シズク=ムラサキは愉悦したい   作:さろんぱす。

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あらすじとタグを修正。
各話タイトルに話数を追加。
GIクリア時の主人公の設定を33.5話として記載。

新章になります。よろしくお願いします。


ジュニアスクール編
第34話 初めてのパパ活


「お客さん、どちらまで?」

 

「ハンター協会本部ビルまでお願いします。」

 

 駅前でタクシー乗り場の列に並び、やってきた車に乗り込む。

 てんとう虫のようなマークを付けた会社の車だ。車種に高級車を使っている所を見るとかなり儲かっているらしい。

 

 今はゲームから戻ってきてちょうど一週間後。私は"スワルダニシティ"という街を訪れていた。

 

 ここはハンターハンターの選挙編でメインとなった場所であり、なんと言ってもハンター協会の本部がある。ある意味、私達ハンターにとっては世界で一番重要な街だ。

 

「うーん、来たのは初めてだけど、やっぱ賑わってるなぁ。」

 

「おっ、そうなんですかい? ここはいい街ですぜ。」

 

 タクシーの運転手さんと話しつつ、買っておいた地図を広げながら窓から外を伺う。

 片側8車線もある道路には多くの車が走っていて、歩道にも沢山の人影があった。

 

「何時もこんな感じなの?」

 

「大体はそうですぜ、なんせ協会の本部がありやすから。おかげで他の街と比べて大きな犯罪が少ない、てか滅多にありませんや。」

 

 ああ、それはそうだろう。そりゃハンターが何十人も待機してる所で馬鹿なんてやらないよね。犯罪者だってどうせなら難易度が低くて成功しやすいほうがいいだろうし。

 

「ふーん、平和なのは良いことだね。車出せなきゃ稼げないし。」

 

「ハハハ、ちげぇねぇ。」

 

 適当に返事をしつつ今度は広げた地図に目を向ける。

 

 この街はハンターとそのお客が集う、まさにハンターの為の街だ。

 そのせいか特に移動関係がコレでもかとばかりに充実している。巨大な滑走路を備えた空港に、張り巡らされた交通網、驚くことに人工の河川まで引かれているのだ。恐らくはアチコチへ移動するハンターの為だろう。

 

「そういえば(地球でも)有名な漫画家の上京を阻止するために、自治体が専用の道路を作ったなんて都市伝説があったっけ……。」

 

 しかしソレをガチでやっちゃうのがこの世界のハンターという人種である。

 地図には飛行船を緊急着陸させる為としか思えない空白スペースがアチコチに有ったり、協会のすぐ側に巨大な病院が有ったりと、まるでリアルシムシティやっちゃいました! と言わんばかりの有様だった。

 

(まぁ市長も協会の意向は無視出来ないよね。)

 

 ココまでガッツリ根幹に食い込んでると他に移られたらそれだけで街が廃れちゃうだろう。

 市長とか協会の言いなりになってそうだね。たぶん優遇して引き抜きを阻止してるんだろうな。だって協会は()()()()だから国に縛られない、つまりやろうと思えば何処にでも移れるだろうし。

 

「お客さん、もう着きますぜ。」

 

「まだ10分経ってないんですけど。」

 

 そんな事を考えていたらいつの間にか目的地の近くまで来ていた。

 外に視線を向ければ、その先にはX字を二つ並べ中央を赤く塗ったロゴを掲げる巨大なビルが見えてきた。

 

「空港から道路一本かぁ……。」

 

「迷う心配がなくてウチラとしては有り難いですがね。」

 

 一度も()()()()()()()()()事に驚きを隠せない。きっと鳥山先生もびっくりだ。

 私は急いで降りる準備を始める。着く前にも関わらず協会の権力をひしひしと感じながら。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

 本部ビルに入るとまず受付に向かった。

 内部は訪れた人たちで中々に混雑していて、途中で何人ものハンターとすれ違う。だが私を子供だと侮る人は居なかった。

 

 ハンターは全員が念の使い手、その上で各々が何らかのプロフェッショナルだ。

 歩く際の動作、重心の置き方、視線を向ける先……そして纏っているオーラから、私がただの子供では無いことを悟ってくれる。

 

 そう言えば原作でも、主人公たちを子供だからって馬鹿にするプロハンターは居なかったね。あくまで私が覚えてる範囲でだけど。

 

「お待たせ致しました。それでは部屋にご案内致します。」

 

 受付のお姉さんの案内に従って内部を歩きながら、キョロキョロと通路を見渡す。

 さすが本拠地だけあって内装は見事。その金のかかり方は恐らくその辺の銀行を上回っているだろう。

 

 床は一面がピカピカの大理石、壁も白亜の石材が使われ、良くわからない彫刻や絵が至るところに飾られていた。

 ただしそれらは恐らく芸術関係のハンターが作ったのだろう。込められているオーラにより、普通の人は畏怖のようなものを感じてしまうのではなかろうか?

 

 どこぞの地下大墳墓ではないが、これを見れば大抵は協会の力を理解()()()()()しまうだろう。

 あとは念による防御や防犯用の仕組みとかもありそう。落とし穴とか隠し部屋とか。考えたら少しワクワクしてきた。頼んだらちょっとだけ冒険させてくれないかな?

 

「こちらになります。」

 

 そうして案内された部屋、そこは驚くことに()()()だった。

 どうやらネテロ会長が直々に話を聞いてくれるらしい。暇なのかな? それとも面白そうな匂いを嗅ぎつけたのか。まぁ私としては願ったりだけどね!!

 

「会長ぉおおおおお!!!!!!!」

 

 私はノックして部屋に入ると即座にデメちゃんを具現化。

 

「おお、久しぶりじゃのぉ……っておい。」

 

 そしてそのまま会長に向かって()()()()()()

 サイズは部屋の備品を壊さないギリギリまで巨大化、更にそれを私も後ろから筋肉で押しながら突撃する。

 

 全長3メートル超えの巨大金魚+16トンの扉を開けられる私の全力プッシュだ。普通ならその衝撃によってふっ飛ばされ、壁に叩きつけられてペシャンコになるだろう。

 

 しかし――

 

「うわっ、全然動かない!! 会長ぱないッ!!」

 

「……挨拶にしてはちと過激すぎじゃないかのぉ。」

 

 それでも会長はビクともしなかった。

 ()()でデメちゃんを受け、まるで巨大な山のごとくその場から一ミリも動かずに静止している。私は更に力を込めるが、しかしどれだけ押し込もうとしても微塵も揺るがない。うーん、ちょっとぐらい動かせると思ったんだけど残念。

 

「見た目は完全におじいちゃんなのにすごすぎない?」

 

「ちょ、ちょっとシズクさん何やってるんですか!?」

 

 私の凶行に会長秘書のビーンズさんが慌てる。

 あっ、居たんだ。でもこんなの会長にとっては何てことないだろう。この人は伊達に世界最強の念能力者なんて呼ばれていない。というかこの程度で慌てるようでは、きっとハンター達の長など務まらないのだ。

 

「今の私の実力を見て貰いたかった……。あっ、もしくは単に子供がじゃれ付いたってことで。」

 

「……はぁ~、お主は相変わらずのようじゃのぉ。」

 

「いいんですか会長?」

 

「まっ、確かにこの程度は子供の悪戯みたいなもんじゃ。」

 

「てへ☆ぺろ。」

 

 この安心感よ。私が言うのもなんだけど、こうして力をぶつけられる相手って貴重だよね。

 私は前世を覚えてるから精神は完全に大人だけど、それでも()()()()()は10歳だからね。使えるものは何でも使わなきゃ。

 

 という訳で久しぶりの挨拶も終わったのでデメちゃんを小さくする。大体50センチぐらいだ。今度はそれを()()()()に宙に浮かべる。

 

「ほほう、それほどの数を一度に具現化できるようになりおったか。」

 

「フフフ、これだけじゃありませんよ? なんと()()、念空間経由で瞬間移動が出来るようになったんです!!」

 

「……まじで?」

 

 おっ、流石にこれはちょっと驚いてくれた。こっそり抜け出す算段でも考えたのかな? 後で会長室にも【接続ポイント】を作っていいか聞いてみよう。

 

「マジですマジです。何ならどこか行ってみますか? 天空闘技場でもククルーマウンテンでもマーキング済みのところならどこでも飛べますよ。」

 

「ソレが本当なら便利そうじゃな。しかしなぜそれをワシにバラす?」

 

「話しておけば美味しい仕事を回してもらえるかなって。」

 

 こっそり何処かに行きたい時、あるいは要人や危険物の輸送等、瞬間移動は幾らでも使い道がある。だからこうして話しているのだ。

 それに会長なら言いふらしたりしないだろうし、何よりも操作系に操られるなんて無いだろうからね。ビーンズさんはオマケ。

 

「あとこうして話せば代わりに【百式観音】を見せてくれるかなって。……山に籠もって毎日一万回、感謝の正拳突きをしたんですよね?」

 

「うーむ、そこまでバレてるおるなら一度ぐらい見せてやってもよいが……どうやって知ったのかも話してもらうぞ? まぁその前にグリードアイランドの件が先じゃな。」

 

 よっし、言質を取った! コレでついに【百式観音】が見れるぞ!!

 

「では詳しい話の聞き取りを始めます。あと向こうにある書類に記入もお願いしますね。」

 

「書類?」

 

 ビーンズさんに促されて隅のテーブルに目を向ける。

 そこには私の為に用意されたであろう大量の書類が待っていた。

 

 あれ、認定って報告して終わりじゃないの? なんか大学の卒論みたいな数のレポート用紙が積まれているんですけど?

 

「あの、毎回こんなに書類書くんですか?」

 

「いや普段はここまではせん。どんなハントであれ目に見える形で成果が残るからの。じゃが……」

 

「今回はゲームのハントということで、クリア確認に時間が掛かりますので。」

 

 あー、そういうことか。しかし言われてみればその通りだ。

 

 クリアしたと言っても私が提出出来る物なんてROMカードぐらいしかない。

 しかしROMカードの中のデータなんて幾らでも複製できるから証拠にはならない。

 クリア報酬の3枚のカード? あれは他人に見せる気はないし、見せてもそれが本当にそうか分からない。それお前の念能力じゃね? って言われたらどうしようもないよね。

 

「これが普通に運営されているゲームであれば電話で済むのですが。」

 

 グリードアイランドは中に入らないと運営と連絡は取れないね。

 しかも入っても必ず会えるとは限らないし、更にゲームから戻ってくるにはある程度の戦闘力が必要だ。……うん、めっちゃ面倒だわ。

 

「そういう訳じゃ。では分かった所でちゃっちゃと済ますとするかの。」

 

「しょうがないにゃぁ。」

 

 私は会長達にゲームの話をしつつ用紙にペンを走らせる。

 最低でもスタート地点から港までの地理と脱出方法、そしてクリア時に訪れたゲームマスターがいるお城辺りは書かなければならないだろう。

 まぁカードの詳細やイベント、クリア報酬については秘密にするけどね。まっ、クリアを確認して戻ってこれそうなら問題ないはずだ。

 

「ところで"プーリン"というプレイヤー名はどういう意味なんじゃ?」

 

 えっ、そこも説明するの? ……これちょっと恥ずかしいかも。

 

 

 

 

 

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 聞き取りが終わったので協会ビル地下の訓練場で会長と向かい合う。

 普段なら誰かしら訓練している人がいるらしいが、今は会長権限で私達の貸し切りだ。

 

「地下とはいえビルの中で大丈夫なんですか?」

 

 建物の中で念能力を使うって危ないのでは? 人によってはやばい能力作ってたりするだろうし。ウヴォーギン連れてきて【超破壊拳】を撃たせたらビル崩壊しそう。

 

「それなら安心せい、ココは特別頑丈に作られておる。それこそミサイルをダース単位で撃たれでもせん限りビルに影響はないわい。」

 

 ふむふむ、誰かが念で強化しているのだろうか。それとも壁紙の裏にびっしり神字が書かれているのかな? ……想像したら呪いの部屋みたいだね。落ち着かないからこれから作る予定の拠点で真似るのは止めておこう。

 

「しかし人型サイズのキメラアントとは、どうにも穏やかじゃないのぉ。」

 

「そうなんですよ、もう嫌になっちゃいますよね~。」

 

 ちなみに情報の入手方法に付いては予知能力ということにした。

 私は特質系ですよー、自分が未来で体験する事を夢で見ますよー、だから全部が分かる訳じゃありませんよー、という良くあるお決まりのパターンである。

 

 ただし全てを正直に話した訳ではない。

 会長が蟻の王と戦い薔薇で自爆したまではそのまま、だがその後に王が復活し()()()()()()()、という風に結末は変えさせてもらった。

 

 戦いたがりの会長も流石に人類が滅亡するとなれば、王が生まれる前の()()()()に賛成してくれるだろう。チート蟻の女王には上陸してすぐに死んでもらう。この大陸にお前の席ねーから!

 

「それじゃあ早速お願いします。」

 

「会長、殺さないように気をつけてくださいね。」

 

「言われんでも分かっておるわい。」

 

 さてそういう訳でこれから念願の【百式観音】を経験する訳だが、もちろん黙って殴られるつもりはない。

 

 そもそも【百式観音】とはハンター世界最強の念能力である。

 推定5メートル超えの巨大な観音様を具現化(変化?)し、相手を手でぶっ叩く。言葉にすればシンプルだが、しかしその速度と威力がとにかくハンパない。

 

 ポケモンで例えれば威力250で優先度+10の格闘技ってところだろう。

 もちろんゴーストタイプにも当たるし攻撃回数は1~99回。もうココまで来ると諦めるしか無い完全なぶっ壊れ技だよね。

 思考停止して適当にポチポチ繰り出すだけで大抵の相手は完封できてしまう、そんな恐ろしい能力である。

 

 そしてそんな技を私は自分から望んで受けようとしている。

 もちろん自殺したいわけではなく、これには複数の事情がある。

 

 まぁ一番大きい理由は原作ファンとしての興味だけどね。

 アイドルとの握手券目当てに身銭を切ってCDを買い漁るファンのように、私もたとえ怪我をする事になろうと、どうしても体験してみたかった。……握手するにはちょっと相手の手が大きすぎるけど。

 

 そしてもう一つは自身の成長の為。

 私の念能力はぶっちゃけ行き詰まってる。固有の【発】として【金魚王の遺産(ゲート・オブ・デメキング)】【深淵を覗く者(アクセル・マインド)】を持っているが、この先の成長プランが浮かばないのだ。今のままではデメちゃんが多少大きくなるぐらいしか変わらないだろう。

 

 キルアが【電光石火】【疾風迅雷】を、ゴン君が【あいこ】によるジャジャン拳の連発を思いついたように、私の力ももっとすごい応用方法がありそうな()()はある。しかし幾ら考えても思いつかなかった。

 

 なのでもう荒療治だ。

 念能力は超常の能力であるが、そこには大抵しっかり理屈と仕組みが存在する。なので【百式観音】を少しでも理解できれば、自身を成長させる何かを掴めるのではないかと思ったのだ。

 百聞は一見にしかずという言葉があるように、グダグダ考えるより一度体験してみた方が良い場合も多い。

 

「ではこっちも準備しますね。」

 

 もちろんバカ正直にそのまま受けたりはしない。

 仮に受けたら間違いなく一発でグチャグチャになるからね。蟻の王以外で生身で耐えられるのはゴンさんぐらいだろう。

 

 そんな訳ですぐに3メートルのデメちゃんを具現化し、ゲートから特注の盾を取り出す。

 

「ふむ、物も出し入れできるのか……本当に便利そうじゃの。」

 

「ふふふ、でっしょー。でも貸しませんよ?」

 

 コレはこの時のために用意した高さ2メートル、厚さ100ミリの鋼板。……早い話が戦車の装甲板だ。

 

 流石の【百式観音】と言えども、これならきっと耐えることが出来るだろう。対策としてガチガチに防御を固めるのが有効なのは原作で蟻の王が証明してくれたからね。

 

「っしゃー、ばっちこーい!!」

 

 私はその特製の盾を前に構え、デメちゃんの体をUの字に曲げ周囲をガードさせた。

 恐らく来るであろう壱の手――上からの手刀、に対してこの二つをつっかえ棒にすることで身を守る算段である。

 

「本当に撃っていいんじゃな? ……ではいくぞい。」

 

 そしてついにドキドキ【百式観音】体験が始まった。

 目の前で会長が両の手のひらを合わせようとする。発動条件である感謝である。

 

 私はどんな小さなことでも見逃すまいと【深淵を覗く者(アクセル・マインド)】LV2を発動して思考速度を上げていたが、もうこの時点で時間の感覚がおかしかった。

 

 ――()()()()()()()()()

 

 会長の動作ははっきり見えるのに、自分の体は全く動かない。

 

 強いて言うならジョジョ3部でディオと戦ってた承太郎みたいな感じだ。

 時間を止められて動けないけど、何故か相手を認識して動きを追うことだけは出来る、そんな状態である。うん、ちょっと何が起こってるのかマジで分からない。

 

 そしてついに会長の両手が合わされる。

 その瞬間、後ろに出現する巨大な像。百本の手を持ち血涙を流す黄金の観音様だ。超かっけぇええええ!!!!

 しかし一体何時現れたのか分からなかった。気づいたら居たって感じだ。今度はディアボロのキングクリムゾンかな?

 

 そのまま会長の手の動きに合わせて振り下ろされた観音様の手刀――チョップによってデメちゃんが一瞬で破裂し、前に構えた金属盾がグニョンと飴のように凹む。

 

 ――ふぁっ!?

 

 さらに百式観音の手刀は私めがけて降り注ぐ。まるで魚を捌く板前さんの包丁のように勢いを衰えさせないまま。ちょっと想定より威力が大分強いんですけどォ!!?

 

 ――あっ、これ無理だわ。

 

 私は脳裏に死を連想し、衝撃と共に意識を失った。

 

 

 

 

 

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 ――ハンター協会本部を訪れてから二週間後。

 

「失礼します。本日面会予定のシズク=ムラサキです。バッテラさんはいらっしゃいますか?」

 

「シズク様ですね、お待ちしておりました。ご連絡いたしますので少々お待ち下さい。」

 

 無事にグリード・アイランドのクリアが認定され、協会の電脳ページで告知されたので早速バッテラさんに連絡を取ってみた。

 

 ゲームを売りたい旨を伝えるとすぐに折り返し連絡がきた。

 普通なら詐欺を疑うだろうけど、私はちゃんと天空闘技場の最上階から()()()()で掛けたからね。

 ここに住めるのはバトルオリンピアの優勝者だけ、つまりココから掛けられるのは私だけという事だ。そしてそれは調べればすぐに分かる。

 

 それからすぐに会うことが決まり、こうして私はバッテラさんが指定したホテルの部屋を訪れたという訳だ。

 ホテルで年上のおじさんにお強請り(弱みにつけ込む)してお金を巻き上げる(億単位)って、すごく派手なパパ活だね。だが私はやりきってみせるぞ!!

 

「やぁ待たせてしまったかな? よく来てくれた。」

 

「お会いできて光栄です。ご存知だと思いますがプロハンターで天空闘技場のチャンピオンでグリードアイランド唯一のクリア者のシズク=ムラサキです。今日はよろしくお願いします。」

 

 もちろんアピールは欠かさない。こうして並べると私の経歴って結構すごいな。小さい頃(0歳)から頑張ったかいがあった。

 

 通された部屋で挨拶し、勧められたソファーに座る。

 上等な毛で作られた高級なソファーだ。フワフワしてるし肌触りも最高。商談が成功したら帰りに買っていこう。

 

 正面の椅子にはバッテラさん本人が座り、その隣に秘書、そして後ろには護衛の人たちがずらずらと並んでいた。念能力者も3人いる。パパ活会場にしては物々しすぎない?

 

「ところで何やらボロボロだが大丈夫かね? やはりグリードアイランドはそれほど厳しいゲームなのかな?」

 

「あっ、この怪我はゲームと無関係なのでお構いなく。ちょっとネテロ会長に(自分から望んで)やられただけなので。ハハハ、(ガードを固めて)棒立ちしてたら、(一瞬で)何も出来ずにボコボコにされちゃいましたよ。」

 

「そ、そうか。(無抵抗の幼女を殴るだと!? ネテロ会長と言えば高潔な武人と聞いていたが……噂は当てにならんな。)」

 

 おっと、コッチの身を心配する振りをしていきなり探りを入れてきたか。とりあえず全部会長のせいにしたろ。全く、こんなカワイイ幼女をボロボロにしやがって。

 

 バッテラさんに指摘された通り、現在の私は結構な怪我を負ってる。

 右手が2箇所も折れてるし、肋骨も3箇所骨折していて、亀裂が7箇所入っている。その他にも色々ある。デメちゃんと盾一枚で【百式観音】に挑んだ結果がこのザマである。

 

 とは言えアレに殴られて頭がぱっくり割れなかっただけマシだろう。特製の盾とデメちゃんが無かったら体が爆散してたかもしれない。それほどの衝撃だった。

 

「それでグリードアイランドを売ってくれるという事だったが。」

 

「はい、一本250億でどうですか?」

 

 もちろん額は吹っかける。

 現在バッテラさんは電脳ネットで1本170億、クリアデータ入りのROMカードを500億で募集している。ということは原作と同じく恋人さんは寝たきりで、それを直す為のアイテムをグリードアイランドに求めているという事だ。

 

 ならば売買の主導権は私にある。

 彼は恋人の為に全てを賭けていて、情報封鎖の為にもゲームは全て買い占めるつもりだからだ。

 つまり前提としてバッテラさんには()()()()という選択肢がないのだ。これはジャンケンでパーを使わずに勝負するようなもの。

 

 だが忘れてはいけない、相手は経済界を牽引する歴戦の雄。恐らく一挙一動を理由にあの手この手で値切ってくるはず、気合を入れてぼったくらなければ。

 

 ……やってみろよ、私! (原作知識で)何とでもなるはずだ!!

 

「少し高くないかね? 私がネット上で募集している額は知っていると思うが。」

 

「実は購入したいという方が他に何人かいまして。協会からも購入したいと言われております。」

 

「ほう。」

 

 私のブラフにバッテラさんの眼が鋭くなる。本当かどうか慎重に私を図っているのだろう。まっ、そんなの居ないけどね!!

 

「それとその方たちはゲーム内の情報も欲しいようでして。セットでこの値段となっております。ただ私としては商売敵のハンターよりは他の人に譲りたいと思っておりまして。今回はまずバッテラさんに声をかけさせて頂きました。」

 

「……確かに協会公認クリア者の情報となれば信憑性は高い。先に聞いておきたいのだがそのゲーム内情報とはどの程度かね? よければ差し支えない範囲で教えてほしいのだが。」

 

「えーと、まずクリアに必要なカード100種と呪文カード40種の詳細ですね。それからランクSSカード5枚の取得イベント。あとは全ての街の場所が記載されている地図もお付けします。そして最後がゲームからの脱出方法とクリア報酬です。まぁちょっとした攻略本程度の情報ですね。」

 

「マップ・データ・イベント……まさにゲームの攻略本だな。だが私が1本170億で募集していることは知っているだろう? 流石に情報だけで80億は高すぎないかね?」

 

 高すぎると思いまーす!! まぁ+80億は無いよね。どう考えてもボッタクリすぎだわ。しかもこれ半分は本で読んだ情報だし。元は数千円(コミック数冊)ぐらい?

 

「では幾らぐらいで?」

 

 でもここであっさり値下げするシズクちゃんじゃない。

 私をただの子供だと思うなよ? これでも前世では言葉が通じない外人相手に交渉(物理)してたんだ。もっとギリギリまで粘ってみせる(キリッ

 

「……200億でどうだろう?」

 

「売ります。」

 

 はい売った―!!! ()()()()()()とか神か。

 えっ、ぎりぎりまで粘る? ハハハ、会社経営してるガチの億万長者(資産数千億)相手になんちゃって交渉術なんて役に立つ訳ないんだなこれが。それにコレはまだただのジャブ、()()()()()()()()この辺が落としどころだろう。

 

「ではこれが契約書だ。金はゲームが本物だと分かり次第振り込もう。」

 

「オッケーです。」

 

 私は差し出された書類を読んでサインする。

 続けてバッテラさんの後ろにスタンバってた念能力者がゲームを実行し、体が消えると本物だと判断されてお金が振り込まれた。よし、これで最低200億は確保出来た。

 

「では早速グリードアイランド内の事を教えて欲しい。このゲームは生きて戻ってきた者がほとんど居ないせいで情報が少なくてね。内部のプレイヤーたちはどんな感じかね?」

 

「そうですね覚えてる範囲だと……はっちゃけてる人が多かったです。」

 

 いきなり呪文撃ってくるぐらいなら可愛い方だったな。参加したのはオープンすぐだったとは言え、余りにも変態が多かった気がする。

 

「ふむ、多少ハメを外してしまったという事かな?」

 

「いえ例えば下半身丸出しで歩いてる人だとか、

 脇を舐めようとして女性を追いかけてる人だとか、

 匂いをかぐためにショタを探している人だとかが居ました。」

 

「そ、そうか……」

 

 ちなみにあの変態3人組はとっくにゲームから脱出してる。

 プレイヤーが残ってると売りづらいので強制的に出てもらったのだ。きっと今頃は現実でこっそり変態行為を続けているだろう。

 

「あとはギャグボール付けて転がってた人とか、

 アイテムで性転換して女になったチンピラとか、

 酒場で絶頂しすぎて赤玉出して気絶した海賊とか、

 スポーツの試合中に顔射されて切れた船長とかもいました。」

 

「……どうやら予想以上に厳しいゲームのようだな。」

 

 私の言葉を聞いたバッテラさんの顔付きが微妙に変化した。

 恐らく彼の中でグリードアイランドはデスゲーム(ガチ)からデスゲーム(同人エロゲ)に変化してしまったのだ。本当にクリアで恋人が助かるのか不安になったのかな。

 

 しかしこうして思い出すと碌なのが居ねぇな。

 山奥に引きこもって自分のクマと戯れてたサクサクさんはまだまともな方だったんやなって。

 

「ランクSSのカードは取るのが難しいのかね?」

 

「そうですね、森の中で5メートル以上の巨大クマが襲ってきたりします。」

 

「参考までに聞きたいのだがどうやって倒したのだね?」

 

「ナパームで森ごと焼き払いました。」

 

「えっ」

 

 あれは普通に戦ったら厳しかったな。2週目は炎無しで戦ってみたけど、あの念獣のクマ野郎、なんか自動修復機能が付いてて銃撃じゃ大したダメージにならなかったし。

 サクサクさんも2週目からは酸素ボンベ背負ってやがった。山の中でお互いにダイビング装備で戦うとかシュールすぎた。

 

「あと海賊を追い払う時は根城の空調に催涙ガスを仕込んだりしました。」

 

「そんな事して大丈夫なのかね?」

 

「平気ですよ、だってゲームですから。NPCは街に入り直したら復活してますし、燃やした森も次に見たときには戻ってました。」

 

 まぁもうこの方法は対策されてるだろうけどね。きっと海賊さんたちは必死に灯台の設備を見直してることだろう。

 

「でもグレーな方法は禁止にするって言ってたのでもう使えませんけどね。」

 

「それは誰が?」

 

「ゲームマスターです。あっ、写真あるけど見ますか? クリア時に呼ばれた城で撮ったんですけど。」

 

「拝見しよう。」

 

 ……こんな感じで私はバッテラさんにゲームの事を話した。

 あとは取っておいた写真から起こした攻略本を渡して売買は完了である。

 

「では今のお話とその他のデータについてはコチラに纏めてありますので。何か有りましたらご連絡を下さい。」

 

「有意義な取引だった。感謝する。」

 

 私とバッテラさんは握手を交わす。ここまではまずまずだ。

 

「それでキミはこれからどうするつもりかね? 良ければ私の方から頼みたい仕事があるのだが……。」

 

「ごめんなさい、この後は埋まっておりまして。……まずは()()()とのグリードアイランドの売買交渉の予定がありますので。」

 

「……どういうことだ?」

 

 おっと、()と聞いてバッテラさんの顔色が変わったぞ。

 

「あれっ、言ってませんでしたっけ? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私が持ってるグリードアイランド、全部で()()本ですよ?」

 

「…………はっ?」

 

 驚いて固まったバッテラさんに向けて、私はニッコリと笑う。さぁ、ココからが本番だ!!!

 

 

 

 

 

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 っしゃー!! 自分用に3本残して全部売れたぁ!!! もちろん一本200億だ。

 

「有難うございました―!」

 

 私はバッテラさんにお礼を言いつつ部屋から出る。

 

 所持数をバラした時のバッテラさんは苦虫を噛み潰したような顔をしていたけど、まぁ買うしか無いよね。だって買わなかったらせっかく手を回して止めてる情報が流出しちゃうからね~!! くーっくっくっく!! 全部お買い上げで4000億ッ!!!!

 

 あぁ~、ニヤニヤが止まらないんじゃぁ~~~。

 

 なんか不意打ちみたいになっちゃったけど、手札を隠しておくなんて当たり前のことだからね。向こうは情報収集に自信があったんだろうけど、流石にゲームを経由した取引(強制)は掴めていなかったみたいだ。

 

 これで後はこの人がプレイヤーを集めてくれるだろう。

 原作みたいに大人数のハメ組が出来るかは分からないが、複数のグループが鎬を削るのは間違いない。とすれば時間が経つほどギスギスオンラインが酷くなるはず。

 

 そうなればクリア間近に()()()()()()()()()()隙も出来る。私は無理だが知り合いにクリアさせるのは可能なんだよね。もしくは私がプレイヤーを雇っても良い。

 

 えっ、恋人さんは助けないのかって? 

 そんな事したら()()()()()()()()()()()()じゃん。

 

 確かに私のゲートなら恋人さんをゲーム内に連れてって大天使を使うことも可能だろう。でもバッテラさんは最後まで恋人の事は話してくれなかった。

 ていうか恋人の事を悟られないようにする為か、《大天使の息吹》どころかクリア報酬についてすら聞かれなかったし。まぁこの二つについては攻略本に乗せてるから後で文句言われたりはしないだろうけどね。

 

 でも向こうがコチラを信用しなかったのだから、コチラが無理やり踏み入ってまで相手を助ける必要はないよね。

 

 それに人は感情の生き物だ。手を伸ばしても場合によって感謝の()()()が違ってくる。

 例えば100メートルの崖下にロープで吊るされてる時、最初の50メートルを引き上げてくれた人の顔はすぐ忘れる。でも最後に手を取って引き上げてくれた人の事は絶対に忘れない。たとえその人が引き上げたのがたった50センチだけでも。

 

 という訳で助けるのはギリギリまで待つ。

 原作通りなら恋人さんは2000年までは生きてる事はほぼ確定しているからね。まぁ別に助けるのは私じゃなくても良いし。

 

 ゲートを使ったゲーム内外への移動は一度も試さず温存している、だからまだ対策はされていないはず。私はクリア報酬で《大天使の息吹》を持ち出してるけど、それとは別に一度だけなら無理やり大天使を使えるということ。隠札としては破格の切り札だ。

 

「さてと、お金は手に入ったし、これからどうするかな……。」

 

 私はホテルから出て道を歩きながら、頭の中でこれからやるべき事をリストアップする。

 

 まずは拠点にする島の購入。

 これはマロさん待ちだ。出来れば早めに連絡が欲しいね。

 

 次に兵器のアップデート。だけどこれも運搬の関係で拠点を作ってから買うべきだろう。ガトリング砲に多連装ロケット、そしてミサイル……今から楽しみだ。

 

 それから神字も覚えたい。

 神字とは念を補助する為の文字で、言わば自転車における補助輪のようなもの。これだけで【発】のような効果は使えないが、それでも苦手な分野を補うことは出来る。

 

 今までは忙しくて手を出せなかったけど、色々と便利そうなのでぜひ習得したいね。

 銃に刻んで強化すればもっと強力な火薬を使えるようになるだろうし、もういっそ専用武器を作ってもいいかも。ハンター協会に頼めば大丈夫かな?

 

 あとはナニカにお願いするための生贄も用意しとかないとね。

 ナニカは1つお願いを叶えてもらうと、代わりに3つおねだりしてくる。最初から仕様が分かってるんだから、遠慮なく使わなきゃもったいない。

 

 確かミルキの『代わりにこいつ殺して』のおねだり失敗が13人死亡。

 執事の『億万長者(4億円)』が67人ねじ切れだ。だから200人ぐらい用意しとけば足りるだろう。

 出来るだけ賞金首の強盗団なんかを捕まえておこう。トップだけ殺して換金し、残りは死んだことにして生かしておけば問題ないはずだ。

 

 そして原作キャラへの対応。

 まずはパッと思いついたのは主人公4人組の一人――レオリオ。

 彼は親友が治療費を払えず亡くなったことでハンターを目指した。ならばその親友を救えば味方に引き込めるのではなかろうか?

 

 今の内に場所を調べておいて、死ぬ寸前で手を差し伸べればきっと感謝してくれるだろう。義理堅い彼はハンターでも医者でも役に立つ。

 

 次にクラピカ。同じく主人公4人組の一人だ、だがこっちは放っておく。

 関わりのない民族を無償で助ける義理なんて無いからね。それに幻影旅団が襲撃すれば、その後の展開で私以外に()()()()()が居るかが分かる。

 

 原作試験時にクラピカが死んでいたら旅団の関係者にいる。

 最初からクラピカが念を覚えていたらクルタ族の関係者にいる。

 つまりクラピカはトリッパーを釣り出す為の()()()だ。放っておくほうが私には都合がいい。

 

 それからネオン=ノストラード、こいつには()()()()()()

 すでにこの世界の流れは変わり始めている。時間が経てば経つほど原作知識は当てにならなくなるだろう。

 そんな中で未来が分かる能力なんてのは邪魔でしかない。ほっといたらダメな父親が顧客増やしまくってアチコチに影響及ぼすようになるからね。

 

 本人も占いが無かったらただのワガママお嬢様だし。うん、ぶっ殺すしかねぇわ。

 占いで予知されるんじゃね? と思うが抜け道は有る。彼女の占いは100%当たるが()()()()()()()()()しか分からない。

 つまり2月1日0時5分に死ぬとしても1月の占いには出ないのだ。なので恐らく月が変わった瞬間に狙えば何も出来ないはず。

 

 そして最後はメンチ。

 私がダブルハンターになる為には弟子が星を取ることが必要だ。しかし普通ならそんな簡単に才能のある人材なんて見つからない。

 けど私には一人だけ宛がある。それが原作二巻で登場したシングルの美食ハンター――メンチちゃんだ。

 

 彼女は1999年に21歳だとはっきり明記されている。

 つまり私とほぼ同い年で現在は10歳だ。ならば今の内に弟子にしてしまえば良い。念を教えて料理に必要な物を支援しておけば、後は勝手に星を取ってくれるだろう。まぁ駄目でも私の専用コックとして雇えば良いし。

 

 という訳で、まとめるとこんな感じかな。

 ・本拠地の作成(島購入)

 ・兵器の購入(軍用品)

 ・神字の学習(専用武器の作成)

 ・ナニカ用の生贄確保(目標200人)

 ・人探し(レオリオ、ネオン、メンチ)

 

「こうして考えると、やること沢山あるなぁ。」

 

 まぁ一つずつやっていけば良いだろう。

 幸い金は腐るほど手に入ったし時間もある。

 

 まずはメンチちゃんを探し出してお近づきになるところから。

 そのためには……

 

「――小学校に入学しよう。」

 

 10歳ならきっと学校に通ってるはず。まずは同学年としてアピールだ!!

 




という訳で小学校編になります。
教師陣の胃は破裂しそう。ついでに校舎と保護者も。

後本文には関係ありませんが、まとめて濁点を振る方法に今更気づきましたorz
説明書はちゃんと読まないとダメですね。
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