女神転生RTA 「東京崩壊防止チャート」   作:マテチャ

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Part 14 イベント前編

 

 

「私が、来ました」

 

 

 時間は真夜中、雲一つない空には月が浮かび、その光が地上を妖しく照らす。

 しかしながら、その月光を遮るように、扉の前で仁王立ちをする姿が一つ。

 

 

 このような時間に出歩いては、不審に思われても仕方のない

 いつもの変わらぬ学生服姿のそれは、星斗としても既に見慣れたものであった。

 

 

「ライドウ様?」

 

 

 どうしてこんな夜更けに、と突然の来訪に驚く星斗。

 しかしながら、そんな彼の様子にライドウもまた、扉越しにきょとんと疑問の表情を浮かべる。

 

 

「依頼、受けましたよね?」

 

 

 依頼、という言葉に思い当たるふしのある星斗。

 確かに彼は政府機関である神祇官から舞い込んできた依頼を受領した。

 なるほど、それらと深い繋がりがあるライドウが、その事実を知る事自体に違和感は無く。

 

 

 一点不可解な点があるとすれば、それが()()()()()()()()()であるという事だけであろう。

 

 

「今回は、説明役として来ました」

 

 

 その言って控えめな胸を張りながら、得意げな顔をする見せるライドウ。

 そんな言葉に、"今回も"の間違いではないかと星斗は思ったが、その言葉をぐっと飲み込む。

 

 

 目の前の女性は、その華奢な容姿からは想像できないほどの力を持つ、東京守護の要である。

 公的にも私的にも、機嫌を損ねるような真似は決して行いたくない。

 

 

 しかしながら、そのフットワークの軽さに、もしや東京守護の役目とは

 自身の想定よりも余裕があるのか?と考えてしまう星斗であった。

 

 

「色々と説明したいことがあるので、家に入れて貰えますか?」

「いや、流石にそれはちょっと……」

 

 

 基本的なスタンスとしては、その考えを同じとする同士ともいうべき相手ではあるが

 流石に自宅へと招き入れる行為は、色々と危うい。

 

 

 またそれ以上に、いくら急ぎの内容であっても、万全の準備を常としている星斗にとって

 今回のようにすぐさま依頼を行うの事は、その信条からは憚れるものであった。

 

 

 それが()()()()()()という点は、もちろん考えないようにしての話ではあるが。

 

 

「流石に夜も遅いですし、改めて場を設けさせて頂くので……」

 

 

 そう失礼にならぬよう丁重に断りを入れつつ、扉を閉める星斗。

 この程度の配慮を求めること行為自体は、特段問題ないものであろうと。

 

 

 思えば前回も唐突に押しかけてきたな、と思いながら一難去ったと一息をつく。

 しかしながら、星斗の思い通りに事が運ぶことなど、そうそうなく。

 

 

「わ~た~し~が~き~ま~し~た~」

「……」

 

 

 チャイムの音が、鳴り響く。

 扉越しからでも分かるほど、ライドウの声が辺りに響き渡る。

 

 

「あ~け~て~く~だ~さ~い」

「…………」

 

 

 なおもチャイムの音が、鳴り続ける。

 その声は扉を通り越し、ご近所まで轟こうかと思わんばかりである。

 

 

「い~れ~て~く~だ~さ~い」

「………………はぁ」

 

 

 このままでは、扉を突き破ってでも入ってきそうなライドウの勢いに根負けする星斗。

 彼女がその気になれば、このような板一枚すぐにでも突破できるはずである。

 

 

 それでもこちらのアクションを待っているということは

 ライドウはライドウなりに、最低限の配慮を払っているのだろう。

 そして、その配慮が続いている間に折れたほうが良いだろうという判断で扉を開ける。

 

 

「それでは、お邪魔します」

 

 

 先ほどまでのやり取りなど、何も無かったかのようにライドウは星斗の家へと上がり込む。

 ある種の清々しさすら感じるその姿に、星斗は思わず目をつむり天を仰ぐ。

 

 

 期間は短いが、濃い時間を共に過ごしてきたライドウに対して、星斗は一つ思う事があった。

 それは、小手先の技術を駆使する自分とは違い、彼女はまさに直言直行といった感じで

 そしてそのまっすぐさは、自身が直視するには少々眩しすぎるということを。

 

 

 

 

 

 

 

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 今回星斗が受けた依頼について

 表向きは霊剣の再生鋳造についての事柄である、とされている。

 かつて敵として芦屋道満が用いた将軍剣(破敵剣)、その破損した霊剣をである。

 

 

 もともと将軍剣(破敵剣)とは、かつて百済から献上されたものであり

 それには天皇と朝廷を守る呪力があったとされている。

 

 

 また、歴史の中でその存在が焼失したこともあったが、かの陰陽師安倍晴明の手により

 再生鋳造が行われた事が『大刀契事(だいとけいのこと)』という書物に記されている。

 

 

 つまりは、晴明と深い繋がりのある星斗に、政府機関である神祇官が天皇と朝廷のため

 霊剣の再生鋳造の依頼を出すこと自体、傍から見ても自然な事であり

 それは隠れ蓑として、十分な役割を果たす事となる。

 

 

()()()()()、その修復は極秘裏に、素早く行う必要があります」

 

 

 その様に言葉を放つライドウの姿見は、先ほどの様子からは想像できないほど真剣で。

 星斗としても、その意見には全面的に同意である。

 

 

 三種の神器とは『草薙の剣』、『八尺瓊勾玉』、『八咫鏡』の3つを指しており

 天照大神が地上に降臨した際、その孫である瓊瓊杵尊に授けた伝えられている。

 

 

 皇祖神とされるこれらのの神々により授けられたそれは

 皇室の権威の象徴とされ、継承の際に代々伝えられてきた。

 

 

 しかしながら、その実体は公にはなっておらず、儀式の際に使用される

 それらの形代すら、未だ披露されたことなく、見たものは誰も存在しない。

 

 

 それもそのはずである、長きにわたる日本の歴史の中で

 様々な凶事に晒され、日々その力を弱めていくそれを公にすることは

 皇室の権威の失墜を意味することと同義である。

 

 

 この日本において、そのような事態に陥ることは、あらゆる面で許されない。

 

 

「今日中に、終わらせます」

 

 

 やると決めたからには、迅速に事に当たること自体には、不満はなく。

 しかしながら、その前に聞いておきたいことが星斗には一点だけあった。

 

 

「ライドウ様、一つ質問なのですが……」

「何ですか?」

「何故、そのお役目に私が選ばれたのでしょうか?」

 

 

 依頼を受けた当初から感じていた疑問を、ライドウへと投げかける。

 

 

 秘密は、それを知る人が少ないほど外部へと漏れるリスクが下がる。

 そのためこの依頼もおそらく、その全体の事情を把握している人数など

 両手で数え切れる程度であろう、と星斗は予想していた。

 

 

 無論その事情を不本意ながらも知ってしまった星斗も

 その少ない人数の内に一人に入ることは間違いない。

 

 

 今回依頼が回ってきたのは、これまでに積み重ねてきた信用のお陰もあるだろう。

 とはいえ、星斗は外部の人間であり、このような大事を任せる事などは、異例中の異例。

 それでもなお、自身がその役目に選ばれた事が星斗には不思議で仕方がなかった。

 

 

 そんな星斗に、ライドウはさも当然であるかのように言葉を放つ。

 それは彼の意図を汲み取ってのものではなく、彼女の心底にある、ありのままのそれ。

 

 

「私には出来ないからです。

 私以外から選ぶなら、あなたしかいません」

 

 

 

 

 

 

 

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 以前依頼を受けた時と同じように、コウリュウの背にまたがり移動をする星斗とライドウ。

 

 

 その目的地はというと、偶然にも以前と同じような場所であることは

 既にライドウから聞いており移動に必要な時間の、大体の目安は星斗の中でも分かっていた。

 

 

 その移動時間の中で、何もしないというのは手持ち無沙汰だと考え

 これを機に、改めてライドウについての考察をしてみる星斗であった。

 

 

 一騎当千、百戦錬磨、千軍万馬。

 その実力を形容しようと文字を並べてみても、相応しい言葉は見当たらず。

 あるいは、同じような立場であれば、その強さに嫉妬を覚えずには居られなかったであろう。

 

 

 その仲魔にしても、規格外であることは間違いなく。

 今まさに目の前にいるコウリュウなどは、中国においては皇帝の権威を象徴する瑞獣とされ

 その実力と気高さについては、今更語るまでもなく程に高位の悪魔である。

 

 

 自分程度では、その相性が良くとも、そもそも従えることなど不可能であろう。

 

 

 そのような悪魔を従え、さらに関係ない自分を背にのせ移動手段の一つに出来るほど

 十分に制御しきっているデビルサマナーとしての実力もまた、疑いようもなく。

 

 

 いったいどれほどの修練と研鑽の果てで、このような実力を付けることができるのか

 星斗には想像もつかなかった。

 

 

 あるいは、自分にそれだけの実力が備わっていればと、心のどこかで思わざるをえなかった。

 

 

 そういった事を考えながらライドウの方を見つめていると

 いつの間にか、ライドウの方も星斗の視線に気付いたようで。

 

 

「何を考えているのですか?」

 

 

 そのように話しかけられることとなる。

 その言葉尻には咎めるような意図は感じられず、純粋な疑問を言葉にした形であった。

 

 

 星斗としても、特段やましい事は無かったが

 その実力を考察していたなどと素直に言えば、不愉快な気持ちにさせてしまうかもしれない。

 であれば、適当な話題に逸らした方が、まだマシであろうと考える。

 

 

「いや、このように空から見る月は、一段と綺麗だと考えていました」

 

 

 会話に困った時に便利な、陰陽師お得意の天気デッキである。

 これで数々の危機を乗り切ってきた星斗であったが

 しかしながら、前回もライドウ相手に失敗したそれが、今回もまた通用することはなく。

 

 

「私は、月が嫌いです」

 

 

 そう仏頂面で返事をするライドウ。

 

 

「どうしてですか?」

 

 

 花鳥風月という言葉もある通り、一般的には月とは自然の美しい風物の一つである。

 それを嫌いの一言で返す事に意外なものを感じ、おもわず質問をする星斗。

 

 

「……いなくなった、兄様の事を思い出すので」

「……なるほど」

 

 

 ライドウに兄がいたことにも驚いたが、いなくなった? と言葉に首を傾げる。

 しかしながら、中々に不穏な空気をライドウから感じた取った星斗は

 それ以上踏み込まず、あえて話題を逸らす事とした。

 

 

「しかし、昔の思い出ですか……。

 私事なんですが、自分はそもそも昔の記憶が思い出せず」

 

 

 このような業界にかかわる人々ならば、その過去に傷があることも珍しくない。

 星斗の記憶喪失の件も、傍から見れば、そこまで大きなものとして捉えられるものではなく。

 

 

 いわば、自虐をネタにした、たわいのない世間話。

 実際のところは別にして、星斗としてはライドウに対して特に含むところなく。

 

 

「まぁ、嫌な思い出があるぐらいなら、いっそ記憶のない方が楽かもしれませんね」

「私は……!」

 

 

 星斗の予想に反して、その話題に食い気味に反応するライドウ。

 しかしながら彼女にしては珍しく、後に続く言葉はすぐには思い浮かばないようで。

 

 

「……それが嫌な事であっても、思い出は大切なものだと、そう思っています」

 

 

 ある程度熟考した後、その様な言葉を放つのみであった。

 その後、目的地に着くまでの間、二人の間には気まずい沈黙が流れることとなる。

 

 




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読者兄貴姉貴たちの女神転生シリーズプレイ状況について

  • ほぼすべてプレイ済
  • いくつかのナンバリングだけプレイ済
  • ペルソナだけプレイ済
  • 上記以外の派生作品だけプレイ済
  • 二次創作による知識だけ
  • 前提知識なし、未プレイ
  • その他
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