白き流星のレコンギスタ   作:紅乃 晴@小説アカ

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第一話 白きローンズーの飛翔

 

 

 

何故、俺がよりにもよってアメリアの海賊部隊にいるかだって?

 

理由は単純で、俺が空から落ちてきたその場所がアメリアとゴンドワンが空中戦を繰り広げている戦場の只中だったからだ。

 

何故か俺と共にこのリギルド・センチュリーの世界へと落ちてきた機体「ホワイトグリント」の性能を目の当たりにしたカーヒル率いるアメリアの軍によって、何も知らない俺は保護される運びとなった。

 

島のカリブ研究所へと運び込まれた機体と、俺は連日連夜の尋問。状況に流されるまま、カーヒルや他のアメリア兵を守ったこともあって酷い尋問などは受けることはなかったが、俺が生きていたコズミック・イラの世界と、この世界は随分と違うことがわかった。

 

最初はカーヒルや、カリブ研究所の面々も眉唾物の話だと笑い飛ばしていたが、ホワイトグリントの解析が進むにつれ、その笑いは起きなくなっていった。

 

国際規格、ユニバーサルスタンダードが基本の技術体系とまったく異なるシステムで作り上げられた機体。日にちが経つに連れて、システムが理解できない領域に差し掛かってきたところで、ようやく俺の立ち位置が決まった。

 

どうやら、俺は異世界へとやってきてしまったらしい。またか、とも思ってなんかない。ないったらない。

 

その後、アメリア軍のトップであるグシオン総監の計らいと、素性や機体のデータは隠蔽され、アメリア軍の大尉としての国籍と立場を貰うこととなった。

 

アメリアとゴンドワンの戦争がこう着状態となった頃、アメリアが最初に建造し、国際会議の反発に遭い解体廃棄したと発表された宇宙戦艦「メガファウナ」を母艦とした機密諜報部隊、通称海賊部隊が発足。

 

俺は大陸間戦争の功績もあり、メガファウナのMS部隊の隊長として部隊に配属されることとなった。

 

そして、配属された数日後。

 

軍のトップ、グシオン・スルガン総監の一人娘であるアイーダ・スルガンは、俺と同じように宇宙から落ちてきた機体「Gセルフ」に乗って海賊のようにキャピタルのクラウンを襲撃した際に、キャピタル・ガードによって囚われの身となってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『海賊部隊が姫を助けにきたのかぁ!?こちらは式典の真っ只中なんだぞ!!』

 

 

上がってきたのは近日発足されたばかりのキャピタル・アーミィ主力兵器であるMS、カットシーだった。盾とビームライフルを構えた敵が真っ直ぐに、制空権を取ろうとするこちらへと仕掛けてくる。

 

 

「式典中という警備が手薄になるタイミングこそ!!」

 

『アメリアのガラクタがぁ!』

 

 

足元ではキャピタル側の何らかの式典の真っ最中だ。ビームライフルなどの遠距離武器は使用できない。そう思った矢先、目の前のカットシーがビームを放った。真下に人がいる空中でだ。

 

 

「正気か!?式典には一般人もいるんだろうがぁ!!」

 

 

咄嗟に手首のモーター負荷を解除して、引き抜いたビームサーベルを高速回転させる。即席のビームシールドであるが、これが意外と取り回しが良いのだ。

 

ビームを切り刻むように弾き飛ばしてから、この機体、ローンズーの腰に懸架されてる近接投擲武器、ジャベリンをカットシー目掛けてぶん投げる。

 

狙いは外れず、ジャベリンはカットシーの出力を担うバックパックへと深く突き刺さった。

 

 

『ノズルを狙われた!?』

 

 

狼狽えたな!?

 

ビームサーベルを下げたまま空中で姿勢を崩したカットシーの背後へと着地してから、ジャベリンを引き抜くと同時に敵を海目掛けて蹴飛ばした。

 

 

「人が空を飛ぼうとするからそうなんだろう!?カーヒル大尉は!そこっ!!」

 

 

追加で飛んできたカットシーの頭部を再びジャベリンで貫く。火花を散らした機体は制御を失って浜辺へゆっくりと墜落していった。

 

空中戦を制している眼下。そこにはカーヒルのグリモアが博物館の中へと足を踏み入れていた。

 

 

「これは、旧時代のアンティーク…Gセルフ、見つけた!アイーダ様!」

 

 

防腐処理された旧世紀のMSが飾られている建物の置く。MS搬入出用ドッグだったそこからは、今まさにGセルフが運び出されようとしていた。

 

 

「グリモアが来たの!?」

 

『ベルリー!』

 

『わかってます、ケルベス教官!』

 

 

カーヒルのグリモアに反応したGセルフが、大気圏内用のバックパックを吹かして飛び上がった。

 

 

「姫様が乗っているのですか!?」

 

『こんなところで死ぬなんて御免ですよ!?』

 

 

あのGセルフは、なんらかのプロテクトが掛かっていて天才のクリムやカーヒルにも動かすことはできなかった。その場にいたアイーダを除いて。と、なればあの機体が動いている以上、操縦しているのは救出対象であるアイーダの可能性が高い。

 

あるいは、キャピタルの技術によって掛けられていたプロテクトが外されたのか。

 

その思考が過った瞬間、グリモアのコクピットにロックアラートが鳴り響く。

 

Gセルフに狙われているだと!?

 

その瞬間、カーヒルの嫌な予感が確信に変わった。あのGセルフは確実にキャピタル側に奪取されているのだと。

 

 

「ならば、Gセルフは奪還させて貰う!」

 

 

まだ扱いに慣れていないのか。フラつくGセルフの間合いに入ったカーヒルのグリモアは、ライフルは使わずに殴打でGセルフの動きを封じようと試みた。

 

その拳を受けるシールドの裏に、救い出すべき相手がいるとも知らずに。

 

 

「カーヒル!!」

 

 

悲鳴を上げながらカーヒルの名を呼ぶアイーダの姿を見たベルリは、殴り続けてくるグリモアに怒りに似た感情をぶつけた。

 

 

『仲間ごと殴り殺すのか!?』

 

 

シールドを捻るようにこじ開け、グリモアの拳を受け流したGセルフ。その隙に構えられたビームライフルの銃口が接射撃の状態でグリモアのコクピットに突きつけられた。

 

 

『上ぇ!?』

 

 

頭上からの接近警報がコクピット内に響く。ベルリが反応する間もなく、頭上から現れた影はカーヒルのコクピットに突きつけれていたビームライフルを踏み潰して着地した。

 

がごん,と降りてきたMSは構えたビームライフルの銃口を開けられたGセルフのコクピットへと突きつける。

 

 

「接触回線で聴こえるな?Gセルフのパイロット!アイーダ様ならやめてもらう!」

 

 

真っ白な機体だ。それを目にしたベルリが最初に思った感想だった。

 

 

『自分はベルリ・ゼナムです!』

 

「アイーダ様じゃない?パイロット、姫様はいるか?」

 

『ア、アイーダさん…』

 

「…その声はレイレナード隊長ですか?」

 

 

おずおず、といったふうに声が聞こえる。するとシールドの裏側から肌着姿のアイーダがひどい顔色でこちらに姿を見せた。

 

 

「姫様、ご無事で。遅くなりましたがお迎えに上がりました」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

随分と疲れている様子だ。俺の後ろにいるカーヒルの顔が青くなっていたが、その時にそんな気配りなどできるわけがなかった。

 

 

『おい!ベルリ!なんとかならんのか!?』

 

『む、無理ですよ!』

 

 

ラリーのローンズーへ接舷しようとする船から、キャピタル・ガードの人間とベルリがやり取りをしている。どうやら、アイーダしか操縦できないMSに、キャピタルの若いパイロットが乗り込んで操縦しているようだ。

 

ラリーが降りたことにより、空には数機のカットシーが姿を見せていた。なんとか振り切って離脱はできそうだが、なるべく被害は出したくない。

 

仕方ない、と俺は高域マイクをオンにしたままキャピタルの人間たちへ言葉を放った。

 

 

《キャピタルの兵よ!武器を下げろ!この機体とパイロットのベルリ・ゼナム!そして船に乗っている彼女らは人質になってもらう!》

 

『なんだって!?』

 

《抵抗はやめよ!やめなければ人質の保証はできない!》

 

 

見せつけるように、俺はGセルフのコクピットへビームライフルを向けた。アイーダ姫はカーヒルに保護して貰えばいい。最悪、Gセルフのコクピットが吹き飛んでも機体は回収できるはずだ。

 

 

『好き勝手に言っちゃって…!』

 

「やめておけ、ベルリ・ゼナム。君は兵士ではないんだろう?」

 

 

抵抗を試みるベルリに、カーヒルが落ち着いた声で語りかけた。

 

 

『それでもキャピタル・ガードの候補生ですよ、僕は!』

 

「なら命を大事にするのを覚えろ。君たちはこちらの人質となったのだ。ここから君だけをビームの光で焼き殺すのも造作もないことなんだからな」

 

『そんな勝手な理屈で!』

 

 

それでも抵抗しようとするベルリの顔を耐えきれなくなったアイーダが引っ叩いた。

 

 

「姫様!?」

 

「彼は私を助けてくれました。なら、彼を保護するのも私の役目です。いいですね?」

 

 

アイーダ様がそういうならば、そう言って言葉を下げるカーヒル。それだけで、アイーダが敵にとってどういう存在なのか。ベルリには理解することができてしまった。すっかり萎えた反抗意識へさらに追い討ちをかけるようにアイーダがベルリにコクピットを退くように指示を出した。

 

 

「コクピットを変わります」

 

 

不思議と、その指示に逆らう気は起きなかった。ベルリが席を立ち、アイーダが座ると、足元にある船の中にいる二人の少女へ手に乗るよう指示を出した。

 

 

「ラライヤ!ノレドも!」

 

「ベルリ!こいつらはキャピタルを攻めてきた相手だよね!?」

 

「あぁ、僕らは人質みたいだ」

 

「人質ぃ!?」

 

「Gセルフ…人質…?」

 

 

アイーダによってコクピットに押し込まれた三人のおかげで接触回線が一気に賑やかになる。人質だとわかるようにコクピットを開けたままGセルフは空へと飛び立つ。まだ組織としてできたばかりのキャピタル・アーミィのMSたちは、何もできないままその行いを見逃すことしかできなかった。

 

 

「ルワン、カーヒル!Gセルフと人質を頼むぞ」

 

 

途中で合流したオリバーのフライスコップに乗りつけた俺は、そのままGセルフの後方を飛ぶようにキャピタル・テリトリィを後にするのだった。

 

 

 

 

 

 




カーヒル大尉、生存!!
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