七色向日葵   作:ブランチランチ

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G第10話

 

 

発砲音が鳴り響き、砲撃が海を叩き水柱を作る。

 

二課仮設本部となっている潜水艦は懸命に回避する。

 

空から殺到するノイズはクリスと奏が撃ち落とす。

 

空を闊歩するノイズと海上を米軍艦隊が行手を阻むという異色の組み合わせに苦戦を強いられる。

 

「気合を入れろ!!センサーから目を離すなよ!!装者にデータを報告し続けろ!!」

 

「やってますよ!!連中!!無茶苦茶だぁー!!」

 

「泣き言言わないの!!クリスちゃん左舷からノイズ飛来!!奏さん!!敵艦が右から来てる!!」

 

司令室は戦況を装者に伝えてバックアップに専念している。

 

「翼!!左舷敵艦を黙らせろ!!今なら孤立している!!」

 

自艦に攻めてのない事に歯噛みしながら翼に指示を出す弦十郎。

 

潜水艦で敵艦の前に出るなど自殺行為であるのだが、攻撃手段が基本的に装者に頼っている手前、潜航してしまうとなぶり殺しになってしまう。

 

防御兵装も対艦用の物などは装備していない。そもそもがノイズ戦を想定しての機能が主な為、仕方がないのだが敵艦からの攻撃によりヘリの発艦すらままならない。

 

遠距離攻撃はクリス、奏、翼と可能ではあるがこの距離で行う攻撃手段では火力の調節が難しい。

 

その為、現状では海上を滑空できる翼が敵艦の無力化に動いている。

 

 

「鬱陶しいんだよ!!」

 

艦に殺到するノイズをガトリングで蜂の巣にする合間にミサイルをばら撒き中型を葬る。

 

「やらせるかよ」

 

ガングニールから放たれる熱線が砲弾やミサイルの誘爆を引き起こす。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

剣の柄を繋ぎ高速で回転させ降り注ぐ弾丸の雨を切り裂きながら海面を高速で翔ける。

 

艦に取り付くと射撃兵装を駆け抜けながら切り刻んでいく。

 

艦首から艦尾まで瞬く間に翔けて艦を無力化するとそのままの勢いで海に跳ぶ。

 

自艦の脅威になると判断した他の艦が翼に砲撃を加えるが

 

「やらせるかよ!!」

 

翼を狙う艦のすぐ横の海面に熱線を放ち海が爆発し大きく艦を揺らす。

 

滑空する翼には問題ないが荒れる波に砲撃が上手くできなくなる。

 

「ありがとう!!奏!!」

 

その隙に艦に飛び乗り先程と同じように剣を振おうとした時、背中に悪寒が走った。

翼は反射的に飛び退き剣を構える。

 

先程いた場所は線状に切り裂かれている。

 

「あら、勘が良いのね」

 

槍を構え冷たく見下ろすのはマリアだった。

 

「マリア」

 

冷たく感じる瞳は完全に敵として見る敵対者の憎悪を宿すものであった。

 

ドンという艦砲の音と共に二人は動き出す。

 

槍を突き出し突進するマリアに対して槍の腹を剣で打ち付けて逸らす。

 

そのまま剣を回転させて追撃するがマリアのマントがそれを弾く。翼の体が浮いた所に体を回転させ翼の方を向きながら、回転力を乗せて槍を突き刺すマリア。

 

翼は無理に槍を受け止めずにその力を利用してバク転し距離をとる。

 

互いに睨み合いながら呼吸を整える。

同時に飛び込み火花を散らす。

邪魔の入らない甲板で死闘は続く。

 

 

 

翼が激戦を繰り広げる前・・・

セレナ救出時の傷が色濃く残る基地。

制圧した港に停泊する医療船内では、セレナを医療カプセルに入れる前の処置が行われている。

 

小さな身には大き過ぎる青あざや切り傷に火傷等ダメージが多い。

 

更に長期間のコールドスリープにより体力が著しく低下していた。

 

懸命に医療班が治療を行う中、命の鼓動が弱くなりつつある。

 

懸命に処置を続行する中、外がさわがしくなる。

 

「風見さん!!処置中です!!お待ち下さい!!警備班!!」

 

「邪魔よ!!」

 

組みついた男性警備班達を腕の一振りで押しのけて処置室の中に入ろうとする。

 

「待って下さい!!」

 

女性看護師が両手を広げて立ち塞がる。

 

「退きなさい。貴方も怪我するわよ!!」

 

セレナの生命力が著しく低下した事を感じとり行動した幽香は殺気をぶつける。

 

「貴方があの子を助けたいのは知ってます!!何をするのか話して下さい!!じゃなきゃ通すことは出来ません!!私達だって全力を尽くしています!!」

 

極悪な殺気をぶつけられ震える体を黙らせる様に大声で対峙する看護師。

 

一瞬の静寂。

 

手のひらの種を見せる。

 

「これをあの娘に植えるわ。瀕死の宿主に作用して生命力を高める子よ。私の力で成長させるから効果は絶大の筈。唯、私の力で成長した子は毒素も含んでしまうけどすぐ死ぬ事はないわ。そこは私とアリスでなんとかする。死なせたら意味が無いのよ」

 

看護師は涙を流しながら頭を下げて告げた。

 

「私達の力ではセレナさんを救えません。お願いします・・・滅菌室に案内します。」

 

悔しそうに告げる看護師の肩を叩き。

 

「生命力を高めることが出来ても、そこからの処置は私には出来ない。あの子を救って頂戴」

 

「当たり前です!!」

 

涙を拭い幽香を急いで滅菌室に連れて行く看護師は覚悟を新たに歩を進めた。

 

その後何とか一命を取り留め、今は医療カプセルに入れられてセレナの容態は安定している。

 

そのカプセルのある部屋で幽香は椅子に座りセレナを眺める。

 

肩から白い蕾を覗かせて液体に体を浸からせている。

 

ひとまず繋がった命に安堵しながら自分の妖力がセレナを廻るのを見る。

 

余りある力である幽香の妖力のおかげで命を落とすことはないと思うが、余り長い間晒されてしまうと確証はないがセレナとしての自我を保てなくなるだろうという確信があった。

 

解決策を思案していると扉が開かれ緒川が入室した。

 

「セレナさんの容態は?」

 

「ひとまず峠は越えたわ。問題はあるけど何とかするから安心なさい」

 

緒川は息を深く吐き安堵した様子だ。

 

「良かったです。話は変わるのですが合流の指示が出てまして、どうやら彼方は艦艇を持って待ち構えてるようです」

 

「そう、看護師が来たら行くわ」

 

「了解しましたすぐに手配します」

 

携帯を取り出し一時退出する緒川に振り返りもせずセレナを見続ける。

 

程なくして看護師を連れて緒川が入室してきた。

 

「それじゃあ、マリアを助けてくるわね」

 

そう告げて退出する。

 

扉が閉まる寸前で破裂音と共に液体が叩きつけられる音がした。

 

踵を返すと破片の中に蹲るセレナがいた。

 

「連れってって下さい・・・姉さんの元に・・・連れってって下さい!!」

 

絞り出すような声からはっきりとした叫びとなる。

 

「無茶よ!!貴方はさっきまで生死を彷徨っていたのよ!!」

 

「そうです。ここは僕たちに任せてください」

 

「・・・」

 

看護師と緒川は説得を試みるがセレナは幽香を見つめていた。

 

「姉は私の為に泣きながら戦っている筈です!!・・・はぁ、っはぁ、わがままをっ・・・言ってるのは理解しています。

でも、姉さんに・・・これ以上無理して欲しく無い!!・・・お願いします」

 

泣きながら伝える必死さに言葉を失う二人。

 

「今度こそ死ぬかも知れないわよ?姉の目の前で・・・」

 

冷たい現実を叩きつける。

最悪の未来。

そうなればマリアの心は砕け散るだろう。

セレナを取り戻す事を目標にして頑張ってきたのだ。それが目の前で霧散するのを耐えられるとは思えない。

 

セレナはニコッと笑って

 

「大丈夫です。お姉さんが何とかしてくれます。」

 

屈託の無い笑顔に意表をつかれてしまった。

幽香なら出来るでしょう?という挑発にもとれる言動それがセレナから出たというのに幽香は我慢できなかった。

 

「ふふ、あはははは。良いわ!!その度胸と笑顔!!真っ直ぐで疑っていない!!でも私は安くないの、報酬は覚悟しなさい。ふふ」

 

「幽香さん!!」

 

緒川が声を上げるが止められる。

 

「うるさいわね、貴方もこんな娘のお願いくらい叶えてみせなさい。この覚悟に報いないのは年長者としてどうなのよ?」

 

「ですが!!」

 

「敵の装者を会わせるだけで無力化、又は味方に出来るのよ。これ以上の益があるの?」

 

「しかし」

 

「しかしも、カカシもない!!ほら着替えるんだから出てなさい!!助平!!」

 

「なぁ!!」

 

そう言って幽香は緒川を外に追い出した。

 

セレナの着替えを手伝い一通り終わった時に

 

「唯の姫として連れてかないわ。無茶はダメだけど迷わず使いなさい」

 

そう言ってセレナの前にギアペンダントを差し出す。

 

「それを取ったら後戻りできないわ」

 

幽香の掌からペンダントを迷わず受け取るセレナ。

 

「ありがとうございます。無理を聞いてくれて・・・ゆぅっ?!」

 

人差し指で口が開く前に唇を押さえる幽香。

 

「お礼は全部終わってからよ。うちの従業員としてこき使ってやるわ」

 

ウィンクをして唇から指が離される。

 

「行くわよ」

 

「はい!!」

 

幽香の後を歩くセレナは真っ直ぐに後を追う。姉を助ける決心を固めて・・・

 

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