シズク=ムラサキは愉悦したい   作:さろんぱす。

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書いてたら長くなったので切りの良いところで投稿。
海賊さん達が酷い目にあう中編です。


第31話 海賊たちの厄日(中)

 ついに《一坪の海岸線》を賭けたイベント戦が始まった。

 

「俺が一番手だ。勝負形式はボクシング。」

 

 海賊達はまず原作と同じ様にボクシングで勝負を仕掛けてきた。

 だが敵の切り札である瞬間移動攻撃は事前に伝えてあるので余裕で勝利。

 

 続いてフリースロー、ボーリング。これらもツェズゲラさんの仲間が出て瞬殺した。原作でも活躍していたバリー、ロドリオット、ケスーの3人である。

 

「これでコチラの3勝でおじゃるな。」

 

「おいおい、なんだ余裕じゃねーかよ。」

 

 仲間の快勝にマロさんとバショウが感想を述べる。

 やっぱちゃんと鍛えてるハンターは強いね。念の基本技能だけでボコボコにしちゃった。これで役割に応じた【発】まで持ってるんだから、やはりこの人達は有能だ。敵の海賊達も固有の【発】を持ってて弱くは無かったけど、こっちに比べると見劣りする。

 

「それでまだ続けるの? そっちは5人しか居ないし、もう勝負は付いたと思うけど。」

 

 5対5で先に3勝したのだ、もうこっちの勝ちでよくね? 

 普通ならこの時点で終わりのはずである。だがレイザーからは止めようという気配が微塵も感じられない。

 

「まだまだこれからさ。確かにこっちが不利なようだが、勝負はやってみないと分からないぜ。」

 

 嘘つけ、どうせ自分の番になったら念獣出して俺TUEEEE!! するつもりなんだぞ。私は原作知識で知ってる。どっかのナーロッパ主人公みたいな立ち回りしやがって。

 

「では次の勝負だ。」

 

「俺の勝負方法はリフティングだ。」

 

 レイザーが先を促して次の勝負が始まる。

 相手の4人目はアゴがタプタプして二重になってる海賊だ。きっとあだ名は"タプタプ顎"に違いない。彼は何時の間にかサッカーのユニフォームに着替えており、フローリング床なのにスパイク付きのシューズまで履いていた。お前もう海賊やめてサッカー選手に転職したら?

 

「ルールを説明しよう。球を落とした方の負け。手で触るのは禁止、念アリ、攻撃アリだ。球が味方に当たっても負けだぞ。」

 

 タプタプ顎がルールを説明する。

 念アリ以外は普通のリフティングだね。問題はどんな能力を使ってくるかだけど、こればかりはその時にならないと分からない。

 

「ではコチラはマロが行くでおじゃる。」

 

 味方からはマロさんが出てくれるようだ。もしかして蹴鞠とかやってたのかな?

 

「大丈夫? 向こうはこの競技に有利な能力を使ってくるはずだよ。」

 

「任せるでおじゃ。これでもマロは蹴鞠道飛鳥井流の皆伝。数百年に渡って受け継がれてきた華麗な技を見せてくれようぞ。」

 

 蹴鞠に流派とかあったんだ。全く知らなかった。

 

「OKでは……レディ、ゴー!!」

 

 スタートと共に二人は頭上へボールを投げる。

 

 ――そして同時に念能力が発動された。

 

 先に形に成ったのはタプタプ顎の方。

 彼のオーラは投げたボールに纏わり付き、鳥のような羽が具現化された。まるで某魔法使い小説の150点みたいになったボールは、伸びた羽を羽ばたかせて室内をビュンビュン飛び回り始めた。

 

「これでもう俺のボールが落ちることは無くなった。フフフ、つまり負けは無いってことだ。」

 

 タプタプ顎がドヤ顔しながら勝ちを宣言する。

 ふむ、ボールに飛行能力を与える能力か。本人から離れて飛び回ってるところから、操作系あるいは放出系ベースの念獣かな。仮に名前をつけるなら……【海賊の奴隷妖精(ぼーるはともだち)】でどうだろう? ボールは一方的に蹴りまくって使い潰す物だからね。友達と書いて奴隷と読んでも不思議じゃない。

 

「リフティング勝負でそれは汚くねーか?」

 

「せやかてバショウ、これ念アリの勝負だし。」

 

 ルールも向こうが決めてるし、ぶっちゃけ敵側は何でも有りだよね。

 ボクシングだって相手の海賊は手から先を瞬間移動させたりしてきたからね。この勝負も端からまともな戦いになるとは思っていない。恐らく海賊たちは各々の勝負方法にあった【発】を作っているのだろう。

 

「ほほほ、中々やるようじゃの。」

 

 それにこちらも負けてはいない。

 マロさんは被っていた烏帽子をうまく使い、それをクッション代わりして落ちてきたボールを受け止め、なんと帽子の上にボールを乗せてしまったのだ。……おい、リフティングしろよ。

 

「では次はこちらの番でおじゃるな。」

 

 続いてマロさんの体からオーラが溢れ出し、一体の人形が具現化される。

 

 トゲトゲしたデザインの漆黒のメタルボディ。

 右手にデコボコしたロングソードを、左手にはトゲ付きのハンマーを握っている。そして尻尾の先にはクロスボウだ。眼は単眼の真っ赤なモノアイになっていて、この先の宝物庫には絶対に通さねぇと言わんばかりに相手を睨みつけている。

 

 ……ちょっと待って、これどっかで見たことあるよ???

 

「これぞジャポンの国民的RPGよりヒントを得て作った我が能力。

 その名も――【火落理武者(キラーマジンガ)】でおじゃ!!」

 

 ネーミングそのままぁ!!! っていうかこの世界にもド◯クエあんのかよ。

 

「ところでお主は2年前に砂漠でテロリストと戦った事を覚えているでおじゃるか?」

 

「えっ、そりゃもちろん覚えてますよ。」

 

 忘れるわけがない。イルミですら立てなくなるほどの激戦だったのだ。

 アレは今までの人生で一番きつい戦いだった。ガスマスク、狙撃銃、パッソル改……何か一つでも準備を怠っていたら死んでいただろう。

 

「あの時、マロは見ていることしか出来なかったでおじゃ。目の前で子供二人が戦っていたのに。何度思い出してもマロはそれが悔しくての。念を覚えながらずっと戦うための力を願い続けたのじゃ。」

 

 その答えがキラーマジンガ(これ)なの???

 

「うむ、どうせ戦うなら強くてカッコよく、そして称賛される方が良い。それにこれなら子供受けもバッチリ……完璧でおじゃろう?」

 

「ええぇぇ……」

 

 無力を嘆いて他人の為に戦う力を欲したのかと思ったら、カッコよく戦って自分が称賛されたいだけだった……なんという煩悩の塊。まぁ念は思い入れが強いほうが強力になるから、自分に正直なのは良いことだけどね。

 

「持ってる能力もだいたい同じ。……最強の念獣でおじゃ。」

 

「手の内バレバレじゃん。」

 

「なに、海外でド◯クエは人気がないゆえ大丈夫でおじゃろう。」

 

 そういう問題なのかな?

 

 そんなことを言ってる間にマロさんの念獣が動いた。

 帽子の上からボールを取り上げると、自分のボディに生えているトゲの一つに思いっきり刺したのだ。ボールからはプシューと空気が抜ける音がして、トゲに刺さったまま動かなくなった。これではこの念獣を倒さなければボールは落とせないだろう。蹴鞠の華麗な技どこ?

 

「さて、では始めるとするでおじゃ……殺し合いをの!!」

 

「いやこれそういう勝負じゃねーから!!」

 

 マロさんが相手を指差しながらノリノリでデスゲームの開始を宣言する。

 テンション高いなぁ。タプタプ顎は必死に弁明を始めたが、やってることはどっちも大差ないよね。二人とも最初からリフティングする気なくて草生える。

 

「やれい! 【火落理武者(キラーマジンガ)】!!」

 

 しかし相手の弁明虚しく突撃が開始された――()()()()()()に向かって。

 確かにボールが飛んで逃げるなら、先に相手そのものをKOしてしまうのはアリだよね。気絶させてからゆっくりボールを落とせばいいんだし。

 

 【火落理武者(キラーマジンガ)】は素早い動きで近づき、両手に持ってるゴツい武器を振り回しながら無慈悲に相手に襲いかかる。高威力の1ターン2回攻撃だ。……これはキラーマジンガ(みんなのトラウマ)ですわ!!

 

「うおおおおおおお!!」

 

 振り回される武器を相手は必死になって避ける。

 直撃すれば真っ二つにされそうなロングソードを横っ飛びで避け、スイングされるハンマーを【硬】で防ぎながら距離を取ろうと必死だ。

 

「まだでおじゃ!! マロの【火落理武者(キラーマジンガ)】は火を纏う力を持つ。お主の体を灰にしてくれようぞ。」

 

 マロさんがさらなる能力を発動させると、両手の武器が火に包まれた。

 ああ、だから【"火落"理武者】なんだ。火を具現化しているのか、特性を変化させているのかは分からないが、本体から離して使えるのなら自傷しなくて便利だね。

 

 それに火は対人戦だととても強い。

 人間がタンパク質で出来ている以上、毒や電気と違って耐性なんてつけられないし、高温になった空気を吸い込んでしまえば喉と肺が焼けて大ダメージだ。そして何より服が燃えちゃえば社会的な意味で死ぬ。

 

「どう思う?」

 

「なんでこの人は降参しないの? 露出狂なの??」

 

 タプタプ顎は室内を必死に逃げ回る。

 すでに服は全部燃やされ全裸状態だ。そこにはボールに羽を生やしてドヤ顔していた余裕は全く残っていない。

 

 私としては自分に羽を生やして飛べばいいと思うんだけど、やらないってことは出来ないんだろうね。ボクシングの瞬間移動もリング上限定&体の一部しか出来なかったし、こいつらって典型的な才能(メモリ)不足な能力者だ。

 

 対してマロさんの方は工夫で苦手な分野を補っている模様。

 恐らく具現化系のマロさんは放出系が苦手なはずだけど、それは電源ケーブルのようなものを伸ばすことでクリアしていた。

 

 先端がガソリンスタンドで使われる給油ガンのような形をしたそれは、マロさんの左手から出て【火落理武者(キラーマジンガ)】の背中に接続されている。これはアンビリカルケーブルを参考にしたのかな? もしかしてマロさんてオタクなのだろうか。

 

「そーれ、ついに追い詰めたでおじゃ!!」

 

「ごぱぁあああ!!!」

 

 そのまましばらくすると相手は部屋の角に追い詰められ、腹に【火落理武者(キラーマジンガ)】のハンマーが炸裂して決着となった。

 

 倒れた相手は口から血を吐いてるけど、マロさんはたぶんNPCだと思って手加減してないんだろうね……説明するの忘れてた。

 

 まぁいいかどうせコイツラは重犯罪者だし、死んでも刑務所から代わりが連れてこられるだろうから平気でしょ。

 

 それにしても二人とも一度もボール蹴らなかったな。リフティング勝負とはなんだったのか。

 

「はいこの勝負もこっちの勝ち。そろそろこの街から出たくなった?」

 

「だがまだだ、まだ終わらんよ。」

 

 ちっ、やっぱダメか。一応主張してみたら、レイザーはどこぞのロリコン総帥みたいなことを言い出した。こうなったらもうヤルしかないな。

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

「では最後は俺がやろう。俺の勝負は5対5で戦うドッジボールだ。5人、メンバーを選んでくれ。」

 

 そう言うとレイザーは5体の念獣を具現化させた。

 それぞれの念獣には胸に『0』『5』『6』『7』『10』の番号が書かれている。本来なら1~4がいるはずだけど、どうやら最初から合体して10になってる模様。原作と違って8対8じゃないのは、事前に手下の数を削ったからだね。

 

「ちょっと待て。それだと勝敗はどうなる?」

 

「もちろん勝った方に5勝入る。簡単だろ?」

 

 ツェズゲラさんの質問に対して、レイザーは当たり前のようにズルい答えを返してくる。

 はいこれで今までの4戦は全部無駄になりました。……分かってたことだけど本当に酷いなこのシステム。目の前でやられるとめっちゃうざい。簡単だろ? じゃねーよ。

 

 しかし悲しいかな。この場でルールを決める権限はレイザーにある。

 私はしょうがなく5人のメンバーを選出する。

 

「こっちのメンバーは私、バショウ、ツェズゲラさん、ドエムノアニキ、そしてシンジだよ。」

 

 もともとこの辺は対レイザー戦を念頭に集めたメンバーだ。

 この5人なら用意した策も使えるし、十分に勝算がある。

 

「いやいやいや、なんで僕が入ってるんだよ!? オカシイだろ、そっちのミルキってガキでいいだろ!!」

 

「うるさい、ミルキは別に大事な役割があるの。」

 

 と思ったらシンジがゴネ出した。ここで逃げるとかお前は何のために来たんだよ。

 それにミルキはゾルディック家から預かってる大事な御曹司だぞ? 死ぬかも知れない勝負になんて怖くて出せるか!!

 

「大丈夫だよシンジ、各々にあった役割がきっとあるから。……自分を信じて!!」

 

「僕が信じられね―のはお前だよ!!」

 

 ちっ、なんてノリが悪いやつなんだ。せっかく私が優しく諭してあげてるのに信じられないなんて。ムカついたから口に無理やりクッキーを詰め込んでやる。もちろんこのゲーム特有のクッキーである。

 

「ちょっ、なに食べさせようとしてモガガガガ……。」

 

 シンジが呑み込むとすぐに効果が現れた。

 胸がロケットのように飛び出し、お尻が水風船のように膨らんだ。シンジの体が女性へと変わったのだ。

 よく見れば腰もちょっと細くなっていてかなり良いスタイルである。どうせならチアガールの衣装でも持ってくればよかったな。

 

「「「「おおおおお!!!」」」

 

「なんじゃこりゃー!!?」

 

 残った男衆がエロい視線をシンジに向ける。

 上はTシャツ一枚なせいで胸部分がパツンパツン、おまけにブラをしてなくて乳首が透けてるからしょうがないね。

 

 これは《ホルモンクッキー》という、性別を変えるアイテムだ。

 効果は24時間持続するので、この勝負中に切れることはない。実は地味にランクSのアイテムで貴重品だったりする。

 

 それからシンジが驚いている間にドエムノアニキの拘束を解き、《コネクッション》に座らせてお願いをした。

 

「私達と一緒に戦って。」

 

「分かったぞ幼女よ。この俺にドーンと任せるが良い。」

 

 すると二つ返事で戦いを了承してくれたアニキ。

 やっぱり《コネクッション》は話が早くて良いね。現状の説明とか報酬とか、面倒な話が全部スルーできちゃう。私的にこのゲームのMVPアイテムだ。

 

「よし、ではルールを説明しよう。」

 

 コチラのメンバーが決まったと見て、レイザーがルールをつらつらと延べる。

 これは原作と同じだ。念アリ、クッション制、外野一人、バックで戻れるのは一人だけ、ってことだね。

 

「質問が3つあるけどいいですか?」

 

「どうぞ。」

 

 私は追加で質問をする。これはどうしても聞いておかなければならない。

 

「まず1つ目。途中で人数が減ったらどうなりますか? 最初から全部やり直し?」

 

「いや一度スタートしたら最後まで続行だ。やり直したりはしない。」

 

 つまり味方がいなくなっても大丈夫っと。

 まぁ途中で念獣を消す予定のレイザーとしてはこう言うしかないだろう。

 

「2つ目。そっちは念獣を人数に含めてるけど、こっちが使う場合はどうなります?」

 

「具現化された物は手足の延長として扱う。武器でも念獣でもな。」

 

 ふむ、こっちも予想通りだね。私もデメちゃんを使ってオッケーだ。浮かべて地面に付かなければ、相手コートに念獣を入れるのもセーフだろう。

 

「3つ目。ボールには念を込めて投げていいんだよね。じゃあ何らかの理由で()()、照明や天井()が落ちてきて当たった場合は? 避けられなかった人が悪いってことで良いの?」

 

「それは……まぁそうだな。とはいえココはかなり頑丈に作られている。その心配は無用だと言っておこう。」

 

 OK、()()()()()()

 よし、これで条件は整った。私はミルキに近づき、対レイザー戦の開始を告げる。

 

「ミルキ、予定通りよろしく。すみませんバリーさん達、この子の護衛をお願いします。」

 

「分かった行ってくるね。〈同行(アカンパニー)〉使用、マサドラへ!」

 

 出番の終わったツェズゲラさんの仲間3人を護衛に、ミルキが呪文カードでマサドラへ飛んだ。

 準備しておいた仕込みを発動させる為だ。上手くいけば更にレイザーを追い込むことが出来るだろう。

 

「よし、他になければ早速始めよう。」

 

 いよいよ勝負が開始される。

 グリードアイランドクリアにおける最後にして最大の関門だ。しかし倒せばクリアしたも同然。気合い入れて行くよ!!

 

『それでは試合を開始します。審判を努めますNo.(ゼロ)です、よろしく。』

 

 胸に"0"と書かれた念獣が審判として中央に立つ。

 向こうの外野はNo.5で、コチラの外野は()である。

 

「……ってなんでお前が外野に行ってんだよ!? オカシイだろ僕と替われよ!!」

 

「……スローインと同時に試合開始です。」

 

 シンジはまた納得いかないようだけど、試合は何事もなくそのまま開始された。選択権がシンジに無いって理解されてるのだ。賢い念獣だなぁ。

 

『レディー……ゴー!!』

 

「ふんっ!!」

 

 審判が頭上へボールを投げ、それを追ってツェズゲラさんがジャンプする。

 タイミング、勢い共に完璧だ。ボールが最高地点に到達した瞬間にはすでに追いついていて弾く体勢に入っていた。垂直跳びおじさんの面目躍如である。

 

 えっ、なんでお前は内野じゃないのかって? ハハハ、そりゃレイザーの全力ボールが飛び交う危険な場所なんてノーサンキューだよ。まぁバックは私が使う予定だけどね。それまでは外から様子見だ。最後をきっちり()()()ためにも、私は余力を温存しておかなければ。

 

「先手はくれてやるよ。」

 

「随分と余裕じゃねーか。」

 

 ツェズゲラさんは高く飛び上がったが、しかしレイザー側の念獣はジャンプせず、最初はこっちのボールでスタートとなった。

 どうせこの後はこっちの投球を片手でキャッチしてビビらしてやろう、なんて思っているのだろう。馬鹿め、私がそんな余裕を与えると思っているのか。その余裕が命取りだ。

 

 これが原作と同じ8対8の勝負であれば、レイザーは外野に念獣を3体揃える為に、最初の2体はわざと倒させてくれるだろう。

 

 だが今回は私が事前に手下の数を減らしているので5対5の勝負だ。内野が4人しか居ないのにわざと2体も倒させてくれるとは考えづらい。

 

 ならば最初からガンガン行くべきだろう。恐らく一度でも相手にターンを回してしまえばアニキとシンジは瞬殺されてしまう。そうなる前に全力の一撃をぶっ放すのだ。

 

「審判、タイム!!」

 

 私は一旦試合を止めドエムノアニキの能力と、それを利用して強力な一撃をぶっ放してほしいという旨を説明する。名付けて"チンチンからオーラをぶっ放してボールをかっ飛ばせ!!" 大作戦である。

 

「なるほどな。だが一つ問題があるぜ。」

 

「分かってる。誰がボールを持つかでしょ?」

 

 バショウが言い出した問題点は最初から分かっていたこと。

 アニキがオーラを放出する際、持ち手が自分の手を大量のオーラでガードしてしまうと、そのオーラが障壁となって威力を殺してしまう。つまり持ち手はオーラで手をガード出来ないのである。

 

「素手で大砲の弾を打ち出す筒の代わりをしなきゃなんねぇ……ちょっと無理じゃねーか?」

 

 確かに普通はそう思うよね。しかし私はこの解決方法を知っている。原作でも散々やったやり取りだからね。

 

「甘いよバショウ。超一流の念能力者ならオーラの超高速移動術によって打ち出す瞬間に手をガードするなんて余裕なんだよ。そしてそれが出来る人がこの中にはいる。」

 

 そう、出来る、出来るのだ。

 

「――ツェズゲラさんならね!! という訳で師匠、よろしくお願いします。」

 

「わ、私か? 確かにできんこともないが……」

 

 全員の視線がツェズゲラさんに集まる。

 会ったのも知ったのも全くの偶然だけど、アニキの能力ってレイザー戦で有効だからね。それを上手く使うためにツェズゲラさんを呼んだのだ。まぁこれも原作知識のちょっとした応用である。

 

「し、しかしだな、例え撃てても何処に飛ぶか分からんだろう? ならばやはり別の方法を取ったほうが……」

 

 と思ったらツェズゲラさんはめちゃくちゃ嫌そうにしていた。

 まぁ実際、オナニーの手伝いみたいな役割だしね。チンチンの前で球を優しく両手で持つんだから。でも大丈夫、狙う方法についてもちゃんと考えてあるよ!!

 

「おっと、そういう事なら狙いは俺サマに任せてもらおう。レイザーって野郎にぶち当たるようにしてやるぜ。」

 

「って訳だから大丈夫ですよ師匠。」

 

「そ、そうか……。」

 

 という訳でこちらはバショウの出番である。

 バショウの能力は書き記した句を実現すること。上手く使えばボールの進行先を固定するぐらい簡単だろう。フフフ、抜かりはないよ!!

 

「あと股間を踏む役目だけど、それはシンジ……いやシン子ちゃんお願いね。」

 

「どうして言い直した!?」

 

「なるほどな。だからシンジって奴を女にしたのか。いい尻してるぜ。」

 

 バショウがネットリした視線をシン子の尻に向けた。

 ……85ぐらいかな? 安産型のいい形をしている。このムチムチバインバインのシン子ちゃんなら、きっとアニキから沢山(オーラを)絞りとってくれるだろう。

 

「あとはアニキ次第なんだけど……」

 

「フフン、どうやらみな俺を当てにしているようだな。……いいだろう、ならば見せてやろうこの俺の能力を!!」

 

 そう言うとアニキはババッ! と素早くズボンとパンツを脱ぎ捨て床でM字になった。

 セリフと行動のギャップがすごいな。その顔には紅がさしており、すでにスタンダップ!! し始めてる股間からはこの状況に興奮していることが伺える。

 

「こんな変態どこから連れてきたんだよ……。」

 

 私だって会いたくて会った訳じゃないのよ? あれから階段の最下段は必ず確認しないと落ち着かなくなっちゃったし。

 

「いいからグダグダ言わずに踏め。限界を超えて踏み続けろ。」 

 

 私は死ぬほど嫌そうな顔をしているシンジに指示を出し、タイムを解除して外野に戻る。

 

 内野では残された4人が集合し、一塊となって必殺技の発射態勢を取っていた。みんなが各々の役割をこなそうとしてる。素晴らしいチームワークだね。

 

「ああくそ、結局こんな役目かよ。せっかく念を覚えたのにさぁ!!」

 

 やけくそになったシン子ちゃんの無慈悲な連続スタンプがアニキの股間を襲う。スタンプ! スタンプ! スタンプ!! その姿はまるでヒソカを踏みつける団長のよう。

 

「くっ、まさかこんな事をやるハメになるとはな。……おい、オーラ以外は飛ばすなよ? いいか絶対に絶対だぞ? 違う物まで出したら殺すぞ。」

 

 ツェズゲラさんが片膝を突いて両手でボールを持つ。

 チンチンに触れるか触れないかの絶妙な位置だ。なんだかこれから手コキするみたいだな。その顔は本当に私が持つの? えっ、まじで? みたいな顔だった。

 

「オ”オ”ーン”!! オ”ン”! オ”ン”! オ”ン”! ……もっと!!!」

 

 そしてドエムノアニキ。

 シンジに踏まれる度に汚い声を発し、溢れ出したオーラが股間に集まって行く。まだMAXでないにも関わらず、すでに私の顕在オーラの2倍以上の強大さだ。これならレイザーとて簡単には止められまい。

 

「『飛翔物 渦巻き撃つは 敵首領』。……よし書けたぞ。」

 

 そこにバショウが句を作り誘導性能を付与する。

 良いね良いね。きっとバショウは回転させて威力を増す為に渦巻きって入れたんだろうけど、弾が回転してればレシーブもどきで跳ね返すことも難しくなる。

 

「これならきっと貴方もイチコロだね。ねぇねぇ今どんな気持ち? どんな気持ち?」

 

 俳句は詳しくないのでどのへんが季語なのか分からないが、ボールがレイザーに当たるなら駄作でも何でも良い。

 果たしてこれから発射される誘導機能付きビッグマグナムを受けるレイザーの心境はいかばかりか。

 

「そうだな、威力はどうでもいいから早くしてほしい。大の男が丸出しでM字開脚してる姿は……あまり見ていたくない。」

 

「あっ、はい。」

 

 軽く煽ってみると素で返された。4人係の合体技なのにリアクション薄くね?

 原作ゴンキルの時はめっちゃワクワクしてたのになぁ。まぁ確かに絵面は最悪だけど、でもその分、きっと威力はすごいはずだよ!!

 

 なんせアニキの性癖にシンジの尊厳とツェズゲラさんの技術、そしてバショウの駄作を合体させた最強の念能力だ。見ればアニキの股間はすでにパンパンになっていて、そのドロドロのオーラは今まさに解き放たれんとしていた。

 

「――名付けて、ハイパーオチンポキャノン!!」

 

「ネーミングが最低すぎるぞ。」

 

お前に食らわせる技だから最低でいいんだよ!!

 

「ア”オ”オ”オ”オ”オ”ン”ン”ン”!!!」

 

「いっけぇええええ!!!!!」

 

 犬の遠吠えのようなイキ声と共に、ついに溜め込まれたオーラが発射された。

 生命の濁流と化したオーラがボールを押し出し、バショウの能力によってライフル弾のように回転しながらレイザーへ襲いかかる!! 更にそれを追いかけるように、遅れて白い液体もドピュドピュと飛び出した。

 

 対してレイザーは……

 

「あれは……まさか合体!?」

 

 レイザーは2体の念獣を自分の前に並べ、即席の盾を作っていた。

 前から7,10、レイザーの順だ。これでは念獣を抜かなければレイザーにボールは当たらない。どうしても触りたくないんですね分かります。

 

 そんなレイザー達に光の尾を引きながら流星と化したボールが迫る。

 しかしあろうことか2体の念獣は前進し、上からボールに覆い被さった。地面にボールを押し付ける、それが無理でも下方向に軌道を逸すつもりだろう。一度床にボールが付けば、その後に当たってもアウトにはならない。

 

 ……ちっ、この動き、ボールの回転を警戒しやがったな。

 無理にレシーブで浮かせるようなら、デメちゃんで奪ってやろうと思ってたのに、なんて冷静な判断力なんだ。流石はレイザーと言うべきか。

 

 最初にボールに触れたNo.7が勢いと回転によって弾き飛ばされる。

 しかしそのせいで一瞬だけ回転が落ち、そこへ更にNo.10が覆い被さった。

 

 だがボールは止まらない。なんせアニキが赤玉出るまで絞り尽くした全オーラを使った一撃だ。そのまま念獣を巻き込みながらレイザーに迫るっ!!

 

「――ふっ!!」

 

 だがレイザーは冷静だった。

 両手を振り上げて握りしめると、そこにオーラを集めて念獣の背中に振り下ろしたのだ。直進していたボールが念獣ごと押し潰され、フォークボールのように下方向へ向きを変えられた。

 

 けれどボールの軌道をズラすということは、その後ろにある念弾に対して無防備に体を晒すということだ。ボールを追い抜いた念弾が炸裂し、前後から攻撃を受けたNo.10が風船の様に破裂した。

 

 だがそこまでだ。念獣と床への衝突により勢いの大部分が削られたボールは、跳ね返った所をレイザーに片手で受け止められてしまった。

 

「嘘だろおい。」

 

「あれを止めるでおじゃるか。」

 

 味方から落胆の声が漏れ、レイザーが会心のドヤ顔を決める。

 

 しかし真に驚くことはその直後に起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ビチャッ、ビチャビチャチャッ!!

 

 オーラに遅れて発射されたアニキの白いナニカ、それがレイザーの顔に、跳ねられたドロのようにくっついたのだ。

 何ということだろう、バショウの能力は発射した時に飛んだ全てのものに効果を及ぼしていたのである。

 

 頬に付いた感触を不思議に思ったレイザーは、ボールを持ったまま手で顔を拭う。

 

「……おい。」

 

 そしてそれがナニカを理解すると恐ろしくドスが利いた声を発した。

 瞬時に場内が凄まじいプレッシャーで覆い尽くされる。その恐ろしさにシンジが尻もちをつき、他のみんなも――海賊の手下ですら冷や汗をかき固まって動けなくなった。

 その場で唯一何も変わらなかったのは、アヘ顔ダブルピースで気絶しているアニキだけだ。こいつ大物だわ。

 

『接触後にボールが床に触れたため、No.7、10はアウトです。』

 

 だがそんな中でも審判は冷静に役割を果たした。

 念獣なせいか空気を読まずにアウトを告げる。それによりみんなの硬直が解け固まっていた時間が動き出した。

 

 アレだけのオーラを放出して取れたアウトは2つだけ。後少しでレイザーをアウトに出来たのに惜しい。でもNo.7と10は消えちゃったし、実はレイザーもそれほど余裕は無いのかもしれない。

 

 うん、レイザーからアウトは取れなかったけど、念獣2体をアウトにして更にオーラまで消耗させたと考えれば及第点だね。ならばこのまま追い込めばいい。さあ、このまま油断せずに行くよ!!

 

「ちっ、悪いがタイムだ。顔を洗ってくる。それとコートも移動だ。白いアレが飛び散ってるからな。」

 

「すまんが私も手を洗ってくる。……その、ちょっと掛かってしまってな。」

 

 よく見ればコートにはアニキの前から白いナニカが真っ直ぐ線を描くように残っていて、ツェズゲラさんの手にもベットリとくっついていた。うわぁ、すごい生臭そう。

 

「――巫山戯たマネしやがって。」

 

 レイザーは最後にボソッと言葉をつぶやくと、ドスドスと歩いて部屋を出ていった。

 これちょっとキレてるんじゃね? 爆発しなかったのはまだゲームマスターとしての責任が勝ってるからかな?

 

 でもコメカミの辺がピクピクしてたし次の投球は危険かもしれない。まぁ私は外野だから余裕だけどね。……一応10メートルぐらい離れとこ。

 

 私達はすぐにコートを移動し、勝負は次のラウンドへ突入した。

 




条件は整った(キリッ!! ※ただし予定通り行くとは言っていない。

■以下、新しい念能力と試合状況
能力名:【火落理武者(キラーマジンガ)】(具現化系)
ドラクエⅥのキラーマジンガを具現化する能力。
ロングソードとハンマーとクロスボウを装備。武器に炎を纏わせる力を持つ。
背中からはケーブルが伸びていて本体の左手に繋がっている。切断されると5分で動けなくなる。

・現在の試合経過(◯勝ち ●負け)
◯バリー    vs ●ボクシングの人
◯ロドリオット vs ●ボーリングの人
◯ケスー    vs ●フリースローの人
◯マロ     vs ●リフティングの人

ドッジボール(5対5)
シズク(外野)vs レイザー
バショウ   vs 念獣No.5(外野)
ツェズゲラ  vs 念獣No.6
シンジ(TS化)vs 念獣No.7→アウト&消滅
アニキ(赤玉)vs 念獣No.10→アウト&消滅

いまこんな感じです。対海賊戦は次で終わる予定。読んで戴きありがとうございました。
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