女神転生RTA 「東京崩壊防止チャート」   作:マテチャ

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Part 15 イベント前編

 

 

 デビルサマナーにとって、依頼主から依頼を受ける手段はいくつか存在している。

 

 

 古くから続く形式としては、依頼主と直接会って依頼を受ける方法。

 様々な手段が発達してはいるが、現代においてもこの方法が一番メジャーなものとされており

 その理由としては古来から続く伝統的形式と、機密性保持の両方を重んじての結果であった。

 

 

 特に他方には洩らすことが許されない重要な案件に関しては

 その詳細について直接依頼主と会った時、初めて確認することも珍しくなく

 故に、デビルサマナーとしての信頼性を図れるサマナーランクは重要な指標であった。

 

 

 実際、今回三種の神器を修復した依頼としても

 その詳細について、星斗は案内役であるライドウに会ってから確認していた。

 

 

 一応最近では、ネットワーク技術を活用しての掲示板形式の依頼も盛んになりつつあり

 その機密面は電霊等のサポートにより担保されているが、仲介が存在している以上

 上記に挙げた方法からは、その信頼性が一段劣ってしまうのが実情である。

 

 

 そしてそんな中で今回の星斗が依頼を受けた方法は、かなり古風な形式といっていいだろう。

 最低限の術的防御が施されているそれは、いわゆる手紙という形式である。

 

 

 手紙という手段自体は特に珍しくないものではあるが、それでも奇妙な点が一つ。

 それはその外見が非常にカジュアルなものであったという事。

 

 

 誤解を恐れずに表現するなら"かわいらしい"封筒に包まれたそれは

 誰がどう見ても、若い女性によって送られたものだと一目で分かる程であった。

 星斗は勿論の事、その隣にいたライドウにも。

 

 

 

 

 

 

 依頼を達成し、無事自身の家へと帰ってこれた星斗。

 その際にポストの中を確認すると、そこには一通の手紙があり

 中身は以前に会った自身を空と呼ぶ少女からの依頼を示唆するものであった。

 

 

 かわいらしい文字とは裏腹に、その内容は簡潔であり

 それは東京全体を覆う、不可思議なあれの続きである事が星斗には読み取れた。

 

 

 その依頼を受けること自体、何の問題もない。

 寧ろ、東京崩壊に関りを持つであろう少女と、その関係を深めることが出来る。

 しかしながら、星斗には一点気になる事があった。

 

 

 サイコダイバー。

 

 

 それは対象の精神にダイブし、その記憶情報を入手する事の出来る術者の総称であり

 その用途は、トラウマの発露、精神操作、心の実体化など多岐にわたっている。

 

 

 また、その能力の希少性から、本人の意図に反して組織に囲われている事が多く

 基本的には表舞台に出てくることは、ほとんどない。

 

 

 空が、以前その去り際に言い残した"面白い人"とは

 このサイコダイバーの事を指していたのだろう、と星斗は思い至る。

 そしてそれを個人の一存で報酬として紹介できるという事実に、彼女自身の立場が窺えた。

 

 

 しかしながら、その事は星斗にとって話の本筋ではない。

 空が報酬としてサイコダイバーを紹介する、その意図が星斗にとって問題であった。

 

 

 それはきっと、忘れている星斗の記憶を呼び起こすためのもの。

 

 

 余計なお世話と、その申し出を断るのは容易い事である。

 なんなら、報酬だけ受けとらないという選択肢も星斗には存在していた。

 

 

 しかしながら、同時にこうも考える。

 断って、立ち止まって一体何になると。

 今のままの自分では、決して足りないと星斗自身が分かっているのに。

 

 

 もちろん記憶を思い出すという行為に、不安が無いわけではない。

 後悔するかもしれない、期待が持てるかもしれない、何も変わらないかもしれない。

 結果がどうなるかは、星斗自身もわからない。

 

 

 しかしながら、選択をしないというのは、違うと星斗は思った。

 非才の身で、その歩みまでも止めてしまえば、停滞してしまっては、決して前へと進めない。

 

 

 それが星斗がこの短い期間の中で、考え着いた答えであった。

 

 

 

 

 

 

「その手紙は、次の依頼ですか?」

「ライドウ様……」

 

 

 そんな星斗の心の変化を感じ取ってか、ライドウが声を掛けてくる。

 三種の神器の修復、その依頼は既に達成していたが、何故か星斗宅に居座っている。

 そんな彼女の目線の先には、空からの依頼の手紙。

 

 

「私も付いていきます」

 

 

 ライドウの言葉に驚く星斗。

 確かに依頼を行うにあたり、信用に足る人物の協力を仰ぐという行為自体は珍しくない。

 しかも相手はあのライドウである。その実力を疑うものは誰もいないだろう。

 

 

 しかしながらその依頼の内容については、傍から見られないよう細心の注意を払っており

 そも術的防御により、外部からの詳細を確認すること基本的に出来ないはずである。

 

 

 にもかからわず、依頼にに付いていくという判断をライドウがした事に

 一体なんの理由があってのことか星斗には分からなかった。

 

 

「これは私への依頼ですし……」

 

 

 そのため、星斗はその申し出を一端断り、更に言葉を続ける。

 

 

「何よりあなたには、まだお役目が残っているはずでは……」

 

 

 そう言って修復された三種の神器の方に目をやる。

 それの重要度は、星斗が受ける個人的な依頼とは比べ物にならず。

 そんな事はライドウ自身も重々承知しているはずである。

 

 

 にもかかわらず、星斗の考えなど意にも介さずライドウは言葉を放つ。

 

 

「代わりのものに取りに越させるので、大丈夫です」

 

 

 ライドウの代わりなんているはず無いだろう、という言葉をぐっと飲み込む。

 それを含めてのお役目であることは間違いないはずだが、と彼女の行動に首を傾げる星斗。

 あるいは、それ以上に優先すべきことが彼女にはあるのだろうか、と。

 

 

 そして星斗は考え至る。ライドウも星斗同様に東京の危機を感じ取っているという事に。

 あるいは、この手紙の一通から、何か不穏なものを感じ取ったのだろう。

 そうでなければ、星斗に付いてくという行動を取るはずもない。

 

 

 最近のその言動から忘れそうになるが、目の前の人物はあの葛葉ライドウである。

 東京守護の、その危険に対する嗅覚の鋭さに、思わず舌を巻く星斗。

 そして、彼女のその思慮深い考えを無下には出来ないと思い。

 

 

「私の指示に従って頂けるなら……」

 

 

 そうライドウに提案する星斗。

 そこには自身に何かあっても、ライドウなら如何にかするだろうとの考えも含まれていた。

 

 

「依頼について、詳しくは聞きません……。

 ただ、何があってもあなたは、私が必ず守ります」

 

 

 そういってシャドーボクシングのように、仮想敵へと拳を繰り出す仕草を見せるライドウ。

 そんな彼女の言動に頼もしさを覚える一方

 どんな相手を想定しているんだろうと疑問を抱く星斗であった。

 

 

 

 

 

 

 

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「詳しくは聞かないと言いましたが、これだけ教えてください」

 

 

 目的地の近辺に着くなり、開口一番にライドウが星斗に話しかける。

 

 

「なんです、アレは?」

 

 

 ライドウがいうアレとは、この場から見える二人の女性の事を指していると星斗は考えた。

 一人は依頼主である空、そしてもう一人は何故か一緒にいるルナ。

 

 

 向こうもこちらに気付いたのか、笑顔でこちらに駆け寄って来る。

 

 

「いや、えーと……」

 

 

 想定していない人物との出会いに、困惑する星斗。

 そんな彼の様子に、はやる気持ちを抑えきれないライドウ。

 

 

「私は両方相手にすればいいんですか?」

「いや、待ってください。二人とも私の知り合いです」

「そんなことは、あの表情を見れば分かります」

 

 

 星斗の言葉を、そんな事は分かっていると言わんばかりに切り捨てるライドウ。

 自身の指示に従うって言ってなかったか、と疑問に思ったが星斗は言葉に出さず。

 

 

 そして、そんな星斗の気持ちを知ってか知らずか

 近くまで来た空とルナが言葉を放つ。

 

 

「ほー君……、こんな所で……どうしたの?」

()()()?」

 

 

 その馴れ馴れしい呼び方に、眉をひそめるライドウ。

 

 

「パパ~、久しぶり! 空に会えなくて、寂しくなかった?」

()()!?」

 

 

 その危うい呼び方に、信じられない形相をするライドウ。無論星斗の方に顔を向けてである。

 彼女らの発言により、さらに場は混沌とし、一時的に収拾が付かない事態に陥ってしまう。

 

 

 

 …………

 ………

 ……

 

 

 

「なるほど、あなたが今回の依頼主である事はわかりました」

 

 

 少しの時間が経過した後、落ち着きを取り戻したライドウが状況の確認を行う。

 その際、目の前の少女があの手紙を星斗に出した張本人であることは分かった。

 

 

「その呼び方については一先ず置いておき……。

 では、あなたは?」

 

 

 元々確認したかった、その人物の事については分かったライドウ。

 続いて、ルナに問いただすように質問する。

 

 

「……」

 

 

 しかしながら、その問いを無視するかのように、黙りこむルナ。

 その表情は、さきほどの笑顔からは一転、無であり

 そこから何かしらの感情を読み取ることは一切出来ず。

 

 

「……何か言ったらどうですか?」

 

 

 そんなルナの様子に、更に言葉を重ねるライドウ。

 その言葉尻からは苛立ちを感じる取ることができ、あまり良い雰囲気とはいえず。

 そんな彼女の様子を見かねて、思わず助け舟を出そうとする星斗。

 

 

「あー、ライドウ様、彼女は……」

「黙っていて下さい。私は彼女に聞いています」

 

 

 星斗が出した舟は、一瞬にして海の底へと沈んでいく事となる。

 その彼の様子を見かねてか、今度は空が助け舟を出す形で話を切り出す。

 

 

「黒カミのお姉ちゃん、そんなの聞いても意味ないよ」

「……意味ない?」

 

 

 空が発した言葉の意図が読み取れず、少し困惑するライドウ。

 そんな彼女の様子を見て、続けて言葉を放つ。

 

 

「その金パツのお姉ちゃん、話せないもん」

「話せない?」

「うん、いっつも無表情でダマってるから、空つまんないんだよね」

 

 

 そんな空の言葉に、納得したような表情を見せるライドウ。

 しかし、それは星斗にとっては信じられないような内容であり。

 

 

「空ちゃん、そんな訳は……」

 

 

 思わず空へと否定の声を挙げる星斗。

 それもそのはず、事実としてルナが星斗に話しかけていた事を皆が確認したはずである。

 しかしながら、そんな彼の言葉を彼女は即座に否定する。

 

 

「多分、パパの前だけだよ」

 

 

 ルナが今までそぎ落とし続けてきた、その代償の一端を改めて垣間見ることとなった星斗。

 かつて院長が言っていた言葉のその意味を、今まさに完全に理解することとなる。

 彼女は彼の前以外では、人として機能していないという事実に。

 

 




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読者兄貴姉貴たちの女神転生シリーズプレイ状況について

  • ほぼすべてプレイ済
  • いくつかのナンバリングだけプレイ済
  • ペルソナだけプレイ済
  • 上記以外の派生作品だけプレイ済
  • 二次創作による知識だけ
  • 前提知識なし、未プレイ
  • その他
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