を詰めようとフライスコップに速度を出すよう指示を出したと同時、その行手を遮るようにラリーの頭上からビームの雨が降り注いできた。

 

ラリーもデレンセンも、全天周型モニターの真上を見上げる。そこには四枚のバインダースラスターで空から降りてくる機影があった。

 

 

『その出てきた出鼻を挫く!!』

 

 

増援がマスク部隊にたどり着く絶妙なタイミング。

 

それを見計らってレイカ・マツオカが操るゾルトレイがラリー率いる増援部隊へと強襲をかけたのだ。

 

 

「羽付き!?キャピタル・アーミィの新型かよ!!」

 

 

フライスコップから離れたラリーは、頭上から迫るゾルトレイへ応戦する。中距離ならば!ビームマシンガンが火を吹いたが、レイカは四枚のバインダースラスターを巧みに操り、その砲火を掻い潜ってみせた。

 

本来なら武器を持たない機体ではいるが、配備されたビームライフルを構え、狙いを定める。

 

 

『この一撃の手向を受け取りなさい!!』

 

 

迸った一閃はラリーのグリモアが持つシールドに直撃し、粉々に砕けさせた。

 

 

「この程度の攻撃で沈められるか!!!!」

 

 

乱射された攻撃から身を翻して距離を取る。

 

ゾルトレイの射程位置から逃れると、スラスターの負荷を下げるために待機してくれていたフライスコップへと着陸した。

 

 

「エルフ・ブルックの編隊に新型だと!?」

 

「キャピタル・アーミィが、あんな編隊を持っているなんて!」

 

 

レイカのゾルトレイの攻撃に呼応するように、マスク部隊のエルフ・ブルックが続き、カリブ海の空は一気に乱戦へと発展してゆく。

 

 

「デレンセン!キャピタルは本当にベルリとノレドを助けるために戦争をしかけているのか!!」

 

 

ビームの応酬を繰り広げながらラリーはGに耐えるデレンセンに向かって叫び声をあげた。

 

あんな不可思議な機体、デレンセンも知らなかった。エルフ・ブルックがこんなにも早く量産されていたこともだ。

 

 

『アメリアのエリート面した連中なぞ!』

 

「狙われた!?まずい!カーヒルぅ!」

 

「アイーダ!!」

 

 

足元のフライスコップが撃ち抜かれたアイーダのGアルケインが海へと落ちる。咄嗟に護衛に回ったカーヒルだが、エルフ・ブルックの数に押されていてはどうしようもない。

 

どうする…!!

 

囲い込むように迫るエルフ・ブルック。その腕は、突如してビームの刃によって切り裂かれた。

 

 

「Gセルフ!ベルリくんか!!」

 

 

カーヒルとアイーダの危機を救ったのは、ラライアからGセルフを返してもらったベルリだった。

 

ベルリが睨みつけるカリブの空は、色鮮やかなビームと爆発で瞬いていた。

 

 

 

 

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