バカとテストと召喚獣 ~神無月寮の仲間たち~   作:緋虎

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第一問:現国 出題者:高坂拓海
さて・・・・突如作者に出題者を投げられたわけだが・・・・まぁそれなりに責務を果たそう。では俺からの出題だ。

『あたかも』を使って短文を作成してくれ。

姫路瑞希、霧島翔子、赤峰紫の答え
彼はあたかも見ていたかのように語った。

高坂拓海のコメント
このメンツは安定しているな。正解だ、『あたかも』は『まるで』と言う意味合いで良く使われるな。

高坂文音の答え
兄はあたかも恋人のように私の(以下略)

高坂拓海のコメント
直ぐに精神科へと行ってこい。

吉井明久、須川亮の答え
そんなこともあたかも知れない。

高坂拓海のコメント
お前ら後で校舎裏な。


第一話 振り分け

文月学園・・・・世界初の『試験召喚システム』の導入と成績によるクラス分けと設備格差により一躍有名になった学園。

そしてこれは、学園公認寮の一つ『神無月』に住まうバカたちと高坂拓海(たくみ)と言う青年の織り成す物語---

 

-神無月寮・101号室-

朝のまどろみというものは非常に逆らいがたい魔力のようなものがあるんじゃないかと思う。

 

「起きろ愚弟」

 

そのまどろみの中にある俺の意識は簡単には覚醒・・・・

 

「八式ぃ・・・・」

 

殺気っ!?

 

「かかと落としぃっ!!」

「うぉおうっ!!?」

 

危ねぇっ!!?間違いなく俺の息の根を止める気でやりやがった!!

 

「殺す気か姉貴ぃっ!?」

「何を言ってるのよ拓海、これはお姉ちゃんの愛のムチよ」

 

この過激すぎる愛のムチを振り下ろしてきたのが俺の姉貴、高坂清音(すずね)。この神無月寮の寮母で文月学園の英語教師も勤めている。

 

「なんで起きないぐらいで殺されかけるようなかかと落としを喰らわなけりゃならねぇ!」

「一つ、アンタが起きないと朝食が無い。一つ、大事な大事な妹をベッドに連れ込んだ」

「一つ目はまぁ百歩譲ってわかった、が二つ目の意味が分から・・・・」

 

思わず、隣を見るとそこには下着姿+ワイシャツ・・・・いわゆる裸ワイシャツで眠る妹、高坂文音(あやね)が寝息をたてていた。

 

「おつちけ姉貴」

「言語中枢が壊れてるわよ拓海」

 

くっ、落ち着け俺!なんで俺の隣で朝起きたら妹が裸ワイシャツで寝てるんだ!

 

「起きろ文音!起きて事情を説明しろ!じゃないと俺が姉貴に殺される!!」

「ん~・・・・おぁよー」

「起きたか!そして説明しろ!」

「ん~・・・・お兄様のエッチ///」

 

え?

 

「コロス」

「っぎゃああああああああっ!!!」

 

―――――

痛い、ちょっと三途の川を渡りかけたじゃねぇか。っと・・・・焦がしちゃいかんな、ちなみに今日の朝飯はトーストとスクランブルエッグ、ベーコンにコーンスープだ。思いのほかコーンスープが良い出来だったので今朝の不幸はちょっと相殺された。

 

「おはよー」

「おはー」

 

階段を下りてきた女子が二人、どこぞの市松人形みたいな前髪パッツンが赤峰紫(あかみね ゆかり)。ショートボブで目つきがキッツイのが六仙早苗(りくせん さなえ)、どちらも同級生で寮生だ。

 

「今失礼な例えをされた気がしました」

「ああ、私もそんな気がする」

「き、気のせいだって。ほら飯が冷めるから・・・・」

 

釈然としない表情で座る二人、ってかどんな勘してんだよコイツら。

 

「文音、自分で歩いてってば」

「まだ眠いー」

 

姉貴と文音が続けて降りてくる。

 

「ぐぉおおおおおっ、重いぃいいい!」

 

細身でキツネ目な男、白木恭介(しらき きょうすけ)が二人の男子に肩を貸しながら歩いてくる。

 

「ZZZZZ・・・・」

「んぁー・・・・」

 

バカ面で眠っているのが俺の幼馴染である吉井明久、アホ面で眠っているのが去年から付き合いのある友人の須川亮。

 

「起きろ二人共」

『んえー?』

 

いい度胸だ、眠りかけでも拒否反応を起こすとは。

 

「・・・・明久、上から二段目の二重底」

「!?」

「・・・・亮、ベッドの床下」

「!?」

 

俺が耳元でボソッと呟くと飛び起きる二人。

 

「目ぇ覚めたか?飯にするぞ」

『はーい!』

 

―文月学園校門前―

朝食の後、「遅刻するぅううううっ!!」と叫びながらダッシュで出勤した姉貴を見送ると神無月寮生たちは肩を揃えて登校を開始していた。

 

「クラス分けってどうなったんだろうねぇ?」

 

ふと、校門が見える位置まで来た頃に先頭を歩いていた文音がくるりと振り返る。

 

「ん・・・・ボクと恭介と亮と早苗さんはF確定でしょ?」

「まぁーだよね」

「悔しい事に反論出来ないな」

「全くだね、これっぽっちも反論できないよ」

 

もはや諦めムードの明久、恭介、亮、早苗。

 

「まぁ文音と紫はAだろうな」

「あれ?お兄様は?」

「拓海君もAでしょ?」

「さぁ?どうだろうなぁ」

『?』

 

全員が首をかしげた頃、校門前に立つ一つの影。

 

「おはよう」

 

西村宗一、通称『鉄人』。補習、及び生徒指導担当の教師で試験召喚戦争中に戦死した生徒を補習室に送り込む鬼の教師とも呼ばれている。

 

『おはようございます、西村先生』

 

俺と文音、紫に早苗、恭介が普通に挨拶を返す。

 

『はよーっす鉄人』

「フンッ!」

『ぐぁあああっ!!!』

 

適当な挨拶を返した明久と亮に鉄拳制裁が行われる。

 

「全くキサマら二人は、もう少し他の連中を見習ったらどうだ」

 

呆れ顔で言う西村先生が、人数分の封筒を取り出す。封筒には一人一人の名前が表示されていて・・・・と言うかあの一瞬でどうやってきっちり間違えずに出すんだろうか。

 

「ほら、これがお前らの振り分け試験の結果だ」

 

一人一人に手渡される封筒、しかしこれってかなり非効率だよな。しかも一枚一枚が学園長の直筆らしい。

 

吉井明久 Fクラス

白木恭介 Fクラス

須川亮  Fクラス

六仙早苗 Fクラス

高坂文音 Aクラス

赤峰紫  Aクラス

高坂拓海・・・・・・・・Fクラス

 

『え!?』

 

俺と西村先生以外が驚きを隠せないようだ。

 

「な、なんで拓海がFなのさ!?」

「な・・・・え?あれ?お兄様が、F?」

 

問いただしてくる明久とちょっと放心気味な文音。

 

「いやー、明久らと同じクラスの方が楽しそうだし」

「本音は?」

「ただでさえ一緒の寮なのにクラスまで同じだと文音に押し倒されそうで」

『ああ・・・・』

 

拓海の言葉に納得する一同。

 

「全く、去年の学年四位がわざわざFクラス行きとは・・・・今年は荒れそうだな・・・・まぁいい、直ぐにホームルームが始まる。遅れないように教室に行け」

『はーい』

 

―2-F教室―

「お兄様!!かむばっく、かーむばーっくぅううううううっ!!!」と叫ぶ文音を紫が引きずってAクラス教室に入ったのを見届けてから2-F教室へと赴いた俺たちだったが・・・・

 

「なぁ拓海君、ここは・・・・廃墟じゃないかな?」

「現実を見るこったな、間違いなく2-F教室だよ早苗」

 

シーン、と静まり返る一同。

 

「まぁとりあえず入ろうか・・・・ゴホン」

 

呼吸を整えた明久。

 

「すいませーん♪ちょっと遅れちゃいましたぁ♪」

「とっとと座れこの蛆虫野郎」

 

明るい感じで挨拶した明久に飛んできたのは罵倒でした。

 

「あんまり言ってやるな雄二、先頭が明久だったから良かったものの早苗だったらお前・・・・」

「ぶっころ」

 

明久に罵倒を飛ばしたのは坂本雄二、去年から付き合いのある一人で悪友。と言うか、やばい。早苗の声が凄まじくドスが効いている。

 

「お、おぅ・・・・気をつける・・・・ってかなんでお前がここにいるんだ?」

「明久がいないクラスは面白みが無いからここに来た、異論はあるか?」

「面白い程にないな」

「だろ?」

 

教室へと踏み入ってハイタッチをすると中を見回す。

 

「席はどうなってんだ?」

「自由」

「把握」

 

座席すら決まって無いとはなんて事だ。

 

「はいはい、ホームルームを始めますので座ってください」

 

担任の教師らしき男性の一言でクラス内にいた全員が席に着く。

 

「私たちが皆さんの担任の・・・・」

 

黒板に名前を書こうと一瞬振り向いた先生が手元を見て・・・・

 

「福原慎です」

 

向き直ってそのまま自己紹介をしてきた、どうやらチョークが無かったらしい。

 

「もし設備に不備があるのであれば今のうちに申し出て下さい」

 

設備に不備か・・・・ちゃぶ台に座布団、うん。強いて言うなら全部不備かな。

 

「先生!座布団にワタがはいってません!」

「我慢してください」

 

まさかの対応拒否。

 

「先生!俺のちゃぶ台足が折れてます!」

「では後ほど木工ボンドを支給しましょう」

 

修復はセルフで。

 

「先生!窓ガラスが割れてます!」

「では後でビニールとセロハンテープを手配しておきましょう」

 

直してくれよ、サッシ屋呼んでさ。

 

「それでは廊下側から自己紹介をしてください」

 

なんてことだ、結果としてほぼスルーする形で福原先生は強制的に自己紹介パートに持ち込んだ。これがFクラスクオリティ・・・・

 

「・・・・土屋康太」

 

お、見知った顔だ。土屋康太、『寡黙なる性識者(ムッツリーニ)』と男子から畏敬の念を込めて呼ばれる男で盗撮盗聴のエキスパートであり「ムッツリ商会」と言うグレーゾーンスレスレどころかブラックゾーンな商会の経営をしている男。

 

「ワシは木下秀吉じゃ、一年間ヨロシク頼むぞい」

 

こっちも知った顔。木下秀吉、女子と見紛わんばかりの容姿を持つ男の娘で演劇部に所属している。プロ顔負けの演技力と機械でもできるかわからないレベルの声帯模写が出来る。双子の姉がありまぁその姉の方と色々あるのだが今はいいだろう。

 

「島田美波です、趣味は・・・・白木恭介を殴る事です♪」

 

これもまた知った顔。島田美波、ドイツからの帰国子女で早苗と並ぶ武闘派少女として有名。ただし問題があるとすればその矛先の九割が恭介である事だろうか。そのおかげか恭介の耐久値がランクEXに突入しかけている。「恭介に好意を持っている」と言うのが神無月寮女子の共通見解だがあの女子力低いメンバーの共通見解では正直怪しいと思っている・・・・なんだろう、殺気が三つ飛んできた。

 

「白木恭介です、ヨロシクお願いします」

「六仙早苗だ、皆一年間宜しく」

「須川亮だ、よろしくな」

 

とスルスルと消化されていく自己紹介。

 

「高坂拓海だ、宜しく」

 

と俺も無難に済ませた。

 

「コホン」

 

そして明久、咳払いをするとは・・・・タダでは終わらない気がする。

 

「吉井明久です、ダーリンって呼んでください!」

『ダァあああああありぃいいいいいいいいいいん!!』

 

男子による野太い合唱に参加しなかった俺、恭介、雄二、秀吉、康太、美波、早苗、そして当事者明久が顔を真っ青にしている。ノリの良さには驚嘆するが気色悪い大合唱には違いないのだ。

 

「失礼、忘れてください」

 

だろうな。

 

まぁそんなこんなで自己紹介が続いていると・・・・

 

「す、すみません。遅れてしまって・・・・」

 

ガラッと扉を開けて現れた存在に、全員が目を奪われる。姫路瑞希、学年でも主席争いをするような才媛でまかり間違ってもこんなクラスにいるような人物では無い、本来俺みたいなのがいること自体がイレギュラーだと言うのに。

 

「来ましたか姫路さん、ではそのまま自己紹介を」

「あ、はい。姫路瑞希です、よろしくお願いしますね」

 

心なしか静まり返る教室、の中で手を挙げる勇者が一名。

 

「なんでここにいるんですか?」

 

聞き様によっては凄まじく失礼な質問ではあるがまぁ概ね皆が抱いた疑問はそれだ。

 

「振り分け試験で熱を出して倒れてしまいまして・・・・」

 

成程、途中退席は無得点。文月学園の厳しいルールがこんなところで影響を出したか。

 

「ああ、熱な。俺も熱のせいでFクラスに・・・・」

「化学だろ?アレ難しかったよな」

「俺は弟が事故ったと聞いて気が気じゃなくて・・・・」

「黙れ一人っ子」

「前の晩に彼女が寝かせてくれなくて」

『今年一番の大嘘をありがとう!』

 

ヤヴァイ、やばいじゃなくてヤヴァイ。何がってこのクラスの馬鹿さ加減が、まぁ悪いバカじゃあ無いんだろうけどさ。

 

「はいはい、皆さん静かに(バキッ、ガラガラッ)・・・・替えの教卓を持ってきます」

 

まさかの教卓すらFクラスクオリティとは。福原先生が教室から出て行く。

 

「ねぇ雄二、拓海。ちょっと良いかな?」

 

明久の呼びかけに応じ俺と雄二が立ち上がって廊下へと出る。

 

「で、どうした?」

「うん。この教室の設備を見てどう思った?」

「酷いな、Aクラスのを見ているだけに落差が凄まじい」

「だよね、それでさ・・・・『試召戦争』をやってみない?」

 

試召戦争、正式名称試験召喚戦争。この学園のウリの一つである『試験召喚システム』を使って召喚された召喚獣を用いてクラス間行う戦争でありこれによって上位クラスとの設備交換などさまざまな利益を得ることが出来るのだ。

 

「何が目的だ?」

「えーっとそれは勉きょ『嘘だな』最後まで言わせてよ!!?」

「だってお前、学費の安さで選んだだろ?」

「仕送りを少しでもゲームに回すために寮生活なんだろうが」

「うっ!?」

 

全く、わかりやすいくせに隠し事なんかしようとするから。

 

「姫路のためってハッキリ言えよ」

「え!?」

「ん?違うのか?」

「ち、違わないけど・・・・」

「まぁ俺も構わないさ、元々試召戦争はやるつもりだったしな」

 

それは初耳だ。

 

「学力が全てじゃない、それを証明したくてな・・・・とは言え。姫路とお前がいる時点でちょっとアレだけどな、使えるモノは全て使うさ」

「ま、とりあえず福原先生戻ってきたから入ろうぜ」

 

――――――

再開された自己紹介も、最後の雄二まで順番が回ってきた。

 

「俺が代表の坂本雄二だ、代表でも坂本でも好きに呼んでくれ」

 

一呼吸置いて。

 

「Aクラスはシステムデスクにリクライニングシート、巨大プラズマディスプレイらしいが・・・・」

 

視線を、クラス内のボロボロな設備に向ける。上手いな、話の間にそれを挟む事によって視線を誘導している。

 

「不満は無いか?」

『大アリじゃああああああああっ!!!』

「そうだろう?俺だって代表としてこの状況に不満を抱いている、そこで俺からの提案だが・・・・」

 

「Aクラスに試召戦争を仕掛けてみようと思う」

 

激動の一年の口火が、ここに切られた。

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