女神転生RTA 「東京崩壊防止チャート」   作:マテチャ

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Part 09 イベント後編

 

 

 先手は、泰山府君による一撃。

 

 

 星斗の意志を汲み取るように、召喚された時には

 既に彼女の準備は終わっていた。

 

 

 居合の構え、その左手には紫色の光で構成された剣。

 自身の強大な圧が相手に気取られる、まさにその直前に、放つ。

 その長い黒髪が靡く暇もないほど、その速度はまさに神速。

 

 

 ──────死亡遊戯(しぼうゆうぎ)──────

 

 

 瞬間、道満がいるその部屋全体に、逃げ場がないほどの剣圧がなだれ込む。

 

 

「……っ!?」

 

 

 ここに至り、道満は侵入者の存在と、既に先手を取られてしまったことに気が付く。

 見渡す限り、全方位から繰り出されるその剣圧に逃げ場はなく。

 その身で受けるより手段がない事を早々に理解することとなる。

 

 

 しかしながら、目の前の攻撃はまさに苛烈の一言。

 生半可な手段ではとても受けきれず。

 

 

「臨む兵、闘う者、皆 陣列べて前に在り!」

 

 

 そう言いながら道満はその指でとっさに、縦4本横5本の格子模様を空に切る。

 それは所謂早九字と呼ばれる陰陽道の呪的記号の一種。

 晴明桔梗印と呼ばれるセーマンと対をなす、彼の代名詞とも呼べるそれは。

 

 

 ──────臨兵闘者 皆陣列在前(ドーマン)──────

 

 

 瞬間、目の前に格子状の護りが現れる。

 そしてその守りは、泰山府君が放った死亡遊戯と真正面からぶつかり合う。

 

 

「くっ!」

 

 

 道満が苦悶の表情を浮かべる。

 彼が持つ最高の防御手段である早九字であったが、それを用いてなお

 泰山府君が放った一撃を受け止めるには、荷が重く。

 

 

 幾らか減衰されたそれは、道満へと直撃。

 瞬間、異界内にもかかわらず建物全体が大きく揺らいだのでは? 

 そう思える程の衝撃が星斗たちの周りを走った。

 

 

 

 

 

 

 周囲に噴煙がまき散らされ、部屋全体の視野が狭くなる。

 

 

「ふむ、これは少しやり過ぎましたか?」

 

 

 そういいつつも、悪びれのない感じで泰山府君は辺りを見渡す。

 あれほどの攻撃を繰り出しておきながら、まだまだ余裕といった様子。

 逆に彼女にエネルギーを持っていかれたのか、星斗の顔には若干の疲れが見える。

 

 

「泰山府君、気を抜くな」

「わかっていますよ、サマナー」

 

 

 星斗の言葉に、当然のこといった様子で返事をする泰山府君。

 

 

「しかし、思ったより大した事ありませんでしたね。

 案外の先ほどの一撃で吹き飛んでいるかも」

 

 

 そうなれば、サマナーの負担も少なくて済むのですが……と小さく呟く。

 

 

 泰山府君やヒュプノスなどの高位悪魔を十全に使役するため

 星斗は自身が持つ生体マグネタイトを大いに活用していた。

 

 

 それは傍から見れば、自らを餌とする異常な行為。

 しかしその恩恵により、泰山府君もヒュプノスも階位以上の力を発揮できる様になっていた。

 

 

「……煙が消えてきましたね」

 

 

 攻撃にて巻き起こった煙が徐々に消えていく。

 それに伴い泰山府君は辺りを見渡しつつ、道満がいたであろう場所へと近づく。

 そして、何かが落ちていることに気が付く。

 

 

「……これは、人形?」

 

 

 人の形を模した形代がひとつ。

 そしてその姿は、誰かに傷つけられたかのようにボロボロになっていた。

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 そして、その人形に近づこうとした瞬間、違和感を感じることとなる。

 そう、どこからか現れた道満により、背後から胸を貫かれてしまっていた。

 

 

「……」

「貴様の様な化け物でも、この剣の一撃は痛かろう!」

 

 

 道満が持つその剣の名は将軍剣(破敵剣)と呼ばれ、刀身に三皇五帝、北極五星

 南斗、北斗などの呪文が刻まれている霊剣の一種。

 この剣を持つ者は、敵はみな伏して、起きてなくなるというものであった。

 

 

「……」

「私が倒されたと油断したようだが、残念だったな!」

 

 

 そして、傷ついた人形は贖物に類される形代の一種であり

 道満が負うはずだった傷をその人形に肩代わりさせることで、事なきを得ていた。

 

 

「……」

「魔界より同胞を迎える、そのための準備は万全よ!」

 

 

 貴様らの様な妨害者が現れようともな、と声を発する道満。

 それはすでに勝利を確信した様子であった。

 しかしながら、そんな道満に泰山府君は呆れるように話し始める。

 

 

「それで……」

「うん?」

「それで、あなたの攻撃は終わりでしょうか?」

「……っ!?」

 

 

 胸を剣に貫かれ、なお余裕そうな泰山府君の態度に道満は思わず言葉が詰まる。

 圧倒的に有利なはずの道満が、逆に気圧されてしまう。

 

 

「これで終わりなら……」

「破阿阿阿阿!!」

 

 

 泰山府君がそう言葉を発しているまさにその最中、声を荒げその胸を貫く霊剣に力を込める。

 その瞬間、彼女の身はバターを切り裂くかのように真っ二つとなった。

 

 

「ふん、余裕そうだった割にはこの程度か!」

 

 

 道満は真っ二つになった泰山府君へと、投げ捨てるように言葉を放つ。

 更に続けて、彼女を召喚したサマナーの方へと足を向けようとした、まさにその時。

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 道満の視界が歪む。酩酊したかの如く足元がおぼつかない。

 明らかに異常な状態に陥っていることだけがわかった。

 

 

「……精神……攻撃?」

「ふむ、ちゃんと効いてくれたようだね」

 

 

 道満の目にスーツ姿の悪魔が朧気ながら浮かぶ。

 

 

「な……ぜ……?」

 

 

 それが例え物理であろうが、精神であろうが

 関係なく対策は万全に行っていたはずである、と道満は考える。

 

 

「貴方は中々の術者のようだ。

 素のままでは、ここまで上手くはいかなかっただろう」

 

 

 目の前の存在がいう通り、あらゆる攻撃から身を護るため部屋には霊符が張り巡らされて……

 そう考えた時点で道満は、気付くこととなる。

 

 

 最初の部屋全体を巻き込んだ攻撃が自身ではなく、その防御を奪うためのものであったことを。

 そして自身が倒したと思い込んでいた悪魔との戦闘もまやかしであったことに。

 

 

「いったい……いつ……から?」

 

 

 道満の疑問に、なんて事はないかのようにスーツ姿の悪魔が応える。

 

 

「貴方を眠り誘ったタイミングですか? 

 最初の煙が消えたあたりからですかね」

 

 

 初めから計算して戦闘しなければ、このような結果にはならない。

 相手のサマナーは道満の力量を正確に読み取り、その上で一番安全で

 効果的な手段を実行に移すだけの実力を持ち合わせていることになる。

 

 

「まぁ、普通に戦っても彼女がどうにかなるとは思えませんでしたが

 我々のサマナーは中々に心配性のようで」

 

 

 戦う前から、勝敗はすでに決していた。

 相手の姿かたちも見えぬままに、道満は再度死す。

 

 

「それでは、善き旅路を」

 

 

 ──────永眠(えいみん)(いざな)い──────

 

 

 

 

 

 

 

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 思い描いていた通りの戦闘が出来たことに、星斗は安堵の息を漏らす。

 そして、仲魔が一体増えただけでも、その戦術の幅は段違いに広がる事を改めて実感していた。

 

 

 ある程度の負担を許容することを前提に考えれば、複数の高位の仲魔でも

 十全に使役できたという事実に、星斗は自身のやり方に手ごたえを得ていた。

 

 

「お疲れ様です」

 

 

 そして戦闘が終わったタイミングで、ライドウが星斗に声を掛ける。

 いつの間に回収したのか、その手元には3巻の簠簋内伝金烏玉兎集と霊剣。

 

 

「依頼の品、無事回収完了出来ました」

 

 

 室内の激しい戦闘に晒されていたにもかかわらず、彼女のいう通りその外装には傷一つなく。

 分かってはいた事だが、泰山府君の一撃でも影響を受けない

 その魔導書の異常性に、星斗は改めて舌を巻く。

 

 

 そして同時に、そんな魔導書を前にしても

 平然としたライドウの、その有様から底知れない強さを感じていた。

 余人では理解も及ばない、そんな存在が傍らにいるという事実に若干慄く。

 

 

「……」

「……?」

 

 

 そんなこと考える星斗を、ライドウは無言で見つめる。

 何か粗相をしてしまったかと若干あせる星斗。その内心を見透かされたようで、気まずい。

 

 

「……女性に荷物を持たせるんですか?」

「……すいません」

 

 

 自分よりよほど力持ちだろう、という言葉をギリギリの所で飲み込む。

 道満との戦闘の時以上の危機。星斗はそれを瞬時に感じ取っていた。かなり危なかった。

 

 

 そしてこの時星斗は目の前の人物が、ライドウである前に

 一人の女性であるという事実を、遅ればせながらようやく認識する事となる。

 

 

 

 

 

 

 ある種の封印処理を施した後、来た道を引き返す両名。

 その道中ふと立ち止まり、なんて事のない世間話をするかのように、ライドウは言葉を放つ。

 

 

「あんな戦い方だと、いつ死ぬか分からないですよ?」

「……っ!?」

 

 

 突然のそれに、星斗は言葉を失う。

 つい先ほど、自身では十分な手ごたえを感じていたそれを否定される。

 それも、世界最高峰のデビルサマナーにである。

 

 

 そんな星斗の様子を知ってか知らずか、ライドウは言葉を続ける。

 

 

「強力な方法であることは認めます。

 しかし、己を犠牲にするようなやり方は……私としては看過できません」

 

 

 そう言葉を発するライドウの表情は硬く。

 おそらく、通常のデビルサマナーとしては外れる

 外法にも見えるやり方に納得が言っていないのだろうと星斗は思った。

 

 

 確かに自身の生体マグネタイトを、直接戦闘に使用する行為はかなりのリスクを伴う。

 それが高位の悪魔を使役しているなら、猶更である。

 

 

 それでも、星斗にとってそれは未来を変えるための大きな手段である。

 手放すなんて決して出来ない。

 

 

「ご忠告ありがたく。

 しかし、私としてはこのやり方を変えるつもりはありません」

「……」

 

 

 適当に誤魔化すことも考えたが、嘘をついたところで方針が変わるわけでもなく。

 そんな星斗の正直な言葉に、考えるこむように黙るライドウ。

 

 

 ライドウの不評を買いたくない星斗は、続けて言葉を発する。

 

 

「東京守護のため、この力が必要なのです」

「東京……守護……」

 

 

 ライドウは星斗の言葉を噛みしめるように繰り返す。

 東京守護を引き合いに出せば、その守護者であるライドウは納得せざるを得ない。

 そういった考えのもと発言したそれは、星斗が考えていた以上に効果があった。

 

 

 この言葉は、ライドウにとって単純に東京のみを指すわけではなく

 いなくなった兄を護るためのものであることに、当然星斗は気付くことはない。

 

 

「……わかりました。

 であれば、私に出来ることであれば、何でも言ってください」

「……はぁ?」

 

 

 何故だかライドウの協力を得られる事となる、という展開についていけない星斗。

 そんな彼の様子にライドウはさも当然かのように言葉を発する。

 

 

「"()()()()()()()"に、必要な事を私もしたいのです」

 

 

 

 

 

 

 星斗はライドウの言葉を、自身が行っている龍脈正常化の手助けをしてくれる事だと解釈した。

 さすがは東京守護の要、その高潔さは見習いたいところであると。

 

 

 そしてそんな高潔さとは正反対の、下世話な話で申し訳ないと思いながら

 龍脈の正常化のため、まとまった資金が必要であることを伝える。

 

 

「資金……ですか」

 

 

 その言葉に若干難色を示すライドウ。

 やはり受け入れがたい内容であったか、と星斗は自身の発言に後悔し始める。

 

 

「もっと直接的に頼って欲しいのですが……」

 

 

 忙しいはずの身であるはずのライドウに

 更にこのようなフォローさせてしまい、いたたまれなく星斗。

 

 

 やはり、この申し出は断らせて貰おう、そう考える星斗だったが

 その意図が珍しくライドウに伝わったのか、若干早口で言葉を発する。

 

 

「仕事を手伝って貰う事への報酬、という形ならどうですか? 

 これなら私としてもメリットはありますし、傍からみて資金提供も違和感ないかと。

 もし忙しくても、少し顔を出すだけで大丈夫です。

 極力簡単なものをお願いするので、手間も取らせません。

 先んじて、お試しで一回だけやってみましょう!」

 

 

 何故か必死な感じではあったが、その条件ならばと星斗は承諾する。

 それ確認した後、ライドウは再び脱出に向け歩みを開始する。

 

 

 その足取りは、何故か立ち止まる前のものより早く。

 それおいて行かれぬよう、その歩を合わせるため星斗も急いで行動を開始する。

 

 

 その時に手持ちの内の一巻が小さく震えたことに、両者とも気付くことはなかった。

 

 




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読者兄貴姉貴たちの女神転生シリーズプレイ状況について

  • ほぼすべてプレイ済
  • いくつかのナンバリングだけプレイ済
  • ペルソナだけプレイ済
  • 上記以外の派生作品だけプレイ済
  • 二次創作による知識だけ
  • 前提知識なし、未プレイ
  • その他
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