シズク=ムラサキは愉悦したい   作:さろんぱす。

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誤字脱字報告ありがとうございます。いつも大変助かっております。


第24話 お前のものは私のもの

 雲一つ無く満天の星が輝く夜。

 某国の山奥で盛大な宴が開かれようとしていた。

 

 会場は金持ちが別荘として建てたであろう屋敷。

 相続放棄により廃棄されていたソコには明かりが灯っていた。ダンスホールとして使われていた三階の広間には大量の料理と酒が運び込まれ、集った者たちが一人の男の声を待っている。

 

「野郎ども酒は持ったな!? んじゃあ今回の仕事の成功を祝って!!」

 

「「「かんぱーい!!!」」」

 

 部屋の中央奥で豪華な椅子に座った男が音頭を取る。

 鍛え上げられた筋肉に黒い革ジャン。前を開けっ放しなせいで、胸についた7つの傷がよく見える。彼こそがこの集団のトップ()である"ジャギン"だ。ちなみにヘルメットは被っていない。

 

「ひゃー、うんめー。」

 

「何だこの酒! こんなの飲んだことねぇよ!!」

 

 宴の開始が告げられたことで、お預けを食らっていた大勢の男達が一切に騒ぐ。

 料理を素手で鷲掴みし、酒をラッパ飲みして喉を潤していく。

 

 彼らは"邪悪の花(イービルフラワー)"と呼ばれる強盗団だ。

 構成員は40人。全員が屈強な男たちであり、奪った火器で武装したその武力は警察すら恐れるほど。10日前には銀行を襲撃して大金をせしめ、現在はその成功を祝う馬鹿騒ぎの真っ最中である。

 

「まったくジャギン様様だぜ。」

 

 そんな組織の一員である"ジョージ"。

 彼もまた他の団員にもれず、この世の春を満喫していた。

 

「くぅ~、うめうめっ。」

 

 酒瓶を開け中の液体を胃に流し込む。

 途中で奪ってきた酒だ。一本何万ジェニーもする高級品である。遠慮なくラッパ飲みしているが、ここにはコップで飲め等と言うお行儀の良いやつは居ない。

 

「しかもおかわりもいいなんて最高だな。」

 

 ジョージは遠慮なくグビグビと酒を煽った。

 

 この団に入ったのはちょうど1年前だっただろうか。

 酒場で自暴自棄になって居た時、ここのトップであるジャギンと出会った。

 

 その時の事をジョージは一生忘れないだろう。

 愚痴から始まり途中から泣きながら話した自分の過去を、ジャギンは最後まで真剣に聞いてくれた。そしてこの団に誘われたのだ。

 

 それまでジョージの人生は後悔の連続だった。言わずもがな、強盗団とは人として最低の生き方だ。だがもはや他に行く場所などありはしない。では一体何が悪かったのか?

 

 格闘家を目指したのに全く勝てなかった事か。

 段々と自分より弱い相手を探すようになった事か。

 それともある街の路地裏で()()()()()()()()()事か。

 

 おそらくはその全てだろう。つまり結局は自分がただのクズだったというだけだ。

 そうしてこんな所まで落ちてしまった訳だが、しかし自覚すればこの場所はとても居心地が良かった。

 

(シンジ達も今頃は楽しくやってるのかな)

 

 ここには同じように世間からドロップアウトした仲間がいた。更にジャギンはジョージにとって憧れだ。自分を拾ってくれた恩人というのも有るが、なんと言っても単純に強い。殴れば壁にヒビが入り、蹴れば車が何メートルも飛んでいくのだ。敵であれば恐ろしいが、しかし味方ならこれほど頼りになる人はいない。

 

 そんな彼らと愚痴を言い合い、計画を立てて実行し奪う日々である。

 特にこの前の仕事は最高だった。トラックで銀行を強襲した。荷台から一斉に先端に()()()()が付いた武器をぶっ放し、建物ごと吹き飛ばした。その後は金庫からありったけの金を頂いてスタコラさっさである。あまりにも刹那的な生き方だが、もはや将来などどうでも良かった。

 

「うっぷ、やべぇ飲みすぎたか。」

 

 そうしてしばらく飲み続けたジョージの顔は真っ赤に染まっていた。

 彼は風にあたって酔いを覚まそうと、ふらつく足で立ち上がる。

 

「あ~雨は降ってねぇよな……いや今日は満月だったか。」

 

 ジョージの頭にふと嫌な記憶がよぎり、歩き出そうとした足が止まる。

 

 人は月を見上げる時、一体何を思うだろう?

 青い炎を操るいかつい兄ちゃんか、それともエロタイツの美少女戦士か。あるいは逆さに咲く桜の迷宮か。

 

 ここに来る前のジョージは月が嫌いだった。

 見上げて頭に浮かぶのは、いつも失敗した時の記憶ばかりだったからだ。

 日雇いの仕事で怒られ、安酒と共に見る月など好きになれはしない。

 

 だが今は違う。少しだけ『綺麗だな』なんて思えるようになった。恐らくやっと居場所を見つけたことで、心が軽くなったからだろう。

 

「……まぁたまには月見酒なんて洒落た飲み方もいいか。」

 

 ジョージは酒瓶を持ったまま改めて歩き出し、鍵を外して窓を開いた。

 入り込んだ冷たい夜の空気が肌を撫で、体から火照った熱を奪っていくのが心地よい。

 

 彼はそのまま、昔と今の違いを笑いながら夜空を見上げ――

 

 

 

 

 

『ギョギョッ?』

 

 ――月をバックに空に浮いた、真っ赤な金魚と目があった。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

 それが一体何なのか、ジョージは全く分からなかった。

 だがその金魚の上に乗る一人の幼女を見た時、彼の体に雷に打たれたような電撃が走った。

 

「こんにちは♪」

 

 まるでピクニック中に出会ったような陽気さで幼女が言葉を紡ぐ。

 

「あ……あっあっ…………」

 

 対してジョージは上手く言葉が吐けなかった。

 なぜならこの幼女こそ、ジョージがココまで落ちることに成った元凶。

 男として最も大事な玉を潰して心を折り、トラウマを刻み込んだ悪魔である。

 

「な、ん……で…………」

 

 なんとか絞り出せたのは掠れたような声だ。

 思考が上手く働かない。燻っていた酒精が吹き飛び、体が芯から冷たくなっていく。

 水を掛けられたなどという生易しいものではない。手足を縛られて氷風呂に放り込まれたような、あるいはケツに氷柱を刺されたような冷え方だ。

 

 しかしジョージの驚きはソコで終わりではなかった。

 

「ここにいるのって"邪悪の花(イービルフラワー)"の人たちだよね? ってことは私が一番最初だ! やったぁ!! よし、デメちゃんあーんして。」

 

『ぎょぎょーーん!!』

 

 ジョージを完全に無視して幼女は金魚へ命令を下す。

 主人の命令に従って金魚が口を開き、中に黄金の波紋が揺らめく。その先にあった光景を見た瞬間、彼の顔は真っ青になり全身から汗が滝のように流れ出した。

 

 中にあったのは綺麗に整列した細長い筒だ。

 先端には()()()()が付いており、ちょうど中間辺りにはトリガーがあった。

 

 ジョージはそれが何なのか一瞬で把握した。

 なんせ前回の仕事で自分たちが()()使()()()物だ。しかもそれは一つだけではなく、()()()()に綺麗に並んでいるではないか。

 

「ふふふ、いいでしょこれ? 貴方達が大好きだって聞いたから、ここに来る前に買ってきたんだ。」

 

 楽しそうに笑う幼女とは対象的に、ジョージの頬を汗が滑り落ちる。

 これから起こることを理解してしまった故の緊張。どうにかしなければと思った彼はガチガチの体を必死に動かし、腰に下げていた愛用のリボルバーに手を伸ばそうとした。

 

 しかしそんなすっとろい動きを待つ幼女ではない。そもそもジョージの事など端から眼中にないのだ。先程の言葉も独り言のようなもので、返事など最初から聞く気はなかった。

 

「パーティの開幕だよ!!」

 

 幼女はそう叫ぶと、ポケットからテレビのリモコンのような物を取り出し、躊躇なくボタンを押した。とたんに筒の後方から反動相殺用のガスが噴射され、装填されていた菱型の弾に火が付く。

 

 ソレを見た瞬間、ジョージは反射的に横に飛び、力の限り大声で叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 「対戦車ロケット弾(RPG)ーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 ダンスホールに爆炎の花が煌めき、会場は悪魔の狩場へ変貌した。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

「あ”あ”あ”あ”!! 誰か助けてくれぇえ!!!」

 

「俺の足がぁ~~!!」

 

「メディック! メディーック!!」

 

 "邪悪の花(イービルフラワー)"の宴会場は阿鼻叫喚の地獄と化していた。

 最初に打ち込まれた対戦車ロケット弾(RPG-7)16発により団員の半数が死亡。運良く生き残った者もどこかしらに傷を負っていた。

 

「フフフフフ、まだまだ行くよ~♪」

 

 さらにそれを行った金魚は、次は凄まじい威力の弾丸を吐き出し始めた。彼らは知るよしもなかったが、それは"4連装重機関銃(ミートチョッパー)"によるものだ。オマケによく見れば幼女の右にも小さな金魚が浮いており、こちらはポンポンと擲弾(グレネード)を吐き出していた。

 

(何だあのデタラメな金魚は!?)

 

 そんな中、"邪悪の花(イービルフラワー)"の(ヘッド)であるジャギンは床に伏せたままチャンスを伺っていた。念能力者である彼をしても、この火力はキチガイ染みていた。逃げようと起き上がれば周辺ごと弾幕で薙ぎ払われ、ダメ押しとばかりに擲弾を飛ばされる。そのため動くことが出来なかったのだ。

 

(どれぐらい生き残った?)

 

 しかし彼らも殺られっぱなしではない。中には武器を持ち出して反撃に出る者も居た。

 だがあまりにも火力が違いすぎて勝負になっていなかった。なんせ相手の弾はコンクリートの壁すら貫通しているのだ。それも機関銃並の連射速度で、弾が()()()()に飛んでくる。まさに弾幕と表現する他無い超火力である。

 

(俺の強盗団が……)

 

 大型の金魚が吐き出す弾丸が壁越しに肉片を量産し、小さな金魚の擲弾が壁ごと仲間を吹き飛ばしていく。おまけに上に乗る幼女を狙おうとしても、ちゃっかりと大型の"防弾盾(バリスティックシールド)"に隠れているではないか。おかげでこちらの銃撃は全く効いていない。まるで軍用の戦闘ヘリに拳銃で挑んでいるような有様だ。

 

(くそがっ!!)

 

 ジャギンは悲しかった。何年も前から一緒だった仲間たち。

 同じ苦労を背負い、少しずつ団を大きくしていった。それがまるでゴミのように死んでいく。もちろん自分たちがやったことを考えれば、報復されるのは当たり前のことだろう。だがこんな死に方は考えていなかった。あまりにも突然すぎた。

 

 そうして1分も掛からずほとんどの団員がただの肉袋へと変わり果てた。

 だがまだ終わってはいない。反撃が無くなり油断したのか、それとも何かを探すつもりなのか、幼女は金魚から降り部屋の中に乗り込んできたのだ。ご丁寧に最初に叫んだ仲間を撃ち殺しながら。

 

 ――勝機!!

 

 それを見たジャギンは息を殺してタイミングを図る。

 そして幼女が付近に来た瞬間、全身の筋力を使ってバネのように飛び起き駆けた。あの火力を前に遠距離戦など愚の骨頂。ならば活路は接近戦しかない。

 

 もちろん未だに2匹の金魚は存在している。だがそれらは左右に別れ、外からでは狙いづらかっただろう場所を撃っていた。つまり正面と背後は空いているのだ。今のうちに接近戦に持ち込めればまだ勝ち目がある。

 

「おおおぉぉぉ!!!」

 

「おっ?」

 

 ジャギンは全身にオーラを滾らせて、背後から幼女へ右手を叩きつける。

 仲間の敵を取らんと筋肉が膨れ上がり、腰の捻りにより加速した右フックがギリギリで差し込まれたシールドにぶち当たった。金属製の盾はビキビキとヒビが入り、衝撃により左方へと吹き飛んでいった。

 

(……ちっ! だがこれでもうコイツに防具はねぇ。あとは一発入れれば終わりだ!!)

 

 ジャギンは心の中で舌打ちしながら次の一手を考える。

 一撃で決着とは行かなかったが、幼女はもう攻撃を防げそうな物は持っていない。

 ならば次の一撃こそが確実に相手の命を刈り取るだろう。

 

 ジャギンは2メートルほどの距離を置き、金魚を従える幼女と対峙する。

 こんな見た目をしているが、実はジャギンは操作系である。【発】の【羅操撃(らそうげき)】は指で貫いた部位を動かせなくするという能力で、簡単に言えばどこぞの暗殺一家長男の超劣化素手バージョン。

 

 地味な能力だと思うが接近戦ではかなり有効だ。人間の体は複雑に組み合ってできている。故に一箇所が動かせないだけでも複数の部位に影響がでる。例えば肩を止めれば腕も動かせなくなり、腰が動かせなければ重心の移動などまともに出来ない。

 

「このクソガキが、絶対に許さねぇぞ!!」

 

 ジャギンはオーラの全てを手足の先に集中し、逃さんと言わんばかりに幼女を睨む。

 対して幼女は特に気負った様子はなく、盾の損失もどうでもいいようだった。

 

「あっ、生きてたんだ。でもごめんね、私が欲しいのって貴方の首だけなの。」

 

 でもそのままだとちょっと切り落としづらいから……跪いてくれる?

 

 そう言いながら幼女は大型のナタを取り出す。ジャギンは初め言われた意味が分からなかった。

 だがそうしている間に幼女は一歩前へ出た。まるで楽しい遊園地に踏み込むような気楽さで。

 

 彼我の距離が2メートルを切る。ジャギンは向こうが不利だと考えていたが、幼女には逃げ出す気配は微塵もない。

 

 ――ふざけるな。

 

 幼女の言動の余りの酷さに、ジャギンは怒り叫んで殴りかかろうとした。

 両側の金魚がコチラを向く前に踏み込み、ナタを躱しつつ相手の心臓を突く。血流が止まれば死なない人間は居ない。これまであらゆる敵を屠った必殺の一撃である。

 

 ――思い知らせてやる!!

 

 ジャギンは殺意を滾らせ一歩目を踏み出す。……だがそこで躓いた。足に力が入らなかったのだ。思わず下に目を向ければ、両足はいつの間にか撃ち抜かれていた。吹き出す大量の血が床に広がり、足元に血の池が作られていく。

 

「はい、残念でしたー。……ちゃんと【凝】しないからそうなるんだよ? 来世では反省しようね?」

 

 ジャギンは気づかなかったが、幼女の足元には()()()の金魚が浮いていた。【陰】で姿を消していたその金魚は、怒りによって【凝】を怠ったジャギンの両足を撃ち抜いたのだ。

 

「て、め、ぇ……」

 

 ジャギンの体が支えを失い、つんのめった様に倒れこむ。

 ジャギンは必死に両手をついて体を起こすが、しかしそこまでだった。

 一瞬で真横に移動した幼女は、一切の慈悲無くナタを振り下ろした。

 

 ――奇しくもその時のジャギンの姿は、まるでギロチンの前に傅く死刑囚に似ていた。

 

 こうしてあっさりとジャギンの首は落ち、邪悪の花(イービルフラワー)強盗団は全滅した。逃げ出せたものは一人もおらず、ジャギンの首と銀行から奪った現金は幼女がどこかへと持ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っしゃー!! 懸賞金&奪われた現金ゲットだぜ!!!」

 

 なお、現金は返却されなかった模様。銀行涙目。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

「うめうめうめっ!!」

 

「はー、よく食べるわねぇ。」

 

「だって美味しいんだもん!!」

 

 はい、そんな訳で強盗団を壊滅させたシズクちゃんです。

 "邪悪の花(イービルフラワー)"は実に強敵でしたね。現在はあれから数日後。私は天空闘技場内のレストランで、久しぶりに銀お姉さんとご飯を食べています。

 

「もっと追加する?」

 

「ステーキ2人前おねがいしまーす!!」

 

 おかわりも遠慮なく頼む。

 やはりここのステーキは美味しい。今の所この世界のステーキで一番だ。

 特にフォークを指しても緑色の汁が出てこないのが最高。ゾルディック家のステーキは食べると全身に激痛が走ったり、目と耳から血が飛び出たりしたからね。やっぱ普通が一番なんだなって。

 

「やっぱ料理は毒無しの方がいいなぁ。」

 

「それは当たり前の事では?」

 

「ですよねー。」

 

 そうそう、それからゾルディック家といえば、こうして外に出してもらえるようになったよ。3ヶ月経ってようやく毒耐性の獲得が無理って理解してもらえたのだ。出来ればもっと早く気づいてほしかった。

 

 あと誓約でパワーアップしたのも効いたみたい。金策として暗殺の仕事を回してもらえる事になったし、つまり後は実践で経験を積めってことかな。だからゾルディック家にはこれからも定期的に顔を出す予定だ。えっ、暗殺に忌避感? そんなの有るわけない。むしろ金になるならバッチこいだ。

 

「それで新しい装備はどうだった?」

 

「んー、かなりいい感じ。特に4連装の重機関銃はすごかったよー。」

 

 追加で運ばれてきた料理をバクバクと平らげながら前の戦闘を思い出す。

 今回の強盗団退治はパワーアップしたデメちゃんと、一新した装備のテストを兼ねていた。

 

 まずはデメちゃん。

 誓約によるパワーアップによりサイズ・耐久・速度が上昇。更に複数の具現化が可能になった。

 多く具現化するほど一匹が小さくなってしまうが、やはり多角的に敵を狙えるのは強い。

 

 大きさは全体で上限が決まっていて、金魚ごとに振り分ける感じ。

 例えば1匹なら3メートル。2匹なら2メートルと1メートルだ。強盗団との戦いでは主武装用の2メートルと、副武装用の50センチ×2の3匹を具現化していた。

 

(50センチなら6匹同時に具現化できるけどね。でも3匹ぐらいが一番使いやすい。)

 

 そして距離は5メートルまで。それ以上離れると消えてしまう。

 だがそれでも十分だ。複数具現化と併せれば、よっぽど熟練した念能力者でなければ躱せないだろう。十字砲火どころか、3次元的なキルゾーンを作れるのだから。もちろん複数場所を同時攻撃することも出来る。また、私の念能力が成長すれば距離はもっと伸びるだろう。

 

(おかげで殲滅速度が格段に上がった。これならもう数だけの雑魚に後れは取らない。)

 

 それから一新した装備類。

 最初に16発ぶっぱしたのは"RPG-7 対戦車ロケット擲弾発射器"。

 昔の戦車なら壊せるだけの火力が有り、発射筒は使い回しが可能。しかもコピー品が多く出回っているため弾が安い。強盗団の様子を聞いて仕入れたものだが、中々使い勝手が良いので今後も使っていく予定である。お値段は16丁で720万ジェニー。

 

 次に4丁同時斉射していたのが"ブローニングM2 重機関銃"だ。

 今まで使っていた手持ち用の機関銃とは違い、戦車やヘリに()()()()使われる()機関銃である。

 元々は低空飛行する航空機を撃ち落とすための武装で、対物狙撃銃の弾を連発する恐ろしい兵器だ。愛称はミートチョッパー。値段は4丁で680万ジェニー。

 

 それから小型デメちゃんがポンポン撃ってたのが"Mk19 自動擲弾銃"。

 グレネード弾を分間40発連射する。弾速が遅くて念能力者との戦闘では微妙だが、今回のような殲滅戦ではかなり有効だと分かった。

 一発で半径15メートル内の人間を殺傷出来るので、適当に撃ちまくればだいたい死ぬ。こちらも設置型の武装で、上記のM2重機関銃と選択になっている事も多い。値段は160万ジェニー。

 

 最後に構えていた盾が"バリスティック・シールド(防弾盾)"。

 地球ではSWATとかが使ってる盾だ。流石にオーラを込めた攻撃には耐えられないが、ただの銃撃なら十分防げる。子供のわたしなら全身を隠せるし、防御にオーラを使わなくて済むのも良い。値段は70万ジェニー程度なので使い捨てでおk。

 

 もちろんこれらは金が有っても普通は手に入らない。だが早速ライセンスを使ってみた所、効果は抜群だった。すごいよね、ちょろっと提示するだけで子供でも軍の兵器が買えちゃうとか。協会の権力やべーわ。

 

(ライセンス万歳!! 余計な戦いもあったけど受けてよかった。)

 

 そしてこの全ての火器に遠隔発射装置を取り付け、リモコンで操作できるようにした。

 今まではこういう使い方は出来なかった。なんと言っても誤射が怖かったのだ。急にゲートを閉じる時もあるだろうし、そうすると部屋の壁が吹き飛んでしまう。

 

(キャシャリン軍曹にバレットM82(対物狙撃銃)を射ち込んだ時も、発砲音で闘技場の職員さんが部屋に踏み込もうとしたらしいし。)

 

 だがすでにこの問題は解決済みだ。

 付近に誰も住んでない郊外の土地を買い、地下室を作ってこれらの銃を設置したのだ。今までは身元不明で土地なんて買えなかったからね。これでもう大型の兵器も遠慮なく使えるよ!!

 

「という訳で、一ヶ月後のバトルオリンピアに備えてもっと強い兵器を用意したいんですけど。」

 

「もう十分だと思うけどまだ増やすの? 例えば?」

 

「20mmか30mmのガトリング砲。」

 

「うーん、この火力厨め。」

 

 そう言われてもガトリングはロマンだからしょうがない。

 それに大火力を一方的に撃ち込むって気持ちよくなれそうでしょ?

 

「まぁライセンスがあれば買えるでしょうけど。でも本体価格と弾代が幾らか知ってる?」

 

「……全然知らない。幾らなの?」

 

「そうね、20mmガトリング砲(M61A1バルカン)が本体3千万ぐらいかな。」

 

 ふむ、まぁそんなものか。ブローニングM2重機関銃が1丁で170万だったからね。大型になって精密な部品も増えるだろうし、それぐらいはしょうがない。

 

「それから弾薬なんだけど。」

 

 うん? 12.7mm弾が300ジェニーだから、700ジェニーぐらいかな?

 

「20mm弾は3600ジェニーよ。」

 

「3600? ああ、4発ぐらいで?」

 

「いえ一発で。この砲の発射速度は6600発/分だから、一分間で2376万掛かるわね。」

 

 ふぁ!? ちょっとまって、いきなり高くなりすぎじゃね?

 

「で、30mmガトリング砲(GAU-8アベンジャー)は本体2200万なんだけど。」

 

 おっ、ちょっと安くなったぞ。ならもうこっちを4台ぐらい仕入れるべきかな。

 

「30mm弾は一発18000ジェニーするの。一分間撃つと7560万が飛ぶ。」

 

「たかすぎぃ!!!」

 

 もうそんなの万札を打ち出してるようなもんじゃん!! 全然気持ちよくなれないよ!!

 

「あと銃身の回転は電動式だから電気も必要だし、メンテナンスも大変よ。それでも買う?」

 

「今はちょっと手が出せないかな……」

 

 ぐぬぬぬぬ。欲しいけど流石にこれは無理か。特に今はグリードアイランドの為にお金が必要だし。めっちゃ欲しいけど!! ああああ、アベンジャー撃ちたーーい!!!

 

「ところで噂では銀行から奪われたお金が行方不明らしいけど? 確か20億だったかしら。」

 

「……早く見つかるといいね。」

 

 早々に話を打ち切ってステーキを口にかっこむ。

 銀お姉さんがジト目で見てくる。だが私は返したりしねぇ!! 犯罪者が持ってた物は倒した人の物。これは異世界転生の常識だ。まぁハンター世界ではロンダリングしないと使えないけど。ゾルディック家に帰ったらこっちも頼まなきゃね。手数料で半分引かれるとして……10億ぐらいは残るといいなぁ。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

 そして1年後の1987年7月1日。

 今日は待ちに待ったグリード・アイランドの発売日である。

 

 半年前に発売が発表されると58億の一括払いのみにも関わらず申し込みが殺到。

 倍率は200倍だったらしいが、私はなんとか購入することが出来た。

 この1年ずっと金策で走り回った努力が報われて嬉しい。

 

「いやぁバトル・オリンピアは激戦でしたね。まぁ予定通り優勝したけど。」

 

 事前にデメちゃんの口に爆薬を詰めといて自爆特攻させたり、3メートルのデメちゃんで殴って頭をかち割ったり、決勝では原作ジョネス戦時のキルアを真似して心臓をくり抜いたりした。

 

 これは実はせがんで教えてもらったゼノさんの直伝だ。技術的には未熟の一言だが、オーラの量に物を言わせて強引に抜き取った。放送事故? 知らんがな。

 

 おかげで通り名も"血塗れ姫"にチェンジだ。8才の女の子にはちょっとおどろおどろしい名だと思うが"玉砕姫"よりはマシだろう。私が呼び出すのは緑の子鬼じゃなくて真っ赤な金魚だけどね。

 

 それと優勝のインタビューで『銃器や殺し方などは全てツェズゲラさんに習った』と言っておいたので、これで私の師匠がツェズゲラさんだと世間に広まった。

 

 実際すでに一部では『才能ある少女に銃器と殺しの味を教え込んだ鬼畜おやじ』として有名になってしまっている。ヘイトが向かって大変そう。

 でも連絡しても『この程度の中傷で慌ててはマネーハンターは名乗れない』なんて言っていた。さすが師匠だ。顔の面が厚い。きっと顎髭もクッションになっているのだろう。自身の知名度も上がったからとお祝い(お金)までくれた。

 

「やっぱり持つべきは話の分かる師匠だね。」

 

 ちなみに58億の内訳はこんな感じ。

 200階までのファイトマネーが4億(内1.5億は使用済み)。

 強盗団から回収した金が10億(ロンダリング済み)。

 闘技場の賭けの勝ち分が1.5億。

 バトルオリンピアの優勝品の売却が10億。ココまでで計24億。

 

 残りは賞金首を狩ったり、暗殺依頼を受けたり。特に賞金首は溜め込んでる金品も丸ごと頂けるからかなり美味しかった。もう何人狩ったか覚えてない。

 

「でもほとんど使っちゃったんだよなぁ。」

 

 GI購入の当選通知が来てから速攻で振り込んだので、もう預金は1億ぐらいしか残っていない。ちょっと心もとないが、まぁこれからはしばらくGIに専念するから構わないだろう。

 

 ちなみに購入申込みはハガキとメールの両方で行った。ちゃんと宛先には開発会社名の横に『開発総責任者のジン=フリークス様へ』って書いておいたよ。あと裏には念字で『レイザーによろしく!』とも。知らないはずの情報を書いて目立つ作戦だ。おかげで楽々当選である。

 

 ゲームマスター達にはなんで知ってるんだ!? って思われるだろうけど、ジンなら『おもしれぇ』の一言で済ませてくれそう。なんたって十二支ん一の破天荒だから。まぁこの辺は原作知識でジンの性格をある程度知ってる故の遊びも入っている。

 

 あと連絡が来る事も期待していたが、こっちは残念ながら来なかった。もしかしたらジンとコネが作れるかも、なんて思ったんだけどね。ちょっと残念だ。

 

「で、振り込み後に送られてきた確認通知書には『同封した"引換券"をテーブルの上に置き、発売時刻をお待ち下さい』とあったけど。」

 

 指定された発売時刻まであと1分。私ドキドキしながらその時を待つ。

 そうして時間になると……

 

「おおっ?」

 

 引換券が強烈な光を放ち始めた。

 そしてそれが収まると券を置いていた場所には"GREED ISLAND"と書かれたパッケージが。恐らく念能力を使って入れ替えたのだ。まさに"引換券"だったという訳だ。

 

 私はパッケージを両手でつかみ、頭上に掲げて叫んだ。

 

「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」

 

 ついにねんがんの グリード・アイランドを てにいれたぞ!!

 




読んで頂き有難うございます。
パワーアップしたデメチャンのお披露目&金策回でした。
次からグリードアイランド攻略が始まります。
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