シズク=ムラサキは愉悦したい   作:さろんぱす。

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第14話 フロアマスター戦(後)

「あっ、シンジ? 今すぐサドエラって奴を探せ。最優先で。1000万までなら出す。」

 

 翌日、結局眠れずに朝を迎えた私は、すぐにシンジに電話を掛けた。

 目的はあのサドエラとかいうジジイの捕獲だ。

 どうやら私は何らかの念能力を食らってしまった模様。

 効果は今の所、頭の周りを具現化された1匹の蚊が飛び回るだけ。

 

 だがこれがめちゃくちゃうざい。

 この蚊はほとんど普通の蚊と同じで、手で叩けば簡単に潰せる。

 だが倒しても5分経つと再び具現化された。繰り返し何度でも。

 

 恐らくは私のオーラで具現化しているのだろう。

 しかも毛布などを被って完全に触れられない状態になると一度解除され、改めて毛布の隙間に再具現化されるくそ仕様。

 

 無駄に高性能で無駄にイラつく、無駄を突き詰めたような無駄能力だ。

 さしずめ嫌がらせ特化の寄生型念獣と言ったところ。

 

「許さない、絶対に……!!」

 

 私は心の中で復讐を誓いつつ、シンジからの連絡を待った。

 私も探しに行きたいが、街の地理が分からないので探すどころか迷子になるのが落ちだ。

 性には合わないが、ここは待つのが最善の手だろう。

 精神を削られないよう、しっかりと心を保たなければ。

 

 

 

 

 

 ――それから4日後。

 

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「みぎゃあああああああああああ!!!!!」

 

 私は周りに湧いた大量の蚊に囲まれて悲鳴を上げていた。

 どうやらこの蚊は日付が変わると数が倍になる模様。

 いまは16匹にまで増えてしまった。

 

 もちろん私はすぐに蚊取り線香を炊いた。

 しかしこういった害虫対策ですぐ死ぬわけではない。

 蚊は結局しばらく飛び続け、その後に目の前をボトボト落ち続けた。

 

「やばい! 早くどうにかしないと!!」

 

 このままだと明日には32匹、明後日には64匹……5日後には512匹になる計算だ。

 想像しただけでも精神がゴリゴリ削られ、頭がどうにかなってしまいそう。

 それから先なんて、もう考えたくもない。

 

「なにこれ? 想像以上に最悪の能力なんですけど! SAN値攻撃とかふざけんなぁ!!」

 

 舐めていた。私にとって本当の敵はマゾラーじゃなかった。

 あのサドエラというジジイの方だったのだ。

 念能力は弱くてもやばい物は沢山あるって知ってたはずなのに! ちくしょうっ!!

 

 ていうか何をどうしたらこんな能力を作る気になるのか。

 きっとあのジジイは、嫌がらせに人生をかけてるキチガイに違いない。

 

「捕まえたらゴキブリ部屋に放り込んでやる……もしくは寄生虫の大穴。」

 

 私はそんな事を思いつつ、一刻も早くあのジジイが見つかることを願った。

 

 

 

 

 

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「ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”!!!!!」

 

 しかし私の願いは叶わなかった。

 シンジからの定期連絡が途切れたのだ。

 恐らく奴らに捕まったか、もしくは逃げたのだろう。

 

「ぐぬぬぬぬ、戦闘なら私が勝つのに!!」

 

 だが見つからなければどうしようもない。

 おかげで私は昨日からシュノーケルを咥え、湯船に頭まで浸かった状態で過ごしている。

 これなら復活してきてもお湯に浸かって蚊は死ぬので、一々手で潰さなくていい。

 それに蚊は浮かぶので、死んだ後も眼の前にボトボト落ちてこない。

 

 だがずっとお風呂の中というのは結構辛い。

 もはや目の前を楽しそうに泳ぐデメちゃんだけが私の癒やしだ。

 

「こうなったらもう形振りかまってられないね……」

 

「ぎょぎょ?」

 

 私はお風呂から上がると、バッグから携帯と一枚の名刺を取り出した。

 マゾラーもぶち殺したいが、それより先にサドエラを殺さなければいけない。

 そして金次第でどうにかできそうな手段が私にはあった。

 

 間違えないように気をつけながら、名刺に書かれている番号に電話を掛ける。

 

「もしもし、こちらゾルディックさんのお宅ですか?

 私、キキョウ姉さんの妹のシズクと申しますが――」

 

 私は初めての姉との会話に緊張しつつ、サドエラの暗殺を依頼した。

 幸いなことに、向こうには私の事も伝わっていたようだ。

 名刺に書かれた番号は家族用の特別なやつだったようで、すんなり依頼は受理してもらえた。

 もちろん私の今の状態についても説明し、能力を解除させてから殺すことをお願いした。

 

「はい、はい。ではよろしくお願いします。……あーもう、あんなジジイに5千万ジェニーも使う羽目になるとか。」

 

 もちろん金の方はきっちり請求された。

 ちょっと、いやめちゃくちゃ高かったが、他に手段がないからしょうがない。

 

 しかしこれで、このうっとおしい能力が解除される目処は経った。

 私は久しぶりに心を軽くしながら、再び湯船に浸かってそのまま寝た。

 

 

 

 

 

 

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「……………………」

 

 そして耐えること8日目。

 ついに周囲を飛ぶ蚊の数が128匹になり、3桁の大台に入った頃。

 部屋にやたらと凝った黒い封筒が届いた。

 

 中に入っていたのは、場所と時間が書かれていた1枚の用紙。

 それとボロボロになって倒れているシンジの写真だ。

 

「……………………」

 

 私は湯船から出ると、蚊に刺されないようにピッチリした服に着替える。

 それから指定された場所へ向かう準備を整えた。

 

 

 

 

 

 ■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

 

 日が沈みだした夕暮れ。

 私は手紙で指定された、街から数十キロ離れた荒野へ向かった。

 周囲には視界を遮るものが何もない。

 放出系のマゾラーにとって一番戦いやすい場所を選んだ、ということだろう。

 

「フハハハハハハ! よく来たな!!」

 

 そこではマゾラーを含めた複数人の男たちが待ち構えていた。

 内訳は念能力者が2名、それから下の階の闘技者が10名ほどだ。

 

「…………」

 

 対して私の方は周囲を飛び回る蚊が128匹。

 ……余りにも差が酷すぎて泣けてくる。

 

「御託はいいんでとっとと用件を済ませてくれる?

 暇そうな貴方と違って私は忙しいの。」

 

 主に修行とか修行とか。

 私はマゾラーと20メートルほどの距離を置いて対峙する。

 それから持ってきた殺虫スプレーを吹きかけ、周囲の蚊を全て落とした。

 これで少なくとも5分間は蚊に邪魔されなくてすむ。

 

「ちっ、口の減らんガキだ。コイツがどうなってもいいのか?」

 

 マゾラーが左足で倒れている人間を踏みつける。

 よく見ればそれはボロボロになったシンジだった。

 だが呼吸はしていることから、まだギリギリ生きている。

 態々こうして連れてきたということは、きっと人質にでもしようとしてるのだろう。

 私にそんなものが通じるはずがないのに。

 

「どうなってもいい。」

 

「くくく、どうしても助け……えっ」

 

 即座に否定してやると、マゾラーは言葉に詰まった。

 私はそんなマゾラーを無視して、今のうちに周囲に確認する。

 

「くっ、くくく、周りの奴らが気になるのか?……おい」

 

 マゾラーが声をかけると、周囲に居た男たちが前に出る。

 念能力者の方は、私が200階で最初に戦った二人、マルタケとヌルハチだ。

 さらに他の10人も、手に銃を構えながらニヤニヤした顔をこちらに向ける。

 誤解されがちだが、銃は念能力者にも有効だ。

 大抵は能力者側の動きが早すぎて照準が合わないが、きっちり当てればダメージは入る。

 こういう遮蔽物がない場所では更に有効だろう。

 

「冥土の土産に教えてやろう。

 小奴らはみな貴様に恨みを抱く者達――『玉々被害者の会』の皆さんだ。」

 

「玉々被害者の会ぃ?」

 

 どんな会だろう? 奥さんが性豪すぎる人たちの集まりかな?

 

 私は彼らの顔をじっと見つめる。

 ああ、どこかで見たことがあると思ったら、闘技場で今までに戦った人たちだ。

 でも私は最初の10分間手を出さなかったし、降参もしなかったので自業自得だと思う。

 それに……

 

「玉? なくても別に生きていけるでしょ?」

 

 女の私にはどうでもいい事だ。

 ていうか無いなら、いっそ女になればいいじゃん。

 

「ふざけんな!」

「彼女に振られたんだぞ!!」

「慰謝料よこせ!」

「責任とって養え!!!」

 

 とたん、すごい勢いで反発する彼ら。

 コイツラ何なの? 試合の結果なんだから受け入れろよ。

 それをグチグチグチグチと。余りにも舐めすぎだろう。

 ていうかこの程度の奴しか集まらないとか、マゾラー人望ねぇな。

 

「で、やるの? ならタイマンしよ? 魔王なんだから子供一人なんて余裕だよね?」

 

 どう考えてもダメだろうが、とりあえず煽ってみる。

 だが結果は半分予想通りだった。

 

「……断る。こうして堂々と集団で襲う方が魔王らしかろう?

 それに俺は……俺は玉を砕かれるのは絶対にゴメンだ!!

 コイツラみたいに、不能になぞ成ってたまるか!!」

 

 えー、ここでそんな事言っちゃうの?

 瞬間、周りの人のヘイトが2割ぐらいマゾラーに向かった気がした。

 これは典型的な無能上司ですわ。

 

「さて、では最後にもう一度だけ聞いておこう。――我が軍門に下れ!!」

 

 マゾラーは指を指しながら私に最後通知を突きつける。

 対して、私はマゾラーを逆に指差しながら、周囲の奴らにこう言った。

 

「そいつ裏切ったら玉を直せるとこを紹介してあげる。治療費も出してあげるよ。」

 

「「「「「えっ」」」」」

 

 とたんに全員の動きが止まった。それから周囲の人達の視線が一斉にマゾラーに向く。

 当のマゾラーもこの返しは予想外だったのが、周囲を見渡して慌てていた。

 

「き、きさまら! どこを見ている!? 貴様らの敵はアイツだろうが!」

 

(……いまだ!!)

 

 私はその隙を見逃さず、即座にデメちゃんを具現化する。

 もちろん治療伝々なんて最初から無い。

 ただ場を混乱させるためのハッタリである。

 すぐにゲートを繋げて手を突っ込み、その先に置いてあった物を取り出す。

 

 出てきたのは7.92mm弾を超連射する汎用機関銃――グロ○フスMG42。

 

(買っておいてよかった。売ってくれたお姉さんありがとう。)

 

 ここに来る直前に購入しておいた銃だ。

 売子のお姉さんによれば一昔前の銃らしいが、その分だけ手に入りやすいらしい。

 闘技場の中のガンショップで、多数と戦う用としてお勧めされた一品である。

 どうしてこんな物が店に置いてあったのかは考えない。身分不明の未成年に売った理由も。

 

「……き、貴様なんだそれは!?」

 

 最初に気づいたマゾラーが驚きの声を上げる。

 まぁ当然だろう。いきなり機関銃が出てきたら誰だって驚く。

 

 私はすでに装弾が済んでいるソレを両手で持ち、銃口をマゾラーに向けて構えた。

 

「まさか我々と戦うつもりか!? こちらには人質が……」

 

「お、おい! あんなの聞いてねぇぞ!?」

 

 私にこんな能力があるなんて知らなかったせいか、それともこの機関銃にびびったのか。

 とにかくめちゃくちゃ焦りだしたマゾラー組。

 だが関係ない。ココに来た時点で私はとっくに覚悟済みだ。

 

 と っ く に 覚 悟 済 み だ !!!

 

 だから私は彼らの顔をぐるっと見渡し、笑顔で告げた。

 

「――うるさい死ね、もしくはくたばれ。」

 

 ――Voooooooo!!!!!!!!!!

 

 同時に、躊躇せず容赦なく引き金を引く。

 銃口から分間1200発の勢いで弾が発射され、余りの連射速度に電動ノコギリのような音が周囲に響きだした。

 

 もちろん最初に狙うのはマゾラーだ! 君にきめた!!

 

「ちぃ!!」

 

「ちょ、直してくれるんじゃねーのかよ!? ……ひでぶっ!!!」

 

 だが流石はフロアマスターか、マゾラーは迷わずマルタケを盾にすることで銃弾を躱した。

 さらにマゾラーはそのまま次々と仲間の後ろを飛び跳ねる。

 私は逃さないように銃口を左右に動かす。代わりに盾にされた人たちがバタバタと倒れていく。

 

 もちろんトリガーは引きっぱなしだ。

 普通の銃ならすぐに弾切れしていまうが、この汎用機関銃はベルト給弾式。

 弾帯はデメちゃんの口の中に続いていて、このまま1000発以上連続で撃つ事が可能。

 

「ちぃ、ならば喰らえマゾラゴ……おい待て!」

 

 念能力を使おうとしたマゾラーに銃口を合わせると、彼は発動を止めて飛び退いた。

 

 ビデオで確認したマゾラーの発は念弾ぶっぱ。

 技名を叫びつつ特定のポーズ取ることで、オーラの形状を変化させて放出する能力だ。

 試合ではマゾゾーマ(球状)、マゾラゴン(ビーム)、マゾナズン(爆発)などを使っていた。

 

 だがポージング中はその場から動けない。

 逃げ回るのに必死な今は、必要なポーズが取れないので使えない。

 魔王っぽい演出を望んで作った発なのだろうが、ぶっちゃけ欠陥能力だと思う。

 

「ちょっ、待て! 待てと言ってるだろう!!」

 

 私はマゾラーの懇願を全無視。

 暴れる銃をオーラと筋力で無理やり押さえつけて撃ち続ける。

 というか、どうしてココまできてそんなお願いが通じると思っているのか?

 頭がお花畑なのかな?

 

「いいからはよ死ね。」

 

「あああああああ!!!!」

 

 マゾラーは念によって自身を強化し逃げまわる。だが念を使えるのは私も同じ。

 普通の人が見失う速度で動いても、強化された私の動体視力ならマゾラーを把握し続けるのは容易だ。

 時々向こうから撃ち返される普通の念弾と銃弾を躱しつつ、マゾラーに銃口を向け続ける。

 

「やめっ、やめろぉおおおお!!!!」

 

 そうして数秒間、射ち続けた弾丸がついにマゾラーを捉えた。

 撃ち出される弾はマゾラーのオーラを楽々と貫通、体中に次々と風穴を空けていく。

 

「げぇ! マゾラーさんが!!」

 

 マゾラーが倒れて動かなくなる。

 全身から血を流し、右手と左足そして首が千切れかけている。

 誰が見ても死んでいるのは一目瞭然だった。

 

 まだ生き残っていた人たちの戦意が、いっきに下がった。

 

「お前らも死ね。」

 

 だが私はそれでも銃を止めない。

 ゲート能力を見せた時点で、もとより一人も生かして返す気はない。

 

「うわあああああ!!!」

「いやだああああああ!!!!」

「お母さああああああん!!!!!」

 

 念を使って高速で動き回りつつ、敵の悲鳴を聞きながら銃を左右に斉射する。

 残った唯一の念能力者であるヌルハチがオーラで全身を守ろうとするが、この銃の前では意味がない。

 

 発射された銃弾は彼らのお粗末な纏など紙くずのように引き裂く。

 なんたってこの銃の威力は9mmパラの約12倍。

 売子のお姉さんの説明によれば、対人狙撃銃よりも上だという話だ。

 ほんの0.5秒ほど銃口を向けるだけで、彼は体中に穴を開けて倒れた。

 

「…………」

 

 そうして戦闘を始めてから数十秒後。

 ココに居たマゾラー組は全員が死に、私はようやく戦闘態勢を解いた。

 

「ふぅー。」

 

 息を吐きながら周囲を見渡す。

 そこに有ったのは、物言わぬ躯となった13人分の死体だけ。あと128匹の蚊。

 

「……お掃除完了! あー、これで私も童貞卒業か……」

 

 撃ちすぎて銃身から湯気を上げている銃を地面に置き、弾帯を外してすぐにゲートを解除する。

 覚悟していたとはいえ、意外と早かった。まさかこれほど治安が悪いとは。

 まぁ半分以上は自業自得な気もするが、さすがはハンターハンターの世界といった所か。

 

 しかし7歳……しかも初めてが14Pだ。

 きっと世界中の暗殺者でも、同じような経験者はなかなか居ないだろう。

 

「でも思ってたより何ともないね。……やったのが銃だからかな?」

 

 それに距離も離れていたし。

 これがナイフや素手だったらまた違ったのだろうか?

 

「ぎょぎょっ?」

 

 立ち尽くしていると、デメちゃんがこちらに気遣うように額を擦り付けてきた。

 

「大丈夫だよデメちゃん。でもありがとうね。」

 

 だが私は本当に大丈夫だ。

 むしろどちらかと言えば罪悪感よりも高揚感の方が大きい。

 

 それに……

 

「銃をブッパなすのって、とってもキモチいいね♪」

 

 私はそう言いながら両手で自分を抱きしめ、空を見上げながら身を震わせた。

 

 引き金を引く感触、響く発射音、そして全身を襲う振動。バタバタ倒れる敵……

 全てが心地よかった。正直、癖になりそうだ。

 そして知ってしまった以上、もう今後の戦いはこのスタイルしか考えられない。

 早く帰って、もっと色々と試してみたい。

 

「よし、じゃあ死体埋めて帰ろっか。早くしないとバレちゃうし。」

 

「ぎょっーぎょ。」

 

 私は再びゲートを発動。機関銃を戻し、代わりにスコップを取り出す。

 そしてそれを周で強化して穴を掘ると、そこに全ての死体を埋めてから街へ歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待っておいてかないで。」

 

 あっ、シンジ生きてた。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

 海上を飛ぶ飛行船の一室。

 サドエラは奮発して借りた最上級室でソファーに身を委ね、月を肴に酒を飲んでいた。

 

「全く、マゾラーの奴も不甲斐ない。あんなガキ一人に勝てんとは。」

 

 そう言いながらも、サドエラはこの結末をそれほど気にしてはいなかった。

 サドエラにとって正面からの戦いなど馬鹿のやることだ。

 自身は常に誰かの影に潜み、蚊が血を吸うように、こっそりと金を吸い上げてきた。

 

「じゃがまぁいいか。どうせ今までの恨みは、全てマゾラーに向かうでの。」

 

 マゾラーという男も、そんな身代わり兼金づるの一人でしかない。

 それに終わりにするには丁度良いタイミングだった。

 マゾラーには言わなかったが、実は少し前から運営側に自分たちを排除しようとする動きが有ったのだ。

 理由は言わずもがな。つまりやりすぎた、ということだ。

 今まではあんな腐った性格でも、表向きは超然とした人気選手だったため、運営も見逃していた。だが代わりになる人材が出てきたため、切り捨てる事にしたのだ。

 

「まぁまた次を探せばいいだけじゃ。ワシの〈蚊憑り選考(モスティンガー)〉と〈暗眠妨蚊囲(バッドエンド)〉は無敵……! 誰も逃げることはできん。」

 

 あとはこのまま適当な国へ行き、同じようなカモを見つける。

 それに今回の結末も調べて、勝ったほうを脅迫してもいい。

 マドラーなら今までの悪事を。あのガキなら能力の解除を条件に。 

 

「ヒッヒッヒ、造作もないことよ。ワシの頭脳を以ってすればな! ……オイ、酒が切れたぞ! はよう持ってこんか!!」

 

 サドエラは部屋専属のアテンダントを呼ぶ。

 しかし入ってきたのは、別人だった。

 

「……誰じゃお前は?」

 

 それは民族衣装のような服を来た老人だ。

 ゆっくりした動作で歩み寄ってくるが、妙に迫力がある。

 

(はて、こんな老人が飛行船におったか? まさか船長?)

 

 そう言えばこの部屋は最高級室だったし、挨拶にきても不思議ではないな。

 サドエラがそんな事を思っていると、入ってきた老人はその鋭い目をサドエラに向けた。

 そして告げられた言葉は、サドエラにとって完全に予想外のものだった。

 

「ワシはゼノ=ゾルディックという者じゃが、お主がサドエラじゃな?」

 

「……ゾル、ディッ、ク?」

 

 その家名はサドエラもよく知っている。なんせ伝説の暗殺者の一族だ。

 しかしどうしてそんな伝説の人物がここに居るのかは分からなかった。

 

 それからちょうど一分後。

 サドエラは能力を解除させられ、首は胴からお別れになった。

 

 




これで闘技場編は終わりになります。
書き溜めが無くなったので、以後は不定期更新になります。
読んで頂きありがとうございました。

・主人公がぶっぱした銃(MG42)
通称ヒトラーの電動ノコギリ。
ヘルシングでセラスがワンちゃんとの戦闘時に二丁持ちしてた銃。
なお実際には250発ぐらいで銃身交換する模様。


■以下キャラクター紹介
・マルタケ=イチジョウ(強化系) モデル:一条武丸(特攻の拓)
最初に絡んできた三人組の一人。不良っぽいリーゼント。
武器:鉄バット(ピッケルではない)
能力:自身のタフ度(耐久力)を強化すること。
「待ってたぜェ!! この瞬間をよぉ!!」


・ヌルハチ=トーキ(強化系) モデル:ゼロ(オーバーロード)
最初に絡んできた三人組の一人。全身入墨のスキンヘッド 。
武器:素手(格闘技)
能力:入墨を触ることでその部分にオーラを集める(凝もどき)
「今日こそ勝つんだぁあああ!!」


・モホーク=ヒャッハー(強化系) モデル:北斗の拳の雑魚
最初に絡んできた三人組の一人。世紀末風の長モヒカン。 
武器:バイクと火炎放射器
能力:バイクの強化。
「ひゃっはー! 汚物は消滅だー!!」


・魔王マゾラー(放出系) モデル:魔王ハドラー(ダイの大冒険)
魔王と呼ばれる200階選手。闘技場歴12年、フロアマスター6年のベテラン。
武器:素手(仕込み爪有り)
能力:魔王呪文(仮)
   オーラの形状を変えて放出する能力。
   形状は叫んだ呪文名とポーズに応じる。
   マゾゾーマ(球状)、マゾラゴン(ビーム)、マゾナズン(拡散)など。


・参謀サドエラ(操作系) モデル:妖魔師団長ザボエラ(ダイの大冒険)
マゾラーのセコンド。お金大好きな外道おじいちゃん。
 能力1:蚊憑り選考/モスティンガー
     蚊を具現化して操作する能力。操れるのは1匹だけ。
 能力2:暗眠妨蚊囲/バッドエンド
     蚊憑り選考で刺した相手へ寄生型の念獣(蚊)を取り付かせる能力。
     蚊は殺されても5分後に相手のオーラを使って復活。
     更に日付が変わる毎に数が倍になる。最大128匹。
     主に相手への嫌がらせ兼脅迫の為に使われていた。
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