女神転生RTA 「東京崩壊防止チャート」   作:マテチャ

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Part 13 イベント後編

 

 

「どうして、僕にそのような話を?」

 

 

 メシア教会において、天使とは神に連なる神聖不可侵な存在である。

 それが、人の手により消失してしまったという事実は、まさしく重大な事件ともいえるだろう。

 

 

 にもかかわらず、わざわざその恥部を外部へさらけ出す大使の行為に

 星斗は強い疑念を抱くこととなる。

 

 

 あるいは、それ以上に重要な意味合いが含まれているのではないか

 と邪推をしてしまうほどに。

 

 

「……すこしでも同情を誘えれば、と思いましてね」

 

 

 そう話す大使の表情は、先ほどまでと変わらず。

 そこから彼の詳細な意図を読み取ることは、星斗には出来なかった。

 

 

「あの娘が辛うじて人の形を保てているのは、あなたの存在あってこそです」

 

 

 目の前の大使の言葉が妄言であると切り捨てるだけの根拠が、星斗にはなかった。

 それだけルナの異常性というものは、この短い時間の中だけでも

 十二分に感じられるものであったためである。

 

 

 そして、それが自分への執着を純熟させた末の結果である、ということもである。

 

 

 一体、幼い頃のルナにとって自分という存在が、どれだけ大きく

 そして、それ以外がどれだけ()()()()()であったのか。

 

 

 しかしながら、星斗にはそれを確認するすべがもうない。

 なぜなら、大事なこと事以外、ルナからは全てこぼれ落ちてしまっているのだから。

 

 

「どうです、星斗君。

 あの娘を哀れと思うなら、我々と行動を共にするというのは?」

 

 

 そういって、大使は右手を星斗へと差し出す。

 

 

「この手を取り、彼女を救えるのは、星斗君。貴方だけです」

 

 

 相も変わらず、大使の詳細な意図は読み取れないが

 ただ、その言葉の内容自体は真実であると、星斗は感じた。

 ルナを救えるのは、自分だけであるという、その事実は。

 

 

「…………」

 

 

 様々な考えが頭の中を渦巻くも、星斗はハイともイイエとも言えず、沈黙してしまう。

 

 

 しかしながら、幸か不幸かその時に襲撃を知らせる警報が、大使館全体に鳴り響く。

 その音を聞き、大使は差し出していた右手を、何事も無かったかのように元と位置へと戻す。

 

 

 そして、扉前で待機していたであろうルナが部屋に入ってくる。

 

 

「サリエル様、侵入者の様です。

 いつものようにお願いできますか?」

 

 

 大使のその言葉にルナは無表情かつ無言で頷き、部屋を後にする。

 

 

「大使」

 

 

 星斗も侵入者に対しての警戒を促すように、大使へと声を掛ける。

 しかしながら大使は、そんなことなど気にもしないかのように

 先ほどの続きを話す様に言葉を返す。

 

 

「残された時間は、そう多くありませんが……。

 あるいは、あなたの選択次第では、もう一度その機会が訪れるかもしれません。

 その時、改めて、その答えを確認させて貰いましょうか」

 

 

 そう言い残すと、大使は星斗から背を向けて窓の方に身体を向ける。

 星斗は大使のその様子に、もう話すべきことは終わったと伝えているように感じられた。

 

 

「では星斗君。

 依頼通り、護衛の方よろしくお願いしますね」

 

 

 その際、星斗には聞き取れないような小さな声で大使が呟く。

 

 

「全く、ガイア教も一枚岩ではないようですね」

 

 

 

 

 

 

 

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 星斗は襲撃者を迎え撃つため、自身の仲魔である泰山府君とディアーナを召喚する。

 そしてその際、()()()ディアーナが星斗へ話しかけてくる。

 

 

「マスター」

「どうした、ディアーナ?」

 

 

 一番新しく仲魔になったディアーナではあるが、その実力は泰山府君に近いものであり

 貴重な戦力の一体として星斗は重宝していた。

 

 

 しかしながら、泰山府君やヒュプノスとは違い、その自己を余り主張するのない

 悪魔らしからぬ一面を持ち合わせており、このように話しかけてくることは稀であった。

 

 

「ご友人がお一人で向かわれたようですが、万が一ということもあります」

 

 

 その言葉は、先ほど一人で出ていったルナを憂慮するもの。

 

 

 たしかに、その身に大天使の力が宿っているとはいえ、精神面が不安定なのは

 まぎれもない事実であり、万が一ということもあるのではと星斗は考える。

 

 

 そして戦力の分散とルナの安全とを天秤にかけ、星斗は後者を選択すると事とした。

 

 

「わかった、ルナのサポートをお願いできるか?」

「もちろんです」

 

 

 そういって、ルナの方へと向かうようにディアーナは移動を開始する。

 

 

 

 

 

 

 大使館の中に、ちらほら悪魔が現れているのを星斗は確認する。

 

 

 相手の悪魔は、屍鬼、悪霊、幽鬼といったいわゆるChaos系に属している悪魔であり

 数こそ多いが、しかしながらその質はそれほどでもなく

 明らかな相手方の戦力不足に星斗は疑問を抱く。

 

 

 或いは、本命はルナが相手にしているのかもと星斗は考える。

 そうであれば、ディアーナを向かわせた判断は正解であったと。

 

 

 また、極めて個人的な事情ではあるが、星斗には考えていたことがもう一つあった。

 この程度の戦力相手なら、実戦投入にちょうど良い機会であると。

 

 

 そして、おもむろに一冊の魔導書を取り出す。

 

 

『簠簋内伝金烏玉兎集』

 以前、芦屋道満が使用していたそれが、何の因果か星斗の手に回り

 今この時その力を発揮しようとしていた。

 

 

「…………ぐっ!」

 

 

 生体マグネタイトを含む自身の生命力の、その半分程度が魔導書に掠め取られる。

 そこに知覚できない、何か得体の知れない存在がいることを、直感的に感じ取る。

 魔導書の中で、なにかが胎動している感覚を覚える。

 

 

 しかし、この程度のデメリットは星斗にとっては、想定の範囲内である。

 強力な魔導書の原典、それを扱うことの危険性などは言うまでもなく理解している。

 

 

 それでもなお、それを使うべきだと考えたの理由はシンプルで

 このままでは、足りないと思ったからである。

 

 

 葛葉ライドウが成した英雄譚の、その一端が星斗の心を喚起させていた。

 少なくとも、あの領域に準ずるまでに至る必要があると。

 でなければ、自分が存在する意味など、ないと。

 

 

 おそらくは、星斗自身以外は誰も望んでいない

 ある種の強迫観念めいた使命感で行われたその行為は

 想定していた通りの負荷と、想定外のスムーズさにより、すぐさま結果として現れる。

 

 

 鎧袖一触。

 格下の悪魔とは言え、それを次々と蹴散らしてく泰山府君の姿は、今までとは明らかに異なる。

 

 

 星斗は簠簋内伝金烏玉兎集を通じ、自身の仲魔の格が一段感引き上げられた事を理解する。

 今まで扱えなかったような部分も、使用することが可能になったと。

 

 

 そして、それでもなお、あの領域には至れていないことも。

 

 

 

 

 

 

 

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 悪魔共を撃退し、ルナの元へと駆けつける星斗。

 しかしながら、既に戦闘は終わっていたようで、傷一つないルナとその傍らにはディアーナ。

 

 

 ルナたちの周囲に、星斗は濃密な死の気配を強く感じ取る。

 その力の元となった、死を司る大天使の影響によるものか、あるいは別の何かか。

 

 

 そんな星斗の様子に気が付いたのか、ディアーナが駆け寄ろうとする。

 そしてその直前、彼女がルナにだけ聞こえるように耳元で囁く。

 

 

「きっと、マスターもそう望まれている。

 その希望こそ、あなたの進むべき道」

 

 

 月は、希望という名の光で、更にその形を、歪めていく。

 

 




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読者兄貴姉貴たちの女神転生シリーズプレイ状況について

  • ほぼすべてプレイ済
  • いくつかのナンバリングだけプレイ済
  • ペルソナだけプレイ済
  • 上記以外の派生作品だけプレイ済
  • 二次創作による知識だけ
  • 前提知識なし、未プレイ
  • その他
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