女神転生RTA 「東京崩壊防止チャート」   作:マテチャ

42 / 42
Part 15 イベント後編②

 

 

 ★ 中央スシュムナー気道 第四チャクラ:アナーハタより

 

 

「あなたはあれを見て、どう思いましたか?」

 

 

 そう問いかけるのは、星斗の仲魔の一体である泰山府君。

 現実世界では空の事を十分に認識できなかった彼女だが

 この場においては以前とは異なり、その存在を確かに感じ取れているようであった。

 

 

「…………」

 

 

 そんな泰山府君の問いに、一旦は沈黙する空。

 その表情は、普段の少女の態度からは想像できないほど、険しく。

 

 

 空の表情をここまで険しくさせた泰山府君が言う"あれ"とは

 かつて星斗であった少年たちの様々な死に様。

 ここに至るまでの経路で、陽乃と同様に空やルナもその数多のビジョンを確認していた。

 

 

「……今回も、無理だと思うよ」

「…………」

 

 

 泰山府君の質問に、当事者である空は熟考の末、その様に回答する。

 近い未来に起こるであろう東京崩壊は、既に最終段階へと移行している。

 そして、彼女自身もその歩みを止められないし、止める事はない。

 

 

「だれも、()()()は止められない」

「…………」

 

 

 右手のサイバネティックアームを擦りながら、空はその様に言葉を続ける。

 嘗て消し飛ばされた、今は無き部位に、幻肢痛の如き痛みを感じた。

 自らが発した"お父様"という言葉に反応するように。

 

 

 そんな空の様子を観察している泰山府君は、終始無言。

 また、彼女の視線には、何かを見定めるような意図が含まれている。

 しかしながら、それに空が気付くこともなく。

 

 

「だから、そんな苦しい思いをするぐらいならって、空は思っちゃう」

「…………」

「空が、パパと一緒にいてあげるから。

 さびしくない様にずっとずっと一緒にいてあげるから」

「…………」

「次が始まる時まで、一回おやすみで」

「…………」

 

 

 ある種、諦観の念のようなものを心に頂きつつ、言葉を続けていた空。

 しかしながら、そんな思いを遮るように、泰山府君が言葉を放つ。

 

 

「止まりなさい」

 

 

 そういうと、今まで道案内として空を先導していた泰山府君が

 その立場を一変し、行く手を遮るように、少女の前へとその身を晒す。

 

 

「私は、彼を助けたいです」

 

 

 そう言葉を放つ泰山府君の表情は、真剣そのもの。

 それは、星斗の生体マグネタイトと接触し、その身を女性に変化させた時より決めていた事。

 わざわざその身を零落させてまで、彼の助けとなりたいとその時に泰山府君は思っていた。

 

 

 ヒュプノスやアラディア、まだ生まれていない彼女とは違う。

 純粋に星斗個人の幸福を願うそれは、宿福受生の精神から。

 彼が行ってきた善行が、今世でこそ報われる事を願っているからに他ならない。

 

 

 星斗と助けとなるなら、その考えがどれほど外れていようと歪んでいようとも問題ない。

 だからこそ他の仲魔達の行動も、黙認している。

 

 

「これから先に進むのは、そういう事だと私は考えています」

 

 

 そういって、まっすぐな瞳で空を見つめる泰山府君。

 

 

「そして、あなたはそれに、相応しくない様に見えます」

「…………」

 

 

 その言葉に黙り込む空。

 自身の考えを真っ向から否定する言葉に、凪いでいた心が久しく揺さぶられる。

 

 

 確かに空が星斗に抱くそれは、陽乃やルナと比較すれば、小さく朧気なものである。

 実際の所、その感情を言葉に言い表すならば、特別の一、二歩手前といった所だろうか。

 

 

 それでも、空にとってはそれで十分だった。

 今まで、誰の特別にもなれなかった自分が、ようやく見つけた代替品(星斗)

 自ら手放す事など、少女の選択肢の中には存在しない。

 

 

 そうでなければ、わざわざソウルダイバーを呼んでまで事に及ばない。

 全ては星斗の全てを知ることで、自分が受け入れて貰える存在であることの確証を得るため。

 

 

「……おばさん、うるさい、どいて」

「失礼な、お姉さんと呼びなさい」

 

 

 悪態をつく空に、その様に返事を返す泰山府君。

 当然少女の要求が受け入れられることはなく、場が一瞬膠着状態となるが

 それも一瞬、癇癪を起こしたように空が叫ぶ。

 

 

「空は、一緒にいて欲しいだけなのっ!」

 

 

 空の言葉に呼応して、その仲魔の悪魔達がサイバネティックアームより召喚され

 それらは泰山府君を取り囲むように、配置される。

 

 

 主に天部と呼ばれる護法神に属するそれの数は、数十体にも及んでおり

 デビルサマナーとしての常識からは大きく外れるものであった。

 

 

 基本的にどのようなサマナーであっても、召喚・使役をしつつ戦闘を行うというのは

 非常に大きくのリソースとリスクを伴う行為である。

 にもかかわらず、空がこのような行為を問題なく行えたのには、幾つかの理由があった。

 

 

 一つは、空の使役する悪魔自体が、非常に相性の良いものたちで構成されていた事。

 これにより、自身が複雑な指示を出す必要がほとんどなく

 ほぼ最適な動きを、仲魔の悪魔達が自発的に行ってくれていた。

 

 

 二つに、これ星斗の精神世界で行われたという事。

 現在、この場は星斗の持つ膨大な生体マグネタイト、それが流れる気脈の中心路に位置しており

 これらのエネルギーが、本来ならば維持できるはずもない、数十体の召喚の助けとなっていた。

 

 

「……まさに天龍護念、といったところでしょうか」

 

 

 つまり、この場における恩恵を十二分に理解していないと出来ないやり方であり

 それを躊躇いもなく実施できる空のセンスに、泰山府君も舌を巻かざるをえず。

 

 

「しかし、これだけの悪魔を従えるのは……」

 

 

 ()()()()()()よりも、二段三段劣る悪魔たちにもかかわらず

 これだけの数を使役しているという事が、泰山府君には不可解であった。

 あるいは、彼女の奥底にある孤独が、そうさせているのか。

 

 

「ふむ、迷える子供を救うのも、私の役目というものでしょうか」

 

 

 そういって、周囲の悪魔たちへ攻撃を行う泰山府君。

 もしここが現実ならば、いかに彼女とて、その数に対抗できず敗北は必死であっただろう。

 

 

 しかしながら、ここは星斗の精神世界であり、恩恵を受けられるのは空に限った話ではなく。

 こと泰山府君においても、神霊という本来の階位に近い形で、力を発揮することができる。

 

 

 それは、『一切衆生の迷いを解く』ことを努めとする魔人が持つ力の一端。

 

 

 ──────回転説法(かいてんせっぽう)──────

 

 

 閻魔大王による説法は、高純度に濃縮された破魔の力となり、回転し、周囲を照らす。

 その瞬間、周囲の悪魔の約八割が消失することとなる。

 

 

 

 

 

 

 

...................★...........★..............................................................

.......................................................................................★........

........★.........................★...............★...............★.......................

 

 

 

 

 

 

 

 ★ イダー(月の気道) 第五チャクラ:ヴィシュッダより

 

 

 空とは違い、障害もなく第五チャクラ:ヴィシュッダに至ったルナは

 陽乃と同じように、彼のトラウマの具現化、その半身との戦闘が始まっていた。

 

 

 その上半身は人の身体を模してはいるが、首から上が存在しておらず

 下半身はそもそも上半身とは異なり、蛇の様な鱗を帯びた細長い尻尾が存在している。

 

 

 それは分かたれた悪星ラーフの、その片割れ。

 九曜星の一つであり、悪星にして大凶である計都星。

 

 

『凶星ケートゥ』

 

 

 その巨漢にてルナを押し潰さんとせんばかりに、縦横無尽に動き回る。

 それを、彼女は器用に避け続け、しかし、反撃に転ずるようなことななく。

 そんなルナの様子を、案内役であるアラディアが虚ろな瞳で見つめる。

 

 

 異神 アラディア。

 その由来は、著書『アラディア、あるいは魔女の福音』に登場する女神であり

 星斗が報酬により手に入れたディアーナに、オッドアイの男の因子が組み込まれた存在。

 

 

 夢想により作り出され、誰も救わず、希望を与えるだけのもの。

 そんな存在である女神は、ルナの行動を邪魔することは当然しない。

 

 

 であるなばら、ルナが反撃に転ずる可能性はゼロに等しく。

 なぜならば、目の前の首のない怪物もまた、星斗であることは間違いないのだから。

 

 

 誰も言葉を発しないまま、この膠着状態は延々と続くこととなる。

 

 

 

 

 

 

 

...................★...........★..............................................................

.......................................................................................★........

........★.........................★...............★...............★.......................

 

 

 

 

 

 

 

 ★ ピンガラー(日の気道) 第五チャクラ:ヴィシュッダより

 

 

 そして、陽乃は『悪星ラーフ』と、真の意味で対峙を行っていた。

 仲魔を召喚せず、その身一つのみで。

 

 

 




すいません、体調崩して更新おくれました。
投稿頻度は徐々に戻っていくと思います。

読者兄貴姉貴たちの女神転生シリーズプレイ状況について

  • ほぼすべてプレイ済
  • いくつかのナンバリングだけプレイ済
  • ペルソナだけプレイ済
  • 上記以外の派生作品だけプレイ済
  • 二次創作による知識だけ
  • 前提知識なし、未プレイ
  • その他
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ゲーム世界転生〜現代ダンジョン世界かつ1900年開始で生き残るには〜(作者:星野林(旧ゆっくり霊沙))(オリジナル現代/冒険・バトル)

現代ダンジョン立志伝〜大戦の軌跡〜▼……というゲームをプレイしていたプレイヤー達は、プレイヤーとしての知識を活かして成り上がりを目指すようです。▼2度の大戦以外にも日ノ本を狙う国はわんさかおりますが、プレイヤー達は生き残れるのでしょうか!


総合評価:5171/評価:8.56/連載:103話/更新日時:2026年05月12日(火) 19:51 小説情報

【悲報】ワイ、化け物になってしまった模様(作者:rat cat)(オリジナル現代/ホラー)

▼怪異と怪異狩りが戦う世界で怪異になってしまったイッチ。▼安価で行動するイッチに周りは振り回されていく。▼


総合評価:10107/評価:8.14/連載:12話/更新日時:2026年04月08日(水) 22:15 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>