星斗がデビルサマナーとして活動を開始することになったのは
ナオミの仕事を手伝った事がきっかけであった。
国内でも有数のデビルサマナーである彼女には、日々数多くの依頼が舞い込む。
この業界で長く活動していることもあり、それらの依頼に対して問題なく対応するナオミだが
当然彼女にも得手不得手は存在している。
ナオミの得意とするのは、超高位悪魔を使役することによる戦闘全般で
一対一/一対多の両方共に対応できる攻撃手段、長時間の単騎行動を可能とする持続力。
それらを高水準で併せ持つナオミは、まさにワンマンアーミーといってもよい存在であり
彼女に匹敵する力の持ち主は、それこそ葛葉四天王や各組織の幹部クラスだけだろう。
しかしながら、その他の部分に関しては戦闘面と比べ若干劣ると言わざるを得ない。
もちろん有象無象のそれと比較すれば十分な能力を所有してはいるが
所謂その道の一流と呼ばれる者たちと比較すれば、若干見劣りをしてしまう。
そして今の星斗は、その道の"超一流"といっていい程の能力に覚醒している事を
ナオミはいち早く理解することとなる。
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陰陽師が使用する陰陽術、その中でも占術は基本中の基本である。
星斗が主に扱う占術は式占というもので、六壬式盤(りくじんちょくばん)と呼ばれる
一種の計算機を用い、星の位置から天のメッセージを解析するものだった。
「探しものは……ここの……図書館、一階にあります」
星斗はそういって地図を指さす。
式占を使用してから、ものの数分の出来事である。
「……すごいわね」
その速度とそして精度にナオミは舌を巻く。
勿論ナオミとしても、そういった陰陽術が存在することは知っていたし
実際にその身で経験したことも幾度とあった。
しかしながら、星斗が行う陰陽術は彼女の知るそれと明らかにレベルが違う。
まるで最初から答えが分かっていた
そんな錯覚に陥ってしまうほど完璧なものであった。
おそらくは、「雑宗」「邪教」「迷信」などと揶揄された現在の陰陽術とは違う
これが遥か古から続く神秘を内包した本来の陰陽術なのであろう。
星斗の転生体は、よほど名のある存在だったのであろうとナオミは予想していた。
しかしながら、そういった情報は本人から言い出さない限り
下手に詮索しないのがこの業界内のルールである。
そういった基本的な知識を星斗に教えた自分が、率先してルールを破るわけにもいかず。
若干のもやもやを抱えながらも、手早く依頼を完了できそうなことを一先ず喜ぶ。
「星斗君、助かったわ」
「いえ、ナオミさんのお役に立てたようで何よりです」
ナオミの感謝の言葉に、何てことないといった感じで星斗は答える。
その様子を見て、ナオミは良いことを思いついた、といった感じで言葉を発する。
「星斗君、私の助手として働いてみない?」
「助手ですか?」
いきなりのナオミの言葉に、きょとんとした様子の星斗。
その表情には相応の幼さが見え隠れする。
「ええ、前に言った通り、いつまでも貴方の面倒を見るわけには行かないの」
ナオミの言葉に星斗は無言で頷く。
彼も今の状況が彼女の好意によって成り立つ部分が大きいことを理解していた。
どのような契約の元、自身の身柄が確保されているかは分かっていないが
現状のようなアフターフォローまでが、それに入っているというのは考え難い。
そのことを星斗も重々理解しており、その恩に報いるため
少しでも役に立てればとの思いで、今回の依頼の手助けをしたのだった。
「だけど、私としてもここまで面倒を見ておいて
後の事は知らんぷり……というのは心が痛むわ」
ナオミの言葉に星斗はその意図を察する。
「独り立ちする前に、ある程度地盤固めしておけば路頭に迷うこともないでしょうし。
今の貴方の実力なら、よほどの事がない限り問題は起きないはずよ」
つまりは、ナオミが面倒を見てくれる内に各方面へのコネづくりの機会を
与えて貰えるということだ。しかも、ナオミのケツ持ちで。
なんとまぁ、至れり尽くせりとはまさにこのことだと星斗は思った。
同時に何故ここまで面倒を見てくるのか、と疑問を感じずにはいられなかったが
自身の目的のためにも、様々なところにパイプを持っておくのは必要であるし
何よりナオミの好意を無下にするのは星斗には気が引けた。
「わかりました。よろしくお願いします」
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最初、ナオミが持ってくる依頼はほとんど危険のないようなものであった。
また依頼主自体も基本ニュートラルな立場の組織であり
これから巣立っていくヒヨッコにとって"色々な"意味で適当な依頼であったといえよう。
…………
………
……
…
「このスーツ、私には合わないようです」
「なるほど。一定以上の実力持ち相手だと、逆に足枷となる場合があるっと」
「お力になれず申し訳ありません……」
「いやいや、こういった事も含めての試験運用依頼ですので。
むしろ事前に問題点を発見して頂けることは非常に助かります」
「そういって頂けると、こちらとしても助かります」
「他に何か気になる点はありますか?」
「それなら素人意見で恐縮なんですが、このスーツを形代として考えるなら、
陰陽道には贖物(あがもの)という考えありまして……」
「ほほぅ、興味深いですね。詳しくお聞かせ願えますか?」
…………
………
……
…
「この龍脈、気の流れが滞っているように感じます」
「……本当か? 力場としての出力は以前から変化ないはずだが……」
「おそらく、数百数千年前からの歪みかと。
非常に僅かなものなので、本流にはほぼ影響はありません。
しかし、僅かに漏れ出した支流により定期的に歪みが生じているはずです」
「……確かにこの辺りは昔から災害が多い地域だ。本格的に調査させよう」
「いえ、すでに対応しました」
「なに?」
「方違(かたたがえ)の応用により、漏れ出した支流が禁忌方向を避けるように誘導しました。
龍脈の本流自体には手を加えていないため、影響も最小限で済むはずです」
「…………」
「……あれ、自分何かやっちゃいました?」
「いや、限定的とはいえ龍脈操作を一個人だけで行ったこと事実が、俄かには信じ難くな。
……念のため、庁職員に確認させる。いいな?」
「覆推(ふくすい)ということですね、問題ありません」
…………
………
……
…
「鬼ですか……」
「……何か疑問がおありの様ですか?」
「いえ、鬼といってもその種類は千差万別。
最低限の準備をしようにも、それなりに時間が必要かと思いまして」
「なるほど、最低限の知識は兼ね備えているようですね」
「……もしかして自分試されてますか?」
「いえ、あのナオミ殿の紹介です。能力自体に疑いはありません。
ただ本依頼の結果如何で、今後の関係に影響がでるのは確かです」
「なるほど、であるなら十全な準備の下で依頼を受けさせて頂きます」
「それで問題ありません」
「であれば、次の吉日は……」
「待ってください」
「はい?」
「日にちから考えるのですか?」
「もちろんです。陰陽道において衰日と吉日は重要な要素。
凶を避け、吉にて物事に当たることはむしろ当然のこと」
「なるほど、確かにおっしゃる通りです」
「ただ……」
「ただ?」
「直近であまり良い日がありませんね。これ、依頼日を延ばしたりとかは……」
「星斗殿」
「はい」
「依頼者の意向に沿って速やかに依頼をこなす。それがこの業界で大事なことです(ニッコリ)」
「……はい」
…………
………
……
…
幼くして社会の荒波に揉まれようとする星斗が学んだこと。
それは自分の思い通りにやろうするなら、それなりの力が必要だということ。
色々な意味で強くなろう、星斗は改めてそう感じていた。
ちなみに泰山府君は使役用の筒の中にて
"初めてのお使い"を見る感じで終始ニヤニヤしていた。
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2021/07/06
誤字・脱字修正、ご指摘ありがとうございました!
読者兄貴姉貴たちの女神転生シリーズプレイ状況について
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ほぼすべてプレイ済
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いくつかのナンバリングだけプレイ済
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ペルソナだけプレイ済
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上記以外の派生作品だけプレイ済
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二次創作による知識だけ
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前提知識なし、未プレイ
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その他