トレセン学園コック長   作:ブランチランチ

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誤字報告ありがとうございます。
思いついたら止まらなくなり上げちゃいました。

タイトルをどっちにするか迷いましたがこのパターンにしました。

お楽しみいただけたら幸いです。


特製デザート頂きます。

ポツポツと窓に雨が当たるのをボーっと眺めるナリタタイシン。

 

不調が重なりレースには結果が出せず、更に出たレースで故障をしてしまった。

最近は何をしても上手くいかない。

日に日に足は重くなり部屋に籠るようになっていた。

 

「はぁ、何やってんだろ」

 

チケットもハヤヒデとも、何回もレースの約束をしたが誰かが故障してしまい揃っての出走ができない。

その誰かが欠けたレースでも結果は散々だった。チケットは悔しいと練習を増やしてるらしい、ハヤヒデに聞いた。ハヤヒデも治療中みたいだ。この間、足に包帯を巻いていた。

アタシはどうだ?足は治ったと医者は言っていた。しかし、この間走ってみると重りでも括り付けられてるのかと思う位足が重く感じた。身体が鈍ってるのは分かるが元に戻る確信が持てず怖い。わからない、なんで走っていたんだっけ?

 

コンコンとノックの音が聞こえる。

 

「タイシン?タイシンいる?チケットだけど」

 

 

 

 

 

部屋にチケットを入れた。

 

「何?」

 

「うん、今日は届け物があるんだ」

 

チケットはバスケットを開けるとミルフィーユとパイが出てきた。

 

チケットとテーブルを挟んで向かい合う。

ミルフィーユとパイ、飲み物は偶々あったペットボトルの紅茶。それをコップに注いでチケットと私の前に置く。

 

「まずは食べよう、話す前に」

「うん」

 

雨の音と食器の擦れる音しか聞こえない部屋。チケットが部屋に来たら隣の部屋から苦情が来ないか心配するのに・・・

 

 

ミルフィーユ、小さなみかん?が乗っている。サクサクの生地に甘酸っぱい果実美味しい。ペットボトルの紅茶じゃ申し訳ないと思ってしまう。なんだっけ、この果実?

 

途中でパイの方も一口。匂いで何となくわかるけど・・・うん、やっぱり桃だ。桃のパイ。桃の果実と桃のジャム、パリパリの生地美味しい。

 

ふとチケットを見ると涙を流している。

 

「チケット!!」

 

「大丈夫、うん、大丈夫だから」

 

チケットはそう言うが落ち着かない。

 

「このスイーツなんだけどね、コック長が一生懸命食材を探し回ってたんだ。アタシ達に美味しいの食べさせるんだって、少しでも元気になって欲しいって・・・それでね、アタシ聞いちゃったんだ」

 

私を見るチケットは話す度に涙が溢れている。

 

「タイシンのトレーナーがね、なんでこの2つなんですか?って聞いてたんだ、そしたら、ミルフィーユは落ち葉が積み重なった様子が名前の由来なんだって、それで金柑には「思い出」と「感謝」って意味って言うか果物言葉があるんだって、うぅ、だから、だから、「アタシ達に出会えた事への感謝と多くの思い出をありがとう」って気持ちを込めたんだって、ひっく、ぐす」

 

なんなの、いつもウザイコック長の癖に、変で暑苦しい・・・でも、全力な

 

「チケット、こっちは?」

声が震えてるのが分かる。視界も滲んできたでも聞きたい。

こっちにも意味があるはず、あのコック長なら

 

「グス、なんとかパイをあやかってるって言ってたけど聞き取れなかった、ごめん、でも、桃にはその、「私はあなたのとりこ」って意味があって「上を目指すあなたに私はとりこ」って意味を込めるって笑ってた。周りの皆んなも、その通りだって」

 

その時の事を思い出したのか、チケットも笑っている。涙に濡れた顔だけど。

 

想像できる、多分あの暑苦しい笑顔で笑ってるんだ。空につられて周りも

 

「あとこれ、タイシンのトレーナーが、一部だけど渡してくれって」

 

チケットは袋を渡してきた。

 

「手紙?ファンレター?」

 

偶々、本当に何となく引いた手紙を読んでみると。

 

「ナリタタイシンさん、貴方は今とてつもなく苦しい中に居ると思います。私もその1人でした。不調で結果が出ないと、誰も私を見てないと苦しみました。でも、あなたに勇気を貰いました。諦めない気持ちをもらいました。今貴方の苦しみを少しでも和らげたいと筆を持ちました。貴方の活躍を心よりお待ちしています。赤毛のファンより」

 

他の手紙も、いつも応援してます。頑張る貴方に勇気を貰いました。優勝インタビューを待ってます。とか、アタシを「信じて」くれてるものばかり。

 

アタシは残りのミルフィーユを一気に食べた。アタシだって感謝してる多くのファンに!!チカラを貰ってるんだ!!数ある思い出の中のファン達に!!

 

桃のパイも一口で!!アタシの虜にしてあげる天下無敵のナリタタイシンが!!

 

「チケット、ありがとうハヤヒデのお見舞いに行ったら併走頼める」

 

「うん!!」

 

窓の外はお日様が出始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

厨房にて

 

 

「そっちのパイにはどんな思いが?」

 

「思い付きなので恥ずかしいんですが、スターゲイジーパイって知ってます?ニシンのパイって呼ばれてることもあるんですが」

 

「あの、見た目のインパクトが凄い奴ですよね?ニシンがパイから突き出て直立してる」

 

トレーナーの問いに、コック長があるパイを知ってるか尋ねる。するとコックAが聞き返し、周りのコックも首を傾げる。

 

「あれですか、それでそのパイと何の関係が?」

 

「いや〜見た目も関係無いんですけどとりあえずそれにあやかってパイにしたんですよ。

スターゲイジーパイって勇敢なある漁師を称えた食べ物なんですよ。嵐で漁に出れなかった事で魚が主な食べ物だった村は酷い食糧難だったんですが、その漁師が嵐の中、海に出て魚を持ち帰ったそうなんです。」

 

「それで彼女らを称えてって事ですか、コック長って割とロマンチストですよね」

 

「うるへー、んでもって桃には「私はあなたのとりこ」って意味と「天下無敵」って意味があるんで、「頂きを目指す貴方に私はとりこ」っていうのと、「頂きを目指す貴方は天下無敵」って思いをね。思いついたのですよ。」

 

「星を見上げるパイから頂きに変えたんですね、ひゅ〜」

 

「でも、誰よりも高い目標を持つウマ娘は強いですからね」

 

「まぁ、茶化しちゃいましたけど俺たちの思いも変わりませんし」

 

「コック長、謝りますから照れ隠しで拗ねないでください」

 

厨房は笑いにつつまれていた。

 

 

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