シズク=ムラサキは愉悦したい   作:さろんぱす。

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ありがとうございます。

修正・後書きのゲート詳細をちょっと変更。
夢での魚面襲撃が誓約にならないようにしました。


第13話 フロアマスター戦(前)

「ふぁ~~。」

 

 ベッドの上に全裸で倒れ込む。

 私はそのまま手を上に伸ばし、横にゴロゴロと転がった。

 スプリングが優しく体重を受け止め、上質のシーツが肌に心地よい。

 掛け布団もふわっふわで最高だ。

 体はまだ女性らしさとは無縁だけど、原作の恵体を知っている私は焦らない。

 

「最近は訓練の最後に、胸とお尻にオーラを集めて体操しているし。

 あー、早くムチムチボディになりたいなー……。あっ、デメちゃん口あけて。」

 

「ぎょっぎょー……。」

 

 何いってんだコイツ……ジト目でそんな事を言いそうな顔をするデメちゃん。

 その口が開いたのを見計らってゲートを発動する。繋げた先は2部屋先のキッチン。

 私はゲートに手を突っ込み、その先にある冷蔵庫を開け、中からジュースとプリンを取り出した。そしてプリンを一口。

 

「あ~ん、美味しい!」

 

 快適だ。快適すぎる。

 動かなくてもなんでも持ってこれるって素晴らしい。

 

「あ~、ダメになるんじゃ~。」

 

 ベッドの上を再びゴロゴロと転がりまわる。

 私はあれからゲートについて検証を繰り返した。

 結果、分かったことは2つ。

 

 1つ目は物体が跨いでいる状態でゲートが解除された場合、物体は体積が大きい側に弾き飛ばされるということ。

 例えば先程のようにゲートへ腕だけ突っ込んだ場合、その状態で解除すると腕が体の有る側へ弾き出されるのだ。

 残念なことに『亜空間にぶちまけてやる!』とか『ア○ザーディメンション!』みたいな事は無理だった。

 

「空間ごとねじ切れて防御無視切断!! とかちょっと期待してたんだけどな……」

 

 流石にそこまで都合良くはいかなかった。

 またゲート自体には物を動かす力がないので、この反発は空間が戻る際に何らかの力が働いていると思われる。漫画でよくある復元力とか、たぶんそんな感じ? 自分でもふわっとした理解だと思うが、次元や空間の有り方なんて分からないからしょうがない。

 

 それから2つ目はゲートを開くには大量のオーラを使用すること。

 今のデメちゃん(30cm)の口の大きさですら、1回に約300オーラも消費する。

 デメちゃんの具現化自体にもオーラを使うので、今の私では連続で5回しか使えない。

 

「まぁその5回で十分だけどね。」

 

 ゲートは10秒開いたままなので、必要ならまとめて取り出せばいい。

 こちらは工夫すれば幾らでも運用は可能だろう。

 お菓子や飲み物を全部冷蔵庫に入れとくとか。

 

 あとはデメちゃんをもっと大きくすることが出来れば、私自身がゲートを通って移動することも出来るようになるはずだ。

 

「でもそれには要修行っと。……そろそろ系統別の修行も始めなきゃね。」

 

 系統別修行は字の通り、各系統のレベルを上げる為の修行だ。

 ただし系統は得意不得意があるので、全てを100%マスターすることは出来ない。

 そのため効率よく強くなるためには、上手くスケジュールを組む必要がある。

 

 私はベッドから起き上がり、残ったプリンを6つに切り分ける。

 出来たのは蜂の巣型の六角形。心源流における六性図だ。

 

 私は純粋な特質系。プリンの配置で言えば真南の位置。

 そこから近いほど習得しやすく、遠いほど習得しづらい。

 

 なので習得率は最大で以下のようになる。

 特質系100%、具現化系80%、操作系80%

 放出系60%、変化系60%、強化系40%

 

 ここから私の能力に必要なものを考えてみよう。

 特質系 ……ゲートの大きさ・発動速度などに関係

 具現化系……デメちゃんの大きさ・耐久力に関係

 操作系 ……デメちゃんの操作性・スピードに関係

 

 この辺りは必須だ。得意系統なので習得しやすい。

 プリンで言えば下3つ。私はその位置のプリンを掬って口に運ぶ。

 

「んぐんぐ、この辺はいいんだよね。おいしい。」

 

 それから残りの3つ。

 放出系 ……デメちゃんを離して使うのに必須(ファンネル化)

 変化系 ……デメちゃんを離して使うのに必須(インコム化)

 強化系 ……オーラによる体の強化は念戦闘における基本

 

 こちらは不得意系統なので習得しにくい。プリンで言えば上3つの位置だ。

 しかし私は将来的にはデメちゃんを体から離して動かしたい。

 目指すのは空中を飛び回る浮遊砲台だ。なのでこの辺りも必要になる。

 

 ……うん、つまり全系統を鍛えましょうってことだ。

 

「習得しやすい下3つをベースに、合間に上3つって感じでやればいいか。」

 

 残りのプリンを全て口に運ぶ。

 それから修行は自身の得意系統だけではなく、隣の系統もやる山型が良いらしい。

 なので『特・具・特・操』のローテを基本にして、その後に"放と変と強"を組み込む。

 

 つまり

 『特・具・特・操』・"放"→『特・具・特・操』・"変"→『特・具・特・操』・"強"

 

 こんな感じになる。大まかな山型だ。1ヶ月(30日)の内訳はこう。

 特質系 :12日 具現化系:6日 操作系 :6日

 放出系 :2日  変化系 :2日 強化系 :2日

 

 ちなみに原作のゴン君の修行日数は(12月末開始~4月末にNGL入、までを仮定)

 で推定約121日。山型で修行してたはずなので(内3週間は放出系のみ)

 強化系:50日 放出系:25+21日 変化系:25日

 

 大体こんな感じである。

 これでチョキがキメラアントを切り裂けて、パーが威力500オーラぐらい。

 

「こうして考えると、ゴン君てあまり系統修行してないね。」

 

 メイン系統すら50日ちょい。それであの戦闘能力だから恐ろしい。

 まぁ私はまだ6歳だ。焦らず今からみっちり修行すれば良い。

 そうすれば2,3数年後にはどの系統もそこそこ使えるようになるだろう。

 

 

 

 

 

 ■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

 それから1年、私は修行しながらこの階で戦い続けた。

 

『全治1年の大怪我をすること実に3回!

 その度に不屈の闘志で舞い戻って来ました! 

 "ミスター0(ゼロ)"こと、ヌルハチ=トーキ選手!!

 果たして今日こそ勝利数0に終止符を撃つことが出来るのか!?

 すでに3敗で後がないぞおお!!! 』

 

「うおおおおお! 俺はやってやる! やってやるぞ!!」

 

 2戦目の相手は全身に入れ墨を入れたスキンヘッド男。

 系統は強化系。能力は入墨に触れると、その場所にオーラが集まるというもの。

 つまり凝をわざわざ発で再現したものだ。

 

(すごい無駄な発作ってる……!)

 

 おまけに凝は数秒間そのままで解除できないようで。

 つまりオーラが薄れて、他の箇所が全部弱点になるという酷い能力だった。

 

 試合では凝の攻撃にだけ注意しつつ、他の部分をチマチマ攻撃。

 倒れたところへ股間にデメちゃんを振り下ろして終了させた。

 

 

 

『これより本日の試合を行います!!

 まず入ってきたのは"走る放火魔"こと、モホーク=ヒャッハー選手!

 バイクに乗ったまま火炎放射器をぶっぱなす危険人物だぁ!!

 休日は家族サービスに励むパパさんでもあります!!』

 

「ひゃっはー!! なにバラしてんだころすぞ!!!」

 

 3戦目の相手は長いモヒカンにタンクトップを着た世紀末風の男。

 肩にはトゲトゲの付いたパッドが付いている。

 武器はバイクと火炎放射器。こいつも系統は強化系で、能力はバイクの強化。

 

(こういう人って、素だと意外と真面目だったりするよね。)

 

 なんとなくエ○ちゃんみたいなノリを感じる。

 でも近づくと危険なのでリング全体に油を撒いてスリップさせ、麻痺毒を塗ったダーツを投げまくって動きを止めた。

 家庭持ちらしいので、流石に股間にデメちゃんは止めておいた。代わりにモヒカンを焼いた。

 

 

 

 こんな感じで私は勝ち続けた。

 ちなみに試合でゲートは一度も使っていない。

 試合は撮影されるため手の内をバラしたくないのと、そこまで必要な相手が居なかったからだ。

 全て持ち込んだ武器+デメちゃんのみで片付けている。

 おかげで最近は売店に『デメちゃん棒』と称した商品が並ぶようになった。

 

「デメちゃんすごい人気だね。」

 

「ぎょっぎょっぎょ。」

 

 それほどでもない、そう言いたげなキメ顔で浮かぶデメちゃん。

 そのデメちゃんをナデナデしつつ、私は自分の部屋へ戻った。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

 そうして10勝した私は、ついにフロアマスターへの挑戦権を得た。

 相手は初戦にスペシャルゲストで呼ばれていたマゾラーという選手だ。

 もちろん負ける気は全く無い。

 

 この一年で私はかなり成長した。

 特に顕著なのがオーラの量。実戦を経験したのがよかったのか、家にいたときより格段に伸びるようになった。

 おかげで現在の練の持続時間は1時間前後。ここに来た頃の倍になった計算だ。

 

「ではお二人共、握手をお願いします。」

 

「はーい。」

 

「うむ、正々堂々戦おう。」

 

 記者会見として用意された会場で、対戦相手のマゾラーと握手する。

 その瞬間にたかれるフラッシュ。実際の試合は10日後だが、私がフロアマスター挑戦の最年少記録を更新したとかで、こんな無駄な事をやらされるハメになってしまった。

 

(あ~、だるっ。早く終わらないかなぁ。)

 

 私は終始笑顔で対応しているが、この対戦相手への心情は最悪だ。

 なんせこの会見の前に呼び出されて『試合を辞退しろ』なんて脅されたのだから。

 

(断る死ね。って言ってやったらめっちゃ切れてたなぁ。)

 

 でもこの返しは割と当たり前だと思う。

 だってここまで来て辞退とか意味わからない。

 それに集めたビデオを見ても、全然強そうに思えなかったし。

 

(相手は純粋な放出系。それも変なポーズを取って念弾ブッパするだけの脳筋。

 ちゃっちゃと倒して、フロアマスターの椅子から蹴落とそう。)

 

 そんな事を思っていた私は、握手したままの手に僅かな違和感を感じた。

 

「……んっ?」

 

 すぐさま凝で確認すれば、そこにはオーラに覆われた一匹の蚊が。

 

(なにこれ? 誰かの念能力? まさか……)

 

 すぐに潰そうと思ったが、今は会見中だ。握手と撮影のせいで動けない。

 

(ちっ!)

 

 私は忌々しげに蚊を睨む。そうしていると蚊はすぐさま私の手を離れ、マゾラーの後ろにいたサドエラの肩に停まった。

 私を視線を戻す。そこには嘲笑を浮かべるマゾラーが居た。

 

(こいつら正々堂々とか言っておいて、もう仕掛けてきやがった!!)

 

 この会見が終わったら闇討ちしよう。もちろん玉は念入りに潰す。私はそう決意した。

 だがしかし会見後、マゾラーたちは煙のように消え、結局見つけることが出来なかった。

 

「なにこの手際……あいつらこれが初めてじゃない?」

 

 まるで仕事が終わったスナイパーのような見事な消えっぷりだ。

 恐らく過去にもこうして邪魔な選手を排除してきたのだろう。

 

 私はしょうがなくこの日の襲撃を諦め、部屋に戻ってベッドに入った。

 

 そして日付が変わった頃……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぷ~ん……パチンッ!

 

 ぷ~ん……パチンッ!

 

 ぷ~ん……パチンッ!

 

 ぷ~ん……パチンッ!

 

 ぷ~ん……パチンッ!

 

 ぷ~ん……パチンッ!

 

 ぷ~ん……パチンッ!

 

 …………

 

 

「な に こ れ !!?」

 

 私は何度倒しても復活してくる蚊にまとわり付かれ、結局一睡も出来ずに朝を迎えた。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

「ここは大丈夫なのだな? 本当だな?」

 

「もちろんですとも。あのガキはほぼ闘技場から出ないようですからな。流石にここは分からんでしょう。」

 

 郊外に備えた一軒家。

 その中の一室でマゾラーは焦っていた。

 

 前々から目をつけていた少女、それがついに10勝を達成した。

 それも忌々しいことに、無敗でストレートにだ。

 結果、フロアマスター挑戦の最年少記録を更新。

 闘技場はその偉業にお祭り状態となり、わざわざ試合前に会見まで開く有様だった。

 

 おそらくは新しいスター選手として売り出したいのだろう。

 ここに来て長いマゾラーがびっくりするほど、広報に力が入っていた。

 

 まぁそれはいい。それはいいのだ。

 問題はよりにもよって、その対戦相手が自分だということ。

 

「確率は1/21だったのに。……くそがっ。」

 

 運営を呪わずにはいられない。

 フロアマスター戦は挑戦者が戦いたい相手を指名し相手が了承するか、誰でも良い場合は運営が決める事になっている。

 マゾラーは指名された訳ではないので、今回の場合は間違いなく後者だ。

 

 しかしフロアマスターは21人もいる。なのにどうして自分なのか。

 しかもこの地位は少し前に売る相手が決まり、このまま行けば八百長試合で大金を稼ぎつつ、怪我なく引退出来るはずだった。

 

(これでは最後にがっぽり稼いで引退計画(仮)が台無しではないか……)

 

 しかも相手はここに来た時より、明らかに強くなっている。

 ぶっちゃけ身に纏うオーラの量だけでも、単純に倍になっていた。

 1年前の時点で、すでにマゾラーの全力より多かった相手がだ。

 もはや戦っても勝ち目が無いのは明白だった。

 

「勝てると思うか?」

 

「これはもうダメかも分からんね。」

 

 参謀のサドエラも匙を投げた。ついでに飲み干した酒瓶も投げる。

 だがそんな事はマゾラーも分かっていたことだ。

 

「ではやはり予定通り搦手でいくか。……お前の念能力はどうだ?」

 

「取り付けることが出来ましたので、あとは時間次第ですな。」

 

 サドエラの念能力は具現化した蚊を操ること。

 そしてその蚊で相手を刺すことによって、寄生型の別の能力を取り付ける事ができる。

 すると相手のオーラにより蚊が具現化されるようになり、蚊はひたすら顔の周りを飛び回り精神的苦痛を与える。

 おまけに具現化した蚊が殺される、もしくは何らかの手段で遮断されても、数分後に肌の近くの隙間で再具現化されるというひどい能力だ。

 

「諦めると思うか?」

 

「会見の後に、即座に闇討ちを断行するような相手ですぞ?」

 

「…………」

 

 マゾラーたちがいるのは、街の外れに作っておいた隠れ家だ。

 記者会見の途中、相手の少女から凄まじい殺気を感じ取った二人は部屋に戻らず街へ脱出。

 そのままここで息を潜めていた。

 

「こうなれば、もはや消えてもらうしかないか。」

 

 もちろん正面から戦ったりはしない。

 奴がパシリにしているシンジとかいう男を人質に。

 それと奴に恨みを抱いている選手も集める必要がある。

 

「ワシの蚊が最大数になるのは今日から7日後。なのでやるならその日が良いでしょうな。」

 

「分かっている、その時はもちろん貴様にも来てもらうぞ?」

 

「ひっひっひ、分かっておりますとも。」

 

 そう言って笑いながらサドエラは酒瓶を傾ける。

 マゾラーは一瞬だけ不安になるも、結局は口を閉じて酒を呷った。

 思えばこのサドエラとも4年以上の付き合いである。

 お互いに利用し合う関係だったが、あのガキに能力を使った以上は共犯だ。

 ならば後は力を合わせて、全力であのガキを排除するしかない。

 

(俺は勝つ! 勝って豊かな引退生活を送るのだ! ココまで来て失敗してたまるか!!)

 

 頼りにしているぞ……

 マゾラーは心の中でサドエラにそう告げながら、覚悟を固めた。

 

 

 

 なお翌日、サドエラは持てるだけの酒を持って、当たり前のようにマゾラーの前から姿を消した。

 

 




サドエラ「フレから連絡来たので抜けますね。」
マゾラー「ちょっ、おまっ」
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