女神転生RTA 「東京崩壊防止チャート」   作:マテチャ

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Part 11 イベント

 

 ヒヒイロカネ。

 伝説の金属として称されるそれは、太古日本において様々な用途で使用されており

 かの有名な三種の神器も、これを素材として作られたと伝えられている。

 

 

 その特徴としては、炎の揺らめきにも似た朱色を持ち、金剛石よりも硬く、金よりも軽く

 決して錆びず、触ると冷たいが異常な熱伝導率であることなど。

 上記に挙げた内容だけでも、他の金属とは一線を画す特性を持つことは明瞭であろう。

 

 

 しかしながら、その数々の特性が知られているのに反して

 実際ところ、いずれの金属に属しているものなのか、一般的には伝わっておらず。

 それは一部の関係者の中でのみ、語り継がれている事柄となっていた。

 

 

 そしてその関係者の中に、葛葉ライドウも当然含まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

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「危ないので、ちゃんと私につかまって下さい」

 

 

 まっすぐ正面を見据えて、星斗の方には顔を向けずにライドウは言葉を放つ。

 

 

 現在、星斗はライドウの仲魔であるコウリュウの背中にまたがり

 ヒヒイロカネがあるという場所へ向かう、その道中である。

 

 

 はやくはやくと急かされ、その依頼の詳細すらも道すがら説明を受けるという展開に

 朝帰りという事もあり、中々思考が追いついてこない星斗。

 

 

 いや、勿論それだけではなく

 その過程で生じた出来事に衝撃を受けていたせいでもあった。

 

 

 龍神コウリュウ。

 白虎・玄武・青龍・朱雀、四神と称されるそれらの長とも呼ばれおり

 中国においては皇帝の権威を象徴、日本においても天皇即位時に出現した事もあるとか。

 

 

 突然、家の前で待機していたライドウにも驚かされたが

 コウリュウを召喚した際のそれと比べれば

 星斗にとってその衝撃は遥かに小さいものであった。

 

 

 東京守護の要である葛葉ライドウという存在を、決して侮っていたわけでない。

 寧ろその実力の片鱗は、前回一緒に依頼を受けた際に強く感じ取っていた。

 

 

 しかしながら、搦め手を混ぜながら全力で抗えば或いは、とも考えていた星斗にとって

 今回のライドウの仲魔召喚は、まさに虚をつかれる思いだった。

 

 

 その詳細こそ不明だが、葛葉ライドウは高位の仲魔を8()()使役している

 というのは業界内において、まことしやかに囁かれている噂である。

 

 

 そしてその中の一体を、今まさに目の当たりにしている星斗の本音を言うと

 この実力の悪魔を使役できるデビルサマナーが存在するのか

 という畏怖の念を浮かべざるを得ないものであった。

 

 

 自身が使役する泰山府君の実力でさえ、今の東京の中でいえば

 上澄みの、さらに上澄みに位置する存在であることは間違いないだろう。

 

 

 そして、その上澄みを更に超える存在が目の前にいる。

 しかも、あと7体も同じような悪魔を使役しているかもしれず。

 

 

 更にいれば、その仲魔を戦闘ではなく、単純な移動のために召喚するという

 葛葉ライドウの豪胆さにも同時に驚かされていた。

 

 

 最初は自身を信用しての行為だろうかとも考えたが、いくらなんでも一度や二度

 顔を合わせただけの相手にそこまでするはずがない、と即座に頭の中で否定する。

 

 

 それが仲魔一体とは言え、自身が持つ情報の重要性を

 百戦錬磨のライドウが理解していないはずはない。

 その身に何かあれば、それは東京、ひいては日本の危機となることに他ならず。

 

 

 にも拘らず、やすやすと自身の手の内を明かすその行為に

 思わず何かしらの意図があるのではと星斗は勘ぐってしまう。

 

 

 この業界にて名が売れ始めている星斗に対して、あまり図に乗るなという警告なのか

 あるいは自身などそもそも眼中にないというライドウからのメッセージだろうか。

 

 

 移動中とはいえ、こうして星斗の目の前で無防備に背中をさらしている

 この現状を考えれば、おそらくライドウが考えているのは後者なのだろう。

 

 

 年頃の少女と変わらぬ、柳の様な細い腰につかまりながら

 星斗は真剣にそういった考えを巡らせていた。

 

 

 

 

 

 

 ちなみにライドウはこの状況の気恥ずかしさから

 一時の間、星斗の方に顔を向けることができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

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 移動開始してしばらく経過した後、星斗の方から話を切り出す。

 

 

「そういえば、依頼にあったヒヒイロカネについて何ですが……」

 

 

 それは時間経過により、ある程度思考が落ち着いたことで

 本来の目的である依頼の内容について、その詳細を確認する

 必要があると、遅ればせながらに考え至った末の言葉である。

 

 

 ようはただの事務的な確認であった。

 

 

「その詳細を確認させて貰ってもよいでしょうか?」

「ふむ……」

 

 

 星斗の言葉にライドウは少し考えるように目をつむる。

 その行為について、どこまで言っていいものか、とライドウが逡巡しているよう

 星斗には見えたが、それは一瞬の事ですぐに答えが返ってくる。

 

 

「わかりました。では前置きを少し」

 

 

 前置き? と一瞬疑問を浮かべた星斗だったが、それを言葉にすることはなく。

 そんな様子に満足してか、不出来な生徒に勉学を教える教師のように

 若干ドヤ顔でライドウは語り始める。

 

 

「ヒヒイロカネとは非常に特別な金属です。

 それこそ、古来日本より神具の材料として使用されている程に」

 

 

 その程度の事前知識ならすでに星斗の頭の中に入っている。

 そして、そんなことを知ってか知らずか、ライドウは言葉を続ける。

 

 

「しかしながら、それがどんな金属なのか、までは伝わっていません」

 

 

 たしかに、どの文献においてもその詳細は記載されておらず。

 それが幻の金属と呼ばれている一因でもある。

 

 

「……が、実際のところ、それが隕鉄の一種であることが分かっています」

「……なるほど、隕鉄ですか」

 

 

 確かにそれならば説明がつく、と星斗は思った。

 隕鉄とは隕石の一種である。

 

 

 かのローマ皇帝の象徴とされていた隕鉄で作られし剣も

 特殊な能力を兼ね備えていたと伝えられている。

 

 

 地球上の金属ではなく、外宇宙の力を経由してのものだったとすれば

 その特異的な性質にも納得が出来るというものだ。

 

 

 そんな事を考えつつも、星斗には新しい疑問が浮かんでくる。

 隕鉄ってどうやって入手するのだろうか? 

 まさか、空から降ってくるのを待つわけではないだろうと。

 

 

 そんな疑問を解消する前に、星斗たちは目的地へと到着することになった。

 

 

 

 

 

「着いちゃいました」

 

 

 ライドウが言葉を発して、それを契機に星斗も周りを見渡す。

 はるか上空を行くコウリュウ、その眼下に広がるは一面の山々と川。

 

 

 このような場所からでは、何も見えたものではないと思った星斗であったが

 それでもよくよく観察すると、その中に合って蠢く何かの姿を確認することができた。

 

 

「あれは、……ヤマタノオロチ?」

 

 

 そう発した星斗の言葉には、若干の疑問が入り混じっていた。

 なぜなら、その姿は星斗の想像するそれより何倍も巨大であったからである。

 

 

 ヤマタノオロチの名前の由来の一つに、八つの山と谷をまたにかけるほど巨大

 というものがあるが、まさにそれを思わせるほどであった。

 

 

 そんな疑問をよそに、ライドウはなんて事はないといった感じで

 先ほどの話の続きを語り始めた。

 

 

「三種の神器、その一つである草薙剣の出自は知っていますか?」

 

 

 三種の神器、皇位の象徴とされる神具の話を唐突に振られ

 若干混乱する星斗であったが、一般的な知識でそれに返す。

 

 

「なんでも、ヤマタノオロチの尾から出てきたとか」

 

 

 その回答に満足そうに頷くライドウ。

 そして、さらに言葉を続ける。

 

 

「不思議に思いませんか? 

 何故ヒヒイロカネで作られたはずの草薙剣がその尾から出てくるのか」

 

 

 ヒヒイロカネは様々な神具の材料となっており、三種の神器もその例外ではなく。

 そして、それがヤマタノオロチの尾から出てきたという逸話についての疑問。

 

 

 単純にヒヒイロカネによって作られた草薙剣をヤマタノオロチが飲み込み

 その状態でスサノオに倒された事で発見された、という訳ではないのか。

 

 

「順番が逆なのです。

 ヤマタノオロチが飲み込んだことによって、草薙剣、その原型が誕生したのです」

 

 

 そんなことを考える星斗の意図を汲み取ってか、ライドウは正解を教える。

 一体どういうことなのかと星斗は思わず疑問の表情を浮かべる。

 

 

「ヤマタノオロチとは洪水の化身とも言われています」

 

 

 確かににそういった逸話も存在する。

 ヤマタノオロチは水を、スサノオに救出されたクシナダヒメは稲田を表しており

 その逸話は洪水という自然現象によって稲田が荒らされることを指すとの解釈である。

 

 

「そしてあのヤマタノオロチは、その身に隕鉄を取り込んでいます」

 

 

 そのせいで、神話を彷彿とさせるほど強大な姿になっているとライドウは語る。

 外宇宙の力は、それだけ強大なものであるという証左だと。

 

 

「つまるところ、宇宙由来のエネルギーと地球由来のエネルギーとが合わさって初めて

 ヒヒイロカネと呼ぶに相応しい金属が誕生するわけです」

 

 

 そういいながら、旅行鞄と思われていたものから一本の刀を取り出す。

 その長さは拳十個分程度の長さで、一部刃がかけている箇所が見受けられた。

 

 

「では、ちょっと行ってきます」

 

 

 そういって、ライドウは遥か下方のヤマタノオロチめがけて飛び降りる。

 

 

 

 

 

 

 

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 その結果だけを言えば、ライドウの圧勝。

 ヤマタノオロチはなすすべもなく、その身を刻まれ、地に伏していく。

 傍から見れば、特段語ることもないほどあっさり終わってしまった。

 

 

 そんなはずはない、と星斗は思った。

 ライドウの言葉が正しければ、あのヤマタノオロチは

 まさに自然災害の化身とも呼べる存在である。

 

 

 いうなれば、台風や地震などと同じ存在。

 そのようなものを人間一人でどうにか出来るはずがなく。

 

 

 仮にどうにかできたとすれば、それは人間の範疇を超える存在。

 所謂、英雄や魔人と称されるような者たちと何も変わらない。

 

 

 そしてライドウは明らかに前者。

 目の前で起きたのは、星斗を語り部とする英雄譚の一ページであり

 その規格外ともいえる存在について、あらためて考えさせられる星斗であった。

 

 

 

 

 

 

 戦闘が終了した後、ライドウの仲魔であるコウリュウは

 その主を迎えにいくかのように、ゆっくりと下降していく。

 

 

 それを見てこちらに駆け寄ってくるライドウ。

 その手には小さいながらも金属の塊のようなもの携えており

 どうやら目的の品は見つかったように思われた。

 

 

「それが……」

「はい、これがヒヒイロカネです」

 

 

 星斗の言葉にライドウが応える。

 実物を見るのは流石に初めてだが、一欠けらのそれにも

 尋常ならざる力が宿っていることが星斗には感じとれた。

 

 

 そして同時に、依頼が完了したことによる安心感もあったせいか

 星斗は誤った判断をしてしまう事となる。

 

 

「ちなみに、何に使われる予定なんですか?」

 

 

 これほどの素材を、いったい何に使用するのか? という疑問。

 そんな事少し考えれば、厄介なネタであることは分かりきっているというのに。

 

 

「……色々使う予定はありますが」

 

 

 少し逡巡した後、それでも()()()なものとしてライドウは言葉を続ける。

 

 

「主に三種の神器の修復です」

 

 

 そんな聞かなくて良かった話を聞いてしまい

 思わずその場で固まってしまう星斗であった。

 

 




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2021/08/26
誤字・脱字修正、ご指摘ありがとうございました!

読者兄貴姉貴たちの女神転生シリーズプレイ状況について

  • ほぼすべてプレイ済
  • いくつかのナンバリングだけプレイ済
  • ペルソナだけプレイ済
  • 上記以外の派生作品だけプレイ済
  • 二次創作による知識だけ
  • 前提知識なし、未プレイ
  • その他
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