色んなウマ娘に看病してもらう話   作:微 不利袖

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アグネスタキオンの場合

 

 

「はぁ、全く...まさかこのような結果になってしまうとはねぇ...」

 

 

ベッドに横たわる貴方に、やれやれ、といったような様子で話す彼女、アグネスタキオンは傍らにある丸椅子に腰掛け、仰向けの貴方を見下ろす。

 

 

「確かに此方にも非はある。実験も佳境だ、飲ませる薬の本数が自ずと増えてしまったのも悪いとは思っているよ」

 

 

貴方は近くにある彼女のレースに向けて、他の出走ウマ娘たちの走りの特徴や、過去の戦績、その他諸々のデータをまとめた資料、更には彼女に合ったトレーニングメニューの作成等々...数え始めればキリがない程の残業に次ぐ残業...

 

 

「しかし、だ。口酸っぱく言っていた筈だよ、トレーナー君?」

 

 

そう、貴方は...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「実験に必要なのは健康な素体だ、とね」

 

 

風邪をひいてしまった...っくしゅ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅン...39度2分。人間の平熱の値を3度ほど越えている。咳き込みや発汗...倦怠感もあるんじゃないかい?まぁ、少々体温が高いことを除けば、所謂風邪の典型的な初期症状だ。やはり健康体とは言えないね。......仕方ない、今日君が試飲予定だった〝これら〟は明日以降に持ち越すとしよう...いやぁ、残念残念。今日のところは実験中断だ」

 

 

体温計が示しているらしいそんな数値の羅列に貴方は驚愕する。そこまで無理をしていたなんて...と。けほ。

 

朦朧とする意識の中で、色とりどりに発光する液体が入った試験管が貴方の目に映る。日常的に四肢や身体の一部。或いは全身が光り輝く要因たちは他の純真無垢なウマ娘か、この状態が回復した後にイッキに...貴方はそれ以上考えるのを止めた。

 

...そういえば、と時計に目をやる。二つの針が示すのは2時過ぎ。朝食の摂れていない貴方はすると突然、空腹感からかお腹を盛大に鳴らしてしまう。

 

 

「...ふぅン。どうやら食欲の低下は見られないようだね。その様子だと朝食もまだと言ったところだろう。ふむ...」

 

 

この状態でカフェテリアに行ってしまえば誰かに風邪を移してしまうリスクもある...他のウマ娘やトレーナーたちに迷惑を掛ける訳にもいかない。まぁ、丸1日程度なら何も食べなくても...

 

 

「トレーナー君、少し外すよ。くれぐれもベッド及び、この部屋から出ないように。とは言っても、歩く元気や体力も無いだろうけどね」

 

 

藪から棒にタキオンはそう言い、部屋を後にする。貴方の頭上にはクエスチョンマークが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よいしょ、と。待たせたね。いやぁ、流石は天下のトレセン学園だ。あの規模のカフェテリアともなれば、存在しないメニューの方が少ないんじゃないか、なんて考えてしまう程だよ。まぁ、足を運んだのはえらく久々だったけれどね」

 

 

ガラリ、と扉が開き、タキオンが部屋へと戻ってくる。どうやらカフェテリアに行っていたようで...その両手には普段の彼女からは想像も出来ない、なんとも立派な土鍋が抱えられていた。

 

彼女は久々に出向いたカフェテリアの感想を並べながら、貴方の傍らにあるテーブルへと、その辺にあった雑多な書類やら研究レポートやらを鍋敷き代わりに土鍋を置く。中身は...どうやらお粥のようだ。短冊状に切られた人参や卵等、空腹感も相まって食欲がそそられる。

 

これは余談だが、彼女はレース以外の時でもよく勝負服を着用している。なんでも、常温以外のモノを持つことも多々あるらしく、発注ミスにも見える丈の袖も彼女は便利に扱っているようだ。

 

それにしても、彼女がこんなことをしてくれるなんて珍しい。熱を出してまともにカフェテリアにも行けない貴方を憐れんでくれたのだろうか。ありがたい限りだ。えっと...レンゲは...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、上体を起こすくらいならできるかな?食べさせるにしても、喉を詰まらされては堪ったものでは無いからねぇ」

 

 

...ん?食べ〝させる〟...?誰が、誰に?

 

 

「ん?変なことを聞くねぇ、トレーナー君。この部屋には昼食を済ませた私と、高熱と空腹でまともに動けない君だけしかいない。自ずと答えは見えてくる筈だよ?」

 

 

...お昼、足りなかった...?

 

 

「...ふぅン。...こうすれば、朦朧とする君の頭でも理解しやすいかな?」

 

 

カチャリ、とレンゲと土鍋が触れ合う音がする。多過ぎず、少な過ぎずの一すくい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、早く口を開けると良い」

 

 

...!?あ、あのタキオンが...?肩を揉んで掃除をして紅茶を淹れて薬を飲んでと、自発的に何かやろうなんて薬を作ったり薬を勧めたり薬を盛ったりしかしないような、あのタキオンが......?

 

 

「ハッハッハ!酷い言われようだねぇ...私はマッドサイエンティストか何かかい?なに、モルモットにも餌くらい与えるだろう。それと同じさ」

 

 

やってることは似たり寄ったりでは...って、コレって...あの、その...

 

 

「ん?...あぁ、所謂〝あーん〟と言うやつだね。ほら、早くしないと冷めてしまうよ?」

 

 

あぅえ!?......ぁ、あーん......お、美味しいです...

 

 

「ふむふむ...病に伏しているとは思えない食べっぷりじゃないか。いやぁ、作...貰って来たかいがあると言うものだよ」

 

 

貴方は間もなく完食。食後にタキオンから風邪薬(本人曰く、市販らしいが真偽は不明)を渡されて飲み、大人しく眠ることにした。...これからは無理、しないようにしないとなぁ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは研究室。彼女...アグネスタキオンは一つのレポートを眺めながらブツブツと一人呟いていた。

 

 

「ふぅン...体温は39度2分、少し高いかな。咳き込みや発汗、そして倦怠感。ふむ...」

 

 

これは余談だが、最近、担当ウマ娘の為に!、と無理をしてしまうトレーナーが多いらしい。注意喚起等ではいささか限界もある。ウマ娘からも、どうにかできないか、という内容の相談が両の手では足りない程、生徒会へと届いていた。

 

 

「...ククッ」

 

 

生徒会長、シンボリルドルフもそれら現状を受け止め、一石を投じる事にした。...もし、擬似的にとは言え、そのまま無理をし続けてしまった場合を経験させることができれば...?そんなことが可能だろうか。いや、そう言えば、可能性を追い続けているマッドサイエンティストが学園に居たような...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「実験は成功だ!」

 

 

モルモットはやはりモルモットだった。

 

 




風邪(にさせる薬)完成!次回は思い付いたら書きます。それでは、また
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