第1話 どうすれば人気になるのだろうか?
早速だがテンプレ嫌いの方のためにめちゃくちゃ端折って言うと、
ファンタジーな世界の魔族の女の子にTS転生したんだがどうやらこの世界は私が生前観賞した人気のない創作物の世界のようなのだ。
あと人気がないと言ってもクソな訳じゃない、むしろ普通、普通なのだ。
良い作品の人気は言わずもがな、クソ作品も余りのクソっぷりにネタにされたりクソ愛好家によって拡散されたりと人気は出るが、この作品は滅茶苦茶な設定や矛盾などは無く、かと言って良い点も無い、強いて言えばクソではないということか普通であるということくらいか。
その作風は至って普通の勇者モノだ。そして最後までそのままだ。
設定の矛盾が無く最後まで同じ作風を貫けるというのは作者の力量が窺えるが、逆にそのせいで注目されないのはなんたる皮肉であろう。
転生したのがこの世界だと知った時、私はこう思ったのだ。
(この世界を人気的な意味で救いたい、その為ならどんな事でもしよう)
この思いを狂気だと言われれば確かにそうだと認めざるを得ない。
果たして私が何らかの行動をしたとしてそれが元の世界にある原作に影響を及ぼすだろうか?影響を及ぼしたとしてそれによって必ずしも人気になるだろうか?人気になったとしてそれを確認する方法が私にあるだろうか?
わからないとしか言いようがない、だがやる。
仮に全ての問題を解決出来たとして、人気の為にと死ぬはずの者を生かし、生きるはずの者を殺すのは許される事だろうか?
許されない事だろう、だがやる。
お前が殺す事や死に抵抗が無いのは前世で一度死んだのとこの世界の生き物を創作物と思っているからではないのか。人気が出ていないからって原作を改変するのはいいのか?
それがどうした。
私はそれを誓った。
誓ったは良いが、果たしてどうやったらこの世界が人気になるか…まずこの世界を普通でなくさせることから考えよう。
…私の前世ではある程度ダークな、或いは悲劇的なストーリーが好まれていたように思える。
原作でも人類側は劣勢だったが、普通の勇者モノの範疇だった。ならばもっと人類側の負担を増やすか…
魔族側のリーダー…魔王に原作知識の一部を教えれば簡単にそうなりそうだが、私が言った事が正しいのが確認された瞬間、拷問確定だろう。
拷問されるのは構わないが人類側が上記の手段によって劣勢になったとして、果たしてそれだけで人気が出るのかという問題がある。
さらなる人気の為に暗躍するには拷問される暇などないのだ。
それにもし魔王視点や私視点があれば、私は原作知識を使って成り上がろうとして失敗した奴…作品はただのテンプレに対するアンチ•ヘイト作品にしかならないだろう。
…これらの問題を考えると原作知識を教えるというのは得策ではなさそうだ。
(やはり誰にも言わずに私が直接手を下すか…)
「ママーあの子何してるのー?」
「しっ、見ちゃいけません!」
「あっ…これには深い訳が…」
行ってしまった…滅多に人…魔族が来ない所なので油断していた。
私が何をしているかと言うと魔王像の周りをグルグル走っている。不審者だな…
走っているのは体力をつける為で、魔王像の周りなのは不審者が襲い掛かってきた時盾にする為だ。
魔族はある意味テンプレ通りと言うべきか、実力主義なのだ。襲われている奴がいたとしても血縁や親友でもない限りは周りの奴らは助けない、警察なんて物は存在しない。まぁ襲われている奴が有名な学者とかならワンチャンあるかもだが。
そして私は孤児、孤児院なんぞ魔族領にある訳もなく木の上が家である。
ゴミを漁ったり、きのみ食べたり…魔族の死体食べたりが日課だ。死体は毎日の喧嘩などで量産されるので他の孤児と取り合いにならず、食料で困る事は無い。
トレーニングはさっきの走り込みと弓。弓と矢なんて落ちているものかと思われるかもしれないが、そこは魔族クオリティである。「こんな軟弱な武器使うか!」と弓とか杖とかそこら辺に捨ててるのだ。
まぁそれはそれとして何故トレーニングをするかというと私が直接手を下す為だ。
正確には魔王軍の幹部である十三将の一人に私がなり、そうして原作知識により人類軍の作戦を台無しにするという訳だ。
そんな重要そうな役職になって元からいた奴がいなくなるバタフライエフェクトは大丈夫なのかと思われるだろうが十三将は実際には魔王の認定が厳しく、六人しかいないのだ。つまりは枠が滅茶苦茶余っている。
魔王の認定が厳しいのは大丈夫かって?大丈夫じゃないからトレーニングしてるんだよ…
ボギッ
「ヴッ…痛…」
無理が祟ったのか足が…滅茶苦茶なことになった。医者の経験が無い私にもわかる。
「これヤバイやつだ…」
元から肌は紫色だがそこはもっと濃くなっている。
「はぁ…」
こういう時に限って独り言が出る。喋ったら傷が治る訳でもないのに。
たまに何でこんな辛い事をしているんだろうと思う事がある。
それは…この世界を救う為だ。それだけなら他の奴にも出来るかもしれないが、人気的な意味ではそれが出来るのは…そうしようと思うのは…私しかいないのだ。
そう思うと勇気が湧いてくる…
「足を挫いたから何だっていうんだ…人間も魔族もこんな滅茶苦茶に足を挫いては走ろうとはしないだろう……だが!」
私は走り出した。挫いた足を使わない様になどせず、思い切り踏み抜いて。
「私の戦いはこれからだぁぁぁぁ!………ギィイアアアァッ!」
もう私駄目かもしんない。足が。
書いていて思ったがコイツ相当アホだな…