女神転生RTA 「東京崩壊防止チャート」   作:マテチャ

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Part 10 イベント後編

 

 陸上自衛隊第一師団三十二普通科連隊 連隊長

 五島公夫(ごとうきみお)一等陸佐

 

 

 彼は星斗と同じく、東京崩壊を事前に予見し、その阻止のため全力で行動していた。

 それが星斗とは全く別ベクトルの方法であることは、確かであったが

 その考えに何も感じなかったかといえば、嘘になってしまうだろう。

 

 

『混沌への帰属』

 悪魔と貶められた神々を復権させ、自然や万物と調和することを目指す。

 

 

 その思想は極端ではあるが、少なくない者が傾倒してしまうだけの魅力は確かに存在しており

 そして、五島公夫もその中の一人であった。

 

 

 

 

 

 

 

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 神祇官からの依頼である、五島一等陸佐の身辺調査について

 その事の発端は、陰陽師芦屋道満の復活にまで遡る。

 

 

 あの道満が起こした儀式については、星斗の手により未遂といった形で幕を閉じていたが

 その実、不可解な点がいくつか存在していた。

 

 

 一つに、何故芦屋道満が現代に復活したのかという点。

 

 

 芦屋道満自身は、非常に優秀な陰陽師である事は疑いようのない事実ある。

 しかしながら、己の力のみでその身の復活を出来るほどの力を持ち合わせているわけではなく。

 

 

 本人ではなく、転生体であるというなら分からなくはなかったが

 それは星斗自身の証言により否定される。

 彼が確認したそれの姿は、間違いなく本人であると。

 

 

 であるならば、安倍晴明を蘇らせた伯道上人のように

 芦屋道満を蘇らせた何者かが現代に存在することは、自明の理であった。

 

 

 二つに、何故芦屋道満があのような儀式を行っていたのか

 

 

 あの時の道満は復活したてだったせいか、明らかに本調子でなく。

 簠簋内伝金烏玉兎集という魔術書を使用する程の儀式で、それは明らかに異常である。

 

 

 事前準備が非常に肝要となってくる、陰陽師の考え方からも外れるそれは

 彼の意志と異なる、別の要素が存在していことに他ならない。

 

 

 つまりは、魔界から悪魔を召喚するために芦屋道満を利用した

 何者かが存在する、という懸念が浮かび上がってきたわけである。

 

 

 その事に考え至った政府機関である神祇官は内々に捜査を進めることとなる。

 そして、その際に容疑者の大本命として挙がったのが五島公夫であった。

 

 

 

 

 

 

 五島公夫の本格的な捜査が星斗に依頼されたのには、少々複雑な背景があった。

 

 

 五島公夫は陸上自衛隊の一等陸佐である。

 つまりは、政府組織の一員であり、はたからみれば身から出た錆そのもの。

 その情報が外部に漏れようものなら、様々な組織から弱みとして付けこまれる可能性もある。

 

 

 その情報を知るものは、極力少数としたいのが政府機関としての考えで

 にも拘らず、部外者であるはずの星斗に直接依頼をしたのには当然理由がある。

 

 

 一つは、まさにこの件の当事者であったこと。

 

 

 道満を倒したその経緯から、意図せず真の黒幕に接触してしまう可能性もあり

 監視もかねて事前に依頼といった形で、その動向を把握しておいた方がよいとの考え。

 

 

 二つに、その能力について。

 

 

 すでに達成済みの依頼を鑑みて、星斗が持つ探査能力の高さに疑う余地はなく。

 それは今回の依頼でも十全に発揮されるだろうという期待も込められていた。

 

 

 三つに、その身を取り込むため、つまり身内にしてしまおうという考えである。

 

 

 その実績は少ないながらも、実力はすでに界隈に小さくない形で轟いている。

 使役する仲魔である泰山府君、そして星斗という名前と陰陽師としての実力から

『泰山北斗』という二つ名で呼ばれ始めていた。

 

 

 その意味するところは、『ある一つの道でもっとも高く仰ぎ尊ばれる人』である。

 これから経験を積んでいけば、その名はより強固なものとなっていくことに疑いようはなく

 フリーのデビルサマナーという立場を考えれば、様々な組織に勧誘されることは間違いない。

 

 

 また、その行動理念も政府機関としては非常に好ましいものである。

 傍から見ていても、東京の護りを前提として動いている事は明白な事実であり

 直近の行動のおかげか、朝廷の覚えめでたい。

 

 

 そして何より、()()()()()()()()もその実力を認める所であるという事。

 何度かの監視の後、その調査結果を確認した際の彼女の振る舞いは

 普段の寡黙なそれとは違い、まさに饒舌のひとこと。

 

 

 普段のライドウからは想像できないそれに

 思わず星斗の評価を、より上方修正せざるを得ない事態に陥る。

 

 

 今回の報酬として、一巻分とはいえ簠簋内伝金烏玉兎集を

 提示したのは、まさにこの評価の現れであった。

 

 

 魔術書の原典が持つ力は、少しの知識さえ有れば誰もが知る所である。

 そんな非常に強大な魔術書を、フリーのいちデビルサマナーに報酬として用意するという行為。

 

 

 それは、組織としてその実力を認め、信用に値する人物であるということを

 対外的に発信し、他組織をけん制する意図が含まれていた。

 

 

 とうの本人の与り知らぬ所で、その動きは加速の一途を辿っていく。

 

 

 

 

 

 

 五島公夫の調査自体、星斗の手によってすぐに完了した。

 しかしながら、その調査完了の速さに反して、その内容は異様のひとこと。

 

 

 ガイア教と手を組み、市ヶ谷駐屯地から東京を厳重管制下に置き、クーデターを起こす。

 当初予想からは考えられぬほどの規模に、関係者は思わず青ざめる。

 

 

 そして同時に、その準備自体かなり進行していることも判明することとなり

 事態の深刻さがより一層際立つ事となる。

 

 

 一先ずは、『大量の銃器不法所持』といった容疑で五島公夫のその身柄を確保し

 より詳細な内容を本人から確認していく方針で進めていく。

 

 

 決行は夜。そして当然ながら、その場に星斗も居合わせることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

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「まずは、私の話を聞いてはくれまいか?」

 

 

 身柄を確保された五島、その姿はまさに日本男児といった面持ちで角刈りの頭に

 服の上からでも分かるほど、盛り上がった筋肉。

 

 

 また、その姿に違わぬ有象無象では相手にならないほどの

 実力も兼ね備えているようにも見えた。

 

 

 運よく戦闘にはならなかったが、仮にその実力の一端を発揮していれば

 この場にいる何人かは無事ではすまなかったかもしれない。

 

 

 しかしながら、そうはならず。

 逆に何故か抵抗らしい抵抗もせず、こうして確保することができた。

 

 

 そんな彼が、星斗を含めた数人の前で言葉を放つ。

 それはあたかも演説を行う指導者の如く、それには不思議と

 彼の話に聞いてしまう、そんな力があった。

 

 

「仮に我々を、そして奴らを止めることが出来たとして

 それは問題を先延ばしにしているに過ぎない」

 

 

 奴らとはメシア教の事だろうと星斗は考えた。

 

 

「大地ガイアからの搾取により成り立っているこの世界は、すでに腐りきっている。

 差別、貧困、戦いに覆われる世界で、真の自由とは何かを考えた事はあるかね?」

 

 

 聞いていた内の何人かが、その言葉に息をのむ。

 

 

「神の名の下で作り上がられる千年王国、そこに生きる民は永久の安らぎが約束されると言う。

 しかしそれは、神に選ばれた一握りの者のみにのみ許されるもの……

 大多数の民にとって真に平等といえるものではない!」

 

 

 千年王国というキーワードに星斗はハッとさせられる。

 目の前にいる人物も自分と同じで、どこからかその情報を手に入れていることに気が付く。

 つまりは東京崩壊の、その一端を。

 

 

「このような陰謀を阻止せんがため、我々は悪魔と呼ばれる古の神々の力を借り

 そして自然へと回帰し、悪魔と人間とが共存する世界を作る。

 それこそが不平等に搾取されるこの世界から解放される、唯一の手段ではないか」

 

 

 そして、自然へと回帰するという考えは、星斗とは異なる結論。

 星斗の東京崩壊から皆を救うという考えは、つまるところ『現状維持』を主とするものであり

 五島のその考えは、彼が理想とする新しい世界創造することである。

 

 

 どちらかが正しいという訳ではない、用はスタンスの問題である。

 事実五島のその発言に聞き入っている者もいれば、不快感を示している者もいる。

 

 

「その答えを出すための、時間はわずかにだがある」

 

 

 拘束された五島はそう言い残し、連行されていく。

 しかしながら、その後姿は敗者のそれに見えず、何人かはそれに魅入っている様にも見えた。

 

 

 

 

 

 

 

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 朝、五島を連行した後、住居へと帰宅する星斗。

 

 

 戦闘こそなかったため、疲れ自体はそこまでではない。

 しかしながら、対応しなければならない事が星斗には山積みであった。

 

 

 五島の言葉からも分かるように、東京崩壊は刻一刻と近づいている。

 それまでに自身ができる事を確実に進めて行かなければならない。

 

 

 そのためには、新しい仲魔、そして今回の報酬である簠簋内伝金烏玉兎集を

 十全に扱えるようにしておかねばならない、そう星斗は考えていた。

 

 

「……うん?」

 

 

 そんなことを考えて住居の前に着いた星斗だが、何故だか見知った顔がそこにはいた。

 

 

「遅かったですね」

 

 

 そこにいたのは、待ってましたと言わんばかりの表情をする葛葉ライドウ。

 いつも通りの制服姿に、いつも違い旅行鞄の様のものを携えている。

 

 

「……何故?」

「何故って、依頼、受けたじゃないですか?」

 

 

 星斗のその言葉に、何言ってるんだと言わんばかりに返事をするライドウ。

 

 

 いやそうじゃない、と心の中で突っ込む。

 確かに依頼自体は受けてはいたが、何でこんな朝早くに

 しかも教えてもいない家の前で待っているのか、これがわからない。

 

 

 そんな疑問が渦巻いている中、星斗はある事に気が付く。

 

 

「……旅行鞄?」

「……? 遠出するんだから当たり前では?」

 

 

 星斗の疑問に、さも当然かのようにライドウは返答する。

 話が全くかみ合っていない。

 

 

 ……えっ、遠出? もしかして東京守護の要が、東京を離れるの? 

 大丈夫? ミサイル降ってこない? そも遠出ってどこにいくの? 

 そんな疑問が星斗の頭を駆け巡り、黙り込んでしまう。

 

 

 そんな星斗の様子に、疑問が解決したものだと思ったのかライドウは言葉を続ける。

 

 

「早く準備して下さい、時間は有限ですよ」

「……」

 

 

 言っていることはその通りなのだが、何か釈然としないものと感じる星斗。

 しかしながら、クライアントの無茶を聞くのも個人事業主(フリーデビルサマナー)の性だろう。

 そう納得して準備をすることにした。

 

 

 

 

 

 

「いや、部屋には入ってこないで下さい」

「あれ、駄目でしたか?」

 

 

 ちなみにライドウの心持ちは、遠足に行く小学生のそれに近かった。

 

 




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2021/07/30
誤字・脱字修正、ご指摘ありがとうございました!

読者兄貴姉貴たちの女神転生シリーズプレイ状況について

  • ほぼすべてプレイ済
  • いくつかのナンバリングだけプレイ済
  • ペルソナだけプレイ済
  • 上記以外の派生作品だけプレイ済
  • 二次創作による知識だけ
  • 前提知識なし、未プレイ
  • その他
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