女神転生RTA 「東京崩壊防止チャート」   作:マテチャ

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Part 06 イベント前編

 

 ナオミの元より独り立ちをした星斗だったが

 その前途は決して順風満帆と言えるものではなかった。

 

 

 傍から見れば、卒なく依頼をこなしているように見えてはいたが

 自身の目的を考えれば、不足しているものがいくらでもあるということを

 星斗は強く認識していた。

 

 

 例えば、先日にガイア教ミロク派から依頼を受けた『ミロク経典』の防衛では

 一度に大量の悪魔たちが攻め込んできた際、その手数の多さに予想外に手を焼いていた。

 

 

 その際責めてきた悪魔の中でも一番強力だったのはキリスト教における

 悪魔の代名詞的存在である、山羊の頭つ持つバフォメットと呼ばれる存在である。

 

 

 異教の神とも称されるそれは、その伝承にふさわしく常人を圧倒する力を持っている。

 しかし、星斗の使役する泰山府君と比較すれば、遥かに格下といっても良い実力差だった。

 

 

 事実、泰山府君の強さを目の当たりにした周囲の人間たちは

 その計り知れぬ実力からか戦闘が終了した後も星斗を遠巻きにして

 眺めており、その表情には畏敬と畏怖の感情がありありと浮かんでいた。

 

 

 だが、泰山府君がどれほど強かろうと一体だけでは出来る事が限られるのもまた事実である。

 

 

 そしてそれはサマナーである星斗自身が

 積極的に戦闘に参加するタイプでないことも要因の一つだった。

 

 

 星斗自身得意としているのは、陰陽術を使用することによる間接的な補助である。

 情報収集活動、例えば一つ前に依頼を受けた納品依頼等においては大いに役立っているが

 こと戦闘において、その貢献は一部の防御的な術式の使用のみに留まっているのが現状だ。

 

 

 それでも、冥府巡りにて鍛えられたその実力は並大抵の悪魔にやられてしまうほどやわではなく

 寧ろ自身を守るという目的であれば、この日本において星斗より優秀な術者はそうはいない。

 

 

 しかしながら、こと攻撃に転じようとすると途端に手数が足りなくなる。

『ミロク経典』の防衛時も、いくらか打ち損じた悪魔たちが他の者に襲い掛かっていた。

 

 

 もしも同様の依頼を受けている者がいなければ、星斗自身が負けないまでも

 ミロク経典自体は奪取されていた可能性もあり得ただろうと星斗は考える。

 

 

 しかし、実際には星斗以外にも防衛に携わっているものおり

 倒し損ねた悪魔たちも、その者たちによって問題なく処理された。

 

 

 結果、依頼自体は無事成功となり星斗はその実力(多くは泰山府君によるものだが)により

 超高位悪魔を自在に使役する優秀なサマナーとして、一躍名を馳せることとなる。

 

 

 だが、その評価について、星斗自身は不相応なものであると感じていた。

 ことデビルサマナーとして自分は駆け出しもいい所であると。

 

 

 自分がより良いデビルサマナーになるためには、いったいどうすればいいのか。

 そういった考えを持ってしまう星斗だった。

 

 

 

 

 

 

 そしてそれ考えるうちに、同じ依頼を受けていた一人のサマナーを思い出すこととなる。

 

 

 その外見は全身コートに覆われ詳細は分からなかったが

 身体つきは華奢で背丈は成人男性よりは小さめで、戦闘中に

 コート内から見え隠れするその右手には、機械のそれが露わとなっていた。

 

 

 いわゆる"サイバネティックアーム"と呼ばれる義手の一種である。

 またそれにはCOMPが内蔵されており、普通の腕と変わらぬ様子で器用に戦闘を行っていた。

 

 

 そのサマナーが使役していたのは所謂"十二神将"に属する悪魔たちであった。

 

 

 それらを状況に応じて、適宜切り替えながら戦闘を行っており

 迫りくる大量の悪魔たちを危なげなく処理し続ける。

 

 

 サマナーの仲魔を見る限りでは、星斗の使役する泰山府君と比べ

 その実力は二段三段劣るといってもよいものである。

 

 

 しかしながら、戦闘における使役方法に関しては、星斗より遥かに上手で

 サマナーとは斯くあるべしといった、まさにお手本のような戦い方であった。

 

 

 思えば星斗の師匠であるナオミも、仲魔を直接召喚して戦闘を行うタイプではなく

 そういった戦闘については、具体的な手ほどきを受けてはいない。

 

 

 この一件により、自身にはサマナーとして必要な要素がまだまだ足りていないと

 強く自覚させられた星斗が、最初に思い浮かんだこと。

 

 

 それは、「とりあえず、仲魔を増やしてみよう」ということだった。

 

 

 

 

 

 

 

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「つまるところ、貴様では我の主となりえん」

 

 

 しゃがれた声でそう話すのは堕天使ハルパス。

 その姿はおおむねカラスの様な外見をしており、一見すると

 大したことのない様に見えてしまうが、その実魔界における実力者の一体であった。

 

 

 魔導書「ゴエティア」によれば、その序列は39番目

 魔界の大総裁として名を連ねるほどの大悪魔である。

 

 

 現在星斗はこの大悪魔の依頼を受け、無事に達成した所だった。

 依頼の内容としては、特定の珍獣を時間内の見つけだし出来る限り狩る。

 そして最終的に狩った数を競う合う、半ばハルパスの戯れに付き合う様なものであった。

 

 

 この依頼自体は星斗にとって非常に得手とする所であり

 陰陽術にて素早く対象を見つけ出し、泰山府君がそれを狩るといった具合で

 彼自身非常に上手く進められたと考えていた。

 

 

 実際、狩れた数でいえば依頼者のそれを上回っており

 ハルパスはその星斗の実力に人間にしてはやるものだ愉快、愉快と

 非常に好印象を持っているように見受けられた。

 

 

 この様子に、これならばあるいと星斗は思い切って仲魔へと勧誘を試みる。

 

 

 相手は、かのソロモン王が使役したとされる72の大悪魔の一体である。

 それがもし仲魔となれば、星斗にとって大きな力となることは間違いない。

 

 

 また、その繋がりによりゴエティアに名を連ねるような強大な悪魔たちを

 更に仲魔に出来るかもしれない、といった思惑もあった。

 

 

 しかしながら、結果は玉砕。

 ハルパスのその口ぶりから、この悪魔が仲魔になる可能性は

 ほぼ存在しないであろうことを星斗は感じ取っていた。

 

 

 思わずうなだれる星斗。そんな彼にハルパスは諭すように語り始める。

 それはこの悪魔の持つ「願望や思惑、その実行度合いについて情報をもたらす」

 という権能を用いた助言のようのものだった。

 

 

 それは一時とはいえ自身を楽しませた人間に対する正当な対価だったのか

 あるいは単純に憐れみからくるものだったかは定かではない。

 

 

 

 

 

 

「確かに貴様の実力は大したものだ。

 そうしてそうでなくては、我とてこのような話の場すら設けなかったであろう」

 

 

 ハルパスのいう事はまさしくその通りである。

 

 

 このような大悪魔と"競い合いができる"という時点で只者でないことは

 誰の目からしても明らかであり、ましてやそれに勝利するなど……

 神話の時代なら一端の英雄譚として語られてもおかしくはない出来事である。

 

 

 それは星斗が冥府巡りという、言葉通りの地獄を見る修行を行った成果であり

 ハルパス自身詳細は知らずとも、星斗の魂の在り方から

 その壮絶な内容の一部を垣間見ることが出来ていた。

 

 

「しかしながら、その本質は戦うものではない」

 

 

 重ねがさねになるが、星斗には戦いの才能(主に攻撃面)がほぼ皆無である。

 そのため、陰陽道をベースとした術式により仲魔の補助を行うことを第一とし

 戦闘の主だった部分に関しては、仲魔である泰山府君が担当していた。

 

 

 そしてそれは、現代のデビルサマナーとして理想形の一つではあることは間違いない。

 あのナオミもその点は同意していた。

 

 

 しかし神代の英雄のような、その身一つで化け物共と渡り合う者達を見てきた

 太古の悪魔には、いささか物足りない戦い方であろう。

 

 

「つまりは我のような悪魔とは、その相性が良くないという事だ」

 

 

 その発言は、星斗にとってある種の死刑宣告に近しいものだった。

 ハルパスの発言を信じるとすれば、魔界にいる強力な悪魔は

 ほぼ仲魔に出来ないと言われているようなものである。

 

 

「その辺りの雑魚なら、それでも問題なかろう。

 悪魔には強き者に付き従う本能がある」

 

 

 しかしながら、そのような悪魔を星斗は仲魔として必要としていなかった。

 

 

 自身の身一つで倒せるような悪魔では

 この先の戦いについていけないことが火と見るよりも明らかだったからだ。

 

 

 星斗の現状は、ある種のデビルサマナーとしては

 矛盾を孕んだ状態に陥っていた。

 

 

「貴様が求める実力の悪魔を仲魔として欲するなら

 その本質が、その軸が同じ方向の者でないと難しいと言わざるを得ない」

 

 

 それて一呼吸を置き、泰山府君の方に目をやる。

 

 

「あるいは、奴のように貴様と浅からぬ縁があるもの」

 

 

 もしくは、星斗自身が今より遥かに魂の純度を高めればあるいは

 といったところであるが、ハルパスはあえて口にはしなかった。

 

 

 それは、いらぬものをそぎ落とすことで人間という枠から外れる行為であり

 ある種の機械と変わらない、()()()()()使()()()が行っているそれと

 何も変わらないものであったためである。

 

 

「貴様が何を望み、何故力を欲するかは我とて分らん。

 しかし、己が身を超える力を欲するということがどういう事なのか

 改めて考えた方が良いだろう」

 

 

 そうすれば、あるいは道は開かれるはずだと。

 そういってハルパスは去っていった。

 

 

 そんなハルパスの背中を見つつ

 星斗は自身が持つ身の丈に合わぬ願いについて、改めて考えに耽るのであった。

 

 




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2021/07/06
誤字・脱字修正、ご指摘ありがとうございました!

読者兄貴姉貴たちの女神転生シリーズプレイ状況について

  • ほぼすべてプレイ済
  • いくつかのナンバリングだけプレイ済
  • ペルソナだけプレイ済
  • 上記以外の派生作品だけプレイ済
  • 二次創作による知識だけ
  • 前提知識なし、未プレイ
  • その他
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