シズク=ムラサキは愉悦したい   作:さろんぱす。

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タグに『ギャグ』を追加しました。最初から付けとくべきだった(反省


第11話 デビュー戦

 みなさん、おはろー。

 幼女マスターのシズクちゃんです。

 私は今、初めて200階のリングに上がろうとしています。

 格好は黒のタートルネックに厚めのジーパン。

 つまり原作のシズクをそのまま小さくした感じ。

 ただしまだ眼鏡と金色の逆十字ペンダントはしていない。

 

 今は具現化に成功してから2ヶ月後。

 

「肉体を鍛える事を、強いられているんだっ!!!」

 

 私はあれからデメちゃんの出し入れと、肉体の鍛錬を集中的に鍛えた。

 使ったのはオーダーメイドした鍛錬器具。めちゃくちゃ重い靴や衣服など。

 主人公組の3人がゾル家を訪問した時に使ったトレーニンググッズもどきである。

 

 この世界は空気中にプロテインが含まれてると言われる場所だ。

 2週間鍛えただけで、12歳の子供が4トンの扉を開けられるようになったりする。

 

 なので私も原作を参考に特注した重い衣服を身に着けて筋トレ。

 動けなくなったら絶で回復して、また筋トレを繰り返した。

 その他、デメちゃんで素振りしたり、ランニングマシーンで走り続けたり。

 

 おかげで現在は1トンぐらいの重量物なら何とか押して動かせるようになった。

 ちなみにその重量物はただの水だ。水は1リットルでちょうど1キログラムになる。

 1立方メートルの水袋を用意して、そこに水道から水を入れれば1トンの重量物が完成する。

 あとは破れないよう、それに適当な外枠を付けて毎日押した。

 

(読んでてよかった賭博破戒録カ○ジ。)

 

 こうして私は2ヶ月かけてギリギリまで肉体改造を行った。

 でも見た目は全く変わってない。どうなってるのこの世界……

 

 

 

『さぁー、ついにこの選手が200階に登場です!

 ここまで無敗で勝ち上がってきました、シズク選手!

 無慈悲に相手の玉を砕くことから、誰が言ったか"玉砕姫"!!

 果たしてココでも必殺のゴールデンボールブレイクは炸裂するのか!?』

 

 私は実況のお姉さんの説明に合わせて笑顔で周囲に手を振る。

 途端に巻き起こる"玉砕姫"コール。

 なんど聞いてもひどい通り名だ。

 最初に言い出した奴は殺す。見つけたら絶対に殺す。

 

『対するは自称"天空の特攻隊長"ことマルタケ=イチジョウ選手!

 こちらはすでに3勝3敗と後がありません!

 果たして、ここで踏ん張ることができるのか!?』

 

「"()"ってたぜェ!! この"瞬間(とき)"をよぉ!!」

 

 紹介された対戦相手がキレ顔をしながら雄叫びを上げた。

 白い特攻服に腹巻き、そして頭は尖ったリーゼント。昭和の不良かな?

 3ヶ月前に私のいたずらに引っかかり、見事に仲間と同士討ちをした人だ。

 

『更に今回はスペシャルゲストに来て頂いております。

 現役のフロアマスターの一人"魔王"マゾラー選手!

 そしてその"参謀"サドエラさんです!!』

 

『マゾラーだ。よろしく頼む。』

 

『サドエラじゃ。よろしく頼むぞぃ。』

 

 おっ、わざわざフロアマスターが来てるのか。

 私は実況席のほうをチラッと覗く。

 するとそこには、ドラ○エ1の竜王コス(変身前)を着た人が居た。

 全身を覆うような黒いローブを羽織り、一部が猫耳のように尖っているフードを被っている。

 その横には緑の司教服を着た、策に溺れそうなおじいちゃん。

 

(ないわー。)

 

 どう見ても強そうに見えない。なんでわざわざゲストに?

 ちょうど数日後にバトルオリンピアがあるから話題作りかな?

 

 まぁぶっちゃけ、私にとってはどうでも良い。

 フロアマスターはあんな格好強制とかでなければ。

 

『マゾラー選手から見て、今回の対戦はどうでしょうか?』

 

『そうだな、マルタケ選手はとても根性がある選手だ。

 シズク選手も今までのように、一撃とはいかないであろう。』

 

 実況に聞かれたマゾラーは偉そうな口調で感想を述べる。

 ふむ、確かに私の攻撃力では、一撃KOは厳しいだろう。

 だが事前調査で相手の手の内は分かっている。

 ソースはシンジが持ってきた試合ビデオ。

 この『マルタケ』とかいう奴の分だけで3本も持って来たのだ。

 思わず、もしかしてシンジって意外と有能なのでは? なんて錯覚しそうになった。

 

(ビデオを見た限り相手は強化系。それも武器を強化する『武器使い』だ。)

 

 もちろん分かってるからと油断するつもりはない。

 だってこれは私にとっての初の念戦闘だ。

 いわば私がどれぐらい戦えるかを知るための、大事な試金石。

 

「お仲間とのガチ戦闘は楽しかった?

 もう負けられないからってすごい必死だったよね!

 いやぁテレビで見てて大爆笑だったよ!!w

 でも私に負けたら全部無意味になっちゃうね?」

 

「てめぇ!!!(ビキビキビキ」

 

 相手はこれで負けると下層落ち、これまでの頑張りは全部無駄になる。

 なのでそこを遠回しに煽る。

 くっくっっく、せいぜい焦ってミスると良いわ!

 

(引導を渡してやんよ。)

 

 私をカモにしようとしたのだ、ならば蹴落とされてもしょうがないだろう。

 表面上は対峙している相手を煽りながら、内心では静かに覚悟を決める。

 心が徐々に冷えていき、同時に周囲の音が消え、頭の中がクリーンになっていく。

 前世で出張中に何度も死にかけた事で身につけた能力だ。

 肉体ではなく精神的なものだからか、どうやらこっちでも有効な模様。

 

 そうして待っていると時間が来て審判がリングに上がった。

 審判は私達の間に入り、ついに試合の開始を告げる。

 

「ポイント&KO制!……始め!!」

 

「……ふっ!!」

 

 試合の開始と同時、私は挨拶代わりに全力で練を行う。

 そしてそのまま『堅』に移行。

 

「!!?」

 

 対して、相手は纏のままだった。

 私のオーラ量に驚いているようだが、練も堅も行う気配は無い。

 

(やっぱり予想通りか。)

 

 これがココの試合ビデオを見て、一番びっくりしたこと。

 このマルタケという選手だけではない、ほとんどの選手が『纏』止まりだったのだ。

 

(たぶん『堅』とか知らないんだろうね。)

 

 『練』の状態を『纏』で維持するのが『堅』。

 『纏』と『堅』では顕現するオーラ量は5倍以上になる。

 

 だが恐らくここの人達は『纏』で戦うのが普通なのだ。

 『練』も要所要所で一瞬だけ使うもの、という認識なのだろう。

 原作でもここでゴンがはっきり『練』を使ったのは一度だけ。

 ギドという相手が飛ばした駒を正面から弾いた時だけだ。

 

(彼らが念を覚えた経緯を考えれば、しょうがないことだけど。)

 

 頑張って武芸を磨いて、200階まで昇って、そこで理不尽な力に叩きのめされて。

 その後に、急にすごいパワーが湧いてくれば、誰だって自分が覚醒したと思うだろう。

 つまり闘技者としての『ゴール』に至った、と。

 

(『纏』が出来るだけでも、普通の人相手だと俺TUEEEになるからね。)

 

 普通はまさかそれが、実はただの『スタート』だなんて思わない。

 原作で知っていなければ、私だってそうだっただろう。

 どこぞの野菜王子が、スーパーなヤサイ人1程度で、俺は最強だー! と言ってたように。

 だからココの人たちは独自に発を作ってお終いの人が多いのだ。

 

(ヒソカがフロアマスターに頓着しないはずだよ。)

 

 闘技場は完全に暇つぶしだったんだろうな。

 

「――っ!」

 

 そんな事を考えながら私が一歩前に出ると、相手は逆に一歩下がった。

 だがそれだけだ。私が絶対に有利という訳ではない。

 

 確かにオーラ量に関してはこちらが圧倒している。

 今の私が身に纏って維持できる顕在オーラは最大300ほど。

 対して相手が顕在させているオーラは20ちょいしかない。

 

 だがこれが肉体能力、強化系の習得率を加味するとまた違ってくる。

 例えば、強化系能力を100%使える場合、1オーラで1%の肉体能力を得られるとしよう。

 

 相手は純粋な強化系、なので習得率は100%だと仮定する。

 対して私は特質系な上に修行不足、なので習得率は5%あればいい方。

 

 ではこの場合、殴り合うとどの程度の戦力差になるのか?

 相手の肉体能力を100、私をその半分の50とする。

 

 するとオーラによって増える肉体能力はこうだ。

 相手:肉体(100/100)×オーラ(20) ×習得率(100%)=20

 私 :肉体( 50/100)×オーラ(300)×習得率(5%)  =7.5

 

 更に1オーラ=1肉体能力とした場合の最終的な戦力比はこう。

 相手:肉体100+20 +オーラ20 =140

 私 :肉体 50+7.5+オーラ300=357.5

 

 確かに数字上では私が勝っている。

 だがそれほど差が無い事も分かるだろう。

 ……単に私の強化系習得率が酷すぎるだけとも言えるが。

 

(でもこれはしょうがない。ここ3ヶ月は強化系を訓練する余裕はなかった。)

 

 しかもこの肉体性能の差は、あらゆる場面で効いてくる。

 一つ一つの攻防から単純な動体視力までだ。

 おまけに相手は200階まで登りきった格闘技能と経験まであるのだ。

 

(まぁだからこそ、実験にはちょうどいいけどね!)

 

 上の計算はあくまで机上の物。

 そもそも1オーラでどれぐらい強化されるかも不明である。

 それに実際は相手が習得率100%なんてありえない。

 

「あれー、もしかしてお兄さん怖いの?」

 

「んだとてめぇ」

 

 さらに近づきながら相手に挑発を掛ける。

 すると相手はその場で踏みとどまり、背中から鉄バットを引き抜いた。

 それを見た私も、上着の中から具現化済みのデメちゃん(全長30cm)を抜く。

 

(さぁ、デメちゃんの耐久テストの始まりだよ!!)

 

「ぎょぎょ!?」

 

 イヤイヤ!! とビチビチ跳ねるデメちゃんの尻尾を両手で握りしめる。

 

(覚悟を決めるんだデメちゃん。これは貴方のためでも有るのよ!)

 

「んだらぁー!!」

 

 相手が気勢を上げながら、上段から鉄バットを振り下ろす。

 それに合わせ、私も同じようにデメちゃんを振った。

 

 ――がきーん!!

 ――ぎょぎょぉーー!?

 

 相手の鉄バットと私のデメちゃんがぶつかり合う。

 

(相手の攻撃……ちゃんと見える!)

 

 鍛えててよかった眼筋!

 おまけに動きの差もほとんどないし、押し負けもしなかった。

 

(流石シズクちゃんボディだ! 原作で掃除機で頭をかち割ってた体はやはり違う!)

 

 そして力が拮抗してるということは、どうやら相手はメイン系統すら修行不足の模様。

 これなら行ける! そう確信した私はさらにデメちゃんを振った。

 

 ――がききーん!!

 ――ぎょぎょぉぉ!!

 

 当たり前だが、打ち合う度にデメちゃんは傷ついていく。

 当たりどころが悪かったのか、2打目ですでに右目が潰れてしまった。

 だがここで引くことは出来ない!!

 

 ――がきーん! がきーん! がきーん! ……

 ――ぎぎょぉぉ……

 

 それから何度も打ち合うと、デメちゃんは途中からビクビク痙攣しだした。

 すでには全身がボコボコになっていて、いつの間にか上ヒレと下ヒレも千切れている。

 私は手元のデメちゃんの様子を見て、その余りの酷さに抗議する。

 

「どうしてこんな事が出来るんですか!!

 こんな可愛いデメちゃんを鉄バットで殴るなんて、可愛そうだと思わないんですか!?

 このろくでなし!!」

 

「はああああ!? それはこっちのセリフじゃボケェええ!

 泣き声のせいで心がいてえんだよぉおお!! その金魚ひっこめろや!!!」

 

 あれこの人、意外と良い人なんじゃね? 予想以上に動揺してる。

 でも私はまだデメちゃんを引っ込めない。

 なぜならこれが具現化系の正しい使い方だから。

 

(だって出し直せばどうせ新品になるし。)

 

 どこぞの団長だって密室遊漁(インドアフィッシュ)は解除しなかった。

 わざわざ窓を開け、発動条件を崩して念魚を爆散させていた。

 そのせいか、具現化物=使い終わったら壊してOK、みたいな風潮がある。

 そう、だからこれは団長のせい。

 

「ちっ、テメェなかなかやるじゃねぇか。だから早くそれ引っ込めろ、な?」

 

 それから更に数度打ち合うと、ついにデメちゃんは泣き声さえ上げなくなった。

 

(この程度の相手でも、十数回打ち合ったらもう駄目か。私も修行不足だな。)

 

 特質系の私にとって具現化系は覚えやすい。

 だがやはりメイン系統ではないので、耐久力を上げるにはもっと時間が必要だ。

 

(まぁまだ3ヶ月しか修行してないし。ここまで持っただけマシかな。)

 

「――よっと。」

 

 限界を悟った私は右下から斜め上にデメちゃんを振る。

 すると、相手はソレを上段からの打ち下ろしで迎撃しようとした。

 

(……いまっ!)

 

 お互いの獲物がぶつかった瞬間、私はデメちゃんの具現化を解除。

 弾かれてバランスを崩した相手の腕の下に潜りこむ。

 相手はさせまいと右膝を繰り出して来たが、それを右に半歩ずれるように避け、同時にデメちゃんを再具現化。

 

 そのまま新しいデメちゃんを振る。

 左側下段から縦に半円を描いて、まるでゴルフのスイングのようにっ!

 

 ――ばちこーん!!!

 

「はうぁ!!?」

 

 振り上げたデメちゃんは、丁度いい位置にあった相手の股間にヒット。

 相手は手から鉄バットを落として床に膝を突いた。

 私はそれに併せて今度は一歩後ろへ下がる。

 

『クリティカル!! 2ポインッ! シズク!!』

 

 審判が何か叫んでいるがどうでもいい。まだ私ターンは終わってない!!

 

 私はその場で両足を広げて重心を落とす。

 それから腰を使い体重を乗せながら、デメちゃんを左右に振った。

 デメちゃんによる、今までの鬱憤を晴らすような往復ビンタが相手を襲う!!

 

 ――デッメのうち! デッメのうち!!

 

 ばちこーん! ばちこーん! ばちこーん! ばちこーん! ばちこーん!

 

 ばちこーん! ばちこーん! ばちこーん! ばちこーん! ばちこーん!

 

 ばちこーん! ばちこーん! ばちこーん! ばちこーん! ばちこーん!

 

 ばちこーん! ばちこーん! ばちこーん! ……

 

「んぎょーっ! ぎょっぎょっぎょっ!!!」

 

 嬉しそうなデメちゃんの声に併せ、十数の往復ビンタをお見舞いした。

 すると相手はついに意識を失った。

 

『マルタケ選手、失神によるKOです!! 勝者、シズク選手!!!』

 

 審判が私の勝ちを宣言した。

 

「私のデメちゃんは、最強なんだ!!(リサイクル的な意味で」

 

 優勝トロフィーのようにデメちゃんを掲げ、周囲に手を振る。

 私は歓声を聞きながら、堂々とリングを降りていった。

 




闘技場選手と強化率伝々の考察は独自設定です。

原作で闘技場時点でのゴンキルは練が2分持たない、
つまり気絶するまで絞り出しても120オーラ以下。
これで無双してたので、これぐらいかなと思いました。
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