白き流星のレコンギスタ   作:紅乃 晴@小説アカ

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プロローグ,白き流星、R.Cに立つ

 

 

悔いのない人生かと聞かれたら、自分なりに良くできた人生だったと思う。

 

気がつけば放り込まれた戦いの世界ではあったが、戦友もできたし、全てを教えることができた弟子もいた。

 

子にも恵まれたし、世界を少しは良くできる方向に向けることもできたと思う。大きな大戦を2度経験した人類は、異種族間の憎しみを宇宙に向けて、新たなるフロンティアに向けた大いなる旅路へと踏み出してゆく。

 

広大な冒険へと踏み出してゆく若い世代の背中を見つめながら、俺はその人生に幕を下ろした。

 

悔いはない。懸命に生き抜いた人生だった。多くの助けられなかった命はあったが、それに似合う何かを得れたようにも思えた。

 

だから、俺はあの世界で生き抜くことができて良かったと心底思って死ねたんだ。

 

なのに。

 

どうして。

 

何故。

 

 

 

 

 

俺は今、コクピットに座って大気圏外スレスレから地面に落ちて…

 

 

「どぉなってるんだぁ!?」

 

 

しばらく乗っていなかったはずのコクピットに座っている。それだけでも混乱の極みだと言うのに、声からして自分の肉体が死んだ時とは違うものだと分かった。

 

感覚的に全盛期に近い。しかもコクピットの何もかもが妙に馴染む。

 

このコクピットレイアウトはよく覚えている。

 

 

ZGMF-S07。

通称、ホワイトグリント。

 

パイロットである、ラリー・レイレナードが第二次ヤキンドゥーエ戦で搭乗したMSだ。

 

 

まぁそれに今乗ってるのも本人なんですけどね!!

 

まったく状況が理解できないまま、機体は引力に引かれて地球へと降下してゆく。

 

なんだ!?一体何がどうなってるんだ!?俺は死んだはずなのに、なんでまたこうやってMSに…え?これが死後の世界ってやつ?死んだ奴らがいく新たなるフロンティアってやつなの?

 

そんでもって死んでもMSに乗って戦えとか冗談じゃないんですけど!?

 

答えの出ない想像力が爆発し続けている間にも、機体は大気の薄い層から雲の真上あたりまで落下していた。

 

すると、丸い地球の地平線の彼方から影が見えた。

 

それはどんどん近づいてきて、次第に影は3機のMSからなる編隊だということがわかった。

 

 

『こちら、アメリア軍のカーヒル・セイント大尉だ。所属不明機に告げる。武装を解除し、当方へ投降せよ』

 

 

アメリア…軍?

 

聞いたこともない軍の名前に、俺はただ状況が飲み込めずにいた。機体はすぐそばまで近づいてきている。そのシルエットは俺が知るどのMSの形とも違っていた。

 

 

『接触回線で聞こえているな?パイロット、乗っているのか?生きているのか?』

 

 

ガシン、とずんぐりむっくりな機体の手が装甲に覆われたホワイトグリントのフレームに触れる。接触回線越しで聞いた声に、俺はひとまず答えることにした。

 

 

「こちら、オーブ軍所属のホワイトグリントだ。貴官のアメリア軍というのは聞き覚えはないが、どこの所属だ?」

 

 

常識の範囲内で問いかけた内容だったが、相手からの反応はない。しばらくしてから接触回線越しで伝えられた内容は、信じられないものだった。

 

 

『オーブ軍などはこの世界に存在しない。貴様、ゴンドワンの極秘部隊か?機体の識別コードも存在しないものだ』

 

 

オーブが、存在しない?

 

いやいや、そんなバカな話があってたまるか。相手が変にふざけているだけだろう。こちらとしてもふざけた状況でしかないんだけれども!あと気になることもあるんで問い合わせてもいいかな?

 

 

「失礼だが、今はC.Eの何年だ?」

 

 

ごく普通の質問をしたのだが、それもまた俺の期待を大きく裏切ることになった。

 

 

『コズミック・イラなど年号に存在しない。今はR.C。リギルド・センチュリーだ』

 

 

その瞬間、俺の中にあった常識と普通は粉々に吹き飛ばされてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

白き流星。

 

ガンダム

Gのレコンギスタ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー数年後。

 

R.C.1014年。

 

西暦後、人類が滅亡しかけた宇宙世紀(U.C)が終焉し1000年という月日が過ぎた。

 

生き残った人々は「リギルド・センチュリー(R.C.)」という新たな世紀を迎え、アムテックのタブー(技術進歩を自ら制限)をかけることで、再び繁栄を始めていた。

 

前世紀の遺物である軌道エレベータ。

 

慎重に復元・維持された通称、キャピタル・タワーは、宇宙から供給される唯一のエネルギー源『フォトン・バッテリー』を地球に搬入する唯一の経路として神聖視されていた。

 

かつては南米と呼ばれた大陸にある地球側基地とその周辺『キャピタル・テリトリィ』はまさに「聖地」であり、世界的宗教「スコード教」は宇宙からの恵みへの感謝と、技術の発展・進歩を禁じているからこそ現在の平和と繁栄があると説き、人々に浸透していた。

 

一方では、かつて「北米」と呼ばれたアメリア大陸の国家「アメリア」と、かつての欧州地域の国家「ゴンドワン」が、あたかも旧世紀以前のような大陸間戦争を始めていた。

 

彼等はより強力な武装を求め、禁忌である封印された宇宙世紀時代の技術を求めた。

 

結果、どこからかもたらされた「ヘルメスの薔薇の設計図」と呼ばれる技術データベースから旧世紀の技術を採掘・復元し始めてしまう。

 

ゴンドワンに先んじて、アメリアはいち早く宇宙戦艦を試作建造するが、国際会議の反発に遭い解体廃棄したと発表した。

 

だが密かに諜報独立部隊である「海賊部隊」に与えて運用を開始し、タワーからフォトン・バッテリーを強奪するなどの作戦を行わせ、宇宙技術の運用ノウハウを蓄積する。

 

キャピタル側も、従来の自衛組織キャピタル・ガードによる警備体制や装備見直しを迫られ、対外対抗組織「キャピタル・アーミィ」設立や対抗技術の導入を開始した。

 

また、アメリアは天体観測によって月周辺の小天体の活発化を知り、「宇宙からの脅威」が来襲する可能性について憂慮しはじめていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

キャピタル・テリトリィ。

 

宇宙と地球を結ぶ軌道エレベータの出発点があるこの場所は、フォトン・バッテリーを運搬するスコード教からすればまさに聖域と言えた。

 

そこに小隊規模で侵入しろなんていう命令を受けたのだから、司令部は正気かと疑うことになっても無理はなかった。

 

 

「天才クリム・ニックがタダをこねてくれなくて助かりましたよ」

 

 

先行する俺の機体に無線通信をしてきたのは、グリモアに乗るルアンだ。航続距離が長くないグリモアや、俺が乗る機体の補助をするために飛んでいるフライスコップには、戦友のオリバーが乗っている。

 

 

「天才でも、できることとできないことがあるのさ」

 

「隊長からすれば、天才でも子供ですものね」

 

 

クリムの操縦センスは認めるが、まだまだ判断力が短絡的すぎる。ゴンドワンとの戦争で戦うことができるからと言って、子供が天才などになれるものかよ。

 

そう言い捨てると違いないですね、とルアンとオリバーも笑った。

 

宇宙に伸びるへその緒もだいぶ近くなってきた。ここからは戦闘空域となる。

 

 

「よし。各機、レーザー通信に切り替え。聴こえるな?ここはすでにキャピタルの領域、地球と宇宙を結ぶへその緒の真下だ。それがどう言う意味になるか、わかってるな?カーヒル!」

 

「はい、承知してます」

 

 

フライスコップの下に捕まる形で同行するグリモアは、アメリアとゴンドワンの大陸間戦争時代からの戦友であり、俺が指揮する部隊の副隊長であるカーヒル大尉だ。

 

ただし、彼がこの任務に参加しているのは俺の副官としてではなく、一人の男の誇示を示すためという意味合いの方が強い気がする。なにせ、未来の花嫁が囚われの身なのだから。

 

キャピタルタワーの地上発進基地でもあるビクローバーから花火が上がっているのが見える。どうも何らかの式典の最中だろう。好都合だ。

 

 

「目的はアイーダ・スルガン、およびGセルフの奪還だ。Gセルフが奪還困難の場合はアイーダ姫の救出が最優先だ。カーヒル、間違ってもライフルを使うなよ?お前の役目は姫様の救護と基地までの護送なのだからな!」

 

「了解、隊長もお気をつけて!」

 

 

ルワンの声に答えると同時に、俺はフライスコップから飛び立つ。

 

地上戦と宙域戦に特化したグリモアには空中戦は酷だ。故に、俺は別の機体に乗ってやってきている。

 

天才が乗る青いモンテーロと同型機種で、背中ら両方に備わる大型可変翼を捨てて、代わりに二基のスラスターを備えた高機動機体「ローンズー」。

 

 

「制空権を先に取るぞ!」

 

 

白と灰で塗装された機体はふわりと浮かび上がると、特に警戒せずに突っ立っているキャピタルの監視MSへと攻撃を開始した。

 

 

 

 

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