女神転生RTA 「東京崩壊防止チャート」   作:マテチャ

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Part 04 イベント

 記憶の上に人格が作られるとしたら、偽りの記憶で塗り固められた自分は一体何者なのか

 星斗の胸の中にはそういった思いが渦巻いていた。

 

 

 メシア教施設よりナオミに救出された後、自身の生い立ちについて少しながら話が聞けた。

 

 

 曰く、元々とある組織の中で育てられたが、その才能に見込みがなく放逐されたこと。

 その際、とある筋からの依頼によりナオミが星斗の面倒を一時的に見るはずだったが

 別途横やりがあったことで、星斗の行方が分からなくなっていたこと。

 

 

 そして、3年の月日を経てようやく星斗を探し当てることができ、今に至るとのこと。

 

 

 おおよその出来事に星斗は実感が湧いていなかった。

 齢十を超えようかという人生の中で、その内半分以上の記憶が自身には存在せず。

 

 

 それ以外の部分でも、意識は混濁としていた時期が長く

 自身にとって、なにが正しい出来事だったのか今となってはよく分からなくなっていた。

 

 

 そんな中でもナオミの話を信じられたのは、自身の持つ見鬼の能力のおかげであり

 生来より生まれ持つその力だけが、今の星斗にとっての心の拠り所であった。

 

 

 そして、いつ崩れるかわかれないそれをより強固にするため

 自身の土台をハッキリとさせるため、それ以上の力を求めて動くことも

 星斗にとっては無理からぬことであった。

 

 

 

 

 

 

 

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 ナオミによる修行は、星斗からお願いしたことだった。

 

 

 ナオミも元々も星斗には必要最低限の実力を付けさせる予定だったのでそれ自体に問題はない。

 その特異的な体質について、ナオミは星斗以上に危険性を理解していた。

 

 

 すでに当初の依頼から三年の年月が経過していることもあり

 いつまでも星斗の面倒を見られるほどナオミも暇ではなかったため

 自分の身の安全を守れる程度に成長してくるなら願ったり叶ったりである。

 

 

 しかしながら、星斗がお願いしたのは必要最低限ではなく

 出来る限り実力を上げていく方法であった。可能であれば、ナオミ相当の実力まで。

 

 

「星斗君、それは……」

 

 

 ナオミの言葉が詰まる。

 星斗がその才能のために放逐されたことは、事前に聞かされていたし

 自身の持つ経験により、事実その通りであろうことをナオミは感じ取っていた。

 

 

 幼い彼に、どうやってそのことを伝えるか考えぐねる。

 

 

 しかし、星斗はそのナオミの考えてを読み取ったのか

 先手を取るように発言する。

 

 

「どんな方法でもいいんです……

 どんな無理難題もこなしてみせます……」

 

 

 星斗の必死さがひしひしと伝わり、ナオミは黙りこくってしまう。

 何故なら、手段を選ばないという前提の元であれば

 星斗の願いを叶える方法を一つ思いついていたからだ。

 

 

 彼女が持つ術の中でも秘中の秘。

 それはある種の死と再生を疑似的に体験することで、人としての位階を上げていくものだった。

 

 

 しかしながら、この修行法には大きな危険が付きまとう。

 なぜなら古来より冥府下りには、オルフェウスしかり、イザナギしかり

 その報いを受けるのが常となっている。

 

 

 神でも英雄でもならざる身にて、その行為は決して耐えられるものではないし

 仮に耐えられたとすれば、それは逆説的に常人ならざることの証左である。

 

 

 成功したとしても、果たしてそれが星斗にとって幸福な事であるかは甚だ疑問であった。

 

 

 それでもナオミがこの修行を星斗に課すこととした。

 これは、星斗自身が自己防衛の手段を手に入れない限り

 今回のような件が彼の人生にたびたび起こりえるだろうという懸念。

 

 

 そして、何も持っていない星斗が、それでも自己を証明するため

 がむしゃらに無謀に、愚直に未来を切り開いていくための行動について

 ナオミの境遇と照らし合わせ、非常に眩しいものを感じたからであった。

 

 

 

 

 

 

 

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 修行を開始したその日から、星斗の魂は六道輪廻に囚われることとなる。

 自身が持つその迷いを表すかのように。

 

 

 天上道では、いままでに感じたことのない快楽と衰退を。

 人間道では、生きる上での四苦八苦を。

 修羅道では、終わりの見えない激しい闘争を。

 畜生道では、絶えることのない不安と恐怖を。

 餓鬼道では、なにものにも満たされない究極の飢餓を。

 地獄道では、桁違いに長く、果てない苦しみを。

 

 

 生きて死に生きて死に生きて、そして死ぬ。

 終わりのない責め苦に、星斗は形の定まらぬ魂が消耗してく感覚に陥る。

 

 

 おおよそ常人では計り知れることのできないそれに

 それでもどうにかして耐えられていたのは人生における悪行の薄さによって

 それらの責め苦がいくらか軽減されていたこと。

 

 

 そしていつからそこにあった、立場弱き人々の救済となる

 一体の地蔵菩薩の助けによるものであった。

 

 

 突如として現れたそれはあたかも出家僧が如き姿をしており

 その信仰の通り、人々の苦難を身代わりとなり受け救う役目を担っていた。

 

 

 六道すべての世界にて衆生を救うとされるそれは、星斗の傍らに常に寄り添い

 あたかも母が子を守るかの如く、その災厄の盾となってくれていた。

 

 

 そして何故だか、星斗はその地蔵菩薩にある種の懐かしさを感じ取っていた。

 そこにあるはずのない記憶で、消耗した形ない魂を補いながら。

 

 

 

 

 

 

 

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 何度かの冥府下りの経験のせいか、星斗の脳裏には見覚えのない光景が浮かぶようになる。

 それは、記憶を失うよりももっと前、おそらく数百年以上は前の記憶。

 

 

 自身のルーツとなるそれを日々思い出す。

 

 

 太極、両儀、四象、八卦と世界の事象が細分化されていく。

 水、火、木、金、土と森羅万象がめぐっていく。

 反閇、占術、風水、呪符とかつての自分が修めていた技術や知識が日々流れ込み定着していく。

 

 

 いわゆる陰陽道に連なるそれは、力/魔を必要しない単純な技術によるものだったため

 星斗にとっては大きな助けとなるものだった。

 

 

 これはナオミにとっても想定外のことであり、嬉しい誤算というものだった。

 

 

 おそらく星斗の前世は陰陽師に連なるものであり

 冥府下りにより、転生体としての覚醒を果たしつつあるのだと。

 

 

 もとより陰陽道の本旨は「災禍の未然の予知」であることは有名である。

 すでに習得済みの召喚術と合わせれば、そうそう危険な目にあることはないはずだと。

 

 

 しかしながら、そのような中でも星斗からは焦燥感が消えず。

 逆にその表情からは日々陰が濃くなっていることにナオミは気付いていなかった。

 あたかも覗かなくてよい深淵を覗いてしまったかのように。

 

 

 

 

 

 

 

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 それからさらに幾何かの年月が経過する。

 星斗は、いよいよ全ての技術を完全に取り戻しつつあった。

 

 

 そしてその実力はすでにある程度の位階には到達しており

 これ以上の修行は不要であるとナオミは判断していた。

 

 

 そして、星斗はひたすらに待っていた。

 星辰が正しい位置へと至るその時を。

 この数年で自身が苦しみながら、それでも考え抜いた答えを。

 

 

 

 

 

 

 時はきたる。

 所謂宿曜道と呼ばれる占術の一種を用い

 七曜と羅睺星、計都星が最も良いとされる位置であることを確認する。

 

 

 儀式を行う。

 それは陰陽道の呪術において、最も重要なものの一つである泰山府君祭。

 かつての()()()()が最も得意としたものでもある。

 

 

 そして星とは修祓、祝詞を奏上し、その神名を唱える。

 陰陽道において主神とされるその名を。

 

 

 ──────ー東岳天斉大生仁聖帝──────ー

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、世界が神の顕現を感じ取った。

 

 

 

 

 

 

 

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 星斗の目の前に神の姿が見える。

 それは、六道にて傍らに居続けてくれた地蔵菩薩の姿だった。

 

 

「ふむ、あまり驚いていないようですね。

 いつ頃から気付いていましたか?」

 

 

 あたかも友人に話しかけるかの如く、地蔵は星斗へと話しかける。

 その表情はすこし茶目っ気が見て取れる。

 

 

「違和感は最初からありました。

 本来なら6体同時に存在するはずの地蔵が自分の前では一体だけ」

 

 地蔵の言葉に、星斗は確信をもって返答する。

 そう、地蔵菩薩とは本来六道それぞれを駆け回り、全てを救う存在のため

 6人一組であることが常である。

 

 

 それにもかかわらず、星斗が六道輪廻を巡っている際は

 常に同じ地蔵が傍らに一人寄り添っていた。

 

 

「それにあなたには……、初めて会った時からある種の懐かしさを感じていました」

 

 

 その思いは、欠けた魂が補われていくにつれて

 より大きくなることを星斗は感じ取っていた。

 

 

「あの六道輪廻の地獄にあって、自由に他者へと干渉できる存在は限られています」

 

 

 であるならば、あれは自身の前世と深く関わっている存在であると。

 陰陽師としての自分の前世の。

 

 

「そして仏教における地蔵菩薩は、道教における閻魔王と同一され

 閻魔王は陰陽道においては、東岳天斉大生仁聖帝」

 

 

 主神として崇めていたその名を。

 

 

「即ち()()()()、あなたとなります」

 

 

 

 

 

 

 地蔵、いや泰山府君はその回答に満足そうに頷く。

 

 

「ふむ、その様子なら前世の記憶をおおよそ思い出しているようですね。

 賀茂忠行、いえ今世では賀茂星斗と言いましたか」

 

 

 泰山府君は遥か昔の記憶を懐かしむような表情をする。

 しかし、それと同時に呆れたような声で問いかける。

 

 

「しかし無茶をしましたね

 本来なら依代を別途用意するところを……」

「えぇ、代わりに自身を依代とさせて頂きました」

 

 

 本来の泰山府君祭では、道具である依代を用いるが

 今回は星斗自身を依代にする、一種の神降ろしに近い方法をとっていた。

 

 

 本来神霊クラスの悪魔を召喚するには非常に危険な方法だが

 自身が持つ膨大なマグネタイトがあれば限定的ではあるにしろ

 繋ぎとめることができるとナオミから学んだ知識にて確信していた。

 

 

 泰山府君を現世に留まらせるには、この方法が一番であると。

 

 

「こんな無茶をしてまで、あなたは私に何を求めるのですか? 

 六道にてあなたを助けたのは、あくまで地蔵菩薩としての側面にすぎませんよ」

 

 

 泰山府君は不思議そうに聞いてくる。

 また、その言葉は必要以上に肩入れするつもりはないことを示唆していた。

 

 

「近い未来、この世界は混沌に包まれるでしょう」

 

 

 陰陽道である式占により、近々大きな災厄が起きることを

 星斗はその星の位置から読み取っていた。

 

 

「何が起きるのか詳細はまだわかりません……。

 しかし、それを防ぐためお力をお借りしたいのです」

 

 

 星斗は必死の形相で言葉を発する。

 しかしながら、泰山府君にとって自身の知る知己の振る舞いと重ならない。

 

 

「何故そのような事を行う必要があるのですか。

 今のあなたならば、一人ならいくらでも助かる手段があるでしょう?」

 

 

 賀茂忠行という男は世のことなど、それほど気にしない男であった。

 事実はどうあれ、少なくとも泰山府君はそう考えていた。

 

 

 しかし、"星斗"は言葉を返す。

 

 

「そうしたいと思っているからです、他ならぬ()()()()()()で」

 

 

 すでに自分という魂は大きく混ざりあい、変容している。

 それでも、残った魂の一欠けらが強く自身に訴えかけてくる。

 賀茂忠行、ではなく賀茂星斗として残っているそれが。

 

 

 その星斗の言葉は、泰山府君にとって知己としてではなく

 守るべき子供のものとして捉えられた。

 

 

「ふむ、生まれ持った気質というものでしょうか。

 ……よいでしょう、子供を守るのも私の役目」

 

 

 そういうと、出家僧の姿が消え去り。

 

 

「私は天魔ヤマ……、いえ正しくは」

 

 

 地蔵の長い黒髪の狐目をした妙齢の女性の姿へと変化する。

 星斗の生体マグネタイトにて形作られたそれは、彼の記憶の奥底で

 わずかながらに存在していた、自身を産み落とせしものの姿に類似していた。

 

 

「神霊泰山府君、神鬼助持、コンゴトモヨロシク」

 

 

 

 

 

 

 "泰山北斗"と呼ばれるデビルサマナーの、これが始まり。

 

 

 

 

 

 




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2021/06/29
2021/07/01
2021/07/06
2021/08/16
2021/09/02
誤字・脱字修正、ご指摘ありがとうございました!

読者兄貴姉貴たちの女神転生シリーズプレイ状況について

  • ほぼすべてプレイ済
  • いくつかのナンバリングだけプレイ済
  • ペルソナだけプレイ済
  • 上記以外の派生作品だけプレイ済
  • 二次創作による知識だけ
  • 前提知識なし、未プレイ
  • その他
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