第7話 長い時間が経過すると何かあると思われがちだが本当に何も無かった。
勇者が生まれたらしい。とうとう原作開始なわけだ。土ジジイからもちゃんと逃げ続けた。
その間はずっと尋問の仕事…これは退屈だった…
この290年とちょっとの間、私は更なる訓練を重ねることによって新しい魔術を開発した。
その魔術が結構ぶっ飛んだ性能の為、魔王にこの魔術の事を報告したいのだが…
…どうやったら魔王に会えるんだ?
魔王と会ったのは呼び出された時と任務を報告した時だけだ。
私から会いたいと言って会ったことは無い。
…あっ、そうだ。
魔王城
「何故このような事を?」
「どうすればこちらから魔王様に会えるかわからず、このようなことに…」
「ほう…我に会うためにか…」
「すみませんでした。」
「そうやって謝る事になるのなら最初から門番に話を通すなりすればよかったのだ。」
「…私は未だ十三将ではなく雑兵兼尋問担当、魔王様に謁見するには十三将でなくてはと…」
「仮に幻術で十三将に化けていた事がバレたとしても、その大事を問い詰める為に我が出張る必要がある、と。」
「………」
「前にも言ったが、これしきの事で処断していては魔族が我以外が居なくなる。」
「…これしきの事、ですか。」
「貴様は十三将の…主に精神性を過大評価している、覇烈将を除けば気狂いの集いだ。」
「お、お言葉ですが覇烈将も…」
何言ってんだ私…
「……まあ、な。…はぁ、本題に移れ。」
「新しい魔術を開発しました。」
「見せてみよ。」
無言で軽く頷き、私の幻影を魔術で出す。
「………」
そして新しく開発した魔術を発動する。
「…これは。」
あらかじめ作っておいた剣を私の幻影に差し出す。
…私の幻影は、それを掴み取った。
そのまま幻影に手刀を放つ。
手刀は幻影をすり抜けた。
「…成程。」
「如何でしょうか?」
「素晴らしい魔術だ…これだけの実力であれば…」
一般精鋭魔術師視点
勇者誕生の地
勇者は赤ん坊の姿で産まれてくる。
勿論、勇者と呼べるだけの力は備わっている。
一つの例を挙げると、勇者は内臓の一つや二つ無くなっても問題なく、自然治癒さえする。
だが…やはり、勇者は赤ん坊の姿で産まれてきてしまうのだ…
「よろしいですか?」
拒否権は無いが。
無言で頷く勇者の母を退出させ、肉体を成長させる魔術を発動する。
対象は当然、目の前にいる赤ん坊、勇者。
ああ、勇者が赤ん坊の姿で産まれなければ…このような気色悪いことをせずに済んだのに…
赤ん坊の肉が蠢き、膨れ上がっていく…
「…言葉は、わかりますか?」「はい。」
「服を。」「ありがとうございます。」
「勇者様、現状については把握されていますか?」
「はい、わかっています。今から出ましょうか?」
「お願いします。…案内は、不要のようですね。」
ニンキ視点
サーレル平原…
原作では事あるごとにこの場所が使用された…
理由としては魔族領と人間領の間に位置していることと、あとは固有名詞を出し過ぎて読者を混乱させない為だろう。
使い回しと言われればそうかもしれないが。
私の今回の任務は「適当に戦え」だそうだ。幻術を敵に撃ちまくったり、精神系の魔術で味方の精神の高揚、敵の精神には恐怖やらなんやら付加するだけ。
精神に干渉する魔術がどれだけ戦況に作用するのかはよくわからないが、今の所は魔族側が有利。
(…! この強大な魔力、間違いない、勇者だ。早速そのご尊顔を拝ませてもらうとするか…)
魔力を感じた方を見ると不自然に魔族が少なく、人類軍が押し返している所があった。
その中心に、一際存在感を放つ金髪の偉丈夫。
(なるほど、あれが勇者)
その手に持つ聖剣を振るう度に魔族の士気が落ちるように感じる
私は別に軍師だとか将軍ではないからあくまでも感じるだけだが
…将軍は少し違うか。
(ん? 聖剣?…まさか)
間違いない、あれは私の作ったパチモン聖剣…! まさか気づかないで使ってるのか…!? 何故!?
聖剣が偽物だったからヤケになって”このパチモンでもいいや”となったのか?
…いや、それとも私がパチモンだと気づかれない為に気合い入れて作ったせいか!
(まあ、いい。今回は主人公の顔を見に来ただけだ。)
私は自分が物語の一員になっている感覚をあまり味わいたくはないが、私が裏で暗躍していることがバレたら物語を裏から操っていた黒幕として戦うのも一興か。だとしても今はまだバレる時ではない。
(土ジジイに見つからないようにどこまで暗躍できるかな…)
難産