シズク=ムラサキは愉悦したい   作:さろんぱす。

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今回からGIに突撃です。よろしくおねがいします。


第25話 美女とセクハラは蜜の味

「ドキドキ☆グリードアイランドプレイ、はっじまっるよー!!」

 

 私は上がりすぎたテンションそのままに声を上げた。

 

 長かった。この世界に生まれ直して9年と半年。

 ついに、ついに夢にまで見たこのゲームをプレイできるのだっ!!

 

「フフフフフ、じっくり堪能してあげるよ。()から()までね。」

 

 もちろんこの時の為の準備は万全だ。

 まずプレイ場所。これは専用の地下室を作ることにした。場所は私が郊外に買った土地、銃器の設置所の真下である。とはいえ勝手に掘って小さなコンテナを埋めただけなので設備は最低限しかない。明かりとモニターとジョイステーション、そしてそれらを動かす大型バッテリーだけ。

 

「どうせグリードアイランドをやるだけの場所だからね。余計なものは要らないよね。」

 

 もう上部は埋めてしまったのでゲートでしか入れない。頑張って100mぐらい掘ったのだ。

 大げさかもしれないが、プレイ中はグリードアイランド本体が放ったらかしになるので、コレぐらいの防犯は必須である。なんせ1本58億だから。あっ、一応、空気穴は通ってる。

 

「それでもこの場所がバレたら掘り返されるだろうね。」

 

 次にゲームで使う道具。

 新品のROMカードが3枚。方位磁石と腕時計。目立たない外装。

 あとは新調した大型リボルバー、S&WのM460。拳銃弾の中で()()の弾が撃てる銃だ。弾数は5発なので、命中率重視で丁寧に撃つ。

 

 えっ、デザートイーグル(自動拳銃)? 奴は威力も速度も足りないことが分かったので、その……今までありがとうってことで。代わりにこのリボルバーでプレイヤーの手をバンバン撃ち抜くよ!!

 

「私に呪文(スペル)カードを唱える奴は許さない。」

 

 ゲーム内には呪文カードという物が用意されているが、それだって念能力の一種には違いない。

 

「ならいきなり念を掛けるような人は撃たれてもしょうがないよね?」

 

 だから遠慮なくバンバン撃とうと思います!! たのしみぃーーー!!

 

 それから【発】も新しく作った。その名も【深淵を覗く者(アクセル・マインド)】。

 操作系の【発】であり、効果は自身の脳を操作して思考を加速させること。

 一言でいえばアクセル・ワ○ルドのパクリである。

 

 名前の由来は英雄王が持つ千里眼"全知なるや全能の星"から。

 これは元々はギルガメッシュ叙事詩の一節なのだが、私のはその別訳のアレンジだ。

 この世界の前に邪神の祭壇を見ている事にも掛けていて、個人的にしっくりきた名前だと思っている。

 

 この【発】はLv1~3の段階が有り

 Lv1はほんの少しだけ脳を活性化させる"防護用"

 Lv2は脳内麻薬を強制分泌し集中力を高める"戦闘用"

 Lv3は脳機能の一部を停止させ、思考を極限まで高速化する"切り札"

 

 基本的に睡眠時以外はLv1で常に発動させたままにする。というのも、このゲームには相手を()()するアイテムが多すぎるのだ。なのでこの【発】はそれらの防止用。操作系は早いもの勝ちなので、こうして先に自分で操作しておけば効かない。

 

「移り気リモコン、コネクッション、なんでもアンケート、魔女の媚薬、レインボーダイヤ……私が覚えてるだけでもこんなにあるからなぁ。」

 

 原作で描かれたのは念戦闘と呪文カードでのやり取りだったが、真に恐ろしいのはアイテムの方だと思う。せめて脳だけでも保護しなければおちおちプレイ出来ない。

 

 それこそ移り気リモコンなんて離れた所から感情を操作できるからね。何時の間にか見知らぬ人にぞっこんにされたら目も当てられない。これを作った連中には間違いなく愉悦勢が混じってると思う。

 

 ちなみに付けた制約は3つ。

 〈制約1〉Lv1の発動にはペンダントが必要。

 〈制約2〉Lv2はペンダントを身に着けていた1時間に付き3分しか使えない。

 〈制約3〉Lv3を発動した場合、この能力は1週間使えなくなる。

 

 1つ目は原作シズクの格好(コスプレ)で必要になるペンダントを発動条件にしてみた。すでに装備済みだが、私のは原作の逆十字ではなく通常の十字架だ。色はもちろん金色。

 2つ目はチャージ式。どうせ1つ目で常に身に付けるのでついでだ。対象は過去の24時間。

 3つ目はLv3の使用後を制限。これを使うときは生きるか死ぬかの瀬戸際だと思うので、後のことは考えない。

 

 他にも色々用意したが、今回持っていくのはこれぐらいだ。

 

「よし、忘れ物はないね。それじゃあ早速、行ってみよう。」

 

 私はROMカードをジョイステーションの1P側に指す。

 それからグリードアイランドのディスクをセットしパワーをONにする。電源が入ったら手を当てながら【練】を行い、ゲームの世界へ旅立った。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

 気づけば小さな部屋の中に居た。さっきまで居た地下室とは違う場所だ。

 

 私は周囲をぐるっと見渡す。小さな球場の部屋だ。黒い壁には白い幾何学模様が無数に描かれていて、その宇宙映画のようなSF感は見ているだけで心をワクワクさせる。くぅ~、テンション上がってきた!!

 

 私は一つだけあったドアに近づく。自動で開いた先の通路を進めば、そこには再び小さな部屋があった。

 

「グリードアイランドへようこそ。あなたのお名前をお教え願えますか?」

 

 部屋の中央、浮いている台座に乗っているお姉さんが名前を聞いてくる。

 ジンの仲間でゲームマスターの一人である"イータ"さんだ。

 

「"ちんちん"で。」

 

「えっ……」

 

 私は考えてあった名前を告げる。イータさんは困惑してしまったが、どうせこの1周目はテストだ。あとでやり直すのでこんな名前でも困らない。

 

「だから"ち↑ん↓ち↑ん↓"です。はよっ。」

 

「そ、そう。……んんんっ!! では"ちんちん"さま。コチラの指輪を。好きな指に嵌めて下さい。」

 

「ちんちんに嵌めるのは?」

 

「あなた女の子でしょ!?」

 

 若干頬が染まったイータさんから指輪を受け取る。裏側を見ればびっしりと神字が書き込まれていた。すぐに左手の中指に嵌めると大きさが変わり、私の指にピッタリのサイズになった。

 

「ではコレよりゲームの説明をいたします。"ちんちん"様、ゲームの説明を聞きますか?」

 

「結構です。」

 

「えっ……」

 

 もちろん説明はスキップする。原作知識で知ってるから聞く必要はない。

 それにしても初回なのに強制じゃないとか、やっぱジンは分かってる。チュートリアルが強制だとリセマラがだるいんだよね。

 

 一言でいえばグリードアイランドはカードを集めるゲームである。

 クリアに必要な枚数は100枚。それも指定されたカードが必要だ。

 

 そしてクリア報酬は集めたカードの中から3枚をゲーム外に持ち出せる事。その為、原作では3人組でプレイしてる人たちが多かった。クリアしたら一人一枚ずつ選ぶという訳である。難易度を考えれば、それが一番効率的なプレイだろう。

 

 だが私は()()()欲しい。強欲すぎる? その通りだ。だってめちゃくちゃ便利なカードが沢山あるんだもん。1枚だけじゃとても足りない。

 

 だから私の目標はこのゲームを()()()()()する事。

 レイザーとの戦いがネックであるが、手段を選ばなければ勝てる算段は有る。

 例えばゾルディック家の人たちに依頼するとか。まぁこれは最終手段だけどね。

 

「それでは御健闘をお祈りいたします。そちらの階段からどうぞ」

 

「はーい。"ちんちん"、イきまーす!!」

 

 私は某ロボットアニメの主人公のノリで駆け出す。自分でも良くわからないテンションだがしょうがない。だってここはグリードアイランドだから。

 

 階段は途中から外に出てもまだ続いていた。大きな柱の周りをぐるっと一周する感じだ。

 吹いてきた風に目を細めて周囲を見渡せば、ここは見渡す限りの草原だった。

 

 私はそのまま階段を下り、ワクワクしながら大地に一歩目を踏み出して……

 

 ――ふにょん。

 

「えっ」

 

 予想外の感触で我に返った。

 慌てて足元を見れば、そこには草を貼りつけた服(ギリースーツ)の人が大の字で寝ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは私のおいなりさんだ。」

 

「へ、変態だぁああああああああああ!!!!!!!」

 

 足はその人の()()()()()()の上に乗っていた。

 私は思わず悲鳴を上げ、全力で階段を駆け上がった。

 

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

「はぁはぁはぁはぁ……。」

 

 先程踏んだ変態を縛って階段の裏に放る。変態は白目のまま口元をにやけさせ、とても幸せそうに気絶している。流石に寝転がっていただけなので殺してはいない。縛る途中で殺しといた方がいいんじゃね? とは思ったが。

 

「迂闊だった。考えてみれば今はゲームが始まったばっかりだ。」

 

 まだ原作のギスギスオンラインじゃないんだから、こんなエンジョイ勢が居ても不思議じゃない。でもこんな変態はもう居ないで欲しい。いや本当に。

 

「ふー……。」

 

 私は一旦深呼吸。

 

「よし、落ち着いた。」

 

 それから改めて行動を開始する。

 

「まずは"魔法都市マサドラ"を目指そう。」

 

 その街は呪文カードが唯一売られている場所で、このゲームで最も重要な街といっても過言ではない。地理的にもゲームが行われている島のほぼ中央にあるので、拠点にするには持ってこいだ。

 

 私は右のポケットに手を突っ込み、用意しておいた方位磁石を取り出して方位を確認する。

 

「えーと、北はあっちか。ん~、ここからだと建物なんて見えないね。」

 

 目を凝らしても見えるのは草原に生える木と、地平線の向こうにそびえる山だけ。

 普通のプレイヤーならここでどの方向へ進むか迷うだろう。だが私は原作知識である程度は島の地理を知っている。この先にはちゃんと街がある。

 

「さて行く方向は分かったから……おいでデメちゃん。」

 

 進む方角を決めたら次は移動手段の確保。

 私は何時ものように、自身のもっとも信頼する念魚を具現化する。体からオーラが吹き出して形となり、すぐ目の前に()メートルの巨大金魚が出現した。ゾルディック家に連れ込まれてから今日まで、1年半の修練で更に大きくなったデメちゃんだ。

 

「今日は沢山移動する予定だから宜しくね。」

 

『ぎょっぎょー!!』

 

 沢山飛べると知ったデメちゃんが嬉しそうに跳ねる。

 振り回される尻尾はブオンブオン!! と風を切り、ぶつければ大の男を吹きとばせそうな迫力だ。もうその辺の雑魚ぐらいなら尻尾だけで無双できそう。

 

「よっし、行こうか。」

 

『ぎょっぎょっぎょっ!!』

 

 私は何時ものようにデメちゃんの頭の上に乗り空へ飛び立つ。デメちゃんを【陰】で隠し、私自身も航空迷彩(灰色)の外装を着ているので、よっぽど注意して空を見ていなければ気づけないだろう。

 

 そうして進むと『懸賞の街アントキバへようこそ』という垂れ幕が見えてきた。

 

「おっ、あれがパスタの街かな?」

 

 巨大パスタの大食いチャレンジがある街だ。また優勝すると指定ポケットカードがもらえる月例大会もある。

 

「まぁ寄らないんだけどね。」

 

 アニメで見たパスタは美味しそうだったのでちょっと心を惹かれるが、パスタは逃げないので今はスルーだ。月齢大会も開催は15日だからまだ余裕がある。ただし何度も飛んで来るのはめんどうなので【接続ポイント】だけは作っておく。

 

「この辺りで良いかな。」

 

 まず郊外で人が近づきそうにない場所を探し、周囲を観察して記憶する。

 

 実は【接続ポイント】の作成数の上限は私の記憶力に依存していて、試しに周囲の光景を思い出さないようにしたら使えなくなった。そのため私は記憶が薄れないように、起床時と睡眠前に全ての場所を思い出す事を日課にしている。おかげで今の所、故意に忘れた場所以外で使えなくなった【接続ポイント】は無い。

 

 そうして記憶が終わったら次に地面に念で金魚の絵を描き、その上に立って【練】をスタート。そのまま30分経てば完了だ。

 

「よし終わり。さっさと進もう。」

 

 さくっと【接続ポイント】を作ると、再び北上を開始する。

 すぐに山賊が出る山林地帯が見えてきた。土下座攻撃で身ぐるみを剥いでくる山賊がいる場所だ。当然ながらここはスルー。

 

 用が有るのはその先の岩石地帯だ。ここでモンスターを倒してカードを手に入れておく。

 

「おー、予想よりでっかい。」

 

 最初に見つけたモンスターは"1つ目巨人"。4メートルを超える長身が振り回す棍棒はかなりの威力だ。だが攻撃パターンは2つしか無く軌道が丸わかり。オマケに弱点である眼も丸出しである。

 

 言わばチンチン(弱点)をブラブラさせたまま襲ってくる巨大蛮族だ。これぐらいならデメちゃん無しでも全然余裕。棍棒を避けながら肩を登り、眼に蹴りを入れるとカードに変わった。

 

「はいサイクロプスもどきゲットー。……G-333か、レア度低いなぁ。」

 

 このゲームのレア度はSS~Hまでの10段階。つまりこのカードは下から2番目という事になる。

 すぐに『ブック』と唱えてバインダー()を出現させる。コレは指輪を付けていると誰でも使える呪文で、本の中には指定カードしか嵌められないポケットが100個と、どのカードでも嵌められるフリーのポケットが45個ある。

 

 私のその後者、フリーポケットへカードをはめ込む。巨人はまだまだ居るが残りは放置だ。どうせこれはテストで使うだけなので1枚で十分。終わったらデメちゃんに乗って先を急ぐ。

 

 それからしばらく北上を続けると湖が見えてくる。

 そこから北西へ進めば、ついに目的地に到着だ。

 

「マサドラ到着ーっと。飛んできたせいか意外と早かったね。」

 

 左手に付けたデジタルウォッチを覗き込む。

 ゲームに入ってからは約2時間が経過していた。中々いいタイムだ。

 

 まぁなんたって今のデメちゃんの飛行速度は時速60キロだからね。グリードアイランド時のゴンキルが70キロを2.5時間で走ってバテていたのを考えると破格の速度である。やっぱり私のデメちゃんは最強だな。

 

 この街では郊外に【接続ポイント】を作ってから、トレードショップへ"1つ目巨人"を売りに行く。原作では沢山の人がいたが、まだ始まったばかりなせいかプレイヤーは一人も見かけない。

 

「はいよ2000ジェニーね。」

 

「やっす。もうちょっとオマケしてよ。」

 

「無理だ。」

 

 思ってたよりも金額がしょっぱい。今後は巨人に出会っても相手せずにガン逃げしよう。得た金はそのままショップに貯金する。

 

 これでこの街での用事は終了。すぐ街から出て、今度は西の港を目指して進む。

 距離は約50キロだ。途中の森には二足歩行の狼人型モンスターが武器を持ってウロウロしていたが、空を進む私には関係なかった。もちろん着いたらすぐに【接続ポイント】を作る。

 

「これでよしと。んじゃ一旦戻ろ。」

 

 終わったら悪人面の所長を倒し、手に入れた"通行チケット"を使ってゲーム外に出る。

 ログアウト用の部屋に入ると、そこにはログイン時のお姉さんと同じ外見の人が居た。ゲームマスターの一人、入口に居たイータさんと双子の"エレナ"さんだ。

 

「いらっしゃい。島から出るのですね? それでは行き先を決めて下さい。」

 

「ログインした場所も可能ですか? 出来るならそこでお願いします。」

 

 この時に選択できる現実の港は50個以上あるが、今回は使用したジョイステーションの場所を指定する。原作でキルアが数時間で出戻りしてたので選べるはずだ。

 

「畏まりました。それではまたのご来島をお待ちしております……」

 

 予想通りログイン元への帰還は可能だった。

 エレナさんが手元のボタンを押すと、退出用の瞬間移動が発動。気づけば私はプレイを始めた部屋に戻っていた。無事にグリードアイランドから帰還したのである。

 

「よし、一周目終わり!! ……なんだログアウトするの簡単じゃん。」

 

 用意してあったジュースを飲んで一息つく。

 手元の時計を確認するとログインから約4時間が経過していた。120キロぐらい移動し、【接続ポイント】を3箇所も作ったにしては中々のタイムだろう。

 

 さてここで、この行動に一体何の意味があるんだ? と思う人も多いだろう。だがこれは今後の事を考えると必要なことである。

 

「めんどくさいけど、今のうちにやっとかないとね。」

 

 何かを利用しようとするならば、誰よりもそれに詳しくなければならない。悪徳弁護士が真摯に法律を学ぶように、クラッカーが気が狂うほどプログラムを弄り回すように。

 

 このグリードアイランドというゲームを()()()()()()()為には、他の誰よりも仕様を詳細に()()する必要があるということだ。

 先程の1周目はそのための布石である。なんせ私の目標はソロクリアだからね。

 

「という訳で早速、仕様確認を始めよう。まずはROMカードの有効性から。」

 

 指定ポケットのデータは指輪に保存される事が分かっている。

 ゲーム外で指輪をはめ直せば、新しい方のデータが上書きされるのだ。

 

 しかしこれは逆に考えれば、指輪にはカード以外のデータは入っていない、という事になる。

 

 では他のデータはどうなっているのだろうか?

 自分の名前、出会ったプレイヤー、訪れた街、建てたフラグ、入手したアイテム、掛けた呪文。これらのデータはどこに保存されているのか? ROMカードだとすればどこまで? 調べなければならない。

 

「一旦、電源オフにしてっと。」

 

 私はジョイステーションからグリードアイランドを外し、使っていた1P側のROMカードのデータを、未使用のROMカードへコピーする。それが終わったら()()()()()()を1P側へ差し替えた。

 

「さて、はたしてこのコピーROMカードは有効かな?」

 

 もし何時セーブしたROMカードでも有効なら、色々と()()()な使い方が出来るだろう。ダメでもその場合の対応が分かる。データが丸ごとリセットされるのか、それとも一部は残るのか。

 

「めんどうだけど、この調査は今しか出来ないからね。」

 

 今ならデータがリセットされても痛くない。逆にゲームを進めてからは怖くて出来ない。途中で全リセなんてやらかした日にはガン泣き不可避だ。地下世界……ゾーマ戦前……デロデロデロリン……うっ、頭が……。

 

「よ、よーし、んじゃ2周目に行ってみよう!!」

 

 私は飲み終えたジュースを置き、頭を振って過去の苦い記憶を追い出す。

 それから電源を入れてグリードアイランドを起動。ジョイステーションに【練】を行い、再びゲームへ飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

「グリードアイランドへようこそ。おお、あなたはもしや"ちんちん"さまでは?」

 

「はーい、お姉さんが大好きな"ちんちん"です!!」

 

 中に入るとイータさんが1周目のプレイヤーネームを呼んだ。

 よかった。どうやらコピーしたROMカードでもOKな模様だ。ちんちんは続行!!

 

「フフフ、綺麗なお姉さんが嫌々卑猥な言葉を喋らされるのって興奮しちゃう。」

 

「……フフフ、誤解されそうな発言は止めてくれる?」

 

 イータさんが青筋を立てながらコチラを睨んでくる。その表情からはとっとと先に行け、という無言のプレッシャーを感じる。だが私はそこで草原への階段を降りず、()()()デメちゃんを具現化した。

 

「えっ、ちょっと」

 

「またすぐ戻ってきまーす!!」

 

 そして堂々とゲートを使い、マサドラへ移動した。能力を把握されてしまう事になるが、これはしょうがない。元々ゲーム内ではゲートによる転移を遠慮なく使う予定だったし、そうするとばれるのは確実だ。

 

 タダでさえこれから何度もゲームに出入りする予定なのだ。ログイン→ログオフ→再ログインにかかる時間から、瞬間移動系の【発】を持ってるのは一発で気づかれる。なのでもう開き直って、最初から堂々と使うことにした。

 

「1000ジェニー引き出しで。あと"キングホワイトオオクワガタ"について教えて。」

 

 マサドラでは()()()()()()()為に金を引き出し、ついでに今後に必要なカードについても聞いておく。トレードショップではランクAのカードまで情報が買える。SとSSの情報も売ってよ。

 

「はいよ。その情報は3万ジェニーになります。」

 

「たかーい。」

 

 残念ながら高すぎて手が出せない。

 だが金額は分かったので次は稼いでくればいい。そしてこれで2周目でやることは終わりだ。

 

 私は人が居ないところでゲートを使って港へ。

 そこでリポップしていた所長の首を天蓮華でコキャッ!! っと圧し折り、チケットを手に入れ現実に戻った。

 

「これで()()()()()()()()の新旧ROMカードが出来た。」

 

 引き出して1千ジェニーの新ROMカード。そして2千ジェニーのままの旧ROMカードだ。

 

 私は早速、旧ROMカード(2千ジェニーの方)を1P側に差し替える。

 さてこれはどうなるかな? もし有効なら貯金の()()()()が可能になるが……

 

「まぁ流石に無理だろうね。」

 

 恐らく対策はされているだろう。この手のバグはゲームの寿命を致命的に縮めるからね。相場が崩れた世界などディストピアと変わらない。引退者が続出するから。

 

 それでも私はダメ元でゲーム機に【練】を行い、三度ゲームへと飛び込む。

 

「あれっ?」

 

 ゲームに入った瞬間、違和感に気づく。付けていた指輪が無くなっていたのだ。

 

「あちゃー、やっぱダメかぁ。」

 

 そのまま先に進んでみると案の定、プレイヤーネームの設定が始まった。

 

「お名前をお教え願えますか?」

 

「"パイパイ"で。」

 

「パっ!?」

 

 私は別の名前でゲームを再スタートする。

 それからすぐマサドラのトレードショップに行ってみるも貯金は0だった。つまり全部がリセットされたと言うことだろう。すぐに港からログアウト。

 

「4回目はROMカードを外してっと。」

 

 それから今度はROMカード()()でプレイを始める。

 ちゃんと指輪も外して置いていく。入ったら"シリシリ"という名前でスタート。

 すぐにログアウトしてみると、外に置いていた指輪が消えている。

 

 続けてROMカード1(パイパイ)でログインすると、やはりこちらの方もリセットだ。

 そのまま"オッパオ"という名前でスタートしてすぐログアウト。

 

 最後に3枚目のROMカード3でログインし"カモカモ"という名前でスタートする。

 ログアウトしたらROMカード1(パイパイ)に差し替えてログインだ。するとこちらもリセットだった。

 

「はい検証完了ーー。あー、疲れた。」

 

 だが何度も出入りを繰り返した事で、データの保存方法はだいたい見当が付いた。

 私は記録を残すため、ノートにペンを走らせる。

 

 ココまでの行動を箇条書きにするとこうなる。

 なお()内はプレイヤー名、セーブ=ログアウトである。

 

 ①普通に初めて普通にログオフ

 ・ROMカード1でログイン(ちんちん)

 ・ROMカード1にセーブ(ちんちん)

 

 ②コピーしたROMカードを使ってみる

 ・ROM1のデータをROM2にコピー

 ・ROM2でログイン(ちんちん)→前回の続きから

 ・ROM2にセーブ(ちんちん)

 

 ③過去のROMカードでログイン

 ・ROM1でログイン(ちんちん)→リセット確認→(パイパイ)で再スタート

 ・ROM1にセーブ(パイパイ)

 

 ④一度ROMカード無しでログインした後にセーブ有のROMカードで入り直す

 ・ROM無でログイン(シリシリ)→ログアウト

 ・ROM1でログイン(パイパイ)→リセット確認→(オッパオ)で再スタート

 ・ROM1にセーブ(オッパオ)

 

 ⑤2垢目を作ってから、1垢目でログイン

 ・ROM3でログイン(カモカモ)

 ・ROM3にセーブ(カモカモ)

 ・ROM1でログイン(オッパオ)→リセット確認

 

「うーん、流石ジン一味。やはり不正出来そうなとこはきっちり対策済みか。」

 

 以上を簡単に纏めるとこうなる。

 ①ROMカードのデータは最後にログアウトした物のみが有効。

 ②無効なROMカードを使うとゲームの進行がリセットされる。

 ③一人一データしか保存出来ない。複垢禁止。

 

 原作でミルキが解析していた事を踏まえると、ROMカードには解ける暗号化しか施されていない。上記にプラスして考えれば、プレイヤーのデータは島側に保管されている、というのが無難だろう。

 

「とするとROMカードに書き込まれるのは……使い捨てのパス辺りかな?」

 

 おそらく仕組みはこうだ。

 ゲームにログインするとユーザーの生体情報が参照され、前回ログオフ時に"島側に保管されたパス"と"ROMカードに書き込まれたパス"が比較される。この2つが一致した場合のみ、前回の続きのデータが使用可能になる、と言う感じだ。

 

 いわばプレイする本人が1次パスで、ROMカードはワンタイム(一時)パスだ。

 これなら複垢プレイは出来ないし、ROMカードを使い回すことも出来ない。

 

「……まぁあくまで私の想像だけどね。」

 

 過去のROMデータが無効なのは想定内だが、複垢が出来ないのはちょっとめんどう。

 ゲーム内は呪文カードで粘着が可能だから。

 

 まぁ原作でツェズゲラさんが"No75 奇運アレキサンドライト"について『本にほぼ空きがない、手持ちカードを全て渡す条件クリアは不可能。』と発言していることから、複垢は不可能だとは思ってたけどね。出来れば簡単に取れるはずだし。

 

 可能なら攻略用、交渉用、PK用で3垢作ったり、一時的にカードを複数垢に分けて保存したり出来たんだけどなぁ。

 

「それから他人のデータが入ったROMカードを使った場合だけど……」

 

 多分ダメだろう。ROMカード無しでもリセットされたのだから。

 

 まぁダメなのはダメでしょうがない。

 最後に入った時のROMカード以外でログインするとデータが消える、と分かっただけ良しとしよう。

 

 特にROMカード無しで入ると、保存してあるデータまで消える事は知れてよかった。

 知らなかったら多分やらかしてただろう。例えば一人一度しかチャンスがないアイテムを取り直すとか。やっぱり試しといてよかったね。

 

「あとは残ってるパターンはゲートで外に出た場合ぐらいかな。」

 

 でもこっちは試すのは止めといたほうが良いだろう。

 きっと島の出入りは厳重にチェックしてるだろうからリスクが高い。最悪、ゲームマスター達を敵に回す可能性さえある。ポ○モンで手持ちに変な名前を付けて煽るのはOKでも、回線の切断はNGだ。

 それに港に行けばすぐ出れるので、わざわざゲートで島を出る意味は無いし。

 

「さてこれで一旦検証はストップかな。あとはゲームの進行が必要だし。次はもう()()の目的の方だね。」

 

 私はROMカードからデータを消し指輪も外す。

 まっさらな状態で最初から始めるということだ。それからジョイステーションを包むように手をかざして【練】を行った。

 

「――さぁ、今度はグリードアイランド()()を始めるよ!!」

 




以上、悪用する為に仕様チェックを欠かさない幼女でした。
なお、データに関する考察は独自設定です。
次こそ普通に攻略が始まる予定です(たぶん

■以下、新しい念能力
念能力:【深淵を覗く者(アクセル・マインド)】(操作系)
自身の脳を操作して思考を加速させる能力。
アクセル・ワ○ルドのパクリ。3段階制。
Lv1:ほんの少しだけ脳を活性化させる"防護用"
Lv2:脳内麻薬を強制分泌し集中力を高める"戦闘用"
Lv3:脳機能の一部を停止させ、思考を極限まで高速化する"切り札"

〈制約1〉Lv1の発動にはペンダントが必要。
〈制約2〉Lv2はペンダントを身に着けていた1時間に付き3分しか使えない。
〈制約3〉Lv3を発動した場合、この能力は1週間使えなくなる。

※制約1は金色の十字型のみ。制約2は過去24時間が対象。
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