シズク=ムラサキは愉悦したい   作:さろんぱす。

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第05話 擬態とレールと衝撃の事実

 この世界に生まれてから3年が経った。

 

「お母さん、つぎの本とって。」

 

「あらもう読み終わったの? んもぅ、シズクちゃんは本当に天才ねぇ。」

 

 読み終わった本をテーブルの上に置き、次の本を催促する。

 するとお母さんは私を後ろから抱きしめた。膝の上に座らせたまま。

 

「お母さん、次のご本!」

 

「はいはい、今持ってくるわねー。」

 

 私はもう一度催促する。

 お母さんは私をそっと膝から下ろし、そのまま本を取りに行ってくれる。

 

(子供っぽい喋り方、まじきつ……ふぃ~。)

 

 部屋に自分だけになったのを確認し、子供らしくない溜息を吐き出す。

 

 あれから私は適度に子供の振りをしつつ、念の訓練を続けている。もちろん怪しまれて捨てられないよう、細心の注意を払いながらだ。

 

 幸い、瞑想で目を閉じていても両親は何も言ってこなかった。

 恐らく眠いのか、眠っていると思われているのだろう。こういうときに赤ん坊の体は助かった。まぁ実際に半分は寝ていたけど。

 

 で、問題が起きたのは訓練を始めて数日後。

 

「ばぶぶぶぶぶぅ……(あったかいなりぃ……)」

 

 気づいたら体の周りに何やら生暖かいものを感じたのだ。

 強いて言うなら海でワカメに張り付かれた感じだろうか? ピタっと肌に張り付いてブヨブヨってしてる感じ。うん、最初はキモチ悪くてガン泣きした。

 

 まぁそれ自体はすぐに慣れた。

 だが予想外だったのは、一週間経たずにオーラを感じ取れてしまった事。これはつまり原作主人公並みに念の才能(適性)があるということで。

 

(どういうことなの???)

 

 この時の私はかなり混乱した。

 やっぱ私って原作のシズクなのでは……?? そんなことばかり考えていた。

 

 まぁ現状だと答えが出せないので、結局は考えるのを止めたが。

 

 それから次に考えたのが、この才能を踏まえての人生計画だ。

 まぁぶっちゃけると"早熟の天才"キャラで行くことにした。

 

 理由は二つ。

 

 一つは、いまさら小中学校に通っても得るものが少ないという事。

 年齢一桁と机を並べて勉強するとか、きっと精神疲労のほうが大きい。

 

 もう一つは、できるだけ念の修行に時間を使いたいと思ったからだ。

 才能が無いならまだしも、あると分かれば鍛えたいと思うのは当たり前のこと。パ○プロの初期ステで超大当たりを引けば誰だってやる気になる。私だってそうだ。

 

(自分にイ○ロー並の才能が有るって分かったら、誰だって野球以外は切り捨てるよね。)

 

 こうして0歳で人生に道を敷いた私は演技を始めた。

 

 少しずつ少しずつ。喋る時はゆっくりと。言葉は必ずこの世界で必ず一度は聞いた事が有るものを。特に両親がよく言ってる言葉が良い。

 

 いきなりペラペラしゃべってはダメなのだ。

 仕事と同じだ。途中報告をせず、急に成果だけ持ってこられても人は混乱するだけ。少しずつ報告しながら進めるのは、お互いの理解状況を確認する作業でもある。

 

 それから目に力を込めすぎてもいけない。

 人の目は口ほどに物を言う。この年齢で視線から意思を読み取られると、おかしな子として認定されてしまう。

 両親を見る時は、できるだけ焦点をぼかしておかなければ。

 

 なんにせよ不気味がられないためには、極力ゆっくりと事を進めなければならなかった。

 だって、さすがにこの歳で捨てられるのは勘弁願いたい。余計な手間が増えると修行の時間がへっちゃからね。育成1周目で事故るとかせっかくの神引きが台無しである。

 

 1歳で両親の名前を呼んだ。

 1歳半でカタコトでしゃべりだした。

 2歳頃に両親から文字を習い出し。

 3歳になると一人で本を読み始めた。

 

 こうして現在は天才児を演じて、この世界の大まかな読み書きと四則演算まで習得した振りをしている。今の所は順調と言って良いだろう。

 

(あとは、そろそろ軽く筋トレも始めよう。)

 

 やりすぎると成長に影響が出そうなのでほどほどに。

 数年後に100キロ持ち上げるのが目安かな。あとは体力つけるためにランニングもしないとね。こっちはフルマラソンぐらいは走れるようにならないと。

 

 ついでに瞬間記憶や動体視力など、思いつくのは全部鍛えておこう。

 幸いなことにやり方は前世知識で知ってる。主にドラゴ○桜とか、グラップラー刃○とか、鉄○伝とか。

 

 ちなみに両親は念能力者では無かったし、私のオーラも普通だった。

 死者の念みたいに禍々しい、なんてことは無い。たぶんこの体では死んでいないからだろう。捨てられるフラグが立たなくてホッとした。

 

 

 

 

 

 ■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

 更に3年後。

 

「「ハッピーバースデー、シズクちゃん!」」

 

「ありがとうー!」

 

 テーブルに置かれたイチゴケーキ。

 私はフーッっと息を吐き出して、刺さっていたロウソクの火をまとめて消す。

 

 今日は1984年の1月1日。本日付で私は6歳になった。

 両親との仲、知識の収集はともに順調。すでに中学校までの勉強は終わった。

 

(小さい頃の柔らか脳みそってすごい。)

 

 一度見たものはどんどん頭に入ってくる。

 しかもそれを成人の知識と経験で効率的に使っているのだ。自分でもびっくりするぐらい楽勝だった。

 後は飛び級の試験に合格さえすれば、今後は義務教育で拘束される事はなくなるだろう。

 

 念の修行も順調。

 すでに基本の【纏】【絶】【練】から、応用技の【凝】【堅】【円】【硬】まで使用可能になった。

 

 特に【絶】は我ながら完璧だと思う。

 どれぐらい完璧かと言うと、寝てる間もずっと【絶】状態でいられるほど。そう、両親が遠慮なく男女混合プロレスできるようにという、私なりの配慮である。

 

 テーブルからシャンパンを取ってコップに注いで飲む。

 

(くぅ~、旨い!)

 

 アルコール入だが、こういう時は何も言わずに飲ませてくれる。流石に大人用の酒は駄目みたいだが。ねだったらロマネコンティとか買ってくれないかな?

 

 なので最近は【練】の訓練ばかりやっている。

 持続時間(オーラのスタミナ)を伸ばすためだ。

 オーラは念におけるガソリンのようなもの。有れば有るだけ有利になる。

 

(このシャンパンみたいに、別のとこから補給出来ればなぁ……。)

 

 しかし【絶】と違いこっちはなかなか難航した。

 初めて【練】を行った時なんて1秒も持たずに気絶したほどだ。それでも何度も繰り返していると、ほんの少しずつ持続時間が伸びていった。今はやっと30分を越えることが出来た。

 

(原作のビスケは1ヶ月で10分伸びるって言ってたのに。)

 

 ゴンとキルアなんて、グリード・アイランドの1ヶ月で2分→30分。

 NGL突入前の1ヶ月で55分→3時間オーバー って感じで伸びまくっていた。

 ところが今の所、私は数ヶ月で1分伸びれば良い方だ。

 

(あの二人は主人公補正が働いてたのかな? あとビスケのマッサージ。)

 

 まぁこれが才能やビスケ補正のせいではないと仮定すると、主な違いは年齢。

 そもそも念で操るオーラとは『生命のエネルギー』の事だ。ならば肉体とも密接な関係にあるはずである。

 

(もしかしたらオーラって、活力の張っている時期の方が伸びやすいとか?)

 

 これは私の経験則だ。

 0歳→3歳は10分しか伸びなかったのに、3歳→6歳では倍の20分伸びた。

 つまり今(幼少期)は体が出来上がっていない為、オーラが増え辛いという事だ。

 

 えっ、ゴンとキルアは12歳で少年期?

 いやいや、あいつ等の肉体は特別だから。フリークスとゾルディックの血筋なんて例外中の例外。4トンの扉開けれるとか、どう考えても子供詐欺だよね。

 

(まっ、私も私で詐欺だけどね! だって中身が元社会人だし!!)

 

 私はそんな事を考えながらケーキを口に運ぶ。

 併せてシャンパンもグイグイ飲む。

 

「ん~、美味しい!」

 

「あらあら、よかったわねぇ」

 

「んんんww いい飲みっぷりでござるぞwww」

 

 私がそう言うと両親の頬が緩む。

 ついで、両親もお酒を飲みだした。ラムっぽい酒だ。二人とも瓶ごとストレートで飲んでいるのが、実に海賊っぽい。

 

「それにしても、6歳でこの聡明さ。まるでキキョウみたいね。」

 

「たしかにな。そういえばアイツもこんな感じだったな。」

 

 そうしてしばらくケーキを堪能。

 すると両親が懐かしむように知らない人の名前を口にした。でもそんな人は今まで聞いたことがない。

 

「キキョウってだーれ?」

 

 不思議に思った私は両親に問いかける。

 こういう時に子供だと素直に聞けて良い。これが社会人なら、あれこれ考える必要があっただろう。安易に聞いてしまうと地雷だったり、実は……なんて無駄に長い話が始まるのだ。

 

「今まで言ってなかったけど、実はあなたにはお姉さんがいるのよ。」

 

「そう、それがキキョウって名前なんだ。」

 

 ふーん、キキョウねぇ。まぁ女性の名前としてはよくある名だ。

 原作でも確かキルアのお母さんの名前がキキョウだったはず。まぁその人ってことはないだろうが。

 

「あの子も2歳ぐらいで喋りだして、3歳過ぎには本を読んでたわ。」

 

「ふぁっ!?」

 

 それやばくね? 本当だとしたらガチモンの天才じゃねーか。

 ていうか私の行動に両親が動揺しなかったのってそのせいかよ。

 

「そのお姉ちゃんはどこにいるの?」

 

「キキョウは6歳の時に家を飛び出して行っちゃったわ。」

 

 ふーん、そうなのか。でも6歳で家出って早くね?

 すごいアグレッシブな幼女だな。特に見習おうと思わないけど。

 

「それっきりもう10年以上会って無かったんだけどな。」

 

「実は数年前、急に連絡がきたのよ。なんでもシルバさんて人と結婚したんですって。」

 

 おおーっと、雲行きが怪しくなってきたぞぉー!?

 んんんん? シルバ?? あれ、原作のゾルディック家の当主も同じ名前じゃなかったっけ? いやきっと勘違いだろう。うん、きっとそうだ。

 

「なんでも5年前にイルミって子が生まれたらしいわ。」

 

「2年前にもミルキって子も生まれたそうだ。」

 

 はいアウトぉ!! 完全にゾルディック家のキキョウさんじゃねーか!!

 確かにジャパン出身っぽい名前だったけどさぁ!!! どういうことなの!!?

 

「実は私達はふたりとも流星街の出身でねぇ。」

 

「実はパパは海賊なんだ。」

 

「はっ?」

 

 お酒が回ってきたのだろう。両親は更に突然トンデモナイことを語りだした。

 

「かい……ぞく?」

 

「ああ、おかげで色んな所から指名手配されてしまっててなぁ。」

 

 今どき海賊て。えっ、冗談だよね??

 

「でも今は普通に暮らしてるよ?」

 

「他人の戸籍を金で買ってな。」

 

 買った戸籍、だと……。

 

「じゃあ私の国民番号と生体データは?」

 

「大丈夫、そのへんは他人の物にすり替えてあるわ。」

 

「生体情報の照合は?」

 

 確か数年おきに照合が義務付けられていたはずだ。

 

「はっはっは、そんなものは医者に金を握らせれば楽々スルーよ。」

 

「ええ~(困惑」

 

 ということは、つまり……

 

 【悲報】私、原作のシズク本人だった【確定】

 

(しかもお姉ちゃんがゾルディック家の正妻とか……。)

 

 ハンター世界はみんなどこか狂ってるキャラばかり。

 その中でも関わりたくない人ランキング(脳内)で五指に入るキャラだ。

 ちなみに残り4人はヒソカ、クロロ、パリストン、ツェリードニヒ。

 

(嘘だろおぃ、あのダサいバイザー付けた重度の親馬鹿が姉とか……)

 

 しかもあの人、原作で42歳じゃなかった? えっじゃあ21歳差??

 

 目を閉じて原作のキキョウさんを思い出す。

 するとそこには、なぜかお揃いのバイザーを付けてピースする姉と『私』の姿が。

 

(Oh……)

 

 あまりのショックに、私は体が揺れ倒れそうになった。

 その後も両親の話は続いたが、会話は全く頭に入ってこなかった。

 

 




人生に自らレールを引く0歳児(才能SSR)
ゾル家との関係は独自設定です。
グダコ母さんは(1942年生まれ)→15歳でキキョウ出産→36歳でシズク出産という感じ。
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