白き流星のレコンギスタ   作:紅乃 晴@小説アカ

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第十八話 ウーシァ、強襲

 

 

 

「Gセルフとラライヤ・マンディを当方に引き渡せと命令しているのだ!」

 

メガファウナは危機に陥っていた。

 

ベッカー・シャダムが乗るキャピタル・アーミィの新型量産機「ウーシァ」のビームライフルの銃口が、ドニエル艦長たちがいるブリッジへ向けていたのだ。

 

ラリーやデレンセンよりも先に戻っていたアイーダは、カーヒルやドニエル艦長の静止を聞かずにアルケインで出撃していたが、他のアーミィの機体によって進路を妨げられている。

 

ビームライフルの銃口に緑光が灯り、ドニエル艦長たちが悲鳴のような声を上げた瞬間、ウーシァの真下から白い閃光がウーシァごとはるか上空へと持ち上げた。

 

「キャピタル・アーミィはどうしてそうも命令口調で!」

 

ギリギリで間に合った。ラリーは愛機のローンズーの出力を上げて、アーミィの新型をメガファウナの懐から一気に遠ざけてゆく。突然の攻撃に透明のエアバックに身体を支えられながらベッカーは緑色のカメラアイを光らせるローンズーを睨みつけた。

 

「白い機体……デレンセンを落とした奴かぁ!!」

 

「アイーダ様は後退!あとは俺とデレンセンでやる!カーヒルはさっさと姫様のフォローをしなさいよ!」

 

ラリーのローンズーに続き、デレンセンの操るモンテーロも出撃し、カットシーや残りのウーシァ相手に空戦で立ち回ってゆく。ビームの応酬の中、カーヒルのグリモアに誘導されてメガファウナの護衛に回ったアイーダは、接触回線を切ったのちにコンソールパネルに力なく拳を叩きつけた。

 

「す、すみません……役立たずの私……!」

 

狙撃も撃墜も、何もできなかった。静止を振り切ってまで出たというのにこの体たらくでは、自分は何も成長できていないのではと思えるほど、アイーダを追い詰めてゆく。悔し涙を流す彼女の視線の先では、ウーシァによる攻撃を華麗に捌くデレンセンとラリーの姿があった。

 

「キャピタル・アーミィはウーシァまで量産をしていたのか……チィッ」

 

ウィルミットからの要請でケルベスたちもメガファウナの警備に当たっていたが、アーミィが建造中だったウーシァをこんな早く実戦投入してくるなんて予想としてなかった。

 

『なんでレックスがアメリアの船にいるんだ!?』

 

密林をホバーで軽快に逃げてゆくレックスを追うカットシーを、横合いからラリーがシールドから体当たりをして進路を強制的に変えた。駄賃だと言わんばかりに翼をビームライフルで撃ち抜かれたカットシーを庇うベッカーは、面白いと好戦的な笑みを浮かべた。

 

「白い機体は俺がやる!デレンセンの弔い合戦だ……奴は……奴は、いいパイロットだった!」

 

ビームライフルの応酬。閃光がビグローバー周辺に広がる広大な密林地帯の上空を走り、ラリーの駆るローンズーは肩に備わるスラスターを軽快に吹かして迫るベッカーの追撃を躱した。

 

「ラリー!」

 

「来るな、デレンセン!こいつの狙いは俺だ!お前はメガファウナの警戒を……チッ!こいつ、できるな!」

 

応援に来ようとするデレンセンのモンテーロに光通信を発しながら、ビームの光を掻い潜るラリーは、その誘導の巧さに思わず舌を打った。

 

MSの白兵戦のセオリーは自らの得意な間合いに相手を誘き出すところから始まる。ビームライフルは遠距離から敵を屠る役割を果たすと同時に、敵の選択肢を狭め、躱していると錯覚させながら退路を断つという戦術的な扱いも可能とする代物だ。

 

デッカーは新型のウーシァを任せられるほどの腕前。その激情的な口ぶりに似合わず、彼の闘い方は理にかなった側面が強いとラリーには感じられた。

 

「惚れたぜぇ、俺はこのウーシァに惚れたァッ!」

 

ライフルとは逆の手にビームサーベルを構えてラリーのローンズーに体当たりに等しい突貫を仕掛けるデッカー。ウーシァの自重に任せた落下で、密林の木々を薙ぎ倒しながら二機は白兵戦へともつれ込んでゆく。

 

「離れろよ……!」

 

推力による力任せな押しにラリーは蹴りを入れて距離を取る。密林地帯の沼地に足を沈めながらも、すかさずサーベルを振りかざして襲いくるウーシァ。前のめりな奴だな!フットペダルを踏み込み後ろへ飛び退くと同時、ローンズーのメインカメラのギリギリをウーシァのビームサーベルが横切った。

 

「躱したのか!?俺の一撃……ッ!?」

 

驚愕と同時にベッカーの胃が裏返った。何が起こったのか理解できたのは、自分の機体が泥沼に大の字になった時だ。ベッカーの放ったビームサーベルの一閃の隙をついて、伸びたウーシァの腕を相手が掴み、そのまま投げ飛ばしたのだ。

 

「ウーシァはぁ!その程度では終わらん!!」

 

トドメを刺そうとビームライフルを向けたラリーめがけて、デッカーは雄叫びと共にタックルを繰り出し、再び大木を薙ぎ倒してローンズーを突き飛ばした。

 

「野郎っ!!」

 

地面に倒れる間際、スロットルを引き込み背面スラスターの出力を前回にしたローンズーは、背面飛行をするかの如く密林地帯を飛翔し、そのまま上空へと機体を引っ張り上げた。無理やり機体を起こした結果、ラリーの肉体に強烈なGがのしかかるが、そんなことを気にしている場合じゃない。

 

「……ハァッ!その機体が宇宙用の機体だってことは!」

 

「飛んだ!?こいつ、姿勢が整う前に……!」

 

そのままラリーは機体を反転させ、まだ地に膝をついているウーシァめがけて直滑降に攻撃を仕掛けた。ウーシァは小回りが効く分、反応についていけない。そう踏んだ上での戦略だったが、ベッカーは怯むことなく応じて魅せる。

 

「ビームサーベルでしょおがぁ!」

 

両の手にビームサーベルを持ち、それを高速回転させて擬似的なIフィールドを形成。その力場に斬りかかったラリーのビームサーベルも過剰反応して、ローンズーごとビームサーベルが吹き飛ばされたのだ。

 

「防いだ!?やるな、アーミィのパイロット!」

 

ビームサーベルを回転させて擬似的にIフィールド力場を生じさせた機転は賞賛に値する。ラリーはデレンセン並みの好敵手を前に、ニヤリと笑みを浮かべた。パイロットは皆、強さを求める者。素直に敵を称賛するラリーに、ベッカーもウーシァの性能の高さと戦いの高揚感にテンションが上がりぱなしだ。

 

「ふははは!流石は白い機体だ!この俺をここまで手こずリャ……ッ!?」

 

再び戦いを再開しようとした瞬間、ジャングルの木々を吹き飛ばして現れた緑色の塊がローンズーを横切って、無防備なウーシァのボディに直撃。

 

次いで、その真横の木々の合間から出てきたのは、ベルリの乗るGセルフだった。

 

「いっちゃええええ!!」

 

ベルリの絶叫と共に高トルクパックから受けた恩恵のまま、激突に怯んだままのウーシァの顔面をGセルフは華麗に殴り抜いた。エアバックに包まれ吹き飛ぶベッカーへ追いつくと今度は蹴り。散々な目に遭うベッカーのウーシァに一部始終を見ていたラリーは思わず口を手で覆った。

 

蹴りで吹き飛んだウーシァはバラバラと部品をこぼしながら何回転か地面を転がり、最終的な沼地に頭から突き刺さる。ブクブクと音を立てて頭から沈んでゆく様は哀れみすら覚えさせるものだった。

 

「無事ですか、ラリーさん!」

 

「あ、あぁ、助かったよ。……その、ゴツいアーマーは使えたのか」

 

横に着地して近距離のレーザー通信で話しかけてきたベルリに引き気味に応じるラリー。たしか、ラリーとデレンセンがメガファウナに到着した頃は、メカニックのハッパが高トルクパックを接続しようと躍起になっていたのだが、よもや戦闘中に間に合わせるとは思っていなかった。

 

「高トルクパックのおかげです」

 

そう言ってにっこりと笑うベルリに、ラリーは乾いた笑いで返し、沼へ沈んでいった好敵手に心の中で敬礼を打って、ベルリと共にメガファウナへ帰投するのだった。

 

 

 

 

 

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