シズク=ムラサキは愉悦したい   作:さろんぱす。

33 / 39
GI編のラストです。よろしくお願いします。


第33話 ゲームクリアと欲塗れの報酬

 ミルキたちに合流した私は空いているスペースに腰を下ろした。

 ハメ殺したとは言えあのレイザーと対峙したのだ。精神的にも肉体的にも疲労が溜まってしまっている。

 

「おかえりねーちゃん、それでカードは?」

 

「もちろん取ってきたよ! ほらこれ。」

 

 取ってきた《一坪の海岸線》を見せながら周囲の質問に適当に答え、合間に用意しておいたチョコバーをコーヒーで流し込む。混ぜているのは砂糖でなくブドウ糖タブレットなので苦い。

 

(ううぅ、やっぱこの能力きっつ……。)

 

 レイザーを倒すために使った【深淵を覗く者(アクセル・マインド)】は操作系の能力だ。操って無理やり脳みそを酷使する仕様上、どうしても疲労が嵩むのは避けられない。

 

 これがLV1(防護モード)ならエネルギー消費が増える程度で済むが、LV3(切札モード)の使用後は反動で靄がかかったように思考が鈍くなり、加えて酷い頭痛と吐き気がしばらく続く。

 まるで女の子のあの日みたいだ。作っておいてなんだがLV3はよっぽどの時じゃないと使う気にならないね。

 

 私は周囲の警戒をみんなに任せ、【絶】を使いそのまま2時間ほど身を休めた。

 

「それでこれからだが、どうするのかね? ミルキ君の話ではカードはまだ半分も集まっていない、とのことだが。」

 

「もちろん()()()()クリアします。」

 

 ツェズゲラさんからの質問へはっきりと断言した私に周囲のみんなが驚く。

 だがこれはもはや確定事項だ。《一坪の海岸線》を手に入れた以上、クリアまでの道筋に私を阻めるような障害は残っていない。ならばこうして味方がいる内にクリアしたほうが良いだろう。

 

「現在の手持ちの指定ポケットカードは40種。残り60枚の内訳はランクSSが2枚にA23枚、B34枚、D1枚です。」

 

「ふむ、それだけ聞くと残りも随分と大変そうに思えるな。」

 

「いえ大丈夫です。残りの取り方は()()分かっているので。……早ければ1,2時間で揃うでしょう。」

 

 もちろん最初から揃えておくことも可能だった。

 しかしこのゲームはトレードショップで全体のランキングを聞ける――つまり上位のプレイヤーが今何種類集めているのか分かるのだ。

 あまり大量に抱えてしまうとクリア間近だと警戒される上、他のプレイヤー達が徒党を組んで襲ってくる可能性が高い。

 

 だから今までは何時でも取れるカードはあえて取らずにいた。

 敵を大量に作り《一坪の密林》《一坪の海岸線》を取る間に邪魔が入るのは避けたかったからだ。

 

「なるほど攻略法はすでに分かっているのか。ではなにか手伝えることはあるかね?」

 

「もちろん。皆さんには幾つかやってほしいことがありまして。」

 

 でもこの2種を手に入れた以上、もはや自重する必要はない。

 それに今なら頼もしい味方もいるからね。

 

「という訳で私達はこれから

 

 ――呪文(スペル)カードショップを()()()()()()。」

 

 これからはクリアまで一直線、ずっと私のターンだよッ!!!

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

「ちっ、まーだ進まねぇのかよ。」

 

 中々進まない列の前方、自分の番まであと3人という所で愚痴を零している男がいた。

 

 彼は1ヶ月前にこのグリードアイランドに参加した"ネロネロ"というプレイヤーである。

 今はここに一緒に来た仲間である"ああああ"、"ラオウ"と共にマサドラの呪文ショップ前の列に並んでるところであった。

 

 このゲームにおいて呪文カードは最も重要だ。

 相手のカードを奪う攻撃に、それを防ぐ防御、そしてゲーム内の移動と情報収集。一度でもその便利さと凶悪さを知ってしまえば無視することなど出来ない。

 

 結果として唯一呪文カードが買えるこの呪文ショップは連日多くのプレイヤー達が押しかけ、いつの間にか長蛇の列が出来るようになっていた。

 

「まぁまぁそうイラつくなよ。」

 

「そうだぜ、あと30分ぐらいじゃねーか?」

 

 イライラしだした仲間に、残りの二人が落ち着けと声をかける。

 だがそれもしょうがないだろう。彼ら3人が並んでからはすでに3時間以上が経過しているのだ。人気アイドルのチケット即売会でもあるまいし、使い捨てのカードを買う度にこうして並ぶのは苦痛でしか無い。

 

 だがそれでも彼らは列に並び順番を守る。

 割り込みなどで列を乱せば周囲によって袋にされてしまう事を理解しているからだ。人は多く集まると自然とルールを作ろうとする。好き勝手争ってはお互いに不利益しか産まないから。この呪文ショップの列も、そうして出来たこの街のローカルルールの一つであった。

 

 だが彼らは気づいていなかった。

 ルールというのは()()()()()()()()()初めて意味を持つという事を。

 

 そう、世の中には『そんなの知ったこっちゃねぇ!!!』と好き勝手振る舞おうとする輩が確実に存在するのだ。それはつまり将来における中二病の集まり(幻影旅団)のように、そして彼らにとっては不幸なことに、このゲームの中にもそれは居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うごくなぁああああ!! この店はこれから私達が占拠する!! 邪魔する人間は蜂の巣になってもらうッ!!!」

 

「分かったらその場に伏せて両手を上げろぉ!! おいそこのっ! 聞いているのか!!!」

 

 呪文ショップに並んでいた彼らは見た。

 いきなり空から降ってきたガスマスクと重火器で武装した怪しい集団を。その集団は上記の口上を叫びつつ一斉に催涙ガスのような物を投げる。彼らは驚きによって身を硬直させたまま意識を失い、そのまま呪文ショップは占拠された。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

「じゃあ外はお願いしますね。」

 

「任せるでおじゃ。」

 

 呪文ショップの内外、両方からプレイヤーを排除した私はみんなに外を任せて一人で店の中に踏み込む。

 

 その際、一枚のカードを設置した。カードは一分経つと自動でカード化が解除され、5メートルを超える巨大な岩となって入り口を塞いだ。これでもう物理的にも入ることは出来なくなった。

 

 さて、こんな事をした理由はもちろん呪文カードを買うためだ。

 しかしちょっと()()な買い方をするので、他の人には一時的に退出してもらったのである。

 

「呪文カードパックを()()()()下さい。幾らですか?」

 

「えー、あるだけですと……全部で1515万ジェニーになります。」

 

 おっ、かなりの数を買えるね。

 今はまたプレイヤーも増えてきたからそんなに買えないと思ってたんだけどね。

 

 呪文カード全種の合計したカード化限度枚数は5135枚だ。

 これは同時に、ゲーム内に出現する呪文カードの限界数でもある。つまり出回っている呪文カードが多いほど買えるパックは少なくなるということ。

 原作でもハメ組が死んだ後に大量のパックが入荷されている描写があったからね。仮に幾らでも買えるのならそんな描写はやらないだろう。

 

 だからこんなにまとめて買えるということは、みんな呪文カードはすぐ使ってしまっているということだ。まっ、私としては好都合、これは嬉しい誤算だね。

 

「いまお金を出すからちょっと待ってね。」

 

 値段を聞いた私はすぐに()()()でゲートを開き、その中に上半身を突っ込む。繋がっている先は別の街――不人気で誰も来ないような場所、のトレードショップの中である。

 

「1515万ジェニー引き落ろしで。」

 

「はいよ。」

 

 店主の前に上半身だけを出現させた私はそのまま貯金を下ろす。これはこの時のために貯めておいた金だ。

 受け取ったらバインダーには入れず、すぐ用意しておいた袋に丸ごと突っ込む。

 

 本来であれば下ろしたお金はバインダーに入れて持ち運ばなければならない。

 この島ではカード化された状態でないとお金とは認められず、さらにバインダーに入れずに1分たつとカード化は強制解除されてしまうからだ。

 

 しかしそれは逆に言えば1分以内ならばバインダーに入りきれない額でも問題無く使えることを意味する。

 

 必要なのはすぐに下ろした金を持ってくる瞬間移動の能力と、すぐに使えて邪魔されないように店を占拠する武力だ。だが今の私はその両方を満たしている。

 

「はいこれ。1515万ジェニー。」

 

「確かにお支払い頂きました。しばらくお待ち下さい。」

 

 すぐに上半身を戻し、下ろした金でそのまま支払いを行う。

 これで1515パック、合計4545枚の呪文カードが手に入った。あとは片っ端から開けて行くだけだ。

 

「最初は一種ずつ集めてっと。」

 

 まずは《No.017 大天使の息吹 SS-03》を手に入れる。

 このカードの取得条件は呪文カードを40種全て集めること。呪文パックを買い続けるだけで理論上は誰でも手に入れることができる、ランクSSの中ではかなり入手しやすいカードである。

 

 続いて〈堅牢(プリズン)〉を〈擬態(トランスフォーム)〉で増やしながら使用し、指定ポケット全部をコーティング。これでもう呪文で私からカードを奪うことはできなくなった。

 《聖騎士の首飾り(永続マホカンタ)》は呪文を反射してくれるが、残念ながら〈徴収(パルプンテもどき)〉だけは跳ね返せないのだ。だが〈堅牢(プリズン)〉は全ての呪文を無効にしてくれる。この先に呪文合戦をやる可能性はほぼ無いけど念の為だ。

 

 それが終わると最後はいよいよ〈宝籤(ロトリー)〉の出番である。

 これはランダムに一枚何かのアイテムカードに変身する呪文カード。そのままだとゴミアイテムが量産されてしまうが、しかし《リスキーダイス》と組み合わせることで、ランクAまでの指定ポケットカードを高確率で手に入れることができる。

 

 原作ではボマー組が捕まえた奴隷君(モリタケ)で行っていたコンボだが、しかし《闇のヒスイ》を大量に所持している私はその奴隷すら必要ない。

 

「もしもしミルキ? これからダイスを振るからみんなは次の場所に移動して。」

 

 味方に不幸がいかないよう無線機でみんなに退避してもらったら、いよいよガチャ祭りの始まりである。

 

 必要なランクAカードは23種。

 先程買ったパックで手に入れた〈宝籤(ロトリー)〉は330枚。

 《闇のヒスイ》の残りは30個。大凶が出る確率は1/20なので、よっぽど運が悪くなければ足りるだろう。

 

「パーティの始まりだよ!!」

 

 私は早速一個目のダイスを振る。ダイスはカツカツと音を立てて床を転がり、始まりの一歩目を私に示した。

 

 ……あっ、大凶。

 

 とたんに店のレジが爆発し、売り子のお姉さんの顔がグチャグチャになって潰れた。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

「プレイヤーの方々にお知らせです。たった今あるプレイヤーが99種の……」

 

 ランクAカードを揃えた後、私はトレードショップで残りのランクBカードを購入しバインダーにセット。すると指定ポケットカードを99枚集めたことにより最後のイベント――《No.000 支配者の祝福 SS-01》を賞品としたクイズ大会が始まった。

 

「しかしわざわざこんな場所まで来る必要があるのでおじゃるか?」

 

「フフフ、それはすぐに分かりますよ。」

 

 このクイズ大会はゲーム内全体に告知される、言わばプレイヤー全員参加型のイベントだ。

 なので今までまともに活動出来なかったプレイヤーにもワンチャンある。もしも入手出来れば交渉で大量の対価を引き出せるのでは? なんて想像するのは難しくないだろう。

 

 しかしせっかく手に入れても交渉まで守りきれるとは限らない。ではどうするか?

 

 一番簡単なのは99枚を揃えたプレイヤーの近くでクイズに挑戦することだ。

 これなら《支配者の祝福》を取った場合について事前に交渉しておくことが出来るし、相手が弱そうならそのまま暴力で奪うことも出来る。

 

 しかも都合のいいことに、このクイズ大会が始まるのは告知から10分後。

 ちょっと頭の回るプレイヤーならその間にトレードショップでランキングを聞き、誰が99枚揃えたかを把握するのは簡単である。そして分かったら後は呪文カードで飛べば良い。

 

 実際、原作でもゴン君が99枚を揃えたら他のプレイヤーが飛んで来て、『もしカードを手に入れたら25億で買ってくれ』なんて言っていた。

 

 私としても最終的に譲ってくれるならある程度の便宜を図るのは吝かではない。

 しかしながら、それよりもっと簡単で単純な方法が存在する。

 

 それは――クイズ大会に()()()()()()こと。

 

「おい、なんか飛んできたぜ。」

 

「こっちからも来るでおじゃる。」

 

 99枚を揃えれば他プレイヤーが飛んでくるとは原作知識から予想できていた。

 だから私は手に入れたカードをすぐに指定ポケットには揃えず、街からと()()()()に移動してから揃えたのだ。 

 

 空を見れば四方八方からプレイヤー達が飛んで来ていた。

 しかしながら私は慌てない、飛んできたプレイヤーたちはすでに()()()だから。

 

 さて、ここで呪文による移動について説明しよう。

 手にカードを持ち呪文を唱えると、プレイヤーは光に包まれて飛び上がる。そして指定した街かプレイヤーの付近に着地するわけだが、実はこの時に降りる場所は付近の誰も居ない場所に限定されるのだ。

 

 これはきっと交通事故を起こさないための仕様なのだろう。しかしこれを逆手に取り、周囲のスペースを上手く埋めるか削ることが出来れば、着地する場所を()()することが可能になる。

 

 今飛んできている彼らはきっと私を指定して呪文カードを使ったのだろう。

 しかし残念ながら私がいるのはデメちゃんの背中。

 

 ――()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 おまけに9人も乗っているせいで開いてるスペースは頭の先端しか残ってない。

 

 そんな所に呪文によって飛んできた彼らは着地しようとし――

 

『――ぎょっ!』

 

 ぷいっ! と、デメちゃんが頭を動かしたことで着地地点が無くなり、そのまま海に落ちていった。

 

「はっ? ……うわぁああああああ!!!」

 

 もちろん私が選んだのはただの海ではなく、複数の海流が流れ込んで荒れ狂っている海峡だ。落ちた先には幾つもの大渦が待ち構えており、これならさすがの念能力者も10分以内に陸に上がることは不可能だろう。

 

「よっし、これで頭の回るプレイヤーが減ったね。」

 

 くくく、チャンスなんて与えないよ? お前らはそこで渦っていけッ!!

 

「おいおい、ひでぇな。」

 

「最後まで容赦が無いでおじゃるなぁ……。」

 

 なんかみんながドン引きしてるけどコレぐらい当たり前じゃないかな?

 相手がどこにいるか確認もせず瞬間移動の呪文を使う方が悪いよね。TRPGをやったことのある人なら絶対にやらないと思う。魔法禁止フィールドで赤竜が待ってたら詰むからね。

 

 さてこうなったらあとは普通にクイズを解けばOKだ。問題は100問でその全てが指定ポケットカードに関するもの。私達が自力で取ったのは40種だけど、まぁ多分行けるだろう。

 

 私はそのままバインダーを開き、クイズ大会が始まるのを待った。

 

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

「ようこそグリード・アイランド城へ。」

 

 入り口で出迎えてくれた人に案内され城の中を進む。

 

 あの後、クイズ大会は65点をあげ無事に最高点を取ることが出来た。

 はっきり分かったのは半分の50問だけ。クイズは全て5択だったので、まぁこれでも頑張ったほうだろう。

 

 それから私の元に飛んできた一羽の梟から《支配者の招待》というカードを受け取り、中の地図に書かれていたのがこの城である。

 原作ではクイズ大会後もカードを奪おうと他プレイヤーが飛んできていたが今回は誰も来なかった。きっとそういうプレイヤーはみんな先に海へ落ちてしまったのだろう。

 

「お邪魔しまーす。」

 

 案内された部屋の中にはゴミに埋もれてゲームをしているボサボサ頭の人が居た。ジンと共にこのゲームを作ったゲームマスターの一人だ。名前は確か――

 

「"ドゥーン"さんですよね? それから出迎えてくれたのは"リスト"さん。」

 

 自己紹介される()に二人の名前を呼ぶ。

 リストさんはスーツにサスペンダーを付けた敬語でしゃべる丁寧な男性。

 ドゥーンさんは髪がボサボサでいかにもガサツそうな男性だ。

 

「ああ、やっぱり分かるんですね。」

 

「つーことはジンの予想通り本当に未来予知かよ。瞬間移動も併せて持ってるとかお前ハンパねぇな。」

 

 それだけで二人は私の能力を理解した。

 うん、まぁバレてるよね。瞬間移動も原作知識を利用した行動もゲーム内で散々見せたし。まぁ正確には未来予知とはちょっと違うんだけど、似たようなもんだから説明しなくていいだろう。

 

 それにそれが分かってもそのままプレイさせてくれた事には感謝したい。私がゲームマスターなら私を即効でBANしただろうから。ジンの仲間が度量の大きな人たちで助かった。

 

「と言っても全部が分かる訳じゃありませんけどね。まぁ呪文と指定ポケットのカード、あとレイザー戦を含めた幾つかのイベントの中身を知ってたぐらいです。」

 

「いやそれだけ分かれば十分だろ。特にレイザーなんて初見クリアされたせいでガチ凹みしてるんだぜ。あと下半身も色々やばかったからな。」

 

 おっ、レイザー生きてたんだ。よかった、体の下半分がグチャグチャになってたから心配だったんだよね。……クリアの為とは言え、自分でもちょっと酷いことし過ぎたと思う。反省も後悔もしないけどね!!

 

「レイザーさんにはその……ごめんなさい、とお伝え下さい。それと今度また改めて遊びに行く、とも。」

 

「えっ、また挑むの!?」

 

 私の言葉に二人が驚いた顔をする。

 けど別に周回しても構わんのだろう? これは割と本気だ。だってかなり良い修行になると思うんだよね。原作開始までにタイマンで倒せるようになるのが理想かな。よっぽど頑張らないと無理だろうけどね。

 

「……いや分かった。っと、この辺に、ほらよ。」

 

 そう言いながらドゥーンさんはゴミ山の中から一枚のカードを探して私に投げた。

 最後の指定ポケットカード《No.000 支配者の祝福 SS-01》だ。更にカードが3枚だけ入る特製バインダーももらった。これに入れたカードは現実に持って帰って使えるようになる。

 

「さて、これで晴れてゲームクリアだが、なにか質問はあるか?」

 

「2周目クリア時はまた報酬をもらえますか?」

 

「ダメに決まってんだろ。」

 

「常識で考えて下さい。」

 

 チッ! やっぱりダメか。可能なら限界までアイテムを持ち出したかったんだけどなぁ。

 

「ではクリア後もこのゲームで遊ぶことは可能ですか?」

 

「それなら可能だ。つってもゲーム状況は一旦全リセットされるぞ。」

 

 チチッ!! 出る前に味方にカードを渡しておくのもダメか。それじゃ〈擬態(トランスフォーム)〉〈複製(クローン)〉を使ってクリア者を量産するのも無理だね。

 

「それとお前さんが外に出たらゲームは一旦メンテに入る。期間は……恐らく一ヶ月ぐらいだな。誰かさんのおかげで修正しなきゃいけねぇ箇所が沢山出てきたし。」

 

「貴方が今回使った多くのグレー行為は恐らくほとんど使えなくなるでしょう。」

 

「えー、そんなに褒めても何もでませんよ? あっ、でも報酬増やしてくれるなら歓迎……」

 

「それはない。」

 

 チチチッ!!! ちょっとぐらいオマケしてくれてもいいのに。

 まぁ仕様だろうからしょうがないね。

 

「それでもう質問はねーか? ならエンディングに入るが。」

 

「あっ、じゃあ最後に一つだけお願いします。」

 

 私は最後にどうしても聞きたかった事を聞く。

 原作を読んだときからずっと気になっていたこと。それはゴン君の母親についてだ。

 

「ぶっちゃけ、ゴン君を生んだのってジンさん本人なんですか?」

 

「ブッフゥーーー!!!!」

 

 私の質問にドゥーンさんが勢いよく飲んでたジュースを吹き出した。

 

「……どうしてその考えに?」

 

「だって普通なら用意したアイテムは一度使ってちゃんと動くか確認しますよね? ジンさんならきっと《身重の石》も使ってみたんじゃないかって。」

 

 《身重の石》とは持っていると男女問わず必ず身籠るアイテムだ。つまり男性でも妊娠して出産を経験できちゃうびっくりな石である。

 どうして作ろうと思ったのか理解できないかなりキチガイなアイテムだが、用意した以上は一度使ってみたはずだ。とするとそれで生まれた子として一番確率が高いのはゴン君だと思うんだよね。年齢的にもだいたい合うし。

 

「で、どうなんです?」

 

「……その辺はノーコメントで。知りたければジン本人に直接聞いてくれ。」

 

「ええ、僕たちからはちょっと。コレ以上は何も言えません。」

 

 ん~? ノーコメント、これ以上は言えない……あっ(察し。

 

「ま、まぁ、趣味は人それぞれだよね!!」

 

「そう言ってもらえると助かります。……色々な意味で。」

 

 ゴン君……強く生きろ。例えパパがママだったとしても私は差別したりはしないよ!!

 

 その後は当たり障りのないことを話し、外で待ってもらっていたみんなも城に入れてもらい宴会になった。空に花火が打ち上げられ、運ばれてきた豪華な料理と酒に舌鼓を打つ。

 

 もちろん私とミルキもグビグビ酒を飲む。ゾルディック家の耐毒訓練のおかげかもうアルコールじゃ酔わないんだよね。なんで酒なんてジュースと変わらない。あの拷問訓練で得た数少ない耐性の一つである。

 

「それじゃあ記念にみんなで写真を取ろう。」

 

 そうして宴が終わったら、城の前で9人で写真を取った。

 集めた指定ポケットカードを各員のバインダーに9枚セット(私は10枚)+2枚を手持ちして広げ、100種のカードを全て表示した状態で撮影だ。これはきっと一生忘れられない思い出になるだろう。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

 城でのエンディングが終わると港に向かうように指示された。

 そこから外に出れば晴れてこのゲームはおしまいである。

 

「さて問題はクリア報酬の3枚だけど。」

 

「シズク姉ちゃん、俺《スケルトンメガネ》が欲しい!!」

 

 ミルキはなんで自分も貰えると思ってるのかな? お前、私のゲーム勝手に使って入ってきた上に、基本的にフリーポケット係であんまり役に立ってないのよ?

 

「その眼鏡は機械で代替出来るから却下。」

 

「えええぇー。」

 

 壁の向こうを見るだけならサーモグラフィーとか色々あるからね。つーか許可しても絶対に碌な事に使わないだろうし。

 

「どうしても欲しいならいっそそういう【発】を作りなさい。千里眼系は放出系の領分だから、隣の操作系であるミルキなら多分出来るよ。」

 

「ほんとぉ?」

 

 原作でも強化系のパームが似たような能力作ってたし多分行けるだろう。問題は作って役に立つか? と言われると微妙なとこだが。まっ、ココを出たらもう私に責任は無くなるからね。適当なこと言っても平気平気。

 

「ていうかもう3枚は決めてるから。」

 

 私が持ち出すのは

 《No.000 支配者の祝福 SS-01》

 《No.017 大天使の息吹 SS-03》

 《No.065 魔女の若返り薬 S-10》

 

 の3枚である。

 大天使と若返り薬はよくある長寿セット。

 そして支配者の祝福は金策だ。

 

「最初は《金粉少女》と《聖騎士の首飾り》のコンボを考えたんだけどねー。」

 

「えっ、なんでクリア報酬までコンボするの?」

 

 だってこのゲームでは、その辺に転がっている石や木もカードにすることが出来るから。

 

「例えば《金粉少女》は入浴で一日500グラムの金粉が取れるでしょ。これを()()()()用意して()()()()放置したらどれぐらいの金が取れる?」

 

「えーと、200体ってことは一日で100キロでしょ。なら十年で……()()()トン?」

 

「正解。」

 

 そう、これを一塊の金塊に加工し一枚のカードにして持ち出す、というのが最初に考えていた案だ。

 

 「〈擬態(トランスフォーム)〉で偽装すれば、指定ポケットのカードでなくても持ち出せるんだよ。」

 

 この方法については原作でもやってたことだ。偽装の解除に《聖騎士の首飾り》がいるから二枚分の枠が必要になるが、それでもやる価値はあると思っていた。

 

「なんせ金の相場は今1グラムで5000ジェニー。

 だとすると365トンはなんと――()()()()()()()になるからね。」

 

「な、なんだってー!!?」

 

 思いついて計算してみた時はびっくりしたよ。気づいたらヨダレが垂れててやばかった。

 持ち出した金は売って良し、使ってよし、賄賂にして良し。なんなら担保にして融資を引き出しても良い。

 

 そして何よりこれだけの量があれば何時でも金相場を破壊できる。

 金関連の会社の株を空売りしてから流せば、更に大儲けできるはずだ。まぁ代わりに国の経済もボロボロになりそうだけど、その辺は政治家さんの仕事だから知ったことじゃないね!

 

「でもまぁこの方法はすぐに諦めたんだ。」

 

 一応、ゲームに入る前は第一候補だったんだけどね。

 でも問題が多すぎた。まずクリアを10年も先延ばしにするのは現実的じゃない。それにアイテムはゲインしたプレイヤーが中に居ないと停止するから、やろうとすると10年間ずっと中で生活することになってしまう。

 

 それよりはとっととクリアして別の方法で稼いだほうが良いという判断だ。

 

「そこで持っていくのは《No.000 支配者の祝福 SS-01》にしたの。」

 

 これはゲインすると城と城下町とそこに住む住人が貰えるカードだ。

 しかしぶっちゃけ城と街はどうでもいい。せいぜい数十億の価値しか無いから。

 

 重要なのは()()()で付いてくる()()()の住民の方である。

 なんせこの一万人は念によって具現化された人形。しかも私の作った法に従う、つまり絶対服従で絶対に裏切らない一万人だ。これがどれだけ破格の報酬かはちょっと想像すれば分かるだろう。

 

 例えば地下に隠し部屋を作って兵器を搬入、メンテナンスを任せれば私だけの武器庫ができちゃうし、仕事を与えれば莫大な富を生み出す事が出来る。

 仮に年収100万円の単純なアルバイトをさせたとしても、これだけの人数がいれば年()()()()の収入になる。もっと上手く使えれば更に収入は増えるだろう。

 

 そしてこのゲーム内と同じ仕様なら念人形達は食事も休憩もいらないから、無休で24時間働かせることが出来る。つまり経費はかからず、それでいて稼ぎは全て()()()()()という事だ。……夢が広がるってLVじゃねーぞ!!!

 

「ウヒヒヒヒ、沢山沢山働かせて上げるからねぇ(欲に染まった瞳」

 

「これは酷いでおじゃ。」

 

「ブラック企業ってLVじゃねーぞ。」

 

「ボクの扱いって、まだマシな方だったんだな……。」

 

 軽く周囲を見渡せばまたみんながドン引きしていた。今日ちょっと引きすぎじゃね?

 っていうか流石に人間には給料払うよ。人間にはね。でも幼女を襲う犯罪者はタダでこき使ってOK。

 

「という訳なんで、良ければこれをゲインするための拠点を探すのを手伝ってもらっていいですか? 私としてはジャポンの島を買い取ろうと思ってるんですけど。あっ、資金はちゃんと宛があるので。」

 

「そういう事なら任せるでおじゃ。」

 

「ジャポンを拠点にするなら俺サマも手伝うぜ。」

 

 よし、これで拠点にする島については見つかりそうかな。マロさんは顔が広そうだし何とかしてくれるだろう。バショウには期待してないけど。

 やはり元日本人としては拠点はジャポンにしたいと思うのだ。スシとか焼き鳥とか食べたいからね! ビールにお菓子に漫画にゲームもある!! 夜はフグチリとジャポン酒で乾杯だ!!!

 

「それからツェズゲラさんにも教えてほしいことが有りまして。」

 

「ほう、なんだね? 今更私が教えられることはそんなに無いと思うが。」

 

()税と資金()()についてです。師匠ならどっちもやってますよね?」

 

「……()税と資金()()だ。間違えるな。いいか、絶対に間違えるなよ?」

 

「はーい!」

 

 私からすればどっちも似たようなもんだけどね!! まっ、物は言いようだ。

 ツェズゲラさんならきっとこの手の事はやっていると思っていた。

 

 もしかしたら会社が必要になるかもしれないが、その時には顧問になってもらおう。やはり法律について相談出来る人は重要である。必要な経費をケチって大損したら意味ないから気をつけないとね。

 

「じゃあそろそろ出ましょうか。私はデメちゃんで()()()()()()ので皆さんは先に出ていて下さい。」

 

 これから他のプレイヤーたちの最後の行動としては、港の前で待ち構えることが予想される。

 

 しかし私は事前に所長を倒し、出る為の通行チケットはすでに入手済みだ。

 つまり後はココからログアウト用の部屋に()()ゲートで飛べばいいだけ。待ち構えている人たちは残念だろうが、これならもう他のプレイヤーに会うことはないだろう。

 

 私は全員にゲインした《挫折の弓》の矢を配り、みんながログオフしたのを見届けてから港へ向かった。

 

「ゲームクリアおめでとうございます。ではバインダーの指定ポケットからカードを3枚選んで下さい。」

 

「記念にエレナさんとイータさんの同人誌を作って売ってもいいですか?」

 

「駄目。やったら殺すわよ。……最後ぐらい大人しく出来ないの?」

 

「そういうのはちょっと、たぶん無理かなって。」

 

 私はエレナさんの案内に従いカードを3枚選んでログアウトする。最後の会話としては締まらないが、まぁ私だししょうがないだろう。自重? やつならレイザーのお尻に刺さってるよ!

 

「では私はこれで。イータさん、有難うございました。」

 

「ええ、外でも元気でね。」

 

 こうして11ヶ月に及ぶ私のグリードアイランド攻略は一旦幕を閉じた。

 ミルキの乱入を始めとしたイレギュラーも多かったが、おおよそ望んだ形でクリア出来たと言えよう。なんというか……感無量である。

 

「銀お姉さんただいま~。」

 

「おかえり。無事にクリア出来たみたいね。」

 

 現実に戻った私はゲーム機の側で待っていた銀お姉さんの胸に飛び込む。

 

 念能力、ハンターライセンス、そしてグリードアイランド。

 この世界に転生してから定めた目標は全て手に入った。でもここで終わりじゃない。

 なんせこれから拠点の作成、集めたグリードアイランドの売却と、まだまだやることは沢山あるのだから。

 

 

 ――私の物語は、まだまだこれからも続いていく!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで私の彼氏(シンジ)が女になってるんだけど? どういうこと??」

 

 あ っ 、 わ す れ て た !!!!




という訳でこれでGI編は終わりになります。
気づけば予定より随分と長くなってしまいました。

読んで頂き有難うございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。