女神転生RTA 「東京崩壊防止チャート」   作:マテチャ

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Part 08 イベント前編

 

 東京にミサイルが打ち込まれ、長きにわたる荒廃に見舞われる。

 そんな未来を回避するため、星斗はいくつかの対策を考えていた。

 

 

 その一つとして、根本原因を突き止めること。

 ハッキリ知って、この東京の現状はその頭に魔都と冠されるほど

 様々な組織が入り混じっており、その様相はさながら混沌の坩堝と称されるほどであった。

 

 

 そんな中で、元々星斗が占術により読み取っていたような東京が混沌に包まれるという未来は

 ある程度この業界に関りのある者に対しては、「何を今更」と鼻で笑われるようものである。

 

 

 そのことは星斗自身も認識しており、あてもなく自身の予言に対しての情報を集めるよりも

 一先ずは仲魔を集め、サマナーとしての実力を付けることで

 来るべき時に備えておくことこそが一番の最善手であると考えていた。

 

 

 勿論、これは場当たり的な対処法でしかないため

 本当の意味で身を守ることにはならないことは星斗自身強く感じていたことだった。

 

 

 しかしながら、ヒュプノスによりもたらされた情報により、自体は一変する。

「ミサイルが東京に打ち込まれる」という具体的な情報を得ることが出来たため

 これからはある程度の予想を立てて行動することが出来るようになったからだ。

 

 

 特にミサイルを打ち込めるほどの施設や影響力を持つとなれば

 その原因が個人であるとは考えにくい。

 

 

 そしてそれが組織に起因するものだとしても、それほど計画を実行できる規模であるなら

 この東京にある数多の組織の中でも、ほぼほぼ限られてくることは間違いなかった。

 

 

 今後はそのような大きな組織を相手に依頼を受けていき

 より詳細な情報を収集することを、星斗は行動の指針とした。

 

 

 また対策の二つ目として、そもそもミサイルが打ち込まれても問題ない状況を作り出すこと。

 つまりは、物理的/霊的な防御を強固なものとする活動を行うという事である。

 

 

 特に、霊的な守護においては今すぐにでも対応可能である。

 

 

 この東京は江戸の徳川治世において都市の整備に風水的な要素が取り入れられており

 そしてその要素は現代においても脈々と引き継がれている。

 

 

 しかしながら、土地開発による要所の移転などにより

 その霊的な力が年々弱まっているとい事実を星斗は認識していた。

 

 

 すでに明治初期より陰陽寮が廃止されて久しく、近年は天社神道して再興の道は出てきたものの

 本物の陰陽道を知る存在が途絶えてしまっているのが実情である。

 

 

 だが、その本物の陰陽道が隆盛を誇った時代、その中であっても並ぶものなしと称された者を

 前世を持つ星斗にとって、僅かながらに生じた歪みを正すことは決して難しい事ではなかった。

 

 

 無論、一人だけで出来ることではない。

 歪みを正すということは、結局のところ龍脈の流れを正常化させるということである。

 

 

 しかしながら、過去の依頼により、それに関しての伝手が

 すでに星斗に存在していたのは幸いであった。

 

 

『気象庁・指定地磁気調査部』、通称ジプス。

 過去に龍脈メンテナンスの依頼を受け問題なく達成しており、

 その際星斗の陰陽師としての実力を大きく評価して貰っていた。

 

 

 この組織の伝手を使用し、その際に必要となる費用は自費で賄うことを告げれば

 ある程度の融通は聞いてもらえるはずだと星斗は考えいた。

 

 

 事実、いくらか怪訝な顔をそこの局長からされはしたが

 人材と予算が不足しているためか、メリットしかないこちらの話は

 向こう側としても都合がよく、予想よりも容易かつ早急にこちらの要求が通ることとなる。

 

 

 ……この政府組織にあるまじき融通の良さについて

 その要因の一つとしてお上の威光が十二分に働いていたことを

 星斗は後ほど否が応にも知ることとなる。

 

 

 ようは呼び出しを受けたということである、宮内庁から。

 

 

 

 

 

 

 

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 東京にはそれを護るために鉄の結界が張り巡らされている。

 全体を囲うように繋がれた山手線、その中を蛇行するように通る中央本線。

 その二つの路線を重ね合わせたとき、現れるのは陰陽道における太極図。

 

 

 世界の成り立ちが書き示された占術書『易経』において以下の様な言葉がある。

『易に太極あり、これ両儀と生ず。両儀は四象を生じ、四象は八卦を生ず』

 

 

 太極とは混沌、これから現れた両儀が陰と陽を指しており

 四象と八卦は、この陰と陽が更に分化されたものである。

 

 

 太極図において、黒いの勾玉の中にある白い丸点。

 つまりは陰中の陽として表されるそれは、東京においては皇居に位置する所となっていた。

 

 

 

 

 

 

 東京の要となっているその場所に足を踏み入れ、今代の現人神に謁見を賜った星斗。

 その際は、そのあまりの威儀に宸儀(しんぎ)を直視することはできず、ただただ平伏するのみであった。

 

 

 何故自分にこのような機会が与えられたのか? と大きな疑問を感じていたが

 畏くもその叡慮(えいりょ)から得られた情報は大きく二つ。

 

 

 一つは星斗が行った龍脈のメンテナンスについて

 

 

 本来ならば聖旨(せいし)により行われるべきそれを代わりに実行した星斗に対しての謝意

 その宸衷(しんちゅう)に嘘偽りないことは確認するまでもなく。

 

 

 二つに星斗の陰陽師としての能力について

 

 

 それにおいて、天意を伺って欲しいとのことだった。

 

 

 もともと天皇という称号は中国由来のものであり、それ以前は大王という名乗っていた。

 大王は天照大神を皇祖神に持ち、その統治する際は神の意向=神意を用いて行われており

 そしてその神意を問う役割は神祇官により行われていた。

 

 

 しかし、天皇という呼称を用いる際に神だけではなく

 天からも認められていることを示す必要があった。

 天皇とは『天から認められた皇(大王)』だからである。

 

 

 そして星辰の動きや自然を観測し天意を問うものとしてできたのが、陰陽寮である。

 

 

 つまり天皇とは神意と天意、その両方を問うことが必要となるのだが

 現状は陰陽寮が持っていた役割を果たす機関が存在していない。

 そのため星斗にその役割を果たして欲しいとのことだった。

 

 

 その申し出自体は星斗自身願ってもない事であった。

 日本を象徴するそれをより確固とすることは、東京守護において非常に重要である。

 

 

 しかしながら、天意を問うという事に対してはいささか準備が必要であることを伝える。

 この身一つで成すことは難しく、補助となる術具があればあるいはと。

 

 

 その旨を伝えた後、星斗はその場を退出する。

 

 

 

 

 

 

 

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 大事が終わり、ようやく一息つく。

 

 

 普段感じるものとは明らかに別種の疲れを体全身に感じる。

 こんな疲れを感じるなら、悪魔と戦っている時の方がよほど気が楽だと星斗は思っていた。

 

 

 だがしかし、体を休めるにはまだ早い。

 なぜなら、その疲れは今なお続いているからだ。

 そう、部屋から退出した際、同時に一人の人物が星斗の後をついてきたせいで。

 

 

 

 

 

 

 部屋に立ち入った際、おそらく護衛としてただ一人佇んでいたその女性

 たった一人とはいささか不用心であるとその時は思ったが、その委細を聞き合点がいった。

 

 

 只者ではないとは感じていたが、まさかあの"葛葉ライドウ"だとは。

 この場に居合わせるにこれ以上相応しい存在もいないだろう。

 

 

 デビルサマナーの中でも名高い存在である葛葉四天王、その一角にして最強とされている存在。

 東京守護の要とされているそれの前には、どのような相手が敵であっても

 問題ないと思えるような凄味を感じる。

 

 

 事実、謁見中平伏していた星斗には、自身の一挙手一投足

 その全てが把握されているような感覚に陥っており

 その垂れた眼差しのどこからそんな鋭い視線を出せるのか、と星斗は思っていた。

 

 

 おそらく、潜ってきた修羅場の数、質ともに段違いなのであろうと結論付ける。

 

 

 そもそもわざわざこのような場所へ呼び出すという事は、星斗自身についての素性などは

 あらかた調べられ、問題ない事はお上の方で確認されているはず。

 にも拘らず、これだけの警戒心を持って星斗に接するとは。

 

 

 まさに"常在戦場"をその身で表している。

 敵にいればこの上なく厄介、味方にいればこれ以上ないほど頼りになる。

 

 

 そんな存在が今まさに、星斗の隣にいる。

 星斗はこれを一つのチャンスだと認識し、思い切って会話を試みこととした。

 

 

 それは星斗の目的のため、ライドウという存在との繋がりが重要になるという直感と

 自身も気付かぬ心の奥底で、目の前の女性にある種の懐かしさを覚えていたからであった。

 

 

「挨拶が遅れ申し訳ございません、ライドウ様。

 すでにご存じかと思われますが、改めて挨拶のほどを」

「…………」

()()()()()()、賀茂星斗と申します。以後お見知りおきを」

「っ…………」

 

 

 星斗の言葉にライドウは思わず顔を背ける。

 その様子は子供が癇癪を起こす前のそれに近かったのだが、星斗は気付かず。

 それどころかライドウのその様子に、"あれ常在戦場はどこへ? "と的外れな感想を抱く。

 

 

 ちなみ星斗は勘違いしているが、監視と思われた鋭い眼差しは

 どちらかと言えば星斗の気を引くためのものだった。

 常在戦場のそれも、ヤキモキした感情が漏れ出していただけである。

 

 

 そんな認識の差異は、互いに一言あれば容易に解決しそうなものだが

 残念ながら両者とも悪魔との会話は得意でも、人間との会話はそれほどだったようで。

 若年ゆえの人生経験の少なさがここにて致命的なすれ違いを生んでいた。

 

 

 初手にしてすでに悪手を打ってしまったことに星斗は気付かずに会話を続ける。

 

 

「本日はお日柄もよく大明日、このような謁見を行うに相応しい吉日といえましょう」

「……」

 

 

 だめだ、まさか陰陽師お得意の天気デッキが全く通用しないなんて……と星斗は焦る。

 ちなみに大明日とは陰陽が合った大吉日で何をするにも良い日とされているが

 今この場においては作用していないようである。

 

 

 天気がダメなら万人に受ける話題へとシフトチェンジする、そう食事である。

 

 

「ライドウ様は普段何を食されているのですか?」

「……」

 

 

 だめだ、暖簾に腕押しとは正にこの事だと星斗は思った。

 そもそもライドウって食事するのか? 等よくわからない疑問が頭の中を渦巻く。

 

 

 もうダメ、おしまいだと思ったその時、頭の中の泰山府君が語りかけてくる。

 女性なんて容姿でも褒めておけば、とりあえずどうにかなる……と。

 

 

 そろそろその扱いに苦情が入りそうなものだが

 この言葉を奇貨すべく、あらためてライドウのその容姿を確認する星斗。

 

 

 どこかの学校に属しているのか、制服を身にまとっているという事実より

 その年齢は星斗よりも下の様だと察せられた。

 

 

 そしてその髪は漆黒といっていいほど深く、目は程よく垂れており肌は色白。

 このような世界に身を置いているにもかかわらず、その身には傷一つなく。

 美しいといえる容姿の中に、その計り知れない実力の一端を垣間見ることとなる。

 

 

「……どうかしましたか?」

 

 

 星斗のその様子に気が付いたのか、訝しげな顔をするライドウ。

 これ以上の観察は相手を不快にさせると焦った星斗は

 思わず今思っていたことをそのまま口に出してしまう。

 

 

「申し訳ない、ライドウ殿の美しい容姿に見とれていましてね」

「っ!?」

 

 

 予想外の不意打ちを食らったかのようによろめくライドウ。

 その様子に星斗は驚くが、そんなことを意にも介さず

 その色白な肌を真っ赤にしてライドウはその場を後にする。

 

 

 一人取り残され呆然とする星斗対し

「やれやれ、先は長そうだ」と召喚筒の中でため息をつくヒュプノスであった。

 

 




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2021/07/24
誤字・脱字修正、ご指摘ありがとうございました!

読者兄貴姉貴たちの女神転生シリーズプレイ状況について

  • ほぼすべてプレイ済
  • いくつかのナンバリングだけプレイ済
  • ペルソナだけプレイ済
  • 上記以外の派生作品だけプレイ済
  • 二次創作による知識だけ
  • 前提知識なし、未プレイ
  • その他
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