シズク=ムラサキは愉悦したい   作:さろんぱす。

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みんな大好きゾルディック家の巻。
微妙にグロい描画があります。ご注意下さい。


グリードアイランド編
第23話 突撃!隣のゾル家訪問


「ゴトーさん、写真撮ってー。」

 

「畏まりました。……はい、チーズッ!」

 

「いえーぃ!!」

 

 皆さんこんにちは、無事ハンターになったシズクちゃんです。

 私は今、龍の頭がついた巨大な門の前で笑顔ダブルピースを決めています。アヘ顔は無いけどね!!

 

 現在の場所はなんとゾルディック家の正門前だ。ハンター世界屈指の超人気スポット。デカくて見た目も格好いい。本拠地を作ったら、私も是非こんな門を建てたい。

 

「ありがとうゴトーさん。」

 

「どういたしまして。」

 

 私はゴトーさんから撮影に使った携帯を受け取る。原作にも出てきた執事さんだ。

 容姿はほぼ原作のまま。ピッチリとした黒スーツにオールバック+三角眼鏡のチンピラフェイス。ただしまだ顎髭は生やしていない。イルミを迎えにきてからココまで一緒だった。

 

「それで、ココから先は全部ゾルディック家の敷地なんですよね?」

 

「その通りでございます。」

 

 私は門から先を見通す。

 門から山まではかなり遠い。原作では下山に30分だったか。途中には森なんかも有り、恐らく山の向こう側も全部敷地なのだろう。地球で例えれば、富士山とその周辺全てが私有地になってる感じだろうか。広すぎぃ!!

 

「これだけ広いと税金やばそうですね。その辺ってどうなんでしょう?」

 

「……税金? ああ、そう言えばそんなものもありましたね(苦笑」

 

 そんなもの? ……あっ(察し。

 これは間違いなく払ってませんわ。まぁ普通に考えたら治外法権だよね。ゾルディック家の本拠地が有るって、それだけで国防にめっちゃ貢献してそうだし。侵攻しようとした国の御えらいさんはみんな首チョンパだ。

 

 それにこの国の政治家も命まで懸けて税金を取ろうなんて思わないだろう。居ても法案を出したら即暗殺されて終了だ。表向きは特区にでもなってるのかな。

 

「それでなんで門の()で降りたの? まだ何か試すの?」

 

 ココまで私達が乗ってきた飛行船は門の近くに着陸した。

 そのまま中まで行くと思っていたのだが、何か用事でもあるのだろうか。遠慮せず住まいまで直行でいいのよ?

 

「ご安心下さい。シズク様は奥様が招いた大切なお客様です。我々執事ごときが試すなどという事は絶対にありえません。」

 

 ゴトーさんはそう言いながら、惚れ惚れしそうな動作で優雅に頭を下げる。

 

 すごいよねこの人。こんな事言いながら、飛行船の中では私のことをずっと実験動物にしてたんだよ? 血液検査やらDNA検査やらやって、仕舞いには毒まで盛りやがった。解毒剤を持ってたのにすぐ渡さず、私が苦しんでる様子をメモしてたことは絶対に忘れない。

 

「じゃあこの門はどうするの?」

 

「はい、これは"試しの門"と言いまして、奥様が是非シズク様に開けてほしいと。」

 

 やっぱ試す気満々じゃねーか!! ……まぁそんな事だろうとは思ってたけど。じゃなきゃこんな所で降りないよね。

 

 私は改めて門を見上げる。門は7重の入れ子構造になっていて、内から外に向かって1~7の数字が書かれていた。

 

「つまり入る前に実力を見せろってことね。」

 

 だが乗ってやろう。だってハンターファンとしてこの門は押さずにはいられない。

 確か1の門が4トン。それから数字が増えるごとに倍の重さだ。

 

(さて今の私はどこまで開けるかな?)

 

 これでも私は6歳の頃から過酷な肉体改造を行ってきた。

 闘技場の部屋でも水袋を押していたが、床が抜けると困るので試したのは4トンまでだ。

 それからどれぐらい力が付いたかは自分でも気になるところ。

 

(いっちょやってみますか!!)

 

 両手を押し当てた状態で限界までオーラを絞り出し、全身の筋力を使って門を押す。

 

「っらぁあああああ!!!」

 

 ズゴゴゴゴ、という音と共に門がゆっくりと開いていく。動いた門に書かれた数字は……3!!

 

 ということは16トン。特質系の私としては頑張った方だろう。

 えっ、キルアは念無しで余裕だったって? 公式チートとの比較はNG。オーラ有りだと5の門(64トン)まで開けていたし。私じゃ一生掛かっても無理な気がする。

 

「素晴らしい。その歳でよくぞそこまで。」

 

 パチパチパチパチ。ゴトーさんは拍車しながら喝采を述べる。

 しかし私はとても喜べなかった。だって

 

 ――ギィィイ、ゴトンッ! ギィィイ、ゴトンッ!! ギィィイ、ゴトトンッ!!!

 

 横でイルミがオーラ無しで3の門を開けているからだ。しかも何回も。

 

「これぐらいなら念は要らないよね?」

 

 そう言いながら首を傾げるイルミ。

 なんで対抗意識燃やしてるの? お前ちょっとぐらい空気読めよ。今は私が褒められるターンでしょ。

 

「よっと。」

 

 あっ、今度はオーラ使って4の門まで開けだした。ドヤ顔うぜぇ……

 

 イラッとした私はデメちゃんからバズーカ(携行対戦車弾)を取り出し、そのままイルミが押さえている門に向けて発射した。イルミは躱したがロケット弾はまっすぐ着弾し、爆炎を上げて1の門の左側を吹き飛ばした。

 

「どうして壊したの?」

 

 イルミがジト目でこちらを見てくる。ゴトーさんは笑顔で固まったまま。

 

 ……思わずやっちゃった。でも全く後悔が湧いてこないのが不思議だ。

 まぁ一週間以上この二人と飛行船に缶詰だったからね。自分でも気づかないうちにストレス溜まってたんだなぁ。だから

 

「スッキリしたからもう大丈夫。さっ、先に進も。」

 

「あのさぁ……」

 

 片門ぐらいならきっとセーフ!!

 

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

 ノリで破壊しちゃった門から中に入る。ゴトーさんに聞いてみたけど、うっすらと笑うだけで特にお咎めはなかった。まぁ原作でも壊す人がいるって言ってたし、意外と良くあることなのかも。

 

 中に入ってからは数十分進むと山の麓に辿り着いた。そこには巧妙に隠された入り口があり、石で作られた通路が伸びていた。

 

 どうやらゾルディック家は山の中に住まいを作っている模様。

 防空壕、いやこの場合はシェルターかな? この作りなら爆撃とかされてもかなり耐えれそう。私はゴトーさんの後を追って中を進む。

 

「こちらでございます。」

 

 案内された部屋は10畳ほどの大きさで、大きなテーブルと椅子があった。

 そこに座っていたのはゾルディック家の主要な面々だ。

 

 前当主のゼノさん、現当主のシルバさん、その妻であるキキョウ姉さんと5歳のミルキ。

 あとは後ろの方の壁にムキムキの女性――ツボネ先生と執事達が立っていた。こちらを警戒しているのか、執事たちの視線にはどことなくピリっとした緊張が有る。

 

(原作よりみんな若い! 十年以上前だから当たり前だけど。)

 

「ゼノじゃ。」

 

「シルバだ。」

 

 ゼノさんとシルバさんはカッコいい。白龍と銀狼って感じだ。ただ座ってるだけなのに、出来る仕事人という雰囲気が溢れている。

 

「ミルキ。」

 

 ミルキは全然太ってない。見た目は髪の短いアルカ。今なら魔法少女で売り出せそうだ。こんな可愛い子がどうしてあんなデブオタになってしまうのか。時間は残酷である。

 

「キキョウよ。貴方がシズクちゃんね? やっと会えたわね!!」

 

 そしてキキョウ姉さん。

 黒髪を頭に巻き付けたような髪型に黒い和服。振舞も優雅で、まさに美人令嬢といった雰囲気だ。

 

 でも眼にはやっぱりバイザーが付いていた。お気に入りなのかな? いやもしかしたら念の制約なのかもしれない。どっちにしろダサイのは変わらないが。視線が動くたびにウィンウィン音がする。髪も着物も黒いせいで、もう黒い三連星用のザクⅠにしか見えない。

 

「ツボネ、結果はどうだった?」

 

「はい、DNA検査及び念具による調査、共に奥様と血縁だと判定が出ております。」

 

 シルバさんがツボネ先生に確認を取る。まぁこの辺はここまでの飛行船内で散々やられた事だ。個人的にはもうちょっと手加減してほしかったが。でももし血縁じゃなかったら飛行船から叩き落とされてただろう。

 

「そうか。ならば君は俺の義理の妹ということだな。歓迎しよう、自分の家だと思って寛ぐと良い。」

 

 シルバさんが義妹宣言をすると、部屋の雰囲気が和らいだ。

 キキョウ姉さんは椅子から立ち上がると正面で膝を突き、私を抱きしめながら頭を撫でた。そこには原作で見たヒステリックな狂気は一切感じられなかった。私としてもこの反応は予想外だ。ちょっと恥ずかしい。

 

(あれっ、むしろ思ってたりフレンドリーだぞ? ていうか優しいお姉さんじゃん。なーんだ、警戒して損した。)

 

 私はそのまましばらく撫でられ、それから椅子に座った。

 その後は少しずつこれまでの話をしたが、キキョウ姉さんは家族思いの良いお母さんといった感じ()()()

 

 しかしマゾラーやキャシャリン軍曹と戦った時の話を聞くと豹変。

 

「んぎぃいいい! 私の家族になんてことを!! 私の(・・)シズクちゃんに手を出すなんてぇえええ!!!!」

 

(えぇーー……)

 

 キキョウ姉さんはバイザーをウィンウィン動かしながら叫びを上げた。……ドン引きである。

 

「ちょ、ちょっとイルミ!! キキョウ姉さんの様子がおかしいんだけど!?」

 

「大丈夫、いつものことだから。」

 

 イルミは一切気にせずお茶を飲む。

 いつもこうなの!? 前言撤回、超怖いんですけどこの人!!

 

 そんなやり取りをしている間に、キキョウ姉さんはいつの間にか側に来ていて、両手で私の肩を叩きながら絶叫を上げ続けた。その威力はやたらと高くて、少しでも油断すると肩が砕けてしまいそう。

 

 いやとっさに【凝】でガードしなければ、きっと砕けていただろう。というか、一体いつ私はこの人の()になったのか。

 

「許せないわ。許せないわ。許せないわ。許せないわ。許せないわ……」

 

(何この人!? いきなり変わりすぎぃ!! こわいっ!!!)

 

 どうやらこの人は家族が他人に傷つけられるのが許せないタイプらしい。

 しかしもう全部始末済みだ。なので落ち着いてもらおうと、その事を告げると……

 

「じゃあもっと鍛えましょう! そんな雑魚にやられないように!!」

 

 という事になってしまった。ごめん、ちょっと意味が分からない。

 

 しかしこのままこの人達に任せてしまえば、きっと修行という名の拷問が始まってしまう。私も強くなりたいとは思うが、流石にソコ(拷問)までは望んでない。どうにかしてココから逃げなきゃ。

 

「あっ、わたし用事思い出したので一旦帰りたいんですが。」

 

 なので、私は一縷の望みを掛けてゼノさんに視線を送る。この家で一番まともな(だと思う)人だ。助けておじいちゃん!!

 

「……ふむ。イルミ、お主から見て嬢ちゃんはどうじゃった?」

 

「ぜんぜんダメ。弱すぎて何時でも殺せる。」

 

 おまっ!? 砂漠で助けてやったのに酷い!!

 くそっ、こんな事になるならイルミが倒れている間に弱みを確保しておくんだった。パンツ下げて写真取るとか。鼻フラワーとか。どうして私はやっておかなかったのか。

 

「では修行したほうが良いの。まぁ死なないように配慮はしよう。」

 

 そんなー。私知ってるよ、それ絶対に配慮(ゾルディック家式)だよね?

 

「それともう一つ」

 

 まだあるの?

 

 

 

 

 

 

「門を爆破した件じゃ。」

 

 あっ、これ帰れない奴だ。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

 そうしてゾルディック家に迎えられた翌日から、修行という名の拷問が始まった。

 

 起きて顔を洗ったら庭に出て【流】をしながら体操。

 終わったら"ペケ"という名の大型犬に追いかけ回され、ぶっ倒れるまで山を走る。

 

 ペケは恐らく原作に出てきた"ミケ"の先代だろう。この犬野郎、畜生の癖にオーラを纏ってて、しかも本気で食いに来るから怖い。私はお客様やぞ? 一度だけ足止めしようとデメちゃんを出したら一瞬でモグモグされて砕け散った。全長4メートル超えのワンコはさすが咬合力もすごかった。

 

 朝食を取ったらイルミと組み手だ。

 もちろん全く手も足も出ず、ボコボコにされて土を舐める毎日。

 特に肢曲とかいう技がチートすぎてクソゲー。念無しで分身するのマジ止めて。

 

 それが終わったら昼からはツボネ先生による念の訓練。

 これはよかった。今まで分からなかった系統ごとの訓練方法が知れたし、駄目な部分も遠慮なく指摘してくれるからかなり楽しい。

 

 そしてたまに拷問訓練、もしくはゼノさんとの実戦だ。

 ゼノさんは原作通りの好好翁だったのだが、修行については一切容赦がなかった。

 

 繰り出される【発】――【龍頭戯画(ドラゴンヘッド)】は一撃でデメちゃんを噛み砕いちゃうし、拷問訓練でも遠慮なく電流を流してきて洒落にならない。

 

 こんな感じで日が沈む頃には指一本動かせなくなり、オーラも枯渇して倒れるのが最近の日常となっている。

 

「では今日はこの辺にしておくか。イルミ、其奴を運んでおけ。」

 

「うん、分かった。」

 

 その後はイルミに食堂まで運ばれ、執事さんに無理やりご飯を口に詰め込まれる。

 

「ではシズク様、失礼します。」

 

「待ってゴトーさん死ぬ、死んじゃうくま! ……せめて食事は毒抜きにして!!」

 

「申し訳ございません。奥様のご指示でございますので。」

 

「やだああああああ!!!」

 

 もちろん出される食事は全部毒入りだ。

 ゾルディック家としてはこれが普通なのだろう。

 

 しかし私は今まで毒物なんて摂ったことはないのだ。

 特にここ数年は保護者がいなかったので、好きな時に好きなものを食べていた。

 

(闘技場のレストランで食べたステーキが恋しいよぉ……)

 

 なので毒耐性なんて全く無い。

 つまりここの食事を摂ると体が割と洒落にならない事になる。ていうか気を抜くとマジで死ぬ。

 

「大丈夫じゃ、ちゃんと死なないギリギリの線を見極めておる。」

 

 いや違う、そうじゃない。

 いまから毒を摂り出しても耐性は付かないんじゃないかなって。

 

 だから普通のご飯にしよ?

 

「それにキキョウからも限界までやって欲しいと言われておるからの。

 まぁ安心せい、死んでも3秒以内なら生き返らせてやる(心臓マッサージ的な意味で)」

 

 それどこに安心する要素があるんですかね?

 むしろ不安しか無い。ていうか鍛えるのは体術と念だけでいいのに。

 

 こんなの絶対おかしいよ!!!

 

 私はキキョウ姉さんの方に視線を向ける。

 そこにあったのは歳の離れた妹を強く育てようとする、母性全開のお姉ちゃんの姿だ。

 

 ただし手段は選んでくれない。

 キキョウ姉さんは頬に手を当て『あらあら、まぁまぁ』なんて言いそうな顔でこちらを眺めていた。

 

(早まった。キキョウ姉さんが教育ママなのは分かってたのに。もうちょっと成長するまで、どんな手段を使っても逃げ回るべきだった……)

 

 最初に電話(暗殺依頼)した時、すごい好感触だったから油断した。

 いやもしかしたら、あれもこちらを油断させる罠だったのかもしれない。

 

(生きて出れるのかな?)

 

 不安すぎてリバースしそうになってくる。

 ふと隣を見れば、そこではミルキが私のより強い毒入り食事を平気な顔で平らげていた。

 まだ5歳なのに。やっぱゾルディック家ぱねぇわ……

 

 

 

 

 そうして1日が終わると、寝る前に反省会が行われる。

 担当は念に引き続きツボネ先生。あとゼノさん。

 

「シズク様は念は独学とのことですが、今まではどのような訓練を?」

 

「えーと、系統訓練は満遍なく? 強化系では砂を叩いてましたね。」

 

「なぜ砂を?」

 

 ああ、これだけだと意味わからないよね。でもしょうがないんだ。私だって強化系LV1の修行が"石割り"だって事は知っている。でも街の中に石千個なんて有るわけがない。町の外に行けばあるだろうが、しかし1日に何百個も割ってたらすぐ無くなる。

 

 だから私は発想を変えた。この修業で重要なのは【周】による強化を千回連続で成功させることだ。石はそれを分かりやすくする為に使ってるに過ぎない。

 

 なので石を割る代わりに砂に叩きつけることにしたのだ。これなら石は手に持つ一つだけで済む。あとは砂場で千回をクリアしてから、最後の締めとして石割りを行った。

 

「なるほど。独自に工夫されていた訳ですな。」

 

「あと操作系の修行は掌に置いた弾丸をオーラで回したり、壊れた時計の針を動かしたりしてました。」

 

 ジョジョ7部の序盤でジョニィがペシペシやってたやつである。

 いきなり物を動かすのは難しいと思ったから、とりあえず回転させてみる事にしたのだ。

 これなら体から離さないから放出系は混ざらないし、弾丸と時計を丸ごと【周】すれば変化系とも区別できる。

 

「ぶっちゃけ、私の念ってどうなんでしょう?」

 

「そうですね、四大行は中々。特に【練】はとても優秀かと。」

 

 ふむふむ。私の現在の【練】の持続は3時間。マゾラーとの戦いで追い込まれたのが良かったのか、それからは月に10分ずつ伸びていった。オーラは多いほど戦い方に幅が出るからね。これからも続けてもっと増やしたい。

 

「応用の方は【堅】【凝】【硬】【陰】【流】は及第点。逆に【周】【円】は修行不足ですな。それと【流】は格闘の訓練をしてないせいで、現状は宝の持ち腐れでございます。」

 

 こっちは中々厳しい。銃弾ブッパがメインだから【周】はそんなにやってなかったんだよね。

 てか私は限界まで極めても離れた物体の強化は本来の24%しか出来ないし。100オーラ使っても24オーラ分しか強化されないんだよね。それなら【周】を使うより沢山撃った方がマシかなって。

 

 そして【円】。実は私はこれがめちゃくちゃ苦手。現状で広げられる距離は半径2.5メートルが限界。幻影旅団のNo1であるノブナガさんの半分以上!! と考えれば強そうだが、実際はただしょぼいだけである。

 

 ただし【周】とは違い、こっちは時間を掛けて修行した結果がこれだ。

 なので恐らく私は【円】の適性が無いのだろう。遠距離攻撃が主体の私としては、広ければ広いほど良いんだけどね。ゼノさんみたく300メートルまで広げたかったなぁ。

 

「ふむ、8歳の時のイルミと比べれば念に関してはどっこい。筋力と回避はそこそこ。格闘は未熟。耐性はイマイチ。といったとこじゃな。【発】の方は"物を出し入れできる能力"自体は利便性が高いが、しかしその起点となる念魚がちと脆いのぉ。」

 

 ゼノさんが現在の総評を教えてくれる。

 うーん、デメちゃん駄目ですか。まぁ今までもポコポコ壊されてたからなぁ。

 闘技場では鉄バットで殴られ、砂漠では注射器でめった刺しにされ……

 

(デメちゃんはこんなに可愛いのに、みんなどうして攻撃出来るんだろう? この世界の人達はあまりにも人の心がなさすぎる。)

 

 でもこのままだとマズイのも確かだ。離して使うことも考えれば強化は必須だろう。

 なんせ私は純粋な特質系。どれだけ修行を積んでも具現化系は8割、放出系は6割の精度でしか扱えない。100オーラ使っても、具現化されたデメちゃんは80オーラ分の性能しか無く、体から離すと更に48オーラ分まで低下する。これではとても安心出来ない。

 

(うーん、もうちょっと様子を見たかったけどなぁ。でも軍曹戦みたいな事もあるし、思い切ってもうやっちゃうか。)

 

 実は解消する為のアイデアはすでに考えてあった。制約と誓約である。

 ヒントをくれたのはデメちゃんだ。部屋で眺めている時に頭に浮かんできたイメージ。

 

 出目金、飛んだ、窒息、死因、魚面、邪神、黒渦、転生、そして()()()()()

 

 そう、具現化を具現化(生み出す)と考えるのだ。

 つまりデメちゃんは()()()()。あとはそれを形にすれば良い。

 

 ただしただ誓約として誓うだけではダメだ。

 

「ゼノさん、お願いがあります。」

 

「なんじゃ? 改まってどうした?」

 

 例え話をしよう。

 『次のフルマラソンで1時間を切れないと死ぬ』という誓約を掛けた二人がいるとする。

 

 一人は"シヌシヌ君"。彼は自分の体に爆弾を埋め込み、スタートの1時間後に起爆するようにセットした。解除装置はゴールに置き、誓約を守れなかったら確実に死ぬ準備を整えた。

 

 もう一人は"スカスカ君"。彼は特に何の準備もしなかった。きっと1時間切れると思っており、出来なかったらその時に死ぬ方法を探そうと考えていた。

 

 さて、この二人は同じ誓約を掛けている訳だが、果たして得られる力は同じだろうか?

 

 ハッキリ言おう。()()()()()()()

 同じならクラピカはわざわざ念の鎖を心臓に刺したりはしない。

 

 念にとって誓約(リスク)とは()()なのだ。誓いを()()()()()()()ほど働く力は強くなる。

 

(だから私も覚悟を決める必要がある。)

 

 守れるかも分からない上辺だけのなんちゃって誓約では、きっとこの先は生き残れない。指を切り落としたりする奴らが敵になるかも知れないのだ。だからどうせやるなら徹底的に。

 

 私の覚悟を、()()()()()()()。つまりは……

 

「――私の子宮を、えぐり出して下さい。」

 

「……はっ?」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ――女としての子宮(しあわせ)は、いらない。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

 で、思い立ったが吉日と言うことで、手術は翌日にすぐ実行された。

 流石はゾルディック家、腕の良いお医者さんがしっかり完備されている。

 

 ちなみにこの誓約に対して、ゾルディック家の人たちの反応は概ね好意的だった。

 シルバさんは薄く笑っていたし、キキョウ姉さんは『さすが私の妹だわ!!』と言っていた。理解のある家族って最高だね!! ただゼノさんだけは何か言いたげな顔で終始無言だったが。

 

 私は全身麻酔で眠りにつき、そして再び起きたときには全てが終わっていた。

 

「気分はどうだ?」

 

 目を開けると部屋にはゼノさんとシルバさんが居た。

 

「特に問題はなさそうです。」

 

 私は上半身を起こし、調子を確かめながらおヘソの下に手を伸ばす。

 しばらく撫でていると、有るはずの物が無くなったせいか奇妙な損失感が湧いてきた。

 だがそれ以上に【念】が強くなったという確かな実感があった。どれぐらいパワーアップしたかは分からないが。

 

「やれそうなら【念】を使ってみると良いじゃろう。きっと覚悟に応えてくれるはずじゃ。お主の……そういえば【発】は何という名前なんじゃ?」

 

「名前? 付けたほうがいいんですか?」

 

「そうじゃの。付けたほうが安定すると思うぞ。」

 

 そういえば決めてなかったな。誓約は考えてもこっちは考えてなかった。

 思い起こせば今まではデメちゃんとか、ゲートとか、そのまま呼んでたっけ。

 

 しかしいきなり言われても困る。改めて名前を付けるとしても何がいいのか。

 

(えーと、似たような能力だと何があったっけ?)

 

 私は前世の記憶からそれっぽい能力を思い出す。

 どこでもドア、通り抜けフープ、四次元ポケット、アイテムボックス、道具袋、口寄せの術、エニグマ、クリーム、スティッキーフィンガース、4次元マンション、ファンファンクロス、位相空間、転移装置、ワープゲート……

 

(うーん、どれもしっくりこない。……あっ、ゲート・オブ・バビロン!!)

 

 Fateというゲームに出てくる英雄王と呼ばれる英霊の宝具だ。

 物の出し入れだけに限らず、物を飛ばして攻撃も出来る強力な能力。

 

 漢字で書くと"王の財宝"。でも私は王って感じじゃないんだよね。むしろ王様っぽいのはデメちゃんの方。だって死んだ時のブヨブヨ太った王様っぽい出目金がモデルだし。

 

 おっ、いいんじゃね? 金魚の王で"デメキング"。

 財宝の方もちょっと変えて……この場合は遺産かな? 金魚もゲートも、前世のおかげで手に入れたようなものだし。うん、そう考えるとすごくしっくり来た。

 

「決まったか?」

 

「はい、私の【発】は(前世からの)遺産。名前は――【金魚王の遺産(ゲート・オブ・デメキング)】にします!!」

 

 噛みしめるように呟きながら、オーラを込めてデメちゃんを具現化する(呼ぶ)

 今までの何倍ものオーラが失われ、それが()()()()()()()()で実を結んだ。

 

 すると次の瞬間、私の目の前には()()()()()を超える巨大な出目金が出現した。

 

「ぎょっぎょーーーぉ!!!」

 

 生まれ変わったデメちゃんが雄叫びを上げる。

 飛び出た両目、ブヨブヨ太った王さまのような躰はそのままだ。しかし今までと違う点が一箇所だけあった。

 

 それはウロコ。そこにはムンクの叫びのような、不気味な顔が張り付いていた。

 これはきっと、将来生まれるはずだった子供たちの()()に違いない!!

 

「うわー、格好良くなったねー!!」

 

 大きさから見て3倍ぐらいのパワーアップかな? でも離しても弱体化した様子がないから、たぶん放出系にも補正が入ってる。そう考えると全部で3.5倍ぐらいだろうか。想像以上のパワーアップだ。

 

(これだけ大きければ1メートルぐらいのコンテナなら飲み込めるね。やっべ、運び屋とかやったら儲かりそう。)

 

 大陸から大陸へ一瞬で移動できるのだ。先に目的地へ【接続ポイント】を作ってから受け取りに行けば、輸送中のリスクもほぼゼロ。やればやっただけ儲かる(確信)。

 

 それに、これなら今まで使えなかった大型の兵器だって使える。しっかり買い込んでおけば、今度はキャシャリン軍曹だって消し飛ばせる。

 

「フフフフフフ……アハハハハハハハハハ!!!!!」

 

 私はnewデメちゃんの頭を撫でながら、これからの事に思いを馳せる。私達の未来は、きっと明るい!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな具現化した念魚を撫でる新しい義娘(シズク)を見ながら、ワシは隣に立つシルバに語りかけた。

 

「なんと言うか、頭おかしいの。そう思わんか?」

 

 言葉にどこか呆れたような口調が混ざってしまったのは、やったことがワシ的に有り得ないからじゃろう。

 

 ワシのような古い人間にとって、子を作り家を継ぐというのは何よりも重要なことじゃった。それをこんなにあっさり捨ててしまうなんて理解出来んわい。確かに脆いとは言ったが、アレはこれから集中して鍛えろという意味じゃ。それがどうしたらこんな発想になるんじゃ?

 

「そうか? 俺は流石キキョウの妹だと思ったぞ。ククク、まさか()()()()()()()をするとはな。」

 

「同じような? ああ……」

 

 シルバの言葉に、ワシは昔を思い出して天井を見上げた。

 

 そう言えばキキョウ(シルバの妻)も似たような事をしとったなぁ。

 キキョウの【発】は一種の千里眼。オーラを込めた物体を通して離れた場所を見る能力じゃ。それがシルバと結婚する前に『これからは貴方だけを見るわ!!』と言って()()()()()()()()()()()んじゃったな。

 

「なるほど、確かに姉妹じゃの。」

 

「ああ、こうして見ればそっくりだ。」

 

 パワーアップしたキキョウの【発】(千里眼)は距離が飛躍的に伸び、対象を24時間監視することも可能になったんじゃったな。もしシルバが『俺だけじゃなくて家族や周りも見てほしい』と言わねば、きっと本当にシルバだけを見ておったはずじゃ。お早うからお休みまで。食事から風呂トイレ、仕事までずっと見ていたのじゃろうの。……考えただけでぞっとするわい。

 

「別に時間を掛けて修行すれば良いと思うんじゃがな。」

 

 ワシが言うのもなんじゃが、最近の若者は生き急ぎすぎじゃ。それとももしかして、こういうのが最近の流行りなんじゃろうか? まさかイルミもいずれ『チンチン焼いて食べたい』なんて言い出すのか? だとしたらその時にワシはどうしたらいいんじゃ。『よーし、じいちゃんが上手にもいでやろう』とでも言えと? ……いかんな。ショックでワシまで頭がおかしくなっておる。

 

「ちなみにキキョウの目玉はどうしたんじゃ?」

 

「……なかなか美味しかったぞ」

 

「食ったんか!?」

 

「ああ、キキョウがそう望んだからな。全くカワイイよな。」

 

 ……どこが??? 今の会話にカワイイ要素なぞあったか?

 

 やれやれ、全くワシの息子ながら、女の趣味といい、こういう所だけは本当に分からんわい。まぁその辺も含めて、キキョウとは似たもの夫婦という事なのかのう。

 

「ならこの取り出した子宮もそうするか?」

 

「ああ、ステーキにでもしておいてやろう。キキョウの妹ならきっと喜ぶはずだ。」

 

 本当か? ワシならきっとドン引きなんじゃが。料理長もびっくりしそうじゃな。

 だがその辺はシルバとキキョウがどうにかするじゃろう。

 

 ワシはそっと部屋から出る。

 なんだか今日は疲れた。あとはもうシルバ達に任せて、自分の部屋でゆっくり休むことにしよう。

 

 

 

 

 

 なおこの後に出されたステーキは予想通りドン引きされた模様。

 




シルバ「ステーキにしておいたぞ」
キキョウ「たーんとお食べ」
ゼノ「(最近の若者って怖い)」
シズク「(そこまでやれとは)言ってねぇ!!」
※ステーキは主人公がしっかり頂きました。更に(微妙に)パワーアップ。

読んで頂き有難うございました。
ゾル家&主人公のパワーアップ回でした。そしてようやく能力に名前が付きました。
倍率3.5倍は話の都合です。ちょっとやりすぎかとも思ったんですが大目に見て貰えると助かります。


■以下、現在の主人公のスペック
名前:シズク=ムラサキ 年齢:8歳 筋力:【練】有で16トン
系統:特質系 オーラ量:約1万(【練】3時間)

念能力:【金魚王の遺産(ゲート・オブ・デメキング)】(特質系)
口の中を別の場所へ繋ぐ念魚(出目金)を具現化して操る能力。
空間越しの攻撃、乗って移動、道具の出入等、色々出来る。
最大サイズ:30cm(闘技場)→1m(H試験)→3m(ゾル家)

〈制約1〉ゲートは以下の方法で作った"接続ポイント"にしか繋げられない。
     ①周囲を記憶 ②念で金魚の絵を描く ③絵の上で練を30分続ける
〈制約2〉ゲートを開く(延長時も)にはオーラの先払いが必要(10秒分)
〈誓約1〉デメちゃん以外の子を産まない(具現化も含む)

※併せて12話:ゲート(仮)の後書き(制約説明)を修正しました。
※説明文を変えただけで制約の内容自体は同じです。
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