秘伝書 簠簋内伝金烏玉兎集(ほきないでんきんうぎょくとしゅう)。
簠簋(ほき)とは、祭祀の時に供物を入れる祭器のこと。
金烏(きんう)とは、『日に鳥がいる』という伝承に見られる
三本足の金の鳥を指し、太陽の化身とされる。
玉兎(ぎょくと)とは、『月に兎がいる』という伝承に見られる
想像上の兎の事を指し、月の化身とされる。
元々は文殊菩薩に弟子入りした伯道上人という仙人が、菩薩から授けられた
『文殊結集仏暦経』という書物を元にして、かの安倍晴明が著した書籍であり
太陽と月の運行を用いて占術を行うための陰陽師の秘伝書である。
計5巻からなるそれの中には、祈祷、暦算、星占いといった宿曜道と呼ばれる技術も
書き示されており、"天意を問う"に相応しい術具といって良いものであった。
そして、その
魔術の知識が記された書、それ自体がある種の力を持つのは珍しい事ではない。
ソロモン王が使役した72柱の悪魔を呼び出して願望をかなえる手順を記した、ゴエティア。
狂える『アブドゥル・アルハザード』が執筆した読む者の精神を発狂させる、アル・アジフ。
大いなるクトゥルフやその眷属と海の関わりについて記された、ルルイエ異本。
それらは人の身では計り知れぬ力を持ち、それがその力の一端であっても絶大な影響力を持つ。
例えば、先ほど挙げたルルイエ異本を中国語に翻訳後、更にイタリア語に部分的に翻訳した
螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)などは
その原典と比べれば
しかしながらその実、ほぼ無尽蔵の魔力と魔法を行使する力を
持ち主に与えることが出来るほどである。
ただでさえ異常な力を持つ魔導書、その原典を手に入れること。
つまりは、大きな力と大きな厄介事を同時に背負い込む行為ということである。
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最初に星斗がその依頼を聞いた時、思わず天を仰いでしまった。
星辰を確認するためではない、純粋に自身の宿星を嘆いたためである。
ただでさえ、
遺憾ながらも力ある魔術書、その原典と関わる必要がでてきてしまったためだ。
確かに自身の意志で依頼した事ではあるが、あまりにも間が悪すぎると。
せめて、少しの休息をとらないと正気が保てなくなるのではないかと不安がよぎる。
しかしながら、ルナから聞いた話を加味すると東京が崩壊するのは
そう遠くない未来ではないと考えられる。
残り幾何かわからないその時間を無駄にするわけにはいかず
星斗はその足取りを緩めることは出来ない。
そして、幸いにも悪い条件ばかりというわけでもない。
その魔術書自体、星斗とは比較的縁が深いものだったためである。
おそらくは監視役として付いてきたライドウと共に、魔術書があるというビルの中を進む。
その中は異界と化しており、悪魔が出現するようになってはいたが
幸いにもそのレベルは高くなく、仲魔を召喚するまでもなく蹴散らしていく。
寧ろ星斗にとっては、敵として出現する悪魔よりも、自身のその足取りを背後から
凝視し続けるライドウの方が、精神的に大きな負担を感じる要素となっていた。
よほど星斗が信用出来ないのか、その実力に不安があるのか、或いはその両方か。
悪魔と戦闘になるたびにその一挙手一投足を監視され、それは無事戦闘が終わった後でも続く。
むしろ戦闘が終わった後の方がその視線が強くなることを星斗は感じていた。
その全身を見渡した後、再びその視線の強さは戻っていく。
ある種の不気味さを感じながらも、星斗はビルの中を一階二階と駆け上がっていき
そして早々に目的地へと到着することとなる。
いまさら言うまでもないが、その道程に迷いがなかったのは
あらかじめ形代を用いて異界内を詳細を確認し、反閇により邪気を払いながら進むことで
必要最低限の戦闘ですむように心がけていたお陰である。
そのあたりは星斗の得意分野であり、後ろから監視していたライドウも
その手際の良さに驚いている様子であった。
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星斗は目的の場所であるその部屋を覗き込む。
中にはお目当ての品である簠簋内伝金烏玉兎集を確認する。
計5巻からなるそれは、確認出来る限りでは3巻分がそこにある。
その形状から、本物であることに間違いない事を星斗は前世の記憶から導いていた。
そして、そこあったのは簠簋内伝金烏玉兎集だけではない。
怪しい様子の召喚師が、星斗たち気付かず何かの儀式を行っている姿も同時に存在してた。
「あれは……、魔界への扉を開いているのでしょうか」
一緒に覗き込んでいたライドウが言葉を発する。
「おそらくはそうでしょう」
ライドウの言葉に答える星斗。
ライドウはその東京守護を担ってきた経験から、星斗が持つ記憶の内から
同様の答えを導き出していた。
その儀式の内容は、おそらくは魔界から強力な悪魔を召喚するものであり
そして触媒として、簠簋内伝金烏玉兎集を使用していることも見て取れる。
さらに言えば、星斗にはその怪しい召喚士の姿に見覚えがあった。
その名は芦屋道満。
伯道上人の弟子であり、現在では安倍晴明のライバルとして伝わっている人物。
その逸話の中には晴明の妻・梨花を篭絡し、今回の目的の品である
簠簋内伝金烏玉兎集をむりやり手に入れたとの逸話も残っている。
そして、一時期は安倍晴明に師事していたこと期間もあることから
いわば前世ではの又弟子といえる存在でもある。
本来ならば決して油断出来ない存在であり
このように不意を付ける状況になることはまずあり得ないのだが
しかしながら、目の前にいる芦屋道満からは星斗の記憶にあるほどの強さを感じられず。
どのような経緯で現世に蘇ったかは分からないが、おそらくはその体は不完全であり
全盛期からはほど遠い状態となっていると星斗は予測していた。
そしてその力不足を補うため、簠簋内伝金烏玉兎集を用いて戦力増強を図っているのだろうと。
芦屋道満自体は非常に優秀な陰陽師ではあるが、その性質はChaos側に近く
その逸話を顧みても、目的のためならどんな手段も辞さないタイプである。
星斗自身、一度は弟子を殺された事もあり
芦屋道満についてはあまり良い印象を持っていないのが実情であった。
もちろん、好悪の感情だけで動くほど星斗の精神性は幼稚ではないが
簠簋内伝金烏玉兎集という魔術書の、その
術者の力量に問わず、その威力、規模共に計り知れないものとなる事は想像に難くなく。
今行っている儀式が完遂されれば、この東京にどのような被害が及ぶか予想も付かない。
そのため、まだ準備段階であろう今のうちに討伐を行うべき、というのが星斗の考えである。
そういった意図を込めてライドウの方へ目くばせをする星斗。
その意図が伝わったのか、同じ考えである事を示す様に、ライドウは静かに頷く。
さすがは東京守護を担う存在である、戦闘における判断が的確で素早い。
兵は神速を尊ぶという言葉もある。
未だ対象に気付かれぬ内に、星斗は仲魔へとその指示を飛ばしていた。
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読者兄貴姉貴たちの女神転生シリーズプレイ状況について
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いくつかのナンバリングだけプレイ済
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ペルソナだけプレイ済
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上記以外の派生作品だけプレイ済
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二次創作による知識だけ
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前提知識なし、未プレイ
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その他