みなさん、おはろー。
幼女マスターのシズクちゃんです。
私は今、初めて200階のリングに上がろうとしています。
格好は黒のタートルネックに厚めのジーパン。
つまり原作のシズクをそのまま小さくした感じ。
ただしまだ眼鏡と金色の逆十字ペンダントはしていない。
今は具現化に成功してから2ヶ月後。
「肉体を鍛える事を、強いられているんだっ!!!」
私はあれからデメちゃんの出し入れと、肉体の鍛錬を集中的に鍛えた。
使ったのはオーダーメイドした鍛錬器具。めちゃくちゃ重い靴や衣服など。
主人公組の3人がゾル家を訪問した時に使ったトレーニンググッズもどきである。
この世界は空気中にプロテインが含まれてると言われる場所だ。
2週間鍛えただけで、12歳の子供が4トンの扉を開けられるようになったりする。
なので私も原作を参考に特注した重い衣服を身に着けて筋トレ。
動けなくなったら絶で回復して、また筋トレを繰り返した。
その他、デメちゃんで素振りしたり、ランニングマシーンで走り続けたり。
おかげで現在は1トンぐらいの重量物なら何とか押して動かせるようになった。
ちなみにその重量物はただの水だ。水は1リットルでちょうど1キログラムになる。
1立方メートルの水袋を用意して、そこに水道から水を入れれば1トンの重量物が完成する。
あとは破れないよう、それに適当な外枠を付けて毎日押した。
(読んでてよかった賭博破戒録カ○ジ。)
こうして私は2ヶ月かけてギリギリまで肉体改造を行った。
でも見た目は全く変わってない。どうなってるのこの世界……
『さぁー、ついにこの選手が200階に登場です!
ここまで無敗で勝ち上がってきました、シズク選手!
無慈悲に相手の玉を砕くことから、誰が言ったか"玉砕姫"!!
果たしてココでも必殺のゴールデンボールブレイクは炸裂するのか!?』
私は実況のお姉さんの説明に合わせて笑顔で周囲に手を振る。
途端に巻き起こる"玉砕姫"コール。
なんど聞いてもひどい通り名だ。
最初に言い出した奴は殺す。見つけたら絶対に殺す。
『対するは自称"天空の特攻隊長"ことマルタケ=イチジョウ選手!
こちらはすでに3勝3敗と後がありません!
果たして、ここで踏ん張ることができるのか!?』
「"
紹介された対戦相手がキレ顔をしながら雄叫びを上げた。
白い特攻服に腹巻き、そして頭は尖ったリーゼント。昭和の不良かな?
3ヶ月前に私のいたずらに引っかかり、見事に仲間と同士討ちをした人だ。
『更に今回はスペシャルゲストに来て頂いております。
現役のフロアマスターの一人"魔王"マゾラー選手!
そしてその"参謀"サドエラさんです!!』
『マゾラーだ。よろしく頼む。』
『サドエラじゃ。よろしく頼むぞぃ。』
おっ、わざわざフロアマスターが来てるのか。
私は実況席のほうをチラッと覗く。
するとそこには、ドラ○エ1の竜王コス(変身前)を着た人が居た。
全身を覆うような黒いローブを羽織り、一部が猫耳のように尖っているフードを被っている。
その横には緑の司教服を着た、策に溺れそうなおじいちゃん。
(ないわー。)
どう見ても強そうに見えない。なんでわざわざゲストに?
ちょうど数日後にバトルオリンピアがあるから話題作りかな?
まぁぶっちゃけ、私にとってはどうでも良い。
フロアマスターはあんな格好強制とかでなければ。
『マゾラー選手から見て、今回の対戦はどうでしょうか?』
『そうだな、マルタケ選手はとても根性がある選手だ。
シズク選手も今までのように、一撃とはいかないであろう。』
実況に聞かれたマゾラーは偉そうな口調で感想を述べる。
ふむ、確かに私の攻撃力では、一撃KOは厳しいだろう。
だが事前調査で相手の手の内は分かっている。
ソースはシンジが持ってきた試合ビデオ。
この『マルタケ』とかいう奴の分だけで3本も持って来たのだ。
思わず、もしかしてシンジって意外と有能なのでは? なんて錯覚しそうになった。
(ビデオを見た限り相手は強化系。それも武器を強化する『武器使い』だ。)
もちろん分かってるからと油断するつもりはない。
だってこれは私にとっての初の念戦闘だ。
いわば私がどれぐらい戦えるかを知るための、大事な試金石。
「お仲間とのガチ戦闘は楽しかった?
もう負けられないからってすごい必死だったよね!
いやぁテレビで見てて大爆笑だったよ!!w
でも私に負けたら全部無意味になっちゃうね?」
「てめぇ!!!(ビキビキビキ」
相手はこれで負けると下層落ち、これまでの頑張りは全部無駄になる。
なのでそこを遠回しに煽る。
くっくっっく、せいぜい焦ってミスると良いわ!
(引導を渡してやんよ。)
私をカモにしようとしたのだ、ならば蹴落とされてもしょうがないだろう。
表面上は対峙している相手を煽りながら、内心では静かに覚悟を決める。
心が徐々に冷えていき、同時に周囲の音が消え、頭の中がクリーンになっていく。
前世で出張中に何度も死にかけた事で身につけた能力だ。
肉体ではなく精神的なものだからか、どうやらこっちでも有効な模様。
そうして待っていると時間が来て審判がリングに上がった。
審判は私達の間に入り、ついに試合の開始を告げる。
「ポイント&KO制!……始め!!」
「……ふっ!!」
試合の開始と同時、私は挨拶代わりに全力で練を行う。
そしてそのまま『堅』に移行。
「!!?」
対して、相手は纏のままだった。
私のオーラ量に驚いているようだが、練も堅も行う気配は無い。
(やっぱり予想通りか。)
これがココの試合ビデオを見て、一番びっくりしたこと。
このマルタケという選手だけではない、ほとんどの選手が『纏』止まりだったのだ。
(たぶん『堅』とか知らないんだろうね。)
『練』の状態を『纏』で維持するのが『堅』。
『纏』と『堅』では顕現するオーラ量は5倍以上になる。
だが恐らくここの人達は『纏』で戦うのが普通なのだ。
『練』も要所要所で一瞬だけ使うもの、という認識なのだろう。
原作でもここでゴンがはっきり『練』を使ったのは一度だけ。
ギドという相手が飛ばした駒を正面から弾いた時だけだ。
(彼らが念を覚えた経緯を考えれば、しょうがないことだけど。)
頑張って武芸を磨いて、200階まで昇って、そこで理不尽な力に叩きのめされて。
その後に、急にすごいパワーが湧いてくれば、誰だって自分が覚醒したと思うだろう。
つまり闘技者としての『ゴール』に至った、と。
(『纏』が出来るだけでも、普通の人相手だと俺TUEEEになるからね。)
普通はまさかそれが、実はただの『スタート』だなんて思わない。
原作で知っていなければ、私だってそうだっただろう。
どこぞの野菜王子が、スーパーなヤサイ人1程度で、俺は最強だー! と言ってたように。
だからココの人たちは独自に発を作ってお終いの人が多いのだ。
(ヒソカがフロアマスターに頓着しないはずだよ。)
闘技場は完全に暇つぶしだったんだろうな。
「――っ!」
そんな事を考えながら私が一歩前に出ると、相手は逆に一歩下がった。
だがそれだけだ。私が絶対に有利という訳ではない。
確かにオーラ量に関してはこちらが圧倒している。
今の私が身に纏って維持できる顕在オーラは最大300ほど。
対して相手が顕在させているオーラは20ちょいしかない。
だがこれが肉体能力、強化系の習得率を加味するとまた違ってくる。
例えば、強化系能力を100%使える場合、1オーラで1%の肉体能力を得られるとしよう。
相手は純粋な強化系、なので習得率は100%だと仮定する。
対して私は特質系な上に修行不足、なので習得率は5%あればいい方。
ではこの場合、殴り合うとどの程度の戦力差になるのか?
相手の肉体能力を100、私をその半分の50とする。
するとオーラによって増える肉体能力はこうだ。
相手:肉体(100/100)×オーラ(20) ×習得率(100%)=20
私 :肉体( 50/100)×オーラ(300)×習得率(5%) =7.5
更に1オーラ=1肉体能力とした場合の最終的な戦力比はこう。
相手:肉体100+20 +オーラ20 =140
私 :肉体 50+7.5+オーラ300=357.5
確かに数字上では私が勝っている。
だがそれほど差が無い事も分かるだろう。
……単に私の強化系習得率が酷すぎるだけとも言えるが。
(でもこれはしょうがない。ここ3ヶ月は強化系を訓練する余裕はなかった。)
しかもこの肉体性能の差は、あらゆる場面で効いてくる。
一つ一つの攻防から単純な動体視力までだ。
おまけに相手は200階まで登りきった格闘技能と経験まであるのだ。
(まぁだからこそ、実験にはちょうどいいけどね!)
上の計算はあくまで机上の物。
そもそも1オーラでどれぐらい強化されるかも不明である。
それに実際は相手が習得率100%なんてありえない。
「あれー、もしかしてお兄さん怖いの?」
「んだとてめぇ」
さらに近づきながら相手に挑発を掛ける。
すると相手はその場で踏みとどまり、背中から鉄バットを引き抜いた。
それを見た私も、上着の中から具現化済みのデメちゃん(全長30cm)を抜く。
(さぁ、デメちゃんの耐久テストの始まりだよ!!)
「ぎょぎょ!?」
イヤイヤ!! とビチビチ跳ねるデメちゃんの尻尾を両手で握りしめる。
(覚悟を決めるんだデメちゃん。これは貴方のためでも有るのよ!)
「んだらぁー!!」
相手が気勢を上げながら、上段から鉄バットを振り下ろす。
それに合わせ、私も同じようにデメちゃんを振った。
――がきーん!!
――ぎょぎょぉーー!?
相手の鉄バットと私のデメちゃんがぶつかり合う。
(相手の攻撃……ちゃんと見える!)
鍛えててよかった眼筋!
おまけに動きの差もほとんどないし、押し負けもしなかった。
(流石シズクちゃんボディだ! 原作で掃除機で頭をかち割ってた体はやはり違う!)
そして力が拮抗してるということは、どうやら相手はメイン系統すら修行不足の模様。
これなら行ける! そう確信した私はさらにデメちゃんを振った。
――がききーん!!
――ぎょぎょぉぉ!!
当たり前だが、打ち合う度にデメちゃんは傷ついていく。
当たりどころが悪かったのか、2打目ですでに右目が潰れてしまった。
だがここで引くことは出来ない!!
――がきーん! がきーん! がきーん! ……
――ぎぎょぉぉ……
それから何度も打ち合うと、デメちゃんは途中からビクビク痙攣しだした。
すでには全身がボコボコになっていて、いつの間にか上ヒレと下ヒレも千切れている。
私は手元のデメちゃんの様子を見て、その余りの酷さに抗議する。
「どうしてこんな事が出来るんですか!!
こんな可愛いデメちゃんを鉄バットで殴るなんて、可愛そうだと思わないんですか!?
このろくでなし!!」
「はああああ!? それはこっちのセリフじゃボケェええ!
泣き声のせいで心がいてえんだよぉおお!! その金魚ひっこめろや!!!」
あれこの人、意外と良い人なんじゃね? 予想以上に動揺してる。
でも私はまだデメちゃんを引っ込めない。
なぜならこれが具現化系の正しい使い方だから。
(だって出し直せばどうせ新品になるし。)
どこぞの団長だって
わざわざ窓を開け、発動条件を崩して念魚を爆散させていた。
そのせいか、具現化物=使い終わったら壊してOK、みたいな風潮がある。
そう、だからこれは団長のせい。
「ちっ、テメェなかなかやるじゃねぇか。だから早くそれ引っ込めろ、な?」
それから更に数度打ち合うと、ついにデメちゃんは泣き声さえ上げなくなった。
(この程度の相手でも、十数回打ち合ったらもう駄目か。私も修行不足だな。)
特質系の私にとって具現化系は覚えやすい。
だがやはりメイン系統ではないので、耐久力を上げるにはもっと時間が必要だ。
(まぁまだ3ヶ月しか修行してないし。ここまで持っただけマシかな。)
「――よっと。」
限界を悟った私は右下から斜め上にデメちゃんを振る。
すると、相手はソレを上段からの打ち下ろしで迎撃しようとした。
(……いまっ!)
お互いの獲物がぶつかった瞬間、私はデメちゃんの具現化を解除。
弾かれてバランスを崩した相手の腕の下に潜りこむ。
相手はさせまいと右膝を繰り出して来たが、それを右に半歩ずれるように避け、同時にデメちゃんを再具現化。
そのまま新しいデメちゃんを振る。
左側下段から縦に半円を描いて、まるでゴルフのスイングのようにっ!
――ばちこーん!!!
「はうぁ!!?」
振り上げたデメちゃんは、丁度いい位置にあった相手の股間にヒット。
相手は手から鉄バットを落として床に膝を突いた。
私はそれに併せて今度は一歩後ろへ下がる。
『クリティカル!! 2ポインッ! シズク!!』
審判が何か叫んでいるがどうでもいい。まだ私ターンは終わってない!!
私はその場で両足を広げて重心を落とす。
それから腰を使い体重を乗せながら、デメちゃんを左右に振った。
デメちゃんによる、今までの鬱憤を晴らすような往復ビンタが相手を襲う!!
――デッメのうち! デッメのうち!!
ばちこーん! ばちこーん! ばちこーん! ばちこーん! ばちこーん!
ばちこーん! ばちこーん! ばちこーん! ばちこーん! ばちこーん!
ばちこーん! ばちこーん! ばちこーん! ばちこーん! ばちこーん!
ばちこーん! ばちこーん! ばちこーん! ……
「んぎょーっ! ぎょっぎょっぎょっ!!!」
嬉しそうなデメちゃんの声に併せ、十数の往復ビンタをお見舞いした。
すると相手はついに意識を失った。
『マルタケ選手、失神によるKOです!! 勝者、シズク選手!!!』
審判が私の勝ちを宣言した。
「私のデメちゃんは、最強なんだ!!(リサイクル的な意味で」
優勝トロフィーのようにデメちゃんを掲げ、周囲に手を振る。
私は歓声を聞きながら、堂々とリングを降りていった。
闘技場選手と強化率伝々の考察は独自設定です。
原作で闘技場時点でのゴンキルは練が2分持たない、
つまり気絶するまで絞り出しても120オーラ以下。
これで無双してたので、これぐらいかなと思いました。