白き流星のレコンギスタ   作:紅乃 晴@小説アカ

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第十三話 強襲、マスク部隊(3)

 

 

クリムが操るモンテーロは、その肩に備わる大型翼シールドを使った航空戦が基本的な戦術だった。

 

マスクのエルフ・ブルックは、可変式ではあるものの所詮は宙域での戦闘を想定した期待で、反応速度は空戦に優れるモンテーロよりも劣っている。

 

 

『各機は体制を維持!敵は手強いが、地の利はこちらにある!!』

 

「そうかい!!」

 

 

放たれたレーザーをジャベリンを高速回転させて防ぐクリム。

 

たしかに出力では負けてはいるだろうが、低高度での戦いならばモンテーロに分がある!!

 

攻撃を防ぎ切ったクリムはジャベリンを投擲し、マスクへの牽制をかけてゆく。

 

 

『ノコノコとやられにきたんですか、貴方たちは!!』

 

 

一方で、ラリー率いるアメリアの部隊は、レイカのゾルトレイと空戦を展開していた。

 

不用意に前に出てきたフライスコップを撃ち落としたレイカは、土台を失った敵を睨みつける。

 

 

『反応が遅い!下手くそ!!』

 

 

手に持ったビームライフルで敵を撃ち抜く。その動きはマスクと共にエルフ・ブルックに乗っていた時よりも洗練されているように感じられた。

 

 

「ちぃ、この機体!!」

 

『アメリアの機械人形が!!』

 

 

距離を潰して接近戦を仕掛けてこようとするグリモアを、すれ違い様に両足を切り裂い、そのままビームライフルで機体を貫いた。

 

爆散する敵を背後に、レイカは辺りからくるプレッシャーを感じとる。

 

 

『無様に前に出てくるからそうなる!マスク大尉、Gセルフがきた!!』

 

『Gセルフめ!海から蘇ってきたか!』

 

 

ラライアから返してもらったGセルフを駆るベルリ。すかさずモンテーロの援護に入ったGセルフをマスクはモニター越しに睨みつけた。

 

乱舞。直滑降。

 

Gセルフの動きは機敏だった。寄ってたかってくるマスク部隊のエルフ・ブルックやカットシーの腕や翼をビームサーベルで切り落とすその姿は、どこか歴戦の兵のように安定した戦いをしているように魅せている。

 

 

(あれにベルリ生徒が乗っているのか…!?)

 

 

デレンセンの驚愕をよそに、マスクのエルフ・ブルックがモンテーロの迎撃を振り切ってGセルフへ強襲をかけた。

 

 

『Gセルフは海賊が使っていいものではない!!』

 

「お前たちはぁ!」

 

 

網のように放たれるエルフ・ブルックのレーザー網を掻い潜ったベルリは、ビームライフルを撃ち放ちながら空に向かって叫ぶ。

 

 

「Gセルフが空から降ってきた意味を考えろぉお!!」

 

 

ベルリが戦線に加わり、戦況は一気に乱戦状態へと陥った。マスクを追っていたモンテーロも合流。復帰したアイーダやカーヒルの機体。

 

そして、ラリーとデレンセンが乗るグリモアにレイカ・マツナガが操るゾルトレイが立ちはだかった。

 

 

『あの白い機体…今はいない!?どうなってるわけなの!!』

 

「隊長!?」

 

「あの新型は危険だ!俺が惹きつける!」

 

 

異様な気配を出すレイカの相手に出たグリモアは、フライスコップの出力を上げさせて一気にゾルトレイへと距離を詰めた。

 

 

「ラリー大尉!!この性能では無理だ!」

 

「やってみなければ分からん!!」

 

「正気か、貴様ぁ!」

 

 

機体の性能差を見るだけでも、キャピタルの新型であるゾルトレイとグリモアでは圧倒的にグリモアが劣る。それを承知の上で、ラリーはデレンセンの反対を押し切った。

 

 

『一つ目?違う!お前なんかじゃない!!白い機体はどこにいるの!!』

 

 

ビームライフルの乱射を巧みに躱す。

 

せめてグリモアのナイフが届く間合いまで距離を詰めたい。ラリーの動きはグリモアの機体に多大な負荷をかけてゆき、関節部が過負荷でエラーを吐き出していた。

 

なんとか攻撃を掻い潜ったラリーだったが、その眼前に突如として現れたビーム刃に目を剥く。

 

 

「袖からビームサーベルを出した!?」

 

『ゾルトレイを甘くみられてはいけないのよ!!』

 

 

手首部に備わるビームサーベルの一閃は、グリモアの肩装甲の一部を切り飛ばした。機体性能がよくても、隙はできる!

 

振り抜いた腕の隙を狙い、ラリーはグリモアのダガーを投擲。ゾルトレイが保持していたビームライフルを弾き飛ばした。

 

よし、これで遠距離からの攻撃は…と息を吐こうとした途端、袖のような格納部に収められたビームがグリモアの機体を掠めた。

 

 

「ちぃ、袖にもビームライフルも隠しているのか!?」

 

 

ビームを腕に備えてるのに、なんでビームライフルを持ってたんだよ!とラリーが悲鳴をあげるが、レイカには関係がないことだ。腕からのビームで牽制し、距離を詰める。

 

 

「右から来るぞぉ!!」

 

 

デレンセンの怒号のような声が上がる。咄嗟にラリーはフライスコップから飛び上がって横一閃に放たれたビームサーベルを飛んで躱した。

 

お返しと言わんばかりに近づいたゾルトレイにビームマシンガンを放つが、四枚のバインダースラスターで一気に距離を離される。

 

攻撃も回避も一級品だ。

 

 

『この機体、とても肌に馴染む!ふふふ。いいわ、面白くなって…』

 

 

舌なめずりしたレイカ。その目の前を緑色のビームが横切った。近くにいたカットシーがビームの直撃を受けて、破裂するように吹き飛ばされる。

 

 

『横合いから邪魔を!?』

 

『ラッセルのカットシーが!!ええい、アメリアにはあんな兵器すらあるというのか!!』

 

 

島を楯にするように出てきたのは、アメリアが誇るMAであるアーマーザガンだった。ミック・ジャックが乗るその機体はビームを大量に吐き出して、迫っていたアーミィの敵機を蹴散らしてゆく。

 

 

「Gセルフとアルケインが下がる!」

 

「アーマーザガンをよく持ってきてくれた、ミック・ジャック!」

 

 

敵の隙をついて、補給に戻るアルケインとGセルフ。アーマーザガンにはモンテーロも合流して、形勢はこちらに傾きつつある。

 

そんな戦況でも、ラリーのグリモアはレイカの乗るゾルトレイにしつこく追い回されていた。

 

 

『そんな機体で、このゾルトレイに勝てるとでも思っているの!?』

 

 

袖下のビームを乱射するゾルトレイの動きに合わせて、ラリーも回避はするがこのままではジリ貧だった。フライスコップのパイロットも動きを合わせるのに必死で、攻勢に出るところの話ではない。

 

 

「ちぃ…!ここを通すわけには…!」

 

 

ラリーの後ろには捕球を受けるGセルフや、撤退する友軍機がいる。ここでやっかいこの上ない相手を抑えきれなければ、戦況を覆される危険があった。

 

思考を続けるラリーに、デレンセンはリニアシートの固定を外して静かに言葉を発した。

 

 

「ラリー大尉、ほんの僅かでいい。機体を安定させてくれ」

 

「デレンセン大尉、何をするつもりだ!」

 

「フライスコップに乗り込む」

 

「本気か!?」

 

 

思わず振り返ったラリーだが、すぐに飛んできたビームを躱すために視線を戻した。こんな空戦状態でフライスコップに乗り移るなんて正気の沙汰じゃない。だが、デレンセンはそれが最適だと感じ取っていた。

 

 

「でなければ、ここをどうにもすることはできない!あんな機体がキャピタル・アーミィにあるなど…!」

 

『ちょこまかと飛び回って!!』

 

「いいのか!?」

 

「ああ、頼む!」

 

 

わかった、とラリーは答えるとゾルトレイの攻撃から逃れるために海面目掛けて急降下する。機体を持ち上げて、なんとかギリギリで姿勢を安定させると、グリモアのコクピットハッチを開いた。

 

 

「チャンスは一度だ!いいな!」

 

 

背後から迫るビームの雨。それでもラリーは機体を微動だにさせなかった。コクピットハッチに備わるワイヤーで降りたデレンセンは、グリモアの足に捕まって準備を整えた。

 

 

「3、2.、1!」

 

 

一気に駆け抜けてフライスコップの操縦席に繋がるハッチを開けると、驚いた顔をして振り返るアメリアのパイロットに、デレンセンは怒鳴りつけた。

 

 

「パイロット!私に操縦を変われ!」

 

 

操縦席についたデレンセンは、フライスコップを自在に操ってゆく。アメリアのパイロットはすぐにデレンセンの補助に回った。機体が急上昇し始め、レイカは空に登ってゆくフライスコップにビームを放った。

 

だが、ビームは当たることなく機体から大きく逸れる。

 

上昇時の気流を利用しているというの?その疑問を口に出す前に、振り向くグリモアから放たれるグレネードを機体をずらして避ける。

 

 

『動きが変わった?けど、その程度の情けない機体で!』

 

 

レイカは動きが変わったグリモアを深追いする。それが仇となる。

 

マスクは目を疑った。さっき退いたGセルフが色合いを変えて新しいバックパックを背負ってこちらに飛んできていたからだ。

 

 

『Gセルフはまた新しい背負いものを背負ってきたのか!!』

 

 

マスクの攻撃を避けるベルリだが、トリッキーパックを身につけるGセルフは思いの外出力が不安定だった。

 

 

「しゅ、出力が高すぎて機体が安定しない!」

 

 

メガファウナを模した風船にぶつかっては、飛んできたアイーダのアルケインに受け止められる。

 

 

「ミック・ジャック!攻撃が散漫になっているぞ!」

 

「中尉はそう言ってるだろうけど…ビームが安定しない!!」

 

 

かたや、ビームが安定していないアーマーザガンは開き直って格闘戦へと主体を変えていた。巨大なアームでぶん殴られたダベーはひらひらと落下するが、海面スレスレで体制を立て直す。

 

あんな板っぱちすら落とせないなんて!憤るミックの姿を感じ取ったのか。はたまたメガファウナの風船を見たからか。

 

まるで子供騙しのような戦い方に、マスクの怒りは限界を超えた。

 

 

『貴様たちは…ふざけているのか!!敵はここにいるのだぞ!!』

 

 

風船なぞ、とメガファウナの風船を打ち落とすマスク。本来なら背後にも気がむくか、レイカの進言で迫るGセルフに気づいていたはずなのに、マスクが気がついた頃には、もう懐に入られていたのだ。

 

 

「Gセルフの力はぁ!!」

 

 

淡い燐光がGセルフを象って飛んでゆく。その直撃を受けたマスクの機体はほんの僅かな間、まるで麻痺にでもかかったかのように動けなくなった。

 

 

『な、なんだ!?このシールドは!!』

 

「隙ができた!!」

 

 

身動きができないマスクのエルフ・ブルックの片腕を切り裂いたGセルフ。

 

機体制御ができなくなったマスクはカリブ海に浮かぶ小さな無人島に激突しながらも、機体出力を振り絞らせた。

 

 

『マスク大尉のエルフ・ブルックが!?』

 

「よそ見!!」

 

 

マスクの情けない姿に目を奪われたレイカの機体にラリーは銃口を向けた。致命的な一撃は避けたが、ゾルトレイの片腕がビームマシンガンの餌食となってしまった。

 

 

『この機体は、大佐が私に託してくださった機体なんですよ!!』

 

 

そう負け惜しみのようにレイカは言うと、撤退するマスクと共にカリブ海から離れてゆくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「引いたのか…?」

 

「みたいだな、相手の編隊の損耗率を見ても的確な引き際だ」

 

 

息を切らしてグリモアを振り回していたラリーに、デレンセンも疲れた様子でそう言った。あの戦い方、かなり危険だ。誰かを助けるためではなく、誰かかから何かを奪う戦い方だと感じ取っていたデレンセン。

 

ミノフスキー粒子も薄くなった頃、

 

 

「ぁああー!!?」

 

 

ベルリの鈍い悲鳴がコクピットに響き渡る。

 

 

「ベルリ、どうしたんだ!?」

 

「アイーダさんがいないんですよ!!」

 

 

たしかに、キャピタル・タワーからアンノウンが発進したと彼女は言っていたような気がする。ベルリはすぐに機体を宇宙へ向けて飛翔させていった。

 

 

「そう言ってすぐに宇宙に向かっていけるの、俺はすごいと思うよ」

 

「ベルリは恋を知ったのか?」

 

「どうだか」

 

 

デレンセンの意地悪そうな言葉に、肩をすくめて返す。

 

しばらくすると、アイーダと一緒にキャピタル・タワーの運行長官である母、ウィルミット・ゼナムを連れ帰ってきたベルリに、メガファウナの一同は頭を抱えたのだった。

 

 

 

 

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