大天使ライスの前には邪神もなりを潜めるという事でお願いします。
お楽しみいただけたら幸いです。
カツカツとハイヒールを鳴らして歩く女医。
彼女は観察していた。ライスシャワーを・・・
昨日の雪辱を果たそうと、どのように癒やそうかと。
観察して気づいた事は彼女は余り他人といる事が少ない。一緒にいる事が多いのはハルウララ。彼女の明るさは周りを笑顔にする。
次点でミホノブルボンだろうか?私が観察してる間は彼女達はよく一緒に練習していた。
そしてライスの様子が一変した。
早朝から長距離トレーニング、昼からはプール、夜間まで長距離トレーニング。
初日はスタミナトレーニングかと思い過剰と思いつつ口出しはしなかった。
しかし、これが4日続いたら話は別だ。
少しづつ天使の様な顔が般若のような追い詰められた顔に変わりつつある。更に外出申請をしてテントを持ち出しキャンプを始めた。
「ならーん!!」
「きゃっ?!」
草むらから飛び出してきた女医は憤慨していた。
「こんな根性論的な練習は認められん!!」
「ちょ、えっと何?」
懐から出した包帯とテーピングを放つと一瞬でライスは絡め取られてしまった。
「え?えーーーーー!?」
そのまま身動きを封じられたライスを女医が抱えて走り出した。
連れてこられたのは医務室。
拘束をとかれたライスはジャージから施術着に一瞬で着替えさせられた。
「あの、その」
目をグルグルさせて困惑するライス。
「ダメよ、こんなにダメージが足首と膝の炎症は大分酷い、ふくらはぎも太腿も熱を持ちすぎてる。血流が多いのにこの硬さ」
ぶつぶつと足を確認しながらアイシングやシップ、テーピングを施す。
真剣な顔を眺めされるがままになっていたライスは困惑した。
「女医さん、なんでこんなにしてくれるの?」
先程迄は痛みと熱に耐えていたが大分良くなった。まだ気休め程度だが、ダメな自分は追い詰めなければ他のウマ娘には勝てない。だから仕方ない痛みなのだと我慢していた。トレーナーにも、初めにレースを逃げてからは匙を投げられた。ブルボンやウララに励まされながら変わりたいと練習を重ねている。
「頑張ってる子に協力したくなるのは変かしら?」
処置をしながらそう微笑んでくれた。
「でも、ライスはダメな子だから女医さんに迷惑をかけちゃう。それにこんなにすごいならもっと・・・」
ダメな自分より、もっと凄い他のウマ娘達に・・・言葉には出来なかったがそう思ってしまった。
「ライスは凄いぞ、あんなトレーニングをまだ続けるつもりだったのだろう?褒められた方法ではないが続ければスタミナと足回りの筋力強化は凄まじいものになる。それにあれを続けられる根性を持った子はそうはいない」
「見てたの?」
「ああ、しかし、ダメージが多すぎる選手生命を削る方法だ。練習後のケアをしっかりしなければいけない。練習と休息の両立が大事だ」
見ていたと言われてライスは嬉しかった。他のウマ娘ではなく自分を・・・
「ありがとう」
嬉しさから微笑み告げるその顔はいつもの天使であった。
「ふっ、まだまだだ。次はうつ伏せだ少しでも回復を促さなければな」
足を持ち上げたり、広げたりしながら確認する。
「やはり大臀筋周りが硬いな、その割には腰や背中は比較的ほぐれている?」
可動域の確認と触診で筋肉のコリ具合を測っていく。
「何か意識的にストレッチしてるのか?」
「あのね、猫さんみたくニャーって伸びをしてるの、背中が伸びて気持ちいいの」
「いい事だ。腰は大事だから続けなさい。」
「はい」
背中や腰、お尻回りの筋肉を丁寧にほぐしていく。ほぐれていく体と女医の温もりに安心し、心地よくなったライスは意識を手放す。
目が覚めると毛布がかけられていた。血流が良くなったのか身体がポカポカと暖かい。昨日迄の熱と違い嫌悪感はない。壁にかけられた時計を見ると午前3時を回ったところだった。淡い色の光を放つスタンド型のライトが辛うじて部屋を照らす。
「女医さん?」
帰ってしまったのだろうか?不安になり布団から出るとソファに寝転がっていた。白衣を布団代わりにくるまり寝ているようだ。
「あ?おお、起きてしまったのか?まだ寝てなさい休むのも仕事だよ」
目を擦りながら言う女医は眠そうだった。
「でもそんなんじゃ風邪をひいちゃう」
今夜は少し冷えていた。気持ち程度の白衣にくるまって寝ている女医が心配だ。
「なに、こんなのは慣れっこだライスは戻りなさい」
そう言って再度寝ようとする女医。
「じゃあ、女医さんも一緒に寝よ?」
幸いダブルサイズ程度の大きさがあるベッドは小柄のライスと女医ならば問題はなく寝れる。
「いや、一緒だとライスが休めないだろう?」
「女医さんがそのままの方が休めないよ」
真っ直ぐ見つめられた女医は折れた。
「わかった、寝よう」
布団に入りライスは気づいた。女医の身体はやはり冷えていた。自分をマッサージしてくれた時の温もりが感じられなかった。
「どうした?」
女医に抱きつき温める。
「寒そうだったから」
女医の胸に顔を埋めるように抱きつき上目遣いで告げるライス。
「ありがとう」
(ぬぅ、調子が狂う)
いつもならば嬉々として受け入れる女医だが余りそういう気にならない。
(ただ、心地よい)
「女医さん」
「なんだ?」
互いの温もりにより睡魔に導かれる女医は目をつむりながら応えた。
「お姉様って呼んでもいい?」
「好きに呼ぶといい」
「ありがとう」
2人は温もりを手放さないように眠りに落ちていった。
「なぁ、姉貴よ」
「どうした愚弟」
コーヒーを楽しみながら答える女医。食堂の喧騒もどこ吹く風と優雅に応える。
「どうしたもこうしたもない!!その状況を説明しろ!!」
激昂するコック長は指さす。
女医の膝にはライスが座っており、彼女を抱き頭に顔を乗せている女医がいた。ライスもモグモグとパンを、齧っていた。
「なにもかにも見ての通りだ。私達は仲が良いからな」
はんっと馬鹿にした様な顔でコック長に応える。
「ねぇ、急にどうしてそんなに仲良くなったの?ライスちゃん」
隣で朝食を食べるウララが聞く。
「お姉様はね、ライスのこと見ててくれたのそれで痛いのも治してくれてね。いっぱいいっぱい優しくしてくれたの。だから大好きなの」
「へぇー凄いね。ウララも診てくれる?」
「勿論だ」
ライスを撫でながら応える。
そんな中コック長は稲妻に打たれていた。
「お、お姉様だと」
震える声で絞り出した声は驚愕に染まっていた。
ライスの頭に顔を乗せながらニタァとコック長を見る顔は、羨ましいだろう?と語りかけている様だった。
キャッキャする女性陣を前に力なく項垂れるコック長だった。