シズク=ムラサキは愉悦したい   作:さろんぱす。

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プロローグ。
探してもシズクちゃんが出てくる二次創作が全然無い……
なら、自分で書くしかないじゃない!! そんなノリで始めてみました。
不定期投稿です。よろしくお願いします。


プロローグ
第01話 馬鹿が金魚でやってきた


 東ゴルドーと呼ばれる国の空を一匹の魚が飛んでいた。

 真っ赤な躰、ギョロギョロと飛び出た眼、そして細い尾ひれ――それは一般的に『出目金』と呼ばれる種類の金魚だ。しかしよく目を凝らしてよく見れば、その外見にはおかしな点が多々あることが分かるだろう。

 

 特に顕著なのはその両目である。

 左の方は全く動いていない白く濁った『死に目』だった。そして右の方は白黒が逆、とても不気味な『黒白目』だ。

 

 更にパクパクと開閉している口の中には何も無い。そこにはただどこまでも暗い、不気味な闇が広がっているだけだ。

 

 おまけに5mを超える躰には、鱗の上に不吉な模様が浮き出ていた。その形は拷問されて死んだ人の顔、もしくはムンクの叫びのよう。

 

 そんなホラー映画のモンスター、と言われたほうが納得しそうな容姿の金魚である。

 夜中に出会ってしまったら、きっと普通の人は絶叫を上げて逃げ出すだろう。だが驚くことに、その背には一人の女性が乗っていた。

 

「あ~、早く貧者の薔薇を撃ちたいなー。もう、超ブッパした~い。」

 

 頬を染めながら、とても物騒なことを呟いた彼女の名前は"シズク・ムラサキ"。

 好きなものはお金。座右の銘は先手必勝。念の系統は特質系。チャームポイントはお気に入りの黒縁メガネと、小さい頃からコツコツ育てた巨おっぱい。

 

 そんな22歳のカワイイ系お姉さんだが、しかしその正体は前世の記憶を持ったままこの世界へ転生した、異世界の人間である。

 

「おっ、そろそろ目的地の宮殿の上空かな?」

 

 シズクはこの世界に生まれてから、原作なにそれ? とばかりに暴れまわった。

 0歳から念の修行を始め、6歳で天空闘技場に登録。7歳でフロアマスターとなり、8歳でプロのハンター試験に合格。

 

 しかしそれからバトルオリンピアを連覇したかと思えば、いきなりアイドルとしてデビューするわ、内乱で軍を相手に暴れまわるわという無茶苦茶ぶり。もちろんグリード・アイランドもしっかりクリア済みだ。

 

 そんな異色の経歴を持つ、実力派ハンター(元アイドル)こそがシズクである。

 当然のことながら、人型キメラアントに対しても事前の対策は怠らなかった。原作知識のおかげで、時期も場所もまるっとお見通しだったのだ。

 

 時期は主人公組がグリード・アイランドをクリアした後。

 なので2000年2月から半年以内。場所はNGLの西南側湾岸沿い。レイナという6歳ぐらいの女の子がいる村の近く。

 

 ここまで分かっていれば、後は村を探して協会のハンターに常駐してもらえば終わりだ。

 暗黒大陸から必死に逃げてきたキメラアントの女王。しかし彼女はあわれにも上陸してすぐ、人間を食べる前に討伐されるはずだった。

 

「まっ、全部パリストンとかいう副会長に台無しにされたんだけどねー。」

 

 派遣され常駐していたハンターは、協専の中でもさらにダメダメな奴らだった。

 協会からの依頼だけで生活していた彼らは、念こそ使えるものの全然鍛えていなかった。楽な仕事だと油断しきって戦い、普通に初期のキメラアントにボロ負けした。そしてあっさりと女王の腹に納まった。それからはだいたい原作通りである。ファック。

 

「私、頑張ったんだけどなぁー……」

 

 シズクはその後もキメラアントの弱体化に尽力した。

 完全体になった原作の王様とご対面なんて絶対にゴメンだったからだ。そのためにキメラアントが念の詳細を手に入れないようポックルを遠ざけ、ピトーとの遭遇戦で死なないようカイトに入れ知恵し、コムギちゃんを事前に別の国に移して王の先見力強化フラグを叩き折った。

 

 まぁ念については、別のハンターが脳みそクチュクチュされて結局バレてしまったが。

 その他にもレオルというライオンもどきを倒したり。また、ヂートゥというチーター野郎を捕まえたのもシズクである。

 

 なのに……

 

「今度は上空から宮殿を爆撃。終わったら会長たちと降下して人員の輸送。

 その後は護衛軍の一人を相手しろとか。……あまりにも酷すぎない?」

 

 どう考えてもひどい。酷すぎる。

 ブラック企業だってココまでの無茶振りはしないだろう。明らかに命が1つじゃ足りない。超超高額の報酬を提示されなければ、速攻でバックレていたところである。

 

「だからストレス解消しましょうね~。はいデメちゃん、あ~んして。」

 

『ギョ~~ギョギョッ!!』

 

 シズクの言葉に従い、乗っていた金魚がゆっくりと口を開く。

 金魚はその巨大さにも関わらず、しかし指示に反抗する様子は全く見られない。だがそれも当然だろう。なぜならシズクこそがこの金魚の主人。念能力という特殊な力を使い、この出目金を生み出した創造主なのだから。

 

『ギョギョーッッ!!』

 

 パクパクと可愛らしく開いていた口がギリギリまで広がる。

 しかしそこで終わりではない。金魚は主人の要求に全力で応えようと、まだまだもっともっとと口を広げようとする。

 

『ギョギョーッッ!!!』

 

 周囲にギチギチビキビキと嫌な音が響き出す。

 限界のように思えた口は、更にメリメリと肉を裂きながら広がっていく。結果、最終的に口は4つに分かれ、金魚の全長ほどの大きさに開いた。

 

『ギョ~ッ、ギョッギョッギョ!!』

 

 主人の命を完遂した金魚が嬉しそうに鳴き声を上げる。

 長い尾を左右に振り振りしながら、褒めて褒めてと鳴き続ける様はまさに忠犬。

 

 しかしもし今の金魚を正面から見たものがいれば、きっとその醜悪さに邪神か何かの眷属だと勘違いしてしまうことだろう。もしくはワームかエイリアン。それほどのグロテクスさだった。

 

「よしっ、それじゃあ繋ぐね。」

 

 シズクは自らの体内でオーラを練り上げ、この金魚に備わらせた能力を発動させる。

 すると出目金の口の中が金色に輝きだし、波紋のようなものが広がっていく。そしてそれが納まった時、口の中には遠い別の地の光景が映っていた。

 

 これがシズクの能力――『金魚王の遺産(ゲート・オブ・デメキング)

 

 その見た目のグロテクスさに反して、この金魚自体は攻撃能力を一切持っていない。

 歯が無いため噛みつきなど不可能で、出来るのはその巨体で敵に体当りするぐらい。その代わりに備わっているのが『口をゲートにして別の場所へ繋ぐ』能力である。

 

 この能力は放出系のようにオーラで対象を飛ばす訳ではない。かといって具現化系のように念空間を作って経由している訳でもない。

 

 その大本は別の世界からの転生、という特異な経験により発現した力。『空間に穴を開ける』特質系の能力であり、その応用である。

 

 ちなみに名前の元ネタは、みんな大好き某英雄王の宝具からだ。

 出来ることもだいたい同じ様な感じだと思ってもらえばいいだろう。違うのは出入り口が出目金の口である事と、そして人も出入り可能なこと。

 

 原作と違い、この世界ではコムギが居なかった為、王が自傷しなかった。

 その結果、ノヴは突入口を作る事が出来なかった。そのため苦肉の策としてシズクが会長たちと一緒に突入。その後にこの出目金の能力を使い、討伐隊を出現させることになったのだ。

 

 そんな訳で今回のシズクの仕事は、宮殿への爆撃と人員の輸送と護衛軍の足止めだ。原作ではゼノとノヴとモラウがこなしていた役割である。過労死させる気かな?

 

「まっ、それも初撃で全滅させれば、残りはやる必要ないよね!

 だからやっぱりぶっ放すのは薔薇一択。前から一度使ってみたかったし。

 爆炎が薔薇の形になるって、どう作ったらそうなったんだろ?」

 

 爆撃の方はやりすぎないように、と言われただけで具体的な指示は無かった。

 なのでシズクは、どうせなら貧者の薔薇を投下しようと思ったのだ。思い切って1ダースほど。ちなみに入手元はこの国、東ゴルドーの兵器庫である。

 

『兵器選択:貧者の薔薇。待機時間:10秒。弾数:12発。方法:同時発射。』

 

 左耳に付けたインカムから、平坦な機械音声が流れてくる。しかしシズクは慌てない。これも自分の力の一部だからだ。

 

 某英雄王のそれと違い、シズクの能力に道具を射出する機能はない。そのため、その部分を補う専用の補助システムを作った。

 

 名を――D(デメキング)・W(ウェポン)・S(システム)

 

 コンビニのドアが、人の接近を感知して自動で開くように。

 兵器のおいてある部屋にゲートを繋げると、設置されたセンサーがそれを察知する。

 

 その情報を統制サーバーが受け取り、ゲートに最も近い兵器を選択。選ばれた兵器はロックが解除され、すぐに発射モードに入る。

 

 あとは兵器毎に設定された待機時間が過ぎれば、弾が自動で発射される仕組みである。これによりシズクは、ゲートを開くだけで敵を攻撃することが出来る。

 

『発射へのカウントダウンを開始します。9(ナイン)……』

 

 シズクはこの能力で、子供の頃から色々な物をぶっ放して来た。

 そのため今では、自他共に認める立派なトリガーハッピー兼爆発大好きーなキチガイガールだ。

 

 8歳の頃に受けたハンター試験では、手榴弾から爆弾まで使い容赦なくライバルを蹴散らし、天空闘技場では重機関銃でフロアマスターを蜂の巣にして出禁になりかけた。

 17歳でアイドルデビューした後なんて、襲ってきたストーカーを戦車の主砲で粉微塵にしたことだってあった。

 

 そんなシズクにとって『他人の責任で薔薇をブッ放せる』こんな美味しいシチュエーションは見逃せない。

 

「何やっても責任は会長に行くって、本当に素敵♪」

 

 きっと会長に嫌がらせするのが趣味の副会長が、いい感じに処理してくれるはずである。

 副会長は間違いなく最低のゴミクズ野郎だが、こういう時だけは心から信用できる。

 

「それに原作と違って、宮殿の外に選別待ちの人たちは居ないからね。」

 

 もちろんこれもシズクのせいだ。

 ゾルディック家を巻き込み、金と引き換えに諸々ぶっ殺しまくったのだ。全ては宮殿を爆撃する際、余計な邪魔が入らないようにするため。

 おかげで蟻は途中で選別を切り上げた。だからここで薔薇を撃つのに躊躇する必要はない。たぶん。

 

『8(エイト)……』

 

 シズクは少しだけ上空を飛ぶ6枚翼の怪鳥を見上げながら、これまでの事を振り返る。

 

 この世界に生まれた時、不思議なことに生前の性別や容姿だけは全く思い出せなかった。

 人生が一冊の小説であるとすれば、そこから主人公に関する一部の記述だけがキレイに消えていた、といった感じだろうか。

 

 恐らくは何らかの理由で、転生した時に抜け落ちてしまったのだろう。

 考えてもしょうがないことなので、シズクはすぐに気にしなくなってしまったが。

 

「まぁおかげで今がTSしてるかどうか、いちいち悩まなくて済んだから良いけど。」

 

 この世界に転生してしまったのは、今から22年以上前の事。

 全ては、口の中に詰まった一匹の金魚から始まった……




蟻を巣ごと爆撃しちゃう系の主人公。
能力は瞬間移動と薔薇を組み合わせたら最強じゃね? という思いつきから。
あと金魚の造形に拘ったら、どんどん化物になっていった不思議。
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